「失敗を恐れるからこそ、リサーチをする」眠れる資産に挑むBtoB戦略
前編では株式会社モバオク取締役COO小田切航平様の熱量から始まった「キャリア自律支援」のプロジェクトについて伺いました。続く後編では、モバオク様が長い歴史の中で培ったCtoCの知見をいかにしてBtoBの新規事業へと転換させたのか。その背景とポップインサイトがUXリサーチの枠を超えて伴走する価値を紐解きます。

【プロジェクトメンバー】
株式会社モバオク 取締役COO 小田切 航平様(写真中央)
事業統括を担い、プロダクト・マーケ・分析を横断しながら新規事業開発を推進している。
株式会社メンバーズ ポップインサイトカンパニー シニアUXデザイナー 高岩 仁(写真左)
SIerを経てポップインサイトへ。関心の対象を「システムの正誤」から「ニーズの発見」へ転換。ユーザーの本音を経営層から現場まで広く共有し、共感に基づいた改善・構築を行うことで、サービスの価値向上に寄与している。
株式会社メンバーズ ポップインサイトカンパニー アシスタントUXデザイナー 尾島 佑佳(写真右)
UXデザイナー5年目。新規事業やサービス開発にかかわり、ユーザー調査をもとに課題整理から施策検証まで担当。曖昧なテーマを構造的に整理していくことに面白さを感じている。
自社の強みを徹底的に考え、BtoBへと舵を切った新規事業開発
高岩:後編では、直近で取り組んでいるBtoBの新規事業について伺いたいと思います。この事業を立ち上げることになったきっかけは何だったのでしょうか。
小田切 様:私は、新規事業を立ち上げる際に考えるべきポイントは2つあると思っていまして、1つ目は「自分たちの強みは何なのかを徹底的に考える」こと。そして、2つ目はその強みが「誰に、どのように届くと嬉しいのかをいろいろな角度で考える」こと。なので、私たちはこの2つのポイントをしっかり考えるということをやっています。
その中で、CtoCのオークションサービスを22年運営してきた私たちの強みが何かというと「リユースや二次流通の市場で、不用品に対して付加価値をつけ、かつ安心してやり取りできるプラットフォーム」を運営・構築できるところにあると考えました。
そこから、一般ユーザー以外にも、企業や権利者にも価値を提供できるのではという仮説が出てきたんです。
高岩:BtoBという新しい市場で提供できる価値を模索し始めたんですね。
小田切 様:そうですね。近年、スポーツチーム向けのイベントやオークションをやっていたのですが、それがアーティストやエンターテインメントの業界にも広がっていって。そこで「これってどういう価値なんだろう」と考えたんです。
考えていくうちに、サービスを提供する権利者自身が自分たちで二次流通を扱うという話なんだと。普通は「収益を上げるなら新しいグッズを作ろう」となりますが、そうではなくて、自分たちの取り組みの中で生まれるものに、二次流通をうまく活用して価値をつけることができる。
高岩:権利者自身が二次流通をコントロールできるところに価値を見出したんですね。
小田切 様:そうです。これまでは一般のユーザーが選手のユニフォームやサインボールを出品していました。でもそれだと、権利者にはメリットがないですし、お金儲けのための高額転売が横行すると、本当に好きなファンも「それってどうなの」と思ってしまう。
それに対して、我々がBtoBでプラットフォームを提供することで、権利者にもファンにもうれしいという形が見つかってきたんです。さらにそれは、スポーツやエンターテインメント以外にも、モノを作っているメーカーやブランドでも同じはずだよね、と。
高岩:メーカーやブランドも同じ課題を抱えていると考えたわけですね。
小田切 様:はい。メーカーやブランドでも自分たちが作っているモノの二次流通を自分たちでしっかりコントロールしたいという課題はありますし、そこに対して我々が役に立てるのではないかと思ったのが始まりですね。
高岩:いいストーリーですよね。

小田切 様:もう少し大きな視点でお話しすると、我々が解決したいのはよく言われる「日本全体で眠っている66兆円の資産」をどう世の中に役立てるように出していくかだと思っています。
これまで我々は個人に対して「眠っている資産を出してください」とアプローチをしていましたが、そもそも眠っている資産は企業が非常に多く抱えているんです。ただ、企業がいざ自分たちで二次流通を始めようと思っても、特にBtoB企業やECサイトを持っていない企業だとどう進めていいかわからない。
高岩:実際にいろいろな業界の会社さんとお話しされていましたよね。
小田切 様:そうですね。昨年半年ほどいろいろな会社さんにお話を伺いましたが、皆さん進め方が一番の悩みでしたね。そこで、我々が入って進め方の提案をしたり、我々のプラットフォームを検証の場として使ってもらうといったことを進めています。
AIは「納得感」をくれない。不確実な0→1に必要な「人間同士の議論」
高岩:新規事業を開発するにあたっては、我々との進め方も変わってきていますよね。
小田切 様:そうですね。今までポップインサイトさんにお願いしていたサービス改善のためのユーザーリサーチとはまた変わってきてますね。いろいろな企業に私が話を聞きに行くにあたっての、事前の競合調査などを依頼するようになっています。
高岩:担当の尾島も、AIを使って情報を整理するなど、効率的に幅広い情報を提供できるようにしていますね。小田切さんがある会社さんに話を聞きに行くとなった時に、事前にどこと取引されていて、競合はどこでといった情報をまとめて資料としてパッとお出ししたり。
小田切 様:BtoBだと今まで全然知らなかったような業界の人に話を聞きに行ったりもするので、デスクリサーチをしないといけない量が増えたので助かっていますね。
高岩:デスクリサーチだけであればAIでもできる時代ですが、あえてポップインサイトのリサーチャーが介在する価値はどこにあると思われますか。
小田切 様:リサーチする切り口と、議論ができるところですかね。AIはリサーチする切り口は指示したものをそのまま出してくるわけじゃないですか。それを、ポップインサイトさんは担当者それぞれの切り口で調べてまとめたうえで、これが良いんじゃないか、こうした方が良いんじゃないかなど論点もあげてくれるので議論ができる。
また、リサーチする切り口に関しても、ポップインサイトさんは我々の事業のコンテキスト(文脈)を理解したうえでリサーチしてくれるのがありがたいですね。
尾島:AIでリサーチする中で、あまりいい感じのものが出てこないなというときは、「こういう視点あるでしょ?」と、その部分を補強するようなデータも探すよう指示して使っていますね。それで集めたデータをまとめて「私の考えはこうなんですけど」とモバオクさんに提示するようにはしています。
小田切 様:AIだと何を聞いても「いいですね」と肯定されがちですが、ポップインサイトさんは、納得いかないときはしっかり意見を言ってくれる。それもAIではなく人間だからこその価値だと思っています。

高岩:最近ではAIを使ってのリサーチだけでなく、リサーチの枠を超えてプロジェクトの推進(PM/PdM)としての伴走も始まっていますね。
小田切 様:そうですね。事業の引き合いが増えてリソースが足りなくなっている中で、営業側と制作側を分けてしまうと説明コストがかかりますし、説明ができたとしても解像度の差が出てしまいます。
リサーチや営業で聞いてきた情報や感じたことをダイレクトに伝えていきたいと思う中で、最初から一緒に一気通貫で制作するところまでお願いできれば、質もスピードも担保できると思いご依頼していますね。
リサーチは組織の「カスタマーサポート」挑戦のハードルを下げてくれる存在
高岩:AIでのリサーチや、プロジェクト推進(PM/PdM)とご支援の幅が広がっている中で、ベースとしてはUXリサーチオンデマンド(UXRO)のサービスを6~7年継続いただいています。長くサービスを継続いただいているのはどうしてでしょう。
小田切 様:ポップインサイトさんは「誰が顧客で、何に価値があるのか」を常に問い続けてくれて、かつ、それを定性的・定量的にファクトで示してくれる存在だからですね。
なので、私の中では企業にとっての「カスタマーサポート」と同じくらい不可欠な存在だと思っています。新しいことを試したり、施策の検証をするとき、本当に価値があるのかリサーチをする機能は必要不可欠なんです。
ビジネスサイドだけで「これをやりたい」と考えていると、どうしても視野が狭くなりがちですが、ポップインサイトさんは世の中全体という広い視野で「こうすべきですよ」と提示してくれるので、なくてはならない存在ですね。
高岩:ありがとうございます!そう言ってもらえると嬉しいです。UXリサーチャーオンデマンド(UXRO)でのご支援を継続させていただいている中で、何か変化は生まれましたか。
小田切 様:サービス改善をしようかとか、ユーザーの声を聴いてみようかと思ったときにすぐに顧客に意見を聞く文化ができて、それはよかった部分だなと思っています。

小田切 様:また、何か新しいことをしようとしたときのハードルが下がると感じていますね。例えば、こういう課題があるんじゃないかとか、こういうサービスを導入した方が良いんじゃないかといったアイデアを見つけたとしても、うまく行くかどうかわかりませんよね。普通は尻込みしてしまう。それを尻込みせずにリサーチをして試していこうという仕組みができていると感じています。
高岩:確かに、何かを立ち上げようとするときは恐怖がありますし、できるだけ確度をあげたいはずですよね。私としては、そのような時はぜひリサーチに頼ってもらえればと思います。
小田切 様:そうですね。新しいことに取り組むときにリサーチをしない人もいますが、それは失敗経験が少ないからだと思うんです。私はとにかく失敗してきたので、少しでも確度をあげるために、世間の事例や、顧客の反応などをリサーチして考えたいんですよね。
高岩:リサーチも絡めて早めにジャッジしていきたいという姿勢で取り組まれていますよね。
市場の歪みをなくし、権利者・ファン・企業の三者が喜べる世界へ
高岩:モバオクさんの今後の展望を教えてください。
小田切 様:我々の主戦場であるリユースの領域において「二次流通市場の歪み」をなくしていきたいと考えています。
現状は、不用品の売買や転売によって、一部のやり取りをしている人だけが嬉しい状態になっているケースもありますよね。けれど、本来モノを世に送り出した権利者自体も嬉しく、ファンにとっても嬉しい市場にする余地はあると考えています。
また、企業やスポーツチームなどの団体が本当は不用品を活用したくても知見やリソースがない状況も歪みだと思っていますので、そこに我々が入っていきしっかり市場が回っていく支援をすることで、リユース市場を活性化したいと考えています。
究極的には、我々のプラットフォームに出ているものは全部、権利者が納得して権利者に還元されるようになってもいいなと思っています。権利者、ファン、そして我々の三者全員が喜べる、そんな世界を実現したいなと思っています。
新規事業成功への3つのアドバイス
高岩:最後に、小田切さんと同じように新規事業開発を進めていきたいと考えている組織や企業にアドバイスをいただけますか。
小田切 様:私も答えを知っているわけではありませんが、ポイントはやはり3つだと思います。

小田切 様:1つ目は「自分たちの強みは何なのかを徹底的に考える」こと。2つ目はその強みが「誰に、どのように届くと嬉しいのかをいろいろな角度で考える」こと。この2つを突き詰めると意外と新しい価値が見つかってきます。見つからない場合は、おそらくあまり考えきれていない状態です。そして3つ目は、それらについて「実際に顧客に話を聞きに行き、ブラッシュアップし続ける」こと。
高岩:ポップインサイトは主に3つ目で役立っていますか。
小田切 様:まさに。顧客に話を聞きに行くところをいろいろ手伝ってもらっていますし、まずはそこがベースになっています。それにポップインサイトさんは、逆に聞きに行くのを忘れていると「誰に届けるんですか?」と聞いてくれますしね。
「失敗を恐れるからこそ、リサーチをする」小田切様の言葉には、数多くの挑戦を乗り越えてきたリーダーならではの説得力が宿っていました。
UXリサーチは単なる調査手法ではなく、未知の領域にチャレンジする際の「判断の拠り所」であり、組織が挑戦を続けるための「支え」でもある。ポップインサイトはこれからも、リサーチやプロジェクト推進の枠を超え、モバオク様のような新規事業への挑戦に寄り添うパートナーであり続けたいと思います。
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