Webマーケにおける「行動観察の3つの役割」とは


Webマーケティングやウェブ解析と聞くと、近年のビッグデータ流行もあり、「定量データや数値をいかに分析するか」という発想になりがちです。しかし、その真逆にある「1人1人のユーザの行動観察」というアナログな手法も、大きなビジネス成果を生む可能性を秘めています。

また、定量データ分析は統計などの非日常的なスキルが必要ですが、ユーザ行動観察は誰しもが日常的に行っている対人コミュニケーションスキルの延長線上にあるもので、万人にとって習得しやすいスキルである点も見逃せません。

行動観察のイメージ

そもそも「行動観察」とはどのようなものか

新しいマーケティング手法として注目を浴びている行動観察ですが、意外にもその基礎は学問、それもビジネスからは離れていると考えられている人文科学の世界に根差しています。

特に深く行動観察と関係しているのは、人間のさまざまな生活様式を研究する学問である文化人類学です。中でもとりわけ、文化人類学の用語である「エスノグラフィー」という考え方と行動観察の間に深い関わりがあります。
※エスノグラフィー:人々が実際に活動している現場を観察し、理解するための考え方のこと

行動観察の価値は「文脈」までつかめること

ウェブマーケティングにおける行動観察の主役は「ユーザ」です。ある状況設定に従って行われるユーザの自発的な行動を観察することで、「仮説」を導き出すことが目的です。自然な状況を再現するため、行動観察中は原則として、ユーザの普段通りの自由な行動を観察することに集中します。この自由さによって、「文脈」の中でのユーザ行動の観察が可能になります。

「文脈」とは何を指すのでしょうか?たとえば、30代女性がこれまで使ったことのない「化粧水」を購入検討するとします。その際には、自社商品以外にも、同価格帯の別商品を検討(競合検討)したり、口コミサイトの閲覧(口コミの確認)をしたりするはずです。また、その化粧水をどのように認知したか(認知経路)、どの段階でその化粧水の公式サイトを見ているかなどもウェブ改善の重要なカギになることがあります。これらの要素はすべてユーザの「文脈」です。

ユーザの自由な行動を見ることができる行動観察では、こうした「自社エリア外でどのように活動しているか」を含む「文脈」を把握することができるのです。

逆に、行動観察以外に「自社エリア外の行動」を正確に知ることができる手法はほとんどありません。たとえばアクセス解析であれば、自社サイト内でのユーザの動きはつぶさに把握できるものの、離脱の理由や競合サイトについてどう思っているかなど、「文脈」「背景」の理解の直接的な助けにはなりません。行動観察の強みは、「文脈ごと理解できる」という点にあるのです。

Webマーケティングにおける行動観察の3つの役割

行動観察の役割は、大まかに「ユーザ理解」「現行サイトの課題把握」「プロトタイプの有効性検証」の3つに分けられます。まずは事例を通じて具体的に見てみましょう。

事例 ペット向け保険での行動観察例

同一プロジェクトの中で複数回行動観察を行うこともしばしばあります。ペット向け保険の商品紹介から申し込み窓口までの機能を備えたウェブサイトをリニューアルする際に行われた行動観察では、合計2度の行動観察を通じて、ユーザ理解、現行サイトの課題把握、改善案の有効性検証の全てを確認しました。

ペット向け保険の行動観察例

第1回目の行動観察

初回時の対象は、リニューアル前のサイトと、競合サイトでした。
ユーザ理解を得ること」と「現行サイトの課題把握」を目的に行動観察を行い、下記のような発見が得られました。

ユーザの理解 ユーザは自分の飼っている犬種・猫種が具体例として掲載されていない場合、閲覧意欲を喪失してしまう
現行サイトの課題把握 ・具体例とともに掲載されている犬種・猫種の数が少なく、特に一部メジャーな犬種の掲載がなかったため、ユーザに「途中で見るのをやめよう」と感じさせてしまっている
・申し込み時に愛犬・愛猫の写真アップロードを求めていたが、適当な写真を用意していないケースが多く、そこで離脱を招いている

第2回目の行動観察

引き続く2回目では、初回時に得られた「犬種・猫種の数が多い方が顧客の閲覧意欲を高く保てる」という仮説に基づき、犬種・猫種の掲載数を増やしたサイトプロトタイプを用意し、プロトタイプを対象として行動観察を実施しました。

改善案の有効性検証 ユーザは自分の買っている犬種・猫種専用のページを見つけ、そのページを集中的に閲覧、閲覧後の申し込み意欲も初回時に比べ改善した

初回の行動観察では、競合よりも自社が優れていると回答したのが5名中たった1名だったのに対し、2回目の行動観察では3名中3名が自社に軍配をあげたのです。

行動観察の役割1:ユーザ理解を得ること

行動観察の役割の根幹に位置するのが、「ユーザ理解を得ること」です。上の例では、「自分が飼っている犬種・猫種にピンポイントの情報が掲載されていないとみる気をなくす」という点が「ユーザ理解」に相当します。

これは行動観察前には全く気付かれていないユーザ心理で、行動観察抜きには見いだせなかったものです。このように、「ユーザはこんな風にサイトを見ているんだな」「こういう情報を求めているんだな」というユーザならではの視点を明らかにすることが、 行動観察の目指すユーザ理解です。

行動観察の役割2:現行サイトの課題把握

ユーザがサイトを利用している様子を観察することで、公開中のサイトの課題を明らかにするのも、その役割の1つです。上記の例であげたようなコミュニケーションレベルの気付きから、「本文のフォントが小さくて見づらい」「FacebookなどSNSへのリンクアイコンが大きく、顧客のことを考えていないような印象を受ける」といったUI的要素の強い指摘まで、実際に利用されているサイトに関する、さまざまな課題が把握できます。

公開中のサイトであれば、自社サイトだけでなく競合サイトも対象とできるため、競合サイトの課題を通じ、相対的に自社サイトの課題を浮き彫りにできることもあります。

行動観察の役割3:改善案の有効性検証

開発途中のウェブサイトやアプリなども、行動観察の対象とすることができます。行動観察を実施すると、実際にサイトをリリースする前の段階で「開発陣が思いもよらない重大な課題」を明らかにできることがあります。

上の例の場合は、「犬種・猫種の掲載数を豊富にした改善案」の有効性を検証しました。幸い改善前に比べて大幅な印象改善が見られ、改善案に大きな課題は残されていなそうであることが分かりました。

大きな課題を早い段階で見つけ、手遅れにならないうちに対策を立てる助けとなるため、サイトコンセプトや機能要件を定めている途中の段階での行動観察は非常に有効です。
※簡単に行動観察を実施する方法として、簡易ユーザテストをご紹介しておりますので(P49~)、是非ご参考下さいませ!
▽今日から出来る!ユーザテスト入門 
簡易テスト

▽動画で簡易ユーザテストのサンプルがご覧いただけます

まとめ

行動観察がWebマーケティングにどのような役割を持つかを紹介してきましたが、ここでまとめます。

  • 行動観察を行うことで、サイト利用中の課題だけでなく、その背景にある「文脈」までも把握できる。
  • 行動観察の役割は「ユーザ理解」「現行サイトの課題把握」「改善案の有効性の検証」の3つに集約できる。

 

※また余談ではありますが、弊社のユーザテストサービスでは、上記のような行動観察の役割・エッセンスを意識し、その手法や工夫を取り込んでおります。


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池田 朋弘

池田 朋弘

株式会社ポップインサイト代表取締役CEO。株式会社ビービットで、ユーザテスト・ユーザ行動観察を軸にしたコンサルティングで、売上1.5倍・問合せ10倍等の実績を出す。二児の父。「ユーザ視点をもっと間近に」をミッションに日々奮闘中。


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