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UXリサーチャー社内育成のすすめ。未経験でUXリサーチャーになるには「トレンドに敏感」と、何が必要?

ポップインサイトではオンラインのUXリサーチを実施しています。ご依頼いただくお仕事の多くは「各企業様のお悩みに寄り添いながら課題を突き詰めていくタイプのリサーチ」ですが、「社内でもリサーチを実施できるように人材育成を手伝ってほしい!」というようなご依頼もいただきます。

「UXリサーチ」と言われると非常に専門性が高そうな印象を受けますが(無論実際に専門性が高い領域ももちろんあるのですが)、内容によっては今あるリソースだけでも十分に取り組める可能性があります。

特に、今は市場にいるUXリサーチャーの母数がそこまで多くないため外部採用のハードルが高く、社内の人材から育成できるのであればそれに越したことはないでしょう。そこで今回は、現役UXリサーチャーから見た「より、UXリサーチャーとしての適性が高そうな人材」についてお送りしたいと思います。
※あくまでも主観に基づく内容です。本記事の内容に合致しないからといって適性がないということではありませんのでご留意ください

UXリサーチャーに求められる資質

人間に興味関心がある

最初にこの項目を持ってきたのには訳があります。

例えば「どれだけ家の中が汚れていても気にならない人」と、「少しでもホコリが舞うのは嫌だという人」がいたとします。もしこの2人が「どんなに細かいホコリでもキャッチできるモップ」を見たらどのような反応をするでしょうか。その掃除用具を使ったときの感想は同じでしょうか。

「家の中が汚れていても気にならない人」は、「モップは別にあってもなくても良いんじゃないか」と言うかもしれませんし、「床がピカピカでないと気がすまない人」は「少しでもホコリが取れるなら、ぜひモップを使いたい」と感じるかもしれません。
この例は分かりやすいですが、実際には事業者やリサーチャーが想像しているよりも多くの変数が絡み合うことも多いため、そう簡単にはユーザー心理を把握できないのが現状です。


UXリサーチは、対象のプロダクトやサービスを利用するユーザーが利用前後でどのような体験をし、どのような感情を持つのかを明らかにしようとする試みです。言い換えれば、プロダクトやサービスと接点を持つ人間にどのような科学反応が起きるのかを知る必要があります。
「なぜ、その人はこのプロダクトを利用しようと思ったのか」、「初めて利用したときどのような感情を持ったのか」、「それが次回以降の利用意向にどのような影響をもたらしたのか」。UXリサーチは常にその問いに向き合い続ける仕事であるため、ヒトの感情や意思決定の理由などに関心を持てる人のほうがUXリサーチャーとして楽しめることは間違いないでしょう。

トレンドに敏感

「人間に興味関心がある」のが木を見るということならば、「トレンドに敏感」は森を見るようなものだと考えます。
「SNSでバズった投稿」や「急激に人気が高まっているサービス」など、沢山の人が集まるのにはなにかしら理由があります。「何がそれほどまでに多くの人を惹き付けるのか」を知れば、より解像度高く世の中の動きを理解することができるかもしれません。


加えて「人々の価値観が変わったからトレンドが起きる」だけでなく、「トレンドによって人々の価値観が変わる」ということもありえます。その場合、調査対象への評価もトレンド前後で大きく変わる可能性が高いのです。調査対象への世の中の評価や、それに応じた改善方針を考えるうえで、トレンドは欠かせないものと言っても良いでしょう。

また、実務上でも非常に重要な側面を持っています。ユーザー体験やそれに伴う感情の機微を拾う上で、ユーザー自身の思考発話は欠かせません。ユーザーテストであろうとインタビューであろうと、ユーザー自身に語ってもらうシーンは数多くあります。しかしそれは同時に「ユーザー自身が語れないこと」は、「UXリサーチャーには拾えない可能性が高い」ということでもあります。


ここでトレンドの出番です。UXリサーチャーは、トレンドや一般常識なども駆使しながら事前に調査の仮説を立てるのです。「ユーザーが言語化できないから事実が拾えない」というのでは、せっかくの調査も存分に価値を発揮できません。そのため実査でユーザーが言語化できなくてもある程度背景やニーズを推測できるように、「こういうトレンドがあるから、こういうニーズが生まれて、それが結果的に価値として感じられているのではないか」等の予測を立ててから調査に臨みます。


事前に仮説を立てている調査とそうでない調査とでは、得られるファクトの深みが異なります。特に事前に立てた仮説と同じような回答が得られなかった場合、「なぜ予測と異なったのだろう」「何がその行動変数として作用したのだろう」と考えるきっかけにもなります。実査中にそこまで思い至れば、その場ですぐに仮説検証を始めることも可能です。

人間の意志や努力を当てにしない

個人的にはこれが最もUXリサーチャーに必要な資質であろうと思います。


私が以前勤めていた会社では、「とあるデータ分析ツールの活用」に苦戦していました。マニュアルに定められたフローがあり、そのとおりに作業していれば何も問題はないのですが、どこかで必ず人的ミスが発生するのでミスの発生源を突き止めたりデータの辻褄を合わせたりするのに時間がかかっていました。そのミス自体は何年も前から発生し続けていましたが非常に軽微なミスであったため、責任者が毎日そのミスを修正する作業を行っていました。


ある時、そのツールに詳しいメンバーが一部の作業を自動化することに成功しました。その結果そのミスは発生しなくなり、ミスをしていたメンバーは、いつもどおりの作業をするだけで正しく作業を完了でき、責任者はミスの修正のために毎日数十分費やさなくて良くなりました。
私は未だにこの経験を教訓として折に触れて思い出します。「頑張ってミスを減らそう」とするより、「仕組みを変えてミスを発生させなくする」ほうがよほど生産的です。


UXリサーチャーは課題の発生源を突き止めることが仕事ですから、「課題の在り処や内容」については詳しいのですが、それぞれ医者に置き換えるなら、「病名を突き止める問診と診察」を行い、「レントゲン撮影やCTスキャンなどで病巣の在り処を明らかにする」ようなものです。ところが、UXリサーチャーとしてそれをマンパワーで解決させようというのは、同じく医者に例えるなら「病巣をすべからく除去するオペ」を執刀するようなものではないかと考えています。

病巣をすべて取り除いたことで身体機能や生命活動が維持できなくなれば何の意味もありません。「○○の情報がないから商品を検討しにくい」という課題に対して「それなら○○の情報を提供しましょう」というのも同じようなことです。その解決方法を提示するのであるならば、それは本質的に課題を捉えきれているとは言えません。「問診」からやり直す必要があります。


重ねてになりますが、UXリサーチャーは「見つけた病巣をまるごと除去するような反射的な解決方法を提示」するのではなく、「そのプロダクトに必要な機能や価値は残しつつ構造的に課題を解決できる方法を模索し提示」しなければなりません。
「ユーザーに学習させ、ユーザーに努力を強いる」のではなく、「ユーザーの手間を少しでも軽くしながらも、課題の発生源を潰していくために、人間の意志や努力に頼ることをいったん忘れ、仕組みで解決する方法を考え抜く必要」があるのです。

まとめ

UXリサーチャーに必要と思われる資質3点をご紹介してきました。


改めて付記しておくと、これらすべての資質を持たないからといってUXリサーチャーに適していないわけではありません。あくまでも適性が高い可能性があるとか、本人がUXリサーチという業務を楽しめる可能性が高いというだけのものです。
また、ここでご紹介した以外にも重要な資質はあります。業界特有の知識を有していることが重要なシーンもありますし、デザイン知識があればそれだけ課題を見つけやすくなります。そのプロダクトに強い関心があるというだけでも十分な推進力になりえます。逆に言えば、これらの資質があるからといって必ずしもUXリサーチャーとしての適性が高いわけでもないかもしれないのです。

もし、「UXリサーチャーになりたい」、または、「社内でUXリサーチャーを育成したいけれど何からはじめて良いかわからない」という方は、ぜひ当社までご相談ください。また少しでも本記事が参考になれば幸いです。

コラム執筆者

大石

ポップインサイトのUXリサーチャー。前職はSaaSの営業・インサイドセールスを担当。現在はSaaS、外食チェーン、自動車メーカーなどの各種大手企業のリサーチを担当。趣味は新しくできた店舗を観察しながら顧客属性や顧客単価を想像し、自分が店長だったらどれくらい収益が見込めるか考えること。

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投稿日: 2022/03/31 更新日:
カテゴリ: UXリサーチャー, UXリサーチ, UXリサーチ