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【リサーチャー視点で考える】食物アレルギーとユーザー体験

みなさんは食事におけるUXについて考えたことはありますか?
私は、リサーチ業務を担当するようになり、日頃から人の行動を観察し、どんな意図や価値からの行動なのか想像するようになりました。そして業務の中だけでなく、生活の中で、食体験について、現状を把握して分析したり、期待を考えたりすることを自然と行っていることに気付きました。

本記事では食物アレルギーを持つ子供を育てるリサーチャーの私が、子供の食に関する体験を通して、サービスや製品のユーザー体験について考えたことをご紹介します。

3歳までに何らかのアレルギー疾患があると診断される子供は約4割

※アレルギー疾患:ぜん息、食物アレルギー、アトピー性皮膚炎、 アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎またはじんましん

これは、2020年10月に発表された東京都の調査結果です。

食物アレルギーによるショック症状や誤食については、以下の結果が報告されています。

  • 食物アレルギーと診断された子供のうち1割超がショック症状を経験
  • ショック症状とは、意識がない、意識もうろ、ぐったり、尿や便を漏らす、脈が触れにくい、唇やつめが青白い、のいずれかの症状を指す
  • 食物アレルギーと診断された子供のうち約2割が誤食を経験し、そのうち自宅での発生が約7割を占める

参考:https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2020/10/22/02.html

これらの結果を見ると、食物アレルギーに配慮することの重要性を感じていただけるのではないでしょうか。

卵を食べない生活で失われる食体験

私の長男は、卵アレルギーがあり、卵を食べることができません。そのため、加工食品を食べるときや外食の際は、卵が含まれていないか、原材料をすべてチェックしています。

また、外食時には卵不使用のメニューがある飲食店を探す必要があるため、事前の調査・確認は必須です。

こういった対応により、普段問題なく日常生活を送ることができます。

しかし、飲食店の対応や、わかりにくさ、表示の見落としなどによって、貴重な食体験を奪ってしまうこともあります。

対応によって大きく異なる食事の体験価値

旅行前に、宿泊先の食事に卵を含まないメニューがあるか必ず電話で確認します。

ある旅館で、「アレルギー表示しているから安心して来てください」とご案内いただきました。

しかし当日行ってみると、たしかにアレルギー表示はされているものの、卵が入っているメニューばかりで、長男の食べられるのは白米と納豆のみ。せっかくの旅行なのに家族全員で食事を楽しめずさみしい思いをしました。

一方で、別の宿泊先では、卵を使わない料理を個別に用意いただき、更に子供が喜ぶかわいらしい盛り付けまでされていて大変感動しました。

「食べられるとおもったのに、食べられなかった」 というさみしい思いをさせないためにも、事前に食べられる料理があるか、判断できることが大変重要です。

実は、飲食店で提供される飲食物や、店頭で包装されずに販売されているお弁当やお惣菜にはアレルギー物質の表示義務はありません。

お店の方に食物アレルギーのことを伝えたとき、対応方法が決まっていない様子が見受けられると不安になりますが、丁寧に対応してくださったり、きちんと更新されていることがわかるアレルギー一覧があると、安心してお店を選択することができます。

アレルギー表示がされているか?
だけではなく、
アレルギーがある人が安心して食べられるか?
が、飲食店を選ぶ決め手になります。

ユーザーを理解した対応が、商品の購入や飲食店の利用につながる

おやつの時間。当時5歳だった長男は、お菓子のパッケージに書いてある、「大豆」の文字と、イラストを見て、

「これは卵が入っているから食べられないな」

と言いました。

まだ漢字を読めなかった長男は、大豆のイラストを卵と誤認し、「これは食べられない」 と間違った判断をしていたのです。

友達と一緒におやつを食べる経験というのは、「おいしい」や「楽しい」という時間を共有する大切な時間ですよね。

このときは、私が正しく判断したことで、長男はお菓子を食べることができましたが、もし気づかなければ ”必要のない我慢” を強いてしまうところでした。

現在、アレルギー表示表示は統一されていないため、いろいろなパターンが存在します。

もし以下の表のように漢字が含まれる場合、小さな子供は読めない可能性や、外国の方にとって馴染みのない食材はイラストからも読み取れないかもしれません。

※イラストACより引用

たとえば、加工食品は原材料が羅列してあり見づらいものが多いです。

※表はイメージ

こういった判断の難しさは、購入機会の損失につながります

一方でわかりやすい表示、伝わりやすい表示にすることが購買機会につながります。

長男が、友達と学校外で遊んでいるときに、お菓子を交換することがあります。

そんなとき、長男のアレルギーを理解しているので

「アレルギー表示が表になっていてわかりやすいお菓子買ったよ」

「個包装ごとにアレルギー表示がされているお菓子買ったよ」

と、報告してくれます。

これはアレルギー表示のわかりやすさが購入を決めていることを目の当たりにしたエピソードです。

一般的に卵が使われていることが多い食品(練製品等)は、パッケージに「卵を使用していません」と明記してあると手に取りやすく、普段は食べられないと諦めている商品が食べられるというのは、大きな喜びにつながります。

食品パッケージの場合、わかりやすく表示することが、必要な人に届くきっかけとなり、商品を手に取る機会につながり、さらには正しく判断でき事故発生のリスク抑制となります。

慣れていても見落としてしまう場合も

常日頃から原材料を確認することに慣れていても、見落としてしまったことが原因で、加工食品を誤食してしまったことがあります。

それからは、見落としが不安なので、声に出して繰り返し確認しています。

これらのエピソードから分かる通り、アレルギーを持つ本人、その周りの人は、家での食事、外食、友達とのおやつの時間にも気を遣い、なかなか気が休まりません。

そして、安心しておいしい食事を楽しみたいという思いを強く持っています。

UXリサーチで安心して楽しめる体験づくりを

今回は、食体験を例にご説明しましたが、食体験に限らず、使っているときの体験が優れていることは、サービスやプロダクトが選ばれ、利用され続ける要因となります。

昨今では、食糧危機や畜産業による環境への影響、食の多様性への対応など、食に関する課題が広がり、社会の持続可能性までもサービスを選ぶ基準になってきています。

今後も多様性は広がり、サービスの提供側としては「ユーザーがサービスを利用する文脈」を推測する難易度が上がっています。

このような、複雑化した社会の状況では、

  • 提供側の思いや価値と、ユーザーが欲しい価値にギャップはないか
  • サービスやプロダクトの提供側の思いや価値が、ユーザーに正しく伝わっているか

ユーザーについて学び続けていくことが大変重要になります。

ポップインサイトでは、ユーザー理解を深める手段として、UXリサーチを日常的に活用することをおすすめしています。ユーザーテスト、インタビューなど課題に合わせた最適なリサーチ、顧客のニーズを探るワークショップなど、多彩な方法をリサーチャーが一緒に考えます。

【執筆者】三好美香

システムエンジニア、広告運用の経験を積んだ後、リモートワーク、未経験でUXリサーチャーに挑戦できることに惹かれ、ポップインサイトに入社。
現在は、個人顧客向けのサービスの調査設計から分析に関わりつつ修行中。

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数あるUXリサーチ手法の中でも最初に始めやすい「ユーザビリティテスト」の「基本的な設計・実査・分析の流れ」と「実施の進め方や注意点」を解説します。

投稿日: 2022/11/18 更新日:
カテゴリ: 食品・外食サービス