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導入事例

【事例】ターゲット層の7割程度が導入の可能性があり、「これならやれる」とチームで共通認識を持てた|日本特殊陶業

日本特殊陶業株式会社
インタビュー
日本特殊陶業株式会社
ビジネスクリエーションカンパニー
ユーティリティービジネス部
ユーティリティービジネス開発課
主任 田中 貴史様

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業種・事業内容
メーカー/BtoB

スパークプラグ、セラミックス製品等の製造

支援テーマ
新規事業の市場検証
利用サービス
UXリサーチ
背景・課題 新規事業立ち上げの検討
支援内容 UXリサーチャーをチームに配置し、市場検証に関わるUXリサーチを実施した
成果 ・新規事業立ち上げの判断ができる、根拠のある具体的な数字を出せた

事業転換に向けて、「お客様の新たな価値」を知りたかった

---まず、ご担当者さまの部署のミッションと役割を教えてください。

日本特殊陶業グループは、創業時よりセラミックスのコア技術を基にプラグ、センサを中心とする製品の進化、改善に取り組んでおります。ビジネス開発本部のミッションは、グループ全体における新規事業の立ち上げです。エナジーエフィシエント課(※インタビュー当時に配属されていた課)では、エネルギーの分野を扱っており、次世代自動車や医療、食料等、それぞれのテーマに沿って動いています。

---今回、新規事業の立ち上げにあたり、経営層から「人間中心設計(HCD)の考え方やUXリサーチを導入する」というお話があったそうですが、そのきっかけを教えてください。

事業転換を図るための経営層の判断です。 ビジネス開発本部を立ち上げた際、新たに海外から人材を招き、HCD(※)の考え方を持っていないと、これからの世の中は通用しないという話になりました。

今までは、あくまでもシーズ(※)ベースで、私たちの技術がどの市場に適応するか、お客様の意見を反映させながら進めていたのですが、時代の流れとともに、お客様のニーズ(※)ベースで動く必要があるのではないかと感じました。今回、ポップインサイトさんに依頼したのも、UXリサーチというアプローチを積極的に取り入れて、「お客様の新たな価値」を知りたいという点が大きかったです。

※HCD(Human Centered Design)/人間中心設計:ユーザーのことを理解して、ユーザーが使いやすいプロダクト・サービスを作ろうとするアプローチ
※シーズ:企業が顧客に提供しうるノウハウや技術、アイデアなど
※ニーズ:商品やサービスに対して顧客が求める潜在的な欲求

---以前から、HCDの考え方やUXリサーチは社内で浸透されていたのですか。

HCDの考えを持っている人は数名いましたが、現場まで浸透していませんでした。自動車関連の仕事で積み上げた実績があったので、ひとまず現状のままで良いという考えが強かったように思います。

もちろん、以前からお客様の声は大事にしていました。お客様の期待を上回る、より良い製品を提供していこうという意識は非常に高く持っています。ただ、新規事業に関しては、今までのような顕在的なニーズだけではなく、さらに潜在的なニーズまで発掘していかないとうまくいかないため、今までのやり方も大切にしながら、新しいやり方を取り入れる必要性を感じました。

UXリサーチができるだけではなく、「伴走してもらえること」が重要

---数あるリサーチ会社の中からポップインサイトを選んでいただいた決め手を教えてください。

同時に複数の企業様のお話を聞いていたのですが、ポップインサイトさんは、営業段階から、そのコストに対しずば抜けてスピード感がありました。UXリサーチの大切さは理解しているのですが、やはり迅速に仕上げていきたくて、スピード感のある企業様を求めていました。ポップインサイトさんの営業の方はスピード感があり、短期間で何度もお話しして、メールでも素早くご対応いただけたので、様々な疑問がすぐにクリアになり、スムーズに検討を進められました。

また、UXリサーチについての知識が社内に浸透していなかったため、「ノウハウを共有してもらいながら、私たちを巻き込んでプロジェクトを進めてもらえること」が重要な要素でした。1件あたり数千万円かかる企業様は、スピード感や品質は担保されていますが、私たちの役割がなくなってしまう点が問題でした。社内にノウハウが溜まらないまま、課題が出るたびにお金を支払っていくことになります。しかし、ポップインサイトさんなら、私たちの勉強や成長も兼ねてUXリサーチを進めていけると感じました。

---ポップインサイトは製品よりもサイトやアプリの調査実績が多いですが、不安やデメリットはありましたか。

不安やデメリットはなかったです。経験値の高いUXリサーチャーさんに担当いただき、全幅の信頼を寄せていました。
定例会で都度疑問を解消しつつも、それ以外の場でもチームで意見が割れると、すぐポップインサイトさんに相談していました。そして進め方に疑問が出たら、「これはやる意味があるのですか」と調査目的を再確認して軌道修正し、疑問点を都度クリアにしながら進めていけたのが良かったです。

経営層の判断材料になる資料ができ上がり、満足のいく結果に

---スピーディに仕上げたいというお話でしたが、アジャイルUXリサーチ(※)は、よくある、あらかじめ決められた数ヵ月間のスケジュールの中で結論を出し切る形とは違い、良い結論にたどりつくため、必要に応じて調査内容・手法を変えながら、柔軟に進めるアプローチです。実際に体験されてどのように感じましたか。

お客様が求めていないものを作っても仕方がないので、インタビューの結果次第でどんどん調査の内容を変えていくのは正しいと思います。とはいえ、スケジュールを気にしていないという感じはなく、期間内に何回インタビューをして、いつまでにどのフェーズまで持っていって、次のステップをどう決めるのか…そういった、調査しながら精度を上げていくプロセスに納得感がありました。最終的には、経営層の判断材料になる資料ができ上がり、非常に満足しています。

アジャイルUXリサーチ:企画・設計・分析に必要以上に時間をかけず、クイックにリサーチを繰り返しながら精度を高めていくアプローチ。日々の改善や、スピード感のある開発サイクルに適している。

---今回のプロジェクト全体としての成果を教えてください。

新規事業の立ち上げは非常に責任の伴うものですが、UXリサーチのおかげで自信を持った数字を出すことができました。例えば、今までは、計画時にはアバウトに「3割売れます」と言っていたのが、今回は調査を経ることで、根拠を持って「3割売れます」と言えるようになったのです。今回の市場調査の結果は、確度の高いものになっていると思います。アンケートの回答数が少ない場面もあり、不安なときもありましたが、ターゲット層の7割程度が導入してくれる可能性があり、具体的に1社導入してもらえそうだ、ということがわかったのは大きな成果でした。「これならやれる」と、チームで共通認識を持てました。

---実際にUXリサーチを進めていくなかで、価値を感じた点はどこでしたか。

お客様のインタビューから抽象化して、「その人の大事にしている価値」へ落とし込んでいくプロセスが、非常に勉強になりました(Doニーズ(※)からBeニーズ(※)に持っていく上位下位関係分析法)。その時々でブレないペルソナが作れると、チーム内で意見のズレを修正したり、判断がしやすくなります。このやり方はすごくいいなと思いました。

※Doニーズ:〇〇したいという、生活の欲求
※Beニーズ:〇〇でありたいという、Doニーズの元になる本質的な欲求

もはやUXリサーチの影響が強すぎて、昔の進め方を忘れつつありますが…。今までのやり方だと、ソリューションの仮説が一度ダメになった場合、違う意見をベースにまた一からやり直す必要がありました。新たなソリューション案を最初から検討し直すイメージです。しかし、ペルソナの「その人の大事にする価値」をもとにソリューションを立案すると、手戻りが少なくなります。1つの仮説がダメだったとしても、スタートに戻るわけではなく、ペルソナの価値観に立ち返り、検証していた仮説の何がダメだったのかを振り返ることで、別の案に移りやすくなったと感じます。

現在は、UXリサーチの良いところをまだ体験していない他のチームのメンバーにどう紹介すればよいのか悩んでいます。もともとシーズ志向の強い会社なので、「現在のように新しい価値が溢れている世の中では、お客様の本質的な価値をしっかりと理解してソリューションの届け方を変えていかないとダメだ」ということを社内に伝えていく必要性を感じています。

UXリサーチは一番効率よく顧客に価値提案できるもの

---UXリサーチはコストや時間がかかり、社内にノウハウが溜まりにくいというイメージもありますが、実際に体験されてどのように感じましたか。

確かに、UXリサーチは時間もかかり、一見何をやっているのかわからない、遠回りをしているような活動に見られます。しかし、 実際に体験してみて、チームとしては、最終的に一番効率よく顧客に価値提案できるものだと感じました。UXリサーチだけではないかもしれませんが、「お客様のことを知る」ということを疎かにすると、この先のビジネスは厳しいのではないかと思います。

また、新しい価値を生み出すヒントにつなげるため、社内のノウハウ形成の大事さは認識しており、しっかりとお金を払ってでも取り入れていく必要性を感じています。ポップインサイトさんのような、UXリサーチの専門会社に時折相談して、一緒にやって、新しい情報や手法を手に入れることも必要ですし、自分たちで身につけてUXリサーチの文化を社内に根付かせないといけないとも思っています。

---「UXリサーチが最も効率的に成果に対してアプローチできる」と感じた理由はどこにあったのでしょうか。

「お客様の声を聞くこと」の大切さは、入社当時から培ってきた精神です。ただ、その声にダイレクトに答えようとして、すぐ手段に走るところがありました。しかし、それはポッと出てきたひと言であり、本質的にお客様が欲しているところではなかったりもします。

そんな中、UXリサーチを経験して「その人の大事にする価値」を知ると、ソリューションがそのまま刺さらなくても、見せ方を変えるなど少しの工夫をするだけで良いケースもあり、軌道修正がしやすいと感じたため「UXリサーチが、最も効率的に成果に対してアプローチできる」と思いました。1つ1つの意見に振り回されるのではなく、全体的に俯瞰して事業開発に取り組めるようになり、PDCAを回しやすくなったのです。

担当UXリサーチャーが、私たちにはない視点を示してくれた

---担当UXリサーチャーはどのような存在ですか。率直な感想を教えてください。

非常に頼りになるパートナーです。 様々な議論を通して、新たな気づきと学びがあり、非常に良かったです。UXリサーチを通じて、私たちにはない視点を示してくれて勉強になりました。特に、抽象化と具体化を繰り返すステージが勉強になりました。また、インタビュー設計ですべてが決まるということもわかりました。目的のすり合わせの段階で、日々学ばせていただいていました。

---ありがとうございました。では最後に、ポップインサイトに期待することを教えてください。

ターゲットの意見をどれだけ聞けるかは一番重要だと思っているため、BtoCだけではなく、BtoBのモニター数も増えると非常に強みになると感じました。そして、基本的にはHCDの考えを社内で持って、自分たちで進めていかなければならないと思うのですが、その考えがない企業には全体設計などのフォローが必要だと感じました。経営層は、事業の軸をどのように進めていくのかを重要視しているため、それぞれ単独で見えているものを軸化してビジョンを見せられるとさらに良いと思います。

ただ、私たちは身近なお客様の声を聞いて、自分たちで軸化する部分も勉強して進めていきたかったので、ポップインサイトさんを選んで良かったです。この4ヵ月間、チームとして非常に経験になったので、今後に活かしていきたいと思います。また、新たな課題が出てきた際には、是非ご協力いただきたいので、引き続きよろしくお願いいたします。

<担当UXリサーチャーより>

本プロジェクトでは、日本特殊陶業様のプロジェクトメンバーの皆様が「このプロジェクトをなんとしてでも成功させる」という高い熱量を持っていらっしゃったため、私もそれに応えるために「わからないことはどんどん聞いてください!」と申し出て、結果、かなり密にコミュニケーションを取らせていただけたことが非常にありがたかったです。

ユーザーインタビューには、プロジェクトメンバーのどなたかはご同席いただき、インタビュー内で追加の質問をいただきました。インタビュー後も、15分程度のクイックな振り返りをしながら、「~ということが聞けたのはいい発見でした」「もっとこういうことが聞けると嬉しい」などとフィードバックをくださり、一緒に考えながらプロセスを練り上げていくことができました。

コンセプトを設計し、ソリューションアイデアを出す段階では、ほぼ毎日のように議論を行い、ペルソナに寄り添いながら、日本特殊陶業様のビジョンやありたい姿も織り交ぜ具体化を進めました。新規事業の生みの苦しみを感じながら、立ち上げの判断のための根拠を発見し積み上げるプロセスを、非常に楽しく取り組ませていただきました。微力ではございますが、引き続き尽力させていただきたいと考えております。


●導入サービス
UXリサーチ

※ページ上の各種情報は2021年11月時点のものです。

投稿日: 2022/01/28 更新日: