アジャイル開発環境にUXリサーチを導入する方法

【作成】2019/12/26   【更新】2019/12/27 

この記事は、UXMasteryの許可のもと翻訳したものです。

元記事:How to adapt UX research for an Agile environment
著者:Amanda Stockwell
UXMastery, 2016年6月21日掲載

要約:アジャイル開発環境にUXリサーチを取り入れるのは非常に有効ですが、UXリサーチの手法を従来通り当て込んでいくとなかなかうまくいきません。そこでどの点をどのように工夫すればうまくいくのかをまとめてみました。

現在、ソフトウェア開発では「アジャイル型」がほぼ主流であることは間違いないでしょう。
実際、2015年のある調査によると、伝統的なウォーターフォール手法のみで開発を行っている企業はたった2%しかいないそうです。
要するに、アジャイル開発は今やどの企業でも実施されているのです。

アジャイル開発にはたくさんの利点がありますが、ユーザ中心設計分野の私達はそのやり方を調べて適応させていかなければうまくいきませんでした。


今後もアジャイル開発が主流であることは間違いありませんが、そのプロセスでUXリサーチをうまく活用するためには、少しの工夫と柔軟性が必要なので重要な点をおさらいしていきましょう。

ところで「アジャイル」って何でしょう?

話を進める前に、まず「アジャイル」について話す際の定義を明確にしましょう。
アジャイルはソフトウェア開発の手法の1つです。

アジャイルの手法は企業ごと、さらにはチームごとにやり方が異なりますが、全てに共通する価値観や原則がいくつかあります。

例えば、コードを迅速かつ継続的にリリースすること、チームやユーザの垣根を超えて協働すること、そして仕様変更に前向きに対応することなどです。

アジャイル開発チームは、職域を超えて「スプリント」と呼ばれる非常に短いサイクルでコードを構築することを目的としています。

ウォーターフォール型と呼ばれる従来型の開発手法では、発見調査や開発要件の定義、設計、テストといった工程の明確な区切りがありますが、アジャイル開発ではそのような工程ごとの区切りはありません。

ユーザ中心設計分野の私達にとって、アジャイル開発手法の導入は、ユーザを徹底的に調べたり広範囲にわたって発見調査を行ったりするのに、費やす時間がもはやないことを意味します。
むしろ、開発の開始に間に合うよう設計の詳細を把握する必要があるのです。

少し怖い気がする人もいるかもしれませんが、これは急速に変化し続けるチームとユーザのニーズに対応し、ユーザエクスペリエンスを改善する機会を常に発見して取り組むことができる、ということも意味します。

「リーン」とは?


「リーン」とは、「リーン生産方式」から派生した概念で、ビジネスにおいて幅広く使われています。効率と価値の向上、無駄の排除、システムとチームの設計に重点を置き、全力を注ぎます。

原則はアジャイル開発と似ていますが、「リーン」は全体的なビジネスにフォーカスしており、あらゆる業界で活用されます。

一方、「アジャイル」は主にソフトウェア開発の現場で使われることが多いです。

余談:その他の専門用語

少しややこしいのですが、「リーン・スタートアップ」と呼ばれる、別のプロダクト開発手法もあります。

リーン・スタートアップは反復的な検証サイクルを行うことがメインで、プロダクト開発の意思決定を方向づけする際に、各段階で得られた学びを活用します。

リーン、リーン・スタートアップ、そしてアジャイルは全く相反するものというわけではありません。
「継続的に検証を行う」というリーン・スタートアップの概念、「無駄をなくす」というリーンの取り組み方、「チームや作業工程を整理してフロー化する」というアジャイルの手法を組み合わせて活用する企業の例も数多く見られます。

アジャイル開発プロセスにUX改善をうまく組み込めないことを明確に主張している文書はたしかにありますが、大きなメリットもあります。UX改善をアジャイルにうまく組み込むために必要な、具体的な考察をお読みください。

アジャイルのためのUXリサーチ方法を決定する

未解決の課題に対する最適な答えを見つけるためにはどのUXリサーチ方法を採用すべきかを判断する方法について書かれた多くの著作があります。

特に気に入っているのがChristian Rohrerの要約(下の表で概説)です。この要約ではプロダクト開発サイクルでの「戦略化」「実行」「検証」の3つの段階における「目的」「アプローチの仕方」「適した手法」が紹介されています。

Christian Rohrerの3次元の意思決定フレームワーク

戦略化 実行 検証
目的 チームに新しい気づきを与え、
新しい方向性とチャンスを探し出し、
選びとること
リスクが少なく、
より使いやすい
デザインを伝え、
ユーザに合わせて
最適化すること
プロダクトのパフォーマンスをそれ自体または競合プロダクトと比較して測定すること
アプローチの
仕方
定性的および定量的 主に定性的
(形成的)
主に定量的
(総括的)
適した手法 フィールド調査、日記調査、アンケート、データマイニング、データ解析 カードソーティング、フィールド調査、参加型デザイン、紙のプロトタイプ、ユーザビリティ調査、デザイラビリティ調査、顧客宛のメール配信 ユーザビリティのベンチマーキング、オンライン評価、アンケート、ABテスト

 

彼の提言はまさにその通りではありますが、アジャイル環境で働く場合、リサーチに専念する時間は少なくなるので、時間がかかるリサーチを実施することはできません。
代わりに、比較的短い2週間程度のスプリントサイクルのリサーチを行う必要があります。

アジャイル環境においてリサーチ手法を選ぶ際に考慮することは変わりません。
考慮するのは以下の点です:

  • 解決したい特定の課題を絞り込み仮説を立てる
  • 「ユーザの傾向」と「行動理由」のどちらを探るのかを決める
  • リサーチに最も適切な「文脈」を検討する
  • ユーザの「ビヘイビア(行動)」か「アティチュード(態度)」)のどちらを観察すべきか考える 

しかし、アジャイル開発プロセスでは使える時間が限られているため、UXリサーチとうまく組み合わせるためにはいくつか調整する必要があります。

例えば、UXリサーチで扱う課題をできる限り小さな仮説に分解したり、従来のリサーチ手法のルールを柔軟に変更したりすることで、アジャイル環境においてもUXリサーチの質を維持することができます。

より小さな仮説

現行のブログプラットフォームに搭載するエディタ機能の新バージョンの開発中に、元のバージョンよりも使いやすいかどうかを確認したいとします。

従来のウォーターフォール開発で取り組む場合、新バージョンのエディターを完成させ、多くの機能を実装したうえで、新デザインが旧バージョンより優れたパフォーマンスを発揮するという仮説を検証するでしょう。

完成度の高いプロトタイプを作成し、新旧の使用感を比較する一連の競合ユーザビリティテストを行い、各ターゲットペルソナに複数のテストをするなど全プロセスに数ヶ月かけることもあるでしょう。

アジャイル環境では、全く異なるアプローチをします。
新デザインが「より良いパフォーマンスを発揮する」という仮説から始めましょう。
そうすれば特定の機能やユーザグループを中心とした複数の仮説に簡単に分けることができます。

ここで立てる仮説は、例えば「ドラッグ&ドロップ機能を実装すると、技術に詳しくないユーザでもブログを従来のものよりも30%簡単にレイアウトできる」さらに、「画像編集機能を提供したら、ユーザはサービス自体をより高く評価し、ブログに載せる画像の数が10%増えるだろう」というものです。

そうしたら、画像編集機能の開発を始める前に、仮説の最初の要素であるドラッグ&ドロップ機能のプロトタイピングおよびテストに着手することになるでしょう。

柔軟性の重要性

細かい要素を検討するのに加え、リサーチを活用して最大限の結果を出すために、リサーチの手法を工夫する必要もあるでしょう。

例えば、さまざまな開発フェーズにあるプロダクトの異なる要素に関する仮説をいくつか立てているとします。
あるインタラクションの特定のユーザビリティをプロトタイプで検証したいと思うでしょうし、既存の機能があまり使われていないのかも探る必要があるでしょう。
通常なら、ユーザビリティを検証するためのユーザビリティテスト、既存の機能が使われない理由を探るためにインタビュー、とそれぞれを実施します。

一方、アジャイル環境でのリサーチでは、ユーザビリティテストの最後に何項目かのインタビューを追加してしまいます。
ユーザビリティテストもインタビューも、特定のインタラクションに限定した内容で実施するため、2つを組み合わせることができるはずです。

また、より速いタイムラインで推し進める必要があるため、リモートやモデレート無しのリサーチを採用しています。
ユーザと直接対面する調査に対する反対意見もありますが、インタビューをしないか、テレビ会議でインタビューをするか、の二択でしたら、「テレビ会議でも調査を実施する」方が正しい選択です。

綿密な準備に基づいたリサーチに長年慣れ親しんできたような人たちでも、アジャイルのような高速で行う手法に慣れる方法が他にもたくさんあります。

例えば、特定のインタラクションのユーザビリティをテストする際、モニタを公募せず、プロジェクトの詳細を知らない同僚にモニタをお願いしてもよいでしょう。

得られた結果が調査回答として適切かどうかを、統計的な観点で心配することもありません。
調査全体の発見点レポートを書き上げるのではなく、短時間のミーティングを設定しましょう。
ミーティングでは、メンバーそれぞれが気づいた重要ポイントを共有し、そのポイントだけをドキュメント化するとよいでしょう。

ユーザを集めて定期的に実施するユーザビリティテストやインタビューなどは、先を見越して計画することがとても重要で、うまく運用する秘訣です。

参加者のスケジューリングは時間がかかりがちなので、継続的なスケジュールをセッティングすると効率的です。
リサーチに適したモニタを見つけてスケジュールを組む時間がない、という口実もなくなります。
非常に多くのものが絶え間なく変化する状態にあるので、間違いなく
常に何かしら調査することになるでしょう。

UXリサーチの成功の核心は、「特定の環境における検討事項がなんであれ変わらない」ということは覚えておきましょう。
手法がいくら創造的で柔軟性にあふれていたとしても、それでは品質の問題を解決することはできません。しかし、チームにとって最も意味のある方法で、価値あるインサイトを得ることができるのです。



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