思い込みのペルソナはマーケティングには使えない~予想不可能なユーザ心理


kiso

「自分がされてうれしいことを他人にもしなさい」というのは子供の教育の現場をはじめ、ときおり目にするフレーズです。残念ながら、行動観察の世界に限ってはこの考えは誤っているといわなければなりません。ここでは偽の合意効果(False Consensus Effect)と呼ばれる現象と、それを克服する手段としてのユーザテストをご紹介いたします。

また、ペルソナマーケティングの事例はこちらでご紹介しております。

 

「割り勘が良い」とは思わない人もいる

偽の合意効果とは、「自分と同じ考えを他人も持っているだろう」と自然に思い込んでしまう人間の心理傾向の表れを指しています。

海外に出かけたときに感じる「カルチャーショック」もこの偽の合意効果に由来するものといえるでしょう。

例えば、ある日本人Aさんにとって、食事の会計を割り勘にして各々が払うのは当たり前のことだとします。

Aさんは「お互いに貸し借りなしの気持ち良い関係を保つ」「おごり、おごられることのない対等で尊重し合っている関係を示す」というような意味合いが割り勘には込められていると考えており、この考え方は合理的で、説得力があると信じています。

「世界中のほとんどの人がデフォルトの支払方法として割り勘制を採用している、そうじゃない人もいるかもしれないが、例外的だろう」というのがAさんの割り勘に関する評価です。

 

ところが、中華圏の人とお付き合いがある方であればすぐわかる通り、上の考え方は必ずしも常に大多数の考えを代表しているとは限りません。

もちろん例外はありますが、中華圏の人は根本的に割り勘による会計に抵抗感を持っています。

知り合いの中国人に「友達同士で割り勘を提案したらどうなるの?」と聞いてみました。

答えは「一緒に食事をするということは、どちらかがホストで、どちらかがゲストなわけでしょ?ゲストがお金を払うのは変でしょう」というものでした。

私たち日本人にはにわかに理解できない考え方です。しかしながら、事実として、彼らは私たちが思いも及ばなかった「別の合理性」に基づいて行動しているのです。

 

安易な思い込みやペルソナはNG~ユーザは「外国人」

これはウェブサイト構築の際にも気を付けておかなければならない視点です。

最近のUXやUCDなどの流行りにより、Webサイトやアプリを作る際には「ペルソナ(ターゲットユーザを擬人化した資料)」を用意するケースが増えていますが、そのほとんどは「思い込み」で作られています。

サービス提供者がいくら「みんなこれがいいと思っているはずだ」と信じても、それは「他人も自分と同じはずだ」という偽の合意効果が働いた末の思い込みに過ぎないのです。

自分と同じ考え方の人間ばかりではないということは、ほとんどの人が事実としては知っているはずなのに、実際にサービス改善の現場に立つと、不思議なことにその認識は忘れ去られてしまいます。

ユーザは外国人と同じくらい「自分たちとは異なる」考え方を持っているかもしれないのに、そのギャップを無視してしまおうとするのです。

 

事例:「初心者でも大丈夫」でもユーザはまだ不安

ここで、実際にポップインサイトが手掛けた事例をご紹介いたします。

 

【対象】ある習い事の講座を紹介するサイト

【課題】初心者向けクラスの受講者数が伸びない

【当初の仮説(ペルソナ)】  初心者なので、「初心者向け」という言葉に安心する

【弊社ユーザテストで得られた発見】

「初心者でも大丈夫!」と講座説明文に書かれていたものの、「私は、同じ”初心者”の中でも絶対向いていない。だから、初心者向けでも多分できない」という不安感を払しょくできていなかった。

【その後】

「超初心者向け」という、「初心者向け」を上回る表現に差し替え、改めてユーザテストを行ったところ、印象の改善が見られた。

 

このケースのクライアント企業担当者さんは「初心者向けと書いてあれば、自分なら受講すると思い、問題ないと思っていた」とお話ししてくださいました。

ところが実際は、ユーザの苦手意識はサービス提供側の予想をはるかに超えて強かったのです。

ユーザテストを行った結果この事実に気付くことができ、速やかに改善策を打てた事例でした。

 

まとめ

このように、ユーザの意識、行動は、多くの場合予想不可能なものです。

いくら自社内で「合理的だ」「使いやすいはず」と思っていても、その認識には既に偽の合意効果という魔法がかかっているということを忘れてはなりません。

この魔法を解き、よりリアルなユーザの心理を直視するためには、ユーザテストが欠かせないのです。

 

ポップインサイトは皆様にユーザテストの力をより手軽に利用していただくため、リモート・ユーザテスト「User Eyes」を提供しています。


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木原将太

木原将太

株式会社ポップインサイト リサーチマネージャー。京都大学大学院中退後、外国政府機関、上海勤務等を経て現職。同社サービス初期からテスト運用を担当。


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