Webマーケ現場での「アイトラッキング」の4つの価値


長らくユーザビリティ領域で営業活動を行っていると、「ユーザビリティテスト=アイトラッキング」と思っている人がいるほど、アイトラッキングには強いインパクトがあります。

実際のユーザテストでは、環境・コストの問題から、アイトラッキングを行わないケースも多いのですが、ある程度予算(100万~)があるケースではアイトラッキングも併用できる方がもちろん望ましいです。

ここでは、私の実体験を交えて、ユーザテストやユーザビリティ改善において、アイトラッキングツールがどのような価値を持つのかを4つの視点で整理します。

アイトラッキングの4つの価値

価値1. 企画・提案でのインパクト

価値1_アイトラッキングで企画・提案で刺さる

アイトラッキングツールのビジネスにおける最大の価値は、企画や提案を行う際の「受け」が抜群に良いことです。ヒートマップ画像やゲイズプロット画像のイメージを見せるだけで、非常に「しっかりとした分析をしてもらう」という期待を高めることができます。

ヒートマップの様子(引用:NHNテコラス お買い物研究室

これは極端な例ですが、私が前職で営業の際、どうしても短期的に契約を取りたかった新規顧客の営業シーンにおいては、ものすごく重いアイトラッキングツールをケースに入れて打ち合わせに持参し、実際の様子をみてもらうことで、その場での成約を勝ち取ることに成功しました。

ビジネスにおいて、何か物事をスタートする際に、第一印象で「良さそう」「やりたい」と思ってもらうことは極めて重要です。

そのためのツールとして、アイトラッキングは強い材料になります。

価値2. 調査見学時の議論の活性化

価値2_アイトラッキングでテスト見学が盛り上がる

実際にユーザビリティ改善案件を受注してユーザテストを行う場合、対面型調査では、多くの場合、クライアントが調査の様子を「見学」します。

見学の時には、見学室とインタビュー室の2部屋を用意し、見学室ではインタビュー様子をカメラ越し(またはマジック・ミラー越し)に確認しますが、この時に、アイトラッキングツールにより「視線の動き」がリアルタイムに確認できると、議論がとても盛り上がります。

視線が可視化されることで、「この画像はやっぱり見られているようだね」「この付近には全く視線がいってないので、駄目だね」といった議論が自然に起きるため、見学者の間での課題コンセンサスがとれ、またその場での改善アイデア検討もしやすくなります。

もちろんアイトラッキングがなく、ユーザテストの様子を見学する(または後から動画で見る)ことでも議論は十分に盛り上がるのですが、さらに活性化できることは間違いありません。

 

価値3. UI分析・考察の素材

価値3_UI分析がしやうし

調査において最も本質的な価値ですが、視線の動きを可視化できるため、UIの分析や考察を行いやすくなります。

ユーザテストの発見点は、大きく「心理レイヤー」と「UIレイヤー」に分けることができます(この話の詳細や事例はユーザビリティテストの重要性をご覧ください)。

「心理レイヤー」については、視線の動きよりも、思考発話(使っている時のつぶやき)や、利用後の回顧(振り返りの質問・深掘り)によって得られるケースが多いのですが、「UIレイヤー」の課題を見つける際には、視線の動きが画像や映像として確認できることに大きな価値があります。

なお、これは細かなTIPSですが、「視線」と「知覚・認知」は異なり、アイトラッキング上は視線がある要素を見ている(ある要素の上を動いている)場合でも、実は「その要素の存在に気づいていない」「要素の内容を理解していない」というケースは結構あります。単に視線を見るだけでなく、その後の質問を通じて「目線があったが、この要素に気づいたか、内容に理解できたか」を確認することが重要です。

価値4. レポートの説得力アップ

価値4_資料の説得力が上がる

アイトラッキングツールで得られたデータは、ヒートマップやゲイズプロットといった画像データで出力ができます。この画像データがあることで、レポートの説得力を高めることができます。

ゲイズプロットの様子(引用:お買い物研究室

言葉でクドクドと説明するよりも、図で直感的に説明する方が、誰にとっても理解しやすいもの。ヒートマップやゲイズプロットを使うと、「どの要素が見られているか」「どこが一番最初に目につくか」といった論点について、明瞭な解を提示することができます。

また、これは調査を行っている人には自明ですが、ヒートマップやゲイズプロットは、「どんな状況下で、そのページを見たか」によって結果が全く異なってしまいます。

  • 初見で見た時
  • ある機能を探している時
  • 特に目的なくぼやっと見た時

など、前提状況次第で全く異なる結果が出てしまうため、必ず事前に「どんなシーンにおけるヒートマップを確認するのか」は合意をとっておきましょう。

アイトラッキングの仕組み

ここまでアイトラッキングの価値に焦点を当ててきましたが、そもそもアイトラッキングはどのように視線の動きを捉えているのでしょうか。ここでは使用する装置や原理に焦点を当ててみましょう。

アイトラッキングの装置の種類

アイトラッキングを行うにはユーザの視線を捉えるための特別な装置が必要ですが、装置には大きく分けて3つのタイプがあります。様々なアイトラッキング装置を販売しているトビー・テクノロジー株式会社のサイト(製品一覧)を参考に、下にまとめてみました。

  • モニターとの一体型:付属のモニターに取り付けて使用、またはモニターに内蔵。
  • コンパクトで携帯可能な取り付け型:USBで取り付け可能でどこでも使える。
  • ウェアラブル型(メガネ型):ユーザの可動範囲が広くなることが利点。

アイトラッキングにはこれらのような専門の装置が必要になります。これらの装置はWebマーケティングの領域だけでなく、心理学や医学的な研究にも用いられています。

アイトラッキング装置の原理

これらの装置にもいくつか原理がありますが、富士通研究所のサイトによると代表的な原理は2種類であるとのことなので、下に引用してご紹介いたします。

 

A. 基準点を「目頭」、動点を「虹彩」にして位置関係を使う方法

普段、私たちが日常で使うカメラ(可視光を撮影するカメラ)を用意して、私たちの目を写します。基準点を、目頭にします。動点を、虹彩にします。目頭に対する虹彩の位置に基づいて、視線を検出しています。(例えば、左目の虹彩が目頭から離れていれば、ユーザーは左側を見ています。左目の目頭と虹彩が近ければ、ユーザーは右側を見ています)

B. 基準点を「角膜反射」、動点を「瞳孔」にして位置関係を使う方法

赤外線LEDでユーザーの顔を照らして、赤外線を撮影することができるカメラで私たちの目を写します。赤外線LEDを照らしてできた反射光の角膜上の位置(角膜反射)を基準点とします。角膜反射の位置に対する瞳孔の位置に基づいて、視線を検出しています。(例えば、左目の角膜反射よりも瞳孔が目じり側にあれば、ユーザーは左側を見ています。角膜反射よりも瞳孔が目頭側にあれば、ユーザーは右側を見ています)

引用:富士通研究所

アイトラッキングの使用事例

【事例】新規ユーザと既存ユーザの動きの違いを発見し、売上増を実現

出典:イマージュソリューションズ

イマージュソリューションズでのアイトラッキング導入事例です。アイトラッキングで得られた結果をもとに、新規ユーザの購入離脱率を約5%低減することができたとあります。

この事例によると、これまでアクセスログ解析の結果からユーザの動きの仮設を立ててUX改善を目指していたECサイトで、実際にアイトラッキングを用いて分析した結果、新規ユーザと既存ユーザの動きに違いがあったことが判明したのです。

既存ユーザにとっては使いやすいサイトになっていても、新規ユーザにとっては使いにくかった。この結果は数値のみのアクセス解析からではわからない結果です。この結果をもとにUX改善を行ったことで売り上げ増に繋がったとのことなので、数値からの推測だけでは時間も売り上げもかなりのロスになってしまうことがわかります。

 

【事例】アイトラッキングで入力フォームの最適デザインを検証

UX matterの記事「Label Placement in Forms」で、アイトラッキングを使用して最適な入力フォームデザインの検証がされていました。

この検証では①入力フィールドの左側にラベルを左揃え、②入力フィールドの左側にラベルを右揃え、③入力フィールドの上にラベルを左揃えという3種類の入力フォームデザインを用意し、アイトラッキングでの解析をしたとあります。

出典:UX matter

出典:UX matter

結果は、①は一般的なデザインであるものの、ラベルと入力フィールドの間が開くと視線を動かすのに時間がかかり、②は入力フィールドから次のラベルへ視線を移す時にラベルの始まりの位置を探すので時間がかかったそうです。③のように入力フォームの上にラベルがあると、一度の視線の動きでラベルも入力フォームも同時に捉えることができるので、3つの中では一番ユーザのストレスが少ないデザインであることがわかったとあります。

出典:UX matter

また、太字を使うと60%も視線を移動させる時間が増加したとのことで、この記事では太字を使わないことを推奨しています。

まとめ

アイトラッキングの4つの価値について、改めて整理します。

  • 「見た目の受け」が非常によいため、営業・提案で刺さる(受注に繋がる)。
  • ユーザテストの見学時に、議論が活性化する。
  • UI分析の材料が増え、検討しやすい。ただし「視線」と「認知」が違うことは忘れずに。
  • レポートのファクトが増え、説得力を出しやすい。ただし「どのシーンのヒートマップか」は必ず事前合意&明示。

ぜひ検討の参考になれば幸いです。


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池田 朋弘

池田 朋弘

株式会社ポップインサイト代表取締役CEO。株式会社ビービットで、ユーザテスト・ユーザ行動観察を軸にしたコンサルティングで、売上1.5倍・問合せ10倍等の実績を出す。二児の父。「ユーザ視点をもっと間近に」をミッションに日々奮闘中。


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