オリコが挑む、リサーチを起点とした一気通貫のデジタルマーケティング
デジタルマーケティングにおいて「とりあえず施策から始める」ことのリスクは、現場の迷走にあります。さらに深刻なのは、戦略・リサーチ・制作が別々のパートナーや部署で断片的に進められ、初期の戦略が実行フェーズで消えてしまう「分断」の問題です。
今回、株式会社オリエントコーポレーション(以下、オリコ)の法人ソリューション企画部様が挑んだのは、UXリサーチを施策の起点に据えた顧客理解から施策実施まで「一気通貫」で行うプロセスでした。施策の立案において常に立ち返ることのできる共通の指針はいかにして作られたのか。戦略立案から施策実行まで分断のない支援が実現した成果を紐解きます。

【プロジェクトメンバー】
株式会社オリエントコーポレーション 法人ソリューション企画部(当時)金子 昂平様(写真左)
株式会社オリエントコーポレーション ビジネスソリューション開発部 課長代理。督促業務や法人営業、クレジットカード事業推進を経て現職。営業現場での経験を活かし、マーケティングと現場視点の両立を意識したプロジェクト設計やKPI策定に携わる。データに基づく意思決定と部門を横断した推進で、施策の実行力向上に取り組んできました。
株式会社オリエントコーポレーション 法人ソリューション企画部(当時)濵田 駿也様(写真左から2番目)
株式会社オリエントコーポレーション ビジネスソリューション開発部 課長代理。法人営業やDX推進業務を経て現職。営業現場で培った経験とBtoBマーケティングの知見を活かし、プロジェクトリードや施策設計に携わる。現場視点とマーケティング視点の両立を強みに、部門を横断した推進を通じて、マーケティング施策の実行力向上に取り組んでいる。
株式会社メンバーズ ポップインサイトカンパニー 田村 菜緒(写真右から2番目)
UXデザイナー5年目。ペルソナやカスタマージャーニーマップを用いた顧客体験の可視化に伴走。現場と一体となってユーザー理解を深め、マーケティング施策の起点となる戦略立案に貢献。
株式会社メンバーズ ビジネスイー・カンパニー 村上 幸平(写真右)
媒体社、SaaS企業、広告代理店を経てメンバーズへ。アプリマーケやWeb広告運用の豊富な知見を強みに、現在は常駐支援にてオフライン・オンラインを跨ぐ戦略設計から実行まで担当。「あたかも社員のように」内部からマーケティング全体のPDCAを回し、成果向上に寄与している。
最初は「いらないんじゃない?」と思っていたペルソナの作成
田村:まずは、プロジェクト開始当時のことを振り返りたいのですが、村上から戦略立案の際に「ペルソナやカスタマージャーニーマップ(CJM)を作ろう」と提案があったとき、どう感じられましたか。
濵田様:正直に言うと、最初は「いらないんじゃない?」と思っていました(笑)。私が最初に話を聞いた当時は、こうした手法に馴染みがなかったので、具体的にどのようなものなのか、何に役立つのか全くピンときていなかったんです。
金子様:私としても、カスタマージャーニーマップやバリュープロポジションキャンバス(VPC)も実施したことがなかったですし、ふわっとこういうことをやるんだろうなというイメージはありましたが。
濵田様:実は、当初自分たちでもカスタマージャーニーマップを作れるのではと考えて、当時のメンバーが作ってみたんですよ。
田村:そうだったんですね。どうやって作ったんですか?
金子様:商品のことを詳しく知っているメンバーが作ったんですが、インタビューなどは特にせずに作っていましたね。だいたいの客層とかを決めて契約に至るまでのジャーニーを描いていました。ただ、想定の域を出ないんですよね。
濵田様:最終的にB2B決済サービスの営業担当者にも見せて調整したんですが、「売掛金の経理部長」がいて「40歳で保証に悩んでいます」みたいな…。納得感がないわけではないけれど、ありきたりなものができたなという感じで、合っているかどうかの確証がないし、具体的にどう使っていいかもわからなかったですね。
濵田様:また、私は以前別のプロジェクトで作られたカスタマージャーニーマップを見たことがあって。色々な部署が集まってユーザーが10代から80代ごろまでどのような流れになるかを描いたものだったんですが、「18歳だと学費ローンを借りる」「20歳で車を買えば自動車ローン」のようにすごくプロダクトアウトだったんです。この時はこの商品をプロモーションすべきだ、みたいな。それが、本で読んだカスタマージャーニーマップと違っていたんです。
濵田様:そんな中で、提案をもらっていたメルマガやホワイトペーパーの施策にも使えますよと村上さんに言われたので、ちょっと試しにメンバーズさんとやってみようかなと。
田村:それで実際にペルソナを作ろうとなったんですね。その時にはインタビューせずに作ろうとはならなかったんですか。

濵田様:インタビューなしで中途半端にやるくらいなら、せっかくだからもうちゃんとやろうとなりましたね。
田村:「ちゃんとやろう」と決めた背景にある、当時の課題をもう少し深堀りさせてください。具体的にはどのような悩みがあったのでしょうか。
金子様:私自身営業を経験していますし、10年以上営業を経験したメンバーがいるので「こういう人がペルソナだろうな」という想定は、当然ながら頭の中にはぼんやりあったんです。ただ、それをアウトプットする術がなかった。個人の知識としてはあっても、可視化したことがないから外に出せない状態でした。また、調査やバリュープロポジションキャンバスのノウハウもなかったので、どのように施策に活かせばいいのかが見えませんでした。共通認識以前に「可視化する技術」がなかったことが一番の課題でしたね。
濵田様:組織としての調整が必要な部分もありました。デジタルマーケティングを 進めてきた中で、営業部門との連携をより一層強化していく必要がありました。いかに現場を巻き込みながら進めていくのかという課題もありました。
濵田様:加えて、戦略面でも営業を巻き込んでやっていきたいという課題感を持っていました。広告を配信しPDCAをまわすにしても今までは「売掛金保証」のようなビッグワードでコンバージョンが取れていましたが、さらに拡大していくためにはオリコだからこそのキーワードで勝負していく必要があったり、広告の戦略も広げていく必要があります。その中でどのように設計し施策を組み立てて行けばいいか、私たちだけではわからなかったので。
リサーチがもたらした自社の強みの可視化と組織の共通認識

田村:今回オリコさんのユーザーさんと、競合のユーザーさんの2セグメントにインタビューをしました。インタビューをしてみての発見などはありましたか。
村上:強みは確信しましたよね。
濵田様:そうですね。「オリコは金融のデパートだ」と言われるユーザーさんがいらっしゃったんです。でも、私は金融といえばメガバンクが第一想起されやすいですし、カード業界ではオリコ以外にも大手が複数存在するという認識を持っていました。その中で「信販」という業界自体がまだ十分に認知されていないのではないかとも感じていたのですが、意外とインタビューを聴くと自社ユーザー、競合ユーザーともに「オリコの、金融として安心できるところがいい」と言われていて、そういうところが強みなんだと初めてわかりましたね。
濵田様:他にも「粘り強くフォローしてくれる」「UI/UXに改善の余地がある」という点は以前から感じていたのですが、自社の加盟店(※サービスを導入する法人顧客)にインタビューした時にやはりそういった声が上がってきて、共通課題として認識できました。
田村:金子さんはいかがでしたか。
金子様:私の場合は、意外な発見というよりは、もともとあったイメージが確信に変わった感じでした。「与信力が高い」「フォロー体制が優れている」という強みや、逆に「UI/UX に改善の余地がある」弱みですね。それらを可視化することで今後進めようとしているデジタルマーケティングの施策に広げられたのはよかったと思います。

田村:インタビュー後は、その内容をKJ法で分析し、ペルソナやカスタマージャーニーマップ、バリュープロポジションキャンバスを構築するワークショップを行いました。あえて時間をかけて、ワークショップ形式で実施した価値はどこにありましたか。
濵田様:そもそも、納品物をもらうだけではなくワークショップ形式でやるべきだと思っていましたし、実際にやってみてすごく良かったです。自分たちで作らないと「納得感」が得られないですし、「共通認識を作る」という意味もあったからです。
濵田様:ワークショップの際には自分では気づかない観点もあるので、サービスに関係する人だけではなく、営業の方や商品企画の方にも参加をしてもらいました。実体験を踏まえた意見を出してもらうことで、最終的なアウトプットに加盟店に寄り添った声を反映できたと感じています。

田村:かなり幅広い部署から集まっていただきましたが、その後の意思疎通などに変化はありましたか。
金子様:そうですね、オブザーバーとして参加していた部署もあり、彼らが各部門に内容を持ち帰ってくれています。私たちの部門外の人も、今回作成した成果物を導入して施策を検討してくれているので、その点は非常に良かったと思っています。
田村:今回、ワークショップと並行して村上には「競合調査」を進めてもらいました。実際にその結果をご覧になって、リサーチでの成果物と合わせての納得感はいかがでしたか。
濵田様:両方必要だったなと思います。村上さんがまとめてくれた競合調査は、商品スペックやマーケティング施策など、いわば「商品の外から見える景色」を網羅したものでした。一方で、ワークショップで作成したペルソナやカスタマージャーニーマップ、バリュープロポジションキャンバスはもっと「金融機関としての信頼感」や「営業担当者の粘り強いフォロー」といった「内側に入り込んでいるもの」です。外側の状況も整理でき、かつ、内側のユーザー情報も整理ができているという状態で次の施策を考えられるようになったのは非常に大きかったですね。
膨大なアイデアを迷わず形に変える、ペルソナがもたらした一貫した判断の軸
田村:ワークショップ実施後は、施策に落とし込むフェーズになりますが、どのように進められましたか。
濵田様:非常に大変でしたね(笑)。ワークショップでアイデアの種がたくさん得られたので、全部洗い出したうえで、どのタイミングでどの予算で実施するかといった優先順位付けを行わなければなりませんでした。
濵田様:具体的には、まずはワークショップ時にカスタマージャーニーマップをもとに出したアイデアを全て洗い出し、さらに不足している視点がないか検討しました。顧客が認知し、興味・関心を持ち、比較・検討を経てコンバージョンへ至るファネルの中で、オリコにはどこが足りなくて、どこから着手すべきなのか。どこから着手すべきなのか、まずは検討フェーズごとの優先順位を設定しました。
濵田様:そのうえで、ホワイトペーパーなどアイデアを具体化する施策を検討し、そちらの優先順位を「インパクト・緊急性・実現性」で整理したうえで、期末までの実行プランに落とし込む。この整理が非常に大変でしたね。
濵田様:ただ、この整理をきちんとしたからこそ、WEBサイトの制作やメルマガの配信、ホワイトペーパーの作成、導入事例の作成などのプロジェクトが進んでいます。全部、ワークショップで作成したペルソナなどが起点となってコンテンツや施策の「訴求軸・目的・内容・形式」などを検討・具体化している形です。
田村:作成した後の活用が非常にスムーズだと感じていますが、うまく活用できている秘訣はあるのでしょうか。
濵田様:努力と才能です(笑)。というのは冗談ですが、やはりしっかりインタビューを行って、全員が納得できる形でまとめられたことが大きいですね。
濵田様:施策の優先順位についても特別な秘訣はなく、コンバージョンに近いところやユーザー体験のファネルの中でどこが弱いのかを見極めるという「当たり前のこと」を地道にやった結果ですね。その作業は大変でしたけど。
田村:納得感がある形で成果物が作れたからこそ、地道なリストアップもしっかりできて施策に繋がっていっているんですね。

濵田様:そうですね。正直新たな発見がめちゃくちゃあったかというとそうではなくて、もともと感じていたものが明確になったというところが多いんです。こういう課題があるのでは?とふわっと思っていた点がより確信をもって課題だとわかり、強みも確信できたことで、方向性が間違っていないと思えるようになり、施策に活かすことができています。
村上:ホワイトペーパーで一番活用していると思いますね。構成案を作る際にペルソナを起点にしたことで、私はこっちの方がいいと思う、これ載せなくていいんだっけ、みたいな議論もなくスムーズに進みましたし。
金子様:そうそう。ホワイトペーパーの制作会社のアウトプットも、こちらからのアウトプットも両方工数が削減されましたね。
戦略と現場が一本の筋で繋がる価値。分断のない支援がもたらす安心感とクオリティ
田村:メンバーズとして、戦略から施策の実行まで一貫してご支援できている点についてはどう感じられますか。
金子様:意思疎通が非常にスムーズです。商品知識もメンバーズ社内で共有されているので、私たちが一から説明するコストが削減されて助かっていますね。
金子様:あと、地味ですがBacklogでタスク管理が一本化されているのが実はすごく効いています。ベンダー毎にツールがバラバラになることが一番のストレスなので。共通のツールがあるだけで進めやすいです。
濵田様:チーム内のリソースが少ない中、コミュニケーションコストを抑えられるのは大きいですね。作ったペルソナをもとに一緒に施策を展開するにあたっても、理解度が深い状態からスタートができます。また、出てくるアウトプットもペルソナを踏まえて作っていると信頼できますね。

濵田様:案件によっては別のベンダーにお願いしているものもあって、ペルソナを事前共有して制作物を作ってくださいと依頼をするんですけれど、本当にどこまで理解してやってくれているのかは正直わからないんですよね。かといって、こちらも本当にペルソナに合致しているか入念に確認する時間も取れないので、正直不安だなというところはあったりします。そういった意味でも、同じメンバーズさんに依頼する方がスムーズだしクオリティも高いのではないかと思っていますね。
「とりあえずやってみる」の前に立ち止まる勇気を
田村:最後に、同じような課題を抱えている企業の方々へ、メッセージをお願いします。
金子様:うちの会社も今までそうだったんですが「とりあえずやってみるか」と始めてしまうケースって非常に多いと思うんですね。それで、とりあえずやってみたけれど、なんだかわからないとなる。その時に原点に立ち返る、もしくはそもそもの施策前の企画段階で立ち止まって調査をすることで、自分たちがどのようなお客様を抱えていて、どのようなステークホルダーが周りにいるのかを可視化することが重要だと思います。
濵田様: 法人ソリューション企画部(当時)ではデジタルマーケティングを1年ほど前に始めて、黎明期なのでカスタマージャーニーとかきちんと作る方がいいとなりましたが、デジタルマーケティングの黎明期の会社だけでなく、今まで作ったことがない人、昔作ったけれどどうかなと思っている人は改めて作った方がいいと思いますね。
濵田様:最初は私自身、やる意味あるのかなと思っていましたが、作ってみた結果、作らなければホワイトペーパーの作成はできなかったし、WEBサイトの設計もバラバラになっていたのではと感じています。
濵田様:あと、やはり自分たちでやるのは 負担が大きく、納得感も出ないと思っています。今回はけっこう田村さん(POP)が入念に説明してくれましたね。ワークショップで営業を呼んだ方がいいのか質問をしたんですが、Day1からDay5の中で特にDay2が重要なので絶対に営業を呼んだ方がいい、なぜなら……とプロジェクトの目的や意味も踏まえて伴走してくれました。

田村:ありがとうございます。では、最後にこれからの展望をお聞かせください。
濵田様:B2B決済サービスとして高い目標を掲げている中で、従来のやり方だけでは拡大できるポテンシャルも限られていると考えています。また、競合他社が飛躍的に業績を伸ばして来ている中で、オリコとしても同様に他社をしのぐ勢いで伸ばしていくために、新たなチャネルや施策にチャレンジしていかなければならないと考えています。その一つとしてWEBでのマーケティングがあると思っていますので、着実に費用対効果が得られるように施策を実施していきたいと考えています。
「ペルソナやカスタマージャーニーマップを作る意味があるのか?」と当初は疑念を感じていたものの、プロジェクトを通して「これがなければホワイトペーパーの作成ができなかった」「なければサイトの設計がバラバラになっていた」と価値を実感していった――。濵田様と金子様の率直な言葉からは、リサーチを施策の起点に据えることの重要性が、実感を伴って伝わってきました。
戦略立案のプロセスにおいて、まずは自分たちの手で「共通の設計図」を定義し、それを指針として全ての施策を一貫して形にする。「一気通貫」の支援の本質は単なる効率化ではありません。クライアント様が大切にされている顧客視点や戦略の意図を、実行フェーズで分断させることなく成果へと繋げることにあります。
私たちはこれからも、ポップインサイトおよびメンバーズの力で、戦略立案から施策実行まで分断のない支援を実現いたします。
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