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第10回「「健康に対する考え方」モデルと「受療意識」モデル」」

第9回では、生成AIを利用する際のユーザーモデルを活用するイメージについて考えて参りました。
今回からは、様々なユーザーモデルをより具体的にイメージして頂くために、既にある13のスタンダードモデルの中からいくつかのモデルを紹介して参ります。
第10回の今回は、「健康に対する考え方」モデルと「受療意識」モデルからご紹介して参りましょう。

人が生活していく上で、健康はとても大きな関心事です。
現在、その健康は「国民皆保険制度」によって支えられてはいますが、高齢化が進む中、医療費は年々伸び続け、2025年には約52兆円(厚生労働省)にまで膨れ上がり、今後も年率約2%のペースで増加すると予測されています。
この伸び続ける医療費の削減に向けて重要な施策が“予防”です。
できるだけ初期の段階で病気を発見し、重篤な状態になる前に治療することで、人の健康を維持しつつ、医療費を効果的に削減していく必要があり、そのために、国民の多くが毎年受診している健康診断結果を始めとする健康にかかわるエビデンスデータを大量に集めて、これを解析し、様々な病気の予知や予測をできるだけ精度高く行えるようにするための研究も様々な研究機関や医療機関において進められています。

但し、病気の予知や予測の精度が高まることはもちろん重要ですが、その結果を実際に予防につなげる上でもう一つ大切なことは、(当たり前ですが)予防するのは“人である”ということです。
実際に病気やケガですぐに治療を必要としている時であればともかく、(仮に病気が予測されていたとしても)予防を考える段階ではまだ治療を必要とする状態になっていないわけですから、予防を想定した治療を開始できるかどうかは、その人の病気や健康に対する意識や考え方に大きく左右されてしまうでしょう。

この“人の様々な健康に対する意識や考え方”について、今回は「健康に対する考え方モデル」と「受療意識モデル」で考えてみましょう。

まずは「健康に対する考え方モデル」です。
「健康に対する考え方モデル」は、そもそも人が健康でいられるということをどのように捉えているのかの考え方に基づくユーザーモデルです。
この「健康に対する考え方」を表出させるために25の設問を設計し、これらの設問群に対する回答結果(性別・年代・地域で割り付けた20~60代の1500サンプル、インターネット調査)を因子分析することで5つの因子が得られました。

健康に対する考え方モデルを構成する因子

All Rights Reserved, Copyright (C) 2026 UserModelingLABO

この5つの因子に対する因子得点を使って導出した4つのクラスタが下図となります。

健康に対する考え方に基づく4つのクラスタ

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最も多いのは“健康でいられるのは自分次第とする傾向”(因子2)が弱く“健康でいられるのは神仏のおかげとする傾向”(因子3)が強い[健康は運次第派](クラスタ2)(41.1%)で、男性[**]に多くなっています。逆に、“健康でいられるのは神仏のおかげとする傾向”(因子3)や“健康でいられるかは偶然や運次第とする傾向”(因子4)が弱く“健康でいられるのは自分次第とする傾向”(因子2)が強い[健康は自分次第派](クラスタ1)(26.3%)には、女性[**]・60代[**]・既婚(子供あり)[**]が多いようです。

(凡例)[**]:1%有意、[*]:5%有意

次に「受療意識モデル」について考えてみましょう。
「受療意識モデル」は、人が何らかの受療行動を取ろうとする際の意識に基づくユーザーモデルです。
この「受療意識」を表出させるために20の設問を設計し、これらの設問群に対する回答結果(性別・年代・地域で割り付けた20~60代の1500サンプル、インターネット調査)を因子分析することで4つの因子が得られました。

受領意識モデルを構成する因子

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この4つの因子に対する因子得点を使って導出した5つのクラスタが下図となります。

受領意識に基づく5つのクラスタ

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最も多いのは、“健康のための努力を惜しまない傾向”(因子3)も弱いが“病院で受診する行為を回避しようとする傾向”(因子1)も弱い[たいして努力もしていないので結局普通に通院派](クラスタ5)(39.5%)で、男性[**]・会社員[*]に多くなっています。
“健康のための努力を惜しまない傾向”(因子3)も“健康について人に相談して解決しようとする傾向”(因子2)も弱いにも関わらず“病院で受診する行為を回避しようとする傾向”(因子1)が極端に強い[特に何もしていないけどとにかく病院へは行きたくない派](クラスタ3)(12.3%)は20代[*]・30代[*]・未婚(子供なし)[**]・会社員[**]に多く、その逆に、“病院で受診する行為を回避しようとする傾向”(因子1)が極端に弱く“健康については医者に任せようとする傾向”(因子4)は強い[何はともあれ病院に行って信頼できる医者に相談派](クラスタ4)(12.1%)は60代[**]に多く、それぞれ同じくらいの割合で存在しています。

それでは、この、相互に影響を受けていると思われる「健康に対する考え方」と「受療意識」の間の関係をモザイクプロットを使って組み合わせてみてみましょう。
モザイクプロットは、対象となるユーザーモデルのクラスタ同士をクロス集計した結果で、モザイクの面積がその組合せの対象者の人数の割合を表しています。

健康に対する考え方モデル

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面積が最も大きい(対象者の人数の割合が大きい)のは、健康に対する考え方は[健康は運次第派]で受療動機が[たいして努力もしてないので結局普通に通院派](26.0%)、続いて[健康は様々なことの結果派]で[人の意見も参考にしながらまずは自助努力派](6.7%)、さらに[健康は自分次第派]で[少し努力もしているので相談の必要性を感じていない派](6.6%)となっています。

(凡例):割合が多い、:割合が少ない、[**]:1%有意、[*]:5%有意

例えば、“予防のための受療行動を薦める”ことを考えるならば、同じ[特に何もしていないけどとにかく病院へは行きたくない派]でも[健康は自分次第派]と[健康は運次第派]ではそれぞれ薦め方を変えた方が良さそうです(※1)。
また、[健康については深く考えない派]であっても[何はともあれ病院に行って信頼できる医者に相談派]であれば重篤になる前に病院で予防のための受療行動も取ってくれそうですが、同じく[健康については深く考えない派]で[特に何もしていないけどとにかく病院へは行きたくない派]であった場合、本人任せでは予防は難しいでしょう(※2)。

次回(第11回)は、13のスタンダードモデルの中から「お金に対する考え方」モデルと「投資意識」モデルについてご紹介して参ります。

著者

小澤 一志

ユーザーモデリングラボ 代表

富士ゼロックス株式会社研究技術開発本部シニアリサーチャー、慶応義塾大学SFC研究所を経て、2019年ユーザーモデリングラボを開業、日本感性工学会会員。
様々な分野を対象に、ユーザーモデリングやユーザーモデルを活用したコンサルティング、UX(User eXperience)リサーチやUX改善コンサルティングに従事。

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カテゴリ: UX/UIデザイン
タグ: ユーザーモデル