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UXリサーチの代表的な7つの手法とは?UXリサーチ未経験者必見

UXリサーチの知見をこれから深めていきたい方、UXリサーチを始めたい方向けに、UXリサーチの代表的な手法をご紹介させていただきます。

UXリサーチとは?

近年、多くの業界で、製品やサービスなどを設計する際、「理想のユーザー体験(UX=User eXperience)」を目標として取り組まれるようになってきました。この取り組みのことを「UXデザイン」と言います。

UXリサーチとは、UXデザインのプロセスの一部であり、ユーザー心理やユーザーニーズを明らかにするための調査のことです。

UXデザインを「ダブルダイヤモンド」のプロセスで考えると、「正しい問題を見つける(解決すべき課題を洗い出す)」フェーズでは探索型リサーチ、「正しい解決を見つける(仮説を検証する)」フェーズでは検証型リサーチと大きく2つに分類されます。

引用元:https://uxdaystokyo.com/articles/glossary/doublediamond/

▼参考:さらに詳しくUXデザインについて

「UXデザインとは?UX(ユーザーエクスペリエンス)の考え方から、仕事・資格やスキルまでご紹介」

また、UXリサーチは、何を明らかにしたいのかで、「定性調査」と「定量調査」の2つに大きく分けられます。
それぞれの代表的な手法を紹介していきます。

定性調査

定性調査とは、ユーザーの「言葉」や「行動」などの情報を得ることを目的とした調査手法です。得られた情報から「背景」や「意識」を通し「価値観」などの心理的側面を探ることを目的とします。

例えば、インタビューでは、商品の購入やサービス利用のきっかけ、使い方、利用中の不満などを聞くことで、ユーザーが、潜在的に抱いている課題を抽出したり、ニーズを明らかにしたりします。

定性調査の代表的な手法としては、

・ユーザーインタビュー

・ユーザビリティテスト

・専門家によるユーザビリティ評価

などがあります。

ユーザーインタビュー

インタビューは、定性調査の代表的な手法で、「誰に、何を聞く」のかを明確にし、実際に商品やサービスを利用しているユーザーやターゲットとするユーザーに対して、質問に回答してもらったり、意見を収集したりする方法です。

質問の回答に対して、さらに追加で質問できるので、ユーザーの背景や心理まで収集することができます。

「インタビュー」の方法は1つではなく、目的や実施タイミングなどにより分類されます。

●インタビューの実施方法での分類

デプスインタビュー:インタビュアーと対象者が1対1で行うインタビュー。回答に対して、深く掘り下げたり、本音を明らかにすることができます。

グループインタビュー:インタビュー1人に対し、対象者を複数名集めて行うインタビュー。同じ属性のユーザーを集めることで、活発な議論ができ、深く情報を得ることができます。

●インタビューの質問の設定による分類

構造化インタビュー:事前に決めた質問を投げかけて、一問一答形式で進めます。インタビュアーのスキルに関わらず同じ観点で回答を収集できます。

半構造化インタビュー:決められた質問だけでなく、ユーザーの回答に対してさらに深堀をしたり、別の質問をすることで、背景や状況を明らかにしていきます。

インタビュースキルによって、収集できる情報の質に差が生じやすいことがあります。

非構造化インタビュー:質問を決めず、テーマだけを決めて自由に対話をしてもらいます。

ユーザー主導のため自由度が高く、脱線する場合があります。

●ダブルダイヤモンドのフェーズによる分類 

探索型インタビュー(コンテキストインタビュー contextual inquiryなど):プロダクトやサービスに対して、ユーザーの利用状況や背景(コンテキスト)を把握し、潜在的な問題点やニーズを明らかにしていきます。

検証型インタビュー(ソリューションインタビューなど):課題に対する解決法を提示し、解決法が妥当かを検証してきます。回答を収集し、解決法をブラッシュアップしていきます。

■参考:さらに詳しくインタビューについて

「ユーザーインタビューとは?1人から始めるユーザーインタビューのやり方」

ユーザビリティテスト

ユーザビリティテストとは、ユーザーに、実行してほしいタスクに沿ってプロダクトやプロトタイプを実際に使用してもらい、使用中の行動を観察したり、使用後に使い勝手の評価をしてもらったりして、スムーズに使用できるか、ニーズを満たしているかなどを測定する調査手法です。

Webサイトやアプリのインターフェースについては、5人に対してユーザビリティテストを実施すれば、問題の85%は抽出できるといわれています。(Nielsen and Landauer, 1993)

■参考:さらに詳しくユーザビリティテストについて

「ユーザビリティテストとは?。ユーザビリティテストはなぜ重要か」

「ユーザビリティテストとは:モデレートあり・なしのメリット・デメリットと使い分け」

専門家によるユーザビリティ評価

ユーザーではなく、ユーザビリティの専門家が、プロダクトやプロトタイプを評価し、課題を抽出する調査手法です。

評価対象の製品やサービスを被験者に使ってもらう代わりに、ユーザビリティの専門家が製品を操作することで、ユーザビリティ上の問題を抽出します。 複数人の専門家によって評価を行います。

専門家による評価については、

・認知的ウォークスルー

・ヒューリスティック評価

の2つの代表的な手法があります。

認知的ウォークスルー

ユーザビリティの専門家が、想定ユーザー(ペルソナ)になりきって、タスクに沿ってプロダクトやプロトタイプを使用し、想定した手順通りにタスクを実行することができるか?という観点で評価をします。

■参考:さらに詳しく認知的ウォークスルーについて

【UX勉強会レポート】DeNAさまが取り組んだ「ユーザビリティ評価」

ヒューリスティック評価

評価対象のサイトを見て、ユーザビリティのガイドラインに沿って様々な問題点を指摘する手法です。基本的に対象はUIで、使い勝手(ユーザビリティ)に主眼が置かれています。

代表的な、ユーザビリティガイドライン(「ヒューリスティック」)として、

•ニールセンの10ヒューリスティクス

•ノーマンのデザイン原則

•シュナイダーマンの8つの黄金律

などがあり、一部のみ使用や組み合わせて評価しています。

定量調査

明確に数値化できるデータを得ることを目的とした調査です。

得られた数値データを統計学的に分析し、顕在化したニーズや問題点のボリュームや傾向を明らかにしていきます。ユーザーの商品やサービスの利用状況やイメージ評価などの実態把握に向いています。

定量調査の代表的な手法としては、

・アンケート

・アクセス解析

・ABテスト

などがあります。

定量アンケート

アンケート調査は、「はい/いいえ」、もしくは選択肢から選べる質問と、一部自由記入を必要とする質問で構成されており、様々な方法で対象者から回答を収集します。

また、一定の期間ごとに同じ質問のアンケートを実施し、事象の経過や動向、変化を分析する調査手法にも活用されます。

アンケートの実施方法は主に以下があります。

●インターネット調査

対象者に「アンケートサイト」や「アンケートフォーム」にアクセスしてもらい、Web上で回答してもらう手法です。多くの人にスピーディーに回答してもらえる方法です。

●会場調査

対象者を会場に集め、製品やサービスを実際に見てもらったり、試してもらったりして、その場でアンケートに回答させる手法です。リアルな反応も一緒にみることができる方法です。

●ホームユーステスト

対象者の自宅に製品を郵送し、一定期間、製品やサービスを実際に見てもらったり、試してもらったりした後、アンケートに回答させる手法です。一定期間試してもらう必要がある日用品(化粧品や食品、生活雑貨品など)が適しています。

アクセス解析

Webサイトに訪れたユーザーの行動や特性を、Google AnalysisやGoogle Search Consoleなどのツールを利用し、自動的にデータを蓄積したり分析したりする手法です。

データとして、訪問者数、各ページのアクセス数、検索キーワード、流入経路、サイト内での行動履歴、離脱率などを取得でき、ユーザーの関心やコンバージョンに至るまでの行動を分析することができます。

このアクセス解析により、例えば、すぐにユーザーが離脱してしまうページの改善すべき要素を洗いだすことができます。

ABテスト

ABテストとは、WEBマーケティングにおける手法の1つで、Webサイトや広告の表示を2つ用意(3パターン以上の場合もあります)し、「AパターンとBパターンではどちらがよいか」を比べる調査手法です。

2つのパターンのアクセス数やコンバージョン率などのデータを比較します。

ホームページのリンクボタンの位置やトップページのメインビジュアル、インターネット広告のクリック率、LP(ランディングページ)の文章やリンクボタンサイトへの流入率、CV率の検証などを目的として実施されます。

■参考:さらに詳しくABテストについて

「ABテストのやり方。ABテストで成果を上げるために、押さえるべきたった1つのこと」

定性調査と定量調査の組み合わせ

定性調査、定量調査にはそれぞれメリット・デメリットがあります。

定性調査では対象者の人数が少なく、定量調査では情報の深堀ができません。

UXリサーチは、2つのデメリットを補うために、組み合わせて実施することが有効です。

また、どちらの調査からするかについては、調査の目的に合わせて実施します。

●定性→定量の順番

例えば、ある製品やサービスに対してのユーザーの意識のデータを定量的に明らかにしたいと思った時など、どのような質問事項や選択肢を設定したらよいのか分からないため、先に定性調査で顧客の心理や傾向を把握し、定量調査で仮説を検証したい場合に実施します。

●定量→定性の順番

定量調査で数値データから得られた結果に対し、ユーザーのサービスや製品を利用している状況や背景を知りたい場合など、定量調査で仮説を作り、定性でさらに深堀りし、検証することができます。

以上、UXリサーチの代表的な7つの手法をご紹介しました。

UXリサーチは、より良いサービスを作っていくためのUXデザイン思考の1プロセスであり、ユーザーの体験を明らかにするための重要な役割を担っています。

1人のユーザーの声を聞くだけでも、多くの気づきを得られるはずです。

ぜひ、UXリサーチにチャレンジしてください。

執筆者について

池田まきこ

2019年にポップインサイトに入社。UXリサーチャーとして、通信業界、IT業界、教育などさまざまな業界の新規サービス・プロダクト開発のUXリサーチに携わる。

UXリサーチャーになってから、家族や知人が新しいサービスや製品を利用しはじめたと知るやいなや、きっかけや利用状況、満足度合などをインタビューさながらに聞くようになりました。

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