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導入事例

【金融事例】 金融商品診断ツールの運用改善/インタビュー調査

・業種/金融
・商材/金融商品運用サービス
・プロジェクト期間/約1ヶ月
・調査の種類、人数/
インタビュー6名、アンケート

今回ご紹介する調査事例「金融商品診断ツールの運用改善/インタビュー調査」は、全体プロセスの中の「運用(リリース後)」のフェーズでUXリサーチを導入した事例です。

UXリサーチ導入の流れを「新人UXリサーチャー」と「先輩UXリサーチャー」の会話形式でご覧ください。
※本ページに掲載されている画像については、実際の調査結果ではありません。イメージとして掲載させていただいております。

■目次
・調査対象サービスの概要・調査ご依頼に至る背景
・課題の把握と調査目的の決定・調査手法決定
・ユーザーテスト(インタビュー調査)/アンケート
・モニター選定・リクルーティング・調査設計
・インタビューのコツ
・分析・レポート作成
・結果報告

調査対象サービスの概要・調査ご依頼に至る背景

新人UXリサーチャー
今回は「金融商品診断ツールの運用改善」のインタビュー調査ということですが、そもそもどのような診断ツールですか?
先輩UXリサーチャー
この診断ツールは簡単に言うと、自分に適した金融商品のプランを提案してくれるサービスです。このツールを消費者に提供し、消費者自身で資産運用を開設してほしいという狙いがあります。 Webのアクセス解析をしながら定量的な成果を測っていたそうなのですが、あまり成果が出ていないことを課題に感じていらっしゃいました。
分析を進め、成果に結びつかない要因として、いくつかのページで離脱率が高いことが判明したのですが、その原因が何なのかが、お客様の中では分からず、実際にユーザーの利用シーンを見て明らかにしたい、とご依頼をいただきました。
なるほど。お客様からはどのような流れでご相談があったのですか?
こちらのお客様には継続支援をしており、担当者の方とは、週1回は定例ミーティングを行っていて、都度お客様の方から調査の依頼や自社サービスの課題共有などもしていただいていました。

その中で、診断ツールを運営している担当者の方から「離脱が課題なのは定量的に行動データから把握はできてるんだけど、”なぜ?”という具体的な離脱要因が分からないんですよね…」と相談を受けました。
ユーザーテスト(インタビュー調査)でその原因を把握できますので、やり方や具体的にどんなアウトプットが出てくるかなどご説明して、調査を実施することになりました。

課題の把握と調査目的の決定・調査手法決定

普段からコミュニケーションを多くとっているからこそ、調査イメージが頭にあって、依頼が来た時にすぐ動けるということなんですね。
依頼を受けてからは、どのように調査の計画を立てましたか?
まずは、現時点でお客様は定量的な情報は把握していたので、どのページで離脱が多いのかは把握していました。
ただ、離脱が多いページで、何が原因で離脱が起きているかまでは明確な答えが分からない状態でした。

私たちは、調査を進めるにあたり、最初にお客様から状況をヒアリングし、課題を整理するようにしています。

ヒアリング項目として、
・相談に至った背景(課題を解決したい理由)
・調査を通じて明らかにしたいこと
・現時点での仮説

といったものがあり、これらを聞いたうえで調査手法や調査方法を考えるようにしています。

今回の場合で言うと、「離脱が多いページの離脱要因の把握」や「他ページで離脱してしまう要因は何か」といったことを明らかにし、リニューアル制作に活かしたいという思いがありました。

ユーザーテスト(インタビュー調査)/アンケート

調査結果をリニューアル制作に活かすということで、現時点でのリニューアル予定の画面案なども見せてもらい
・現行画面についてはユーザーテスト※インタビュー調査(定性調査)
・リニューアル画面についてはアンケート(定量調査)

を今回は提案しました。

■定性調査(ユーザーテスト※インタビュー調査の流れ)

■定量調査(回答者属性/画面ごとの離脱割合)

なるほど。定量調査と定性調査、両方提案されたんですね。すみません…私はまだ定量調査と定性調査の使い分けがわからず、ユーザーテスト(インタビュー調査)とアンケートの2つの調査手法をどう使い分けて、課題にアプローチしようとしたのでしょうか。
現行画面については離脱が多いページは定量的に把握できていたので、その原因を深掘りするためのユーザーテスト(インタビュー調査)を行い、リニューアル画面の方はスムーズに回答(診断ツール内)が出来そうか、いくつかあるデザイン案の中でどれが最もよさそうかを定量的に判断が出来るアンケートをそれぞれ提案しました。

一長一短ありどちらが優れているという話ではないので、課題によって最適な手法を選ぶ必要があります。

今回の場合だと、まずはアンケートでこのツールの認知状況や、各画面の使いやすさを、資産運用の「経験がある層」と「ない層」に分けて聞くことで現状を把握します。
その上で、具体的な改善案に繋げるために、実際に操作していてつまずく部分など、アンケートでは取りづらい点を、ユーザーテスト(インタビュー調査)で深く掘り下げて聞くことにしました。

離脱要因の仮説はある程度考えられていたのですが、実際にその仮説が合っているのかを確認するためにもユーザーテスト(インタビュー調査)を行いました。

モニター選定・リクルーティング・調査設計

この調査案をお客様にお見せして、最終的にどのような調査をしようとなりましたか?
基本的にはこちらの提案した調査方針で実施することとなり、あとは

①デバイス(PCやスマホ)
②調査人数
③対象モニターの条件


などを決めていきました。

①デバイスに関しては、アクセス解析から7割くらいがスマホユーザーということで、スマホにしました。
②調査人数は、5名に行うことで8割くらいの課題は出てくるため5名でご提案しつつ、お客様からのご要望もあり6名となりました。
③対象モニターの条件については、資産運用の初心者レベルの方を対象に決めました。

なるほど、お客様と決めた調査方針をもとに、より調査結果の信頼性を高められるよう、計画を具体化していくわけですね。
ちなみに最初にお話しをいただいてから、調査の設計が固まるまで、どれくらい時間がかかりましたか?
課題の難易度や、普段からどれだけコミュニケーションを取って、課題を共有できているかにもよりますが、ご依頼を受けるミーティングで、提案に必要な情報をヒアリングさせていただき、その後1~2営業日で調査の方向性の案をご提示することが多いです。
今回はアンケートとユーザーテスト(インタビュー調査)を実施したということで、それぞれどのように進めましたか?
そうですね。なるべく合理的でスピーディーな進め方をできればと心掛けているので、ユーザーテスト(インタビュー調査※定性調査)のモニター選びに必要な情報収集と、リニューアル画面についてのアンケート(定量調査)を、1つのアンケートの中で合わせて設計していきました。具体的には以下のような形です。

全体で約1か月程度の期間で調査を行いました。

インタビューのコツ

調査の実施までにやるべきことがたくさんありますね。
事前準備が終わったら、いよいよ実査ですね。
アンケートの方は対象者に配信して、回収状況を見つつ、集計作業をしていく…ということである程度イメージつくのですが、ユーザーテスト(インタビュー調査)の方はどんな感じでしょうか?
準備の段階でしっかり質問は精査していますし、あとはユーザーテスト(インタビュー調査)当日、用意していたタスク案通りに質問をしていけばいいのでしょうか?
うーん、ユーザーテスト(インタビュー調査)は、タスクを原稿のように読み上げるだけでは十分とは言えなくて…。 聴取項目はしっかり押さえつつ、ユーザーが何か操作に引っかかったとき、言い淀んだときに、追加の質問をして発話を促したり、まだユーザー自身もモヤモヤしている部分を丁寧に聞き取って、言語化の手伝いをしてあげるのが重要になります。

今回の場合だと、例えば「このページは答えづらかったです」とユーザーが言っていた時に、具体的にどの部分が答えづらかったのか、どうして操作に詰まっていたのかを追加質問するようにしました。
先輩は金融業界担当ということで、難しい用語も多いですよね。モニターの方によってはすごく詳しい人もいるだろうし、先輩も普段から特別に勉強していたりするんですか?
事前に専門用語やある程度の下調べはデスクリサーチをしておきます。ただインタビューの時にはこちらの知識はあまり披露することはありません。
なぜかというと、モニターの方に「この人はこれだけ知識あるから細かく言わなくても大丈夫だろう」とか「自分が知らないのが恥ずかしい」と思わせてしまう可能性があるからです。
そうなってしまうと折角のモニターの方の思いや考えが引き出せなくなるので、私は「詳しくないので教えてください~」「○○って何ですか~、無知ですみません」くらいのテンションで対応しています。モニターの方が「教えてあげよう」と思ってくださるような配慮をしています。
なるほど、必要な知識は押さえつつも、大事なのはユーザーから本音を引き出すための雰囲気作りなんですね。 あと、一般的な話に戻りますが、矛盾した回答をする方もいますよね?評価を聞くと「良い」と答えるのに、理由を聞くとマイナスなことしか言わないとか…。なんかあまり矛盾が多いと、信憑性が低そうで、どうにかプラスの理由を引き出したくなるのですが。
うーん、プラスの意見を言いそびれているのだとしたらそこは聞いた方がいいのですが、すべて整合性を持って答えられるものでもないし、無理に矛盾を埋めていくよりは、評価という数字を呼び水にしてユーザー自身に深く考えてもらったり、本音を引き出す方が大事かなと思います。

中には悪気なく、なんとかいい面を答えてくれようとする方もいたり、良いと口にはしていても、実際の動作を見ると、つまずいたり迷ったりしていることもあるので、そういう通常のアンケートでは気づきにくい部分を拾っていくのがインタビュー時の肝と言えるかもしれません。
奥が深いですね…というか難しいですね。自分にもできるか少し不安になってきました。
確かに何かを読んでパッと身につくというものでもないから、経験を積んでだんだんわかってくることも多いかもしれないですね。
でも、社内にはたくさんの事例があるし、はじめは先輩がサポートにつくので安心してくださいね。それから、経験と知識がない一方、ユーザー目線に一番近いとも言えるので、その視点も活かしてもらえたらと思います。

分析・レポート作成

ありがとうございます。頑張ります。

さて、これでアンケート結果とユーザーインタビューの動画、分析に使う材料が集まりましたね。これからどうまとめていきますか?
アンケート調査の方は、単純集計(注:設問ごとに各選択肢の回答者数や割合を出す、基本の集計方法)で全体傾向を掴みつつ、クロス集計と言うのですが、課題に答えられるよう適切な設問同士を掛け合わせてデータを見ていきます。今回の場合で言えば、年代と金融商品の運用経験を掛け合わせて、離脱に繋がりそうなポイントを明らかにしました。

ユーザーインタビューの方は、まずは1人1人の発言を紐解いて、ポジティブな意見、ネガティブな意見、あるいは「こうだったらいいのに」という要望を、発見点として起こしていきます。
発見点の数は、60分のインタビューで20個程度、多いと40個以上になることもあります。数が多ければいいというものでもないですが、ここが課題の源泉になります。
ただ、この時点ではあくまでも1ユーザーの意見にすぎないので、ユーザー間の共通項を探したり、サイト視点での課題を探っていきます。

ユーザーの声から、サイトの課題を明らかにしていく作業ですね。複数のユーザーで共通している点は多かったですか?
診断する中で現状に関する入力ページは総じてポジティブな意見が多かったですが、これからどんな運用をしていきたいかを聞くページは、金融商品運用の経験がある方とない方で違いが出ましたね。経験のある方はスムーズでしたが、経験のない方はイメージしづらいのか戸惑いが見られました。
なるほど、ユーザーの理解度によって評価が分かれることもありますね。たくさん発見点が出たと思うのですが、そこからどういう観点で重要な課題をピックアップしてレポートにまとめていくのでしょうか?
「ユーザビリティの三要素(効果・効率・満足度)」と「発生頻度」で各課題に重みづけを行い、特に重要度の高い課題を抽出していくのが基本となります。
ただ、あくまでもベースであり、お客様のリソースを踏まえて実現性が高いものや、既存のデータと照らしてより優先度の高い課題に絞るということもあります。リサーチャーが一方的にまとめるというよりは、お客様と相談しながら調整をすることが多いですね。

また、ユーザーの声を活かすという視点はもちろん重要なのですが、手あたり次第直していくと、ブランドの価値や世界観を傷つけることもあるので、全体を俯瞰する視点も忘れないようにしたいですね。

結果報告

データからレポートにまとめるにも、何かツールにあてはめて機械的にまとめるというよりは、お客様やお客様の商品そのものをよく理解する必要があるということがよくわかりました。
今回の結果を受けてお客様の反応はいかがでしたか?
離脱ページの原因は仮説どおりの結果だったのでその証明ができたのと、離脱理由は意外な結果だったようで、グラフ(収益がどんな風に推移していくのかのシミュレーション機能)の見せ方は結果を踏まえて改善していこうとおっしゃっていました。
お客様に客観的な仮説の証明とデータだけでは発見できない気づきを与えることができたんですね。
最後に、今回の調査はお客様の方で課題があるという状態からのスタートだったと思うのですが、特に課題がないという場合は、何か課題が生じるまで待っていればいいのでしょうか?
私が今、アシスタントで担当しているお客様は今のところ順調で、特に課題のような話は聞かないのですが…
個人的には課題がないと何もしなくていいというよりは、課題に気づける仕組みを作るのが重要だと思います。
今回も何もないところから課題が出てきたというよりは、離脱ポイントを定期的にチェックしていて見つかったわけなので。定期的に健康診断はしておいて、少し悪い数値が出たらそのアラートを見逃さず、精密検査をするイメージかな。

あとはそもそもお客様と信頼関係ができていないと、何か相談しようとは思わないと思うので、自分からも業界について学んだり、小さな仕事からコツコツと信頼を積み上げていき、依頼主と依頼される側の関係ではなく、一緒に伴走して課題解決していけるような関係づくりや姿勢が大事だと思っています。一緒に頑張っていきましょう。
ありがとうございます。頑張ります。

※ページ内の人物イラストはillustACより引用

いつでもリサーチができる環境を提供!UXROとは?

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・ビジネス内容や社内体制を理解した提案でユーザー起点の意思決定に貢献

・「小さく」「継続的な」リサーチでPDCAサイクルをすばやく回す体制を構築

投稿日: 2022/09/14 更新日: