累計40名の対話とAIで挑む、モバオク流・新規事業開発
2004年のサービス開始以来、20年以上にわたりインターネット・オークションサービスを提供してきた株式会社モバオク。同社がいま取り組むのは、既存の事業の延長線にはない「キャリア自律支援」という新領域です。インタビュー前編ではなぜ本業と離れた領域へ挑むのか?株式会社モバオク取締役COOの小田切航平様に「サイドビジネス的な新規事業の作り方」と、UXリサーチャーオンデマンド(UXRO)にてプロジェクトメンバーとして伴走するポップインサイトの役割を伺います。

【プロジェクトメンバー】
株式会社モバオク 取締役COO 小田切 航平様(写真中央)
事業統括を担い、プロダクト・マーケ・分析を横断しながら新規事業開発を推進している。
株式会社メンバーズ ポップインサイトカンパニー シニアUXデザイナー 高岩 仁(写真左)
SIerを経てポップインサイトへ。関心の対象を「システムの正誤」から「ニーズの発見」へ転換。ユーザーの本音を経営層から現場まで広く共有し、共感に基づいた改善・構築を行うことで、サービスの価値向上に寄与している。
株式会社メンバーズ ポップインサイトカンパニー アシスタントUXデザイナー 尾島 佑佳(写真右)
UXデザイナー5年目。新規事業やサービス開発にかかわり、ユーザー調査をもとに課題整理から施策検証まで担当。曖昧なテーマを構造的に整理していくことに面白さを感じている。
UI/UX改善の積み重ねから自然と本質的な課題・提供できていない価値の探索へ
高岩:モバオクさんのご支援を始めてもう6~7年になりますね。当初はサービスのUI/UX改善がメインでしたが、ここ数年は新規事業への支援にシフトしてきています。その背景を教えてください。
小田切 様:一言で言うと、自然とそうなったんですよね。最初はユーザビリティテストなどで「マイナスをゼロにする」改善を積み重ねていました。それもめちゃくちゃ重要で、最低限やるべきことなんですが、インタビューなども重ねていくうちにそもそも本質的にお客さんが困っていることや解決すべき課題は何なのかという話になっていったんです。
高岩:なるほど。
小田切 様:高岩さんからいろいろな提案をもらって、ペルソナを作ったり、カスタマージャーニーマップを作ったりしながら議論を深めていきました。既存の延長ではない「まだ提供できていない価値」を探していくということをやっていたので、その中で自然と今の形になりました。
「キャリア自律支援」の新規事業の立ち上げ
高岩:その中でキャリア自律支援のプロジェクトが出てきたわけですが、モバオクさんの既存事業とは全く領域が異なりますよね。マネタイズの難易度も高い中で、なぜこの領域に焦点をあてたのでしょうか。
小田切 様:キャリア自律支援は、正直に言うと私が趣味でやりたがったようなもので(笑)後付けの理由だと、Googleの20%ルールに近い感覚です。新規事業を立ち上げるにあたって、よくサイドビジネスから始める方がいいと言われますよね。本質的には、自分たちの強みの延長で戦うしかないけれど、それを誰に・どう提供するかを、普段の活動から離れたところで試してみるのが重要だろうと思ったんです。
高岩:そういった活動が企業で認められているのは素晴らしいです。
小田切 様:私の意識は本当にサイドビジネスで始めた形ですよ。本職はそのままで、同じようなところに興味・関心のある人たちで週2回とか集まって、お互いの得意分野を生かして上手くいけばそちらにシフトするイメージですね。なぜなら、大体上手くいかないから。それを見越したうえでサイドビジネスという意識で始めたんです。ポップインサイトさんもメンバーの一員として一緒に先頭を走ってくれている感じでありがたいです。

高岩:「キャリア自律」を支援しようと思ったきっかけは何だったんですか?
小田切 様:マネージャーとしてメンバーのキャリアに向き合う中で「もっとこうしてあげれば上手くいくのに」という課題を感じていたんです。一人ひとりに向き合うことはできるんですけど、どうしても属人性(担当者への依存)が高くなってしまうし、もっと仕組みで解決できないかなと思ったのがきっかけですね。
AIで作成したプロトタイプと40名のインタビューでの仮説検証・探索
高岩:キャリア自律支援のプロジェクトを進めるにあたっては、弊社のキャリアコンサルタントの資格を持つメンバーに情報をインプットしてもらいながらリサーチをかけていきましたね。
小田切 様:自分の周囲に課題を持っている人はいるものの、本当に世の中に同様の課題を感じている人がいるのかなというのと、自分の周囲で見つけていた解決策の仮説が本当に解決につながるかというのを、とにかくいろいろな人に聞いて確かめようと。累計で40人弱にインタビューをしてもらいました。

小田切 様:実際にAIでプロダクトを作って、評価するということもやりましたね。最初はキャリアに困っている人たち5~6人に話を聞いて、そのうえでAIで作ったプロダクトで2回ほどPoC(アイデアの実現可能性を確かめる工程)を実施しました。聞いてもわからないことはプロダクトを作って試してもらう。そういう検証のやり方を工夫するのは必要かなと思いましたね。
高岩:検証の工夫でいうと、実際にちょっと行き詰ったなと思ったタイミングはありましたよね。その時に、とりあえずその人の人生をいろいろ聞いていけば何か分かるのではと、かっちりしたインタビューガイドは用意せずに話を聞いていく中で、アイデアが見つかっていくというのもありましたね。
小田切 様:そうですね。そこからライフラインチャート(人生を時系列にしたグラフ)を作ってインタビューをするというアイデアが出てきてインタビューの型もできていきましたよね。
高岩:インタビューをたくさん行ったことで、インサイトもいろいろ見つかりましたね。
小田切 様:普通、自分の人生をそんなに深く聞かれる機会ってないじゃないですか。でも、普通にインタビューするだけで皆さんすごく楽しそうに、色んな話をしてくれる。これ自体が価値なんだという「インサイト」が見つかった手ごたえがありました。これを拡張していけば行けるぞ、みたいな。

小田切 様:最近はペルソナの話もしていて、キャリア自律支援の難しいところは社会人全員がターゲットなのに、これだというサービスがないところだなと思っています。母数が多いと儲かるという話もありますけど、母数が多いからターゲットが絞り込めず、いろいろなペルソナがいる状況だなと思うんです。
高岩:キャリアを考えている人が少ないというのもありますよね。そもそもキャリア・技術を上げたいという思いがないと、実際の行動に移さないので、難しいよねという議論もよくしました。
小田切 様:そうですね。今は、ペルソナを4セグメントに分けていて、例えば「会社最適化マシーン」と名付けているセグメントだと、会社に合うように最適化しておけば問題ないという狭いところしか考えていなかったりするんですよね。そういう人たちは、キャリアの選択肢の幅が自分の中からだと出てこないので、いかに広げられるかとかは考えていますね。
高岩:どこをターゲットにするのかは引き続き議論していきたいところですね。この取り組みを通して小田切さんが特に意識されていることはありますか。
小田切 様:現在2回目のPoC(アイデアの実現可能性を確かめる工程)を経てプロトタイプをブラッシュアップ中ですが、何かをいきなり作り始めるのではなくて、課題の解決策になるかどうかを一回クイックに検証する、ということはすごく意識して取り組んでいますし、ポップインサイトさんと一緒に進められてすごくやりやすいなと思っています。
ポップインサイトは会社 対 会社を超えたプロジェクトメンバーとしての存在
高岩:私達がキャリア自律支援のプロジェクトに伴走する価値はどこにあると感じているでしょうか?

小田切 様:いわゆる外部委託として「これやってください」という感じではなく、一緒に同じプロジェクトに立っているプロジェクトメンバーのような感じで取り組んでくれたのが一番すごいなと思っています。
高岩:そう思っていただけて嬉しいです。UXリサーチャーオンデマンド(UXRO)の支援に入っているメンバーだけでなく、今回のプロジェクトで協力を依頼したキャリアコンサルタントの資格を持っているメンバーも、自分でいろいろ活動してそれをフィードバックするよう意識していたようです。
小田切 様:ありがたいです。そもそもキャリア自律支援のプロジェクトを立ち上げようという話が出たときに、詳しい人呼びましょうと言われて、キャリアコンサルタントの資格を持っている人を連れてきてくれたのも、たまたまかもしれませんが、すごいなと。
高岩:たまたまかもしれないですね(笑)もう少し、プロジェクトメンバーの一員というところを教えて頂けますか。
小田切 様:そうですね。何が課題で、どうすればいいのか、私が全部アイデアを考えていたというより皆と一緒に考えながら進めることができた点ですね。ポップインサイトさんのスタンスとしてもメンバーの一員のようなスタンスでいてくれると感じています。
また、インタビューの方法やプロトタイプを作って試す方法など、いろいろなやり方でお金をかけずに検証するためのインタビューができる部分でも助かっています。
高岩:ありがとうございます。
前編では「キャリア自律支援プロジェクト」の立ち上げと検証のプロセスを中心にお伺いしました。続く後編では「強みの再定義」をもとに、モバオクが長い歴史の中で培ったCtoCの知見を、いかにしてBtoBの新事業に繋げようとしているのか、もう一つの新事業の挑戦についてお話をお伺いします。
●導入サービス:UXリサーチャーオンデマンド(UXRO)
※ページ上の各情報は2026年4月時点のものです