カスタマージャーニーマップとは?作り方や目的&具体例を紹介
カスタマージャーニーマップはマーケティングに必要不可欠です。しかし、その重要性はわかるものの、実際に作って活用するところまではたどり着かない、という方も多いですよね。
本記事では、カスタマージャーニーマップとは何か、何の目的で作成するのか、どのように作るのかなどをわかりやすくご紹介します。具体例やカスタマージャーニーマップに関する資料もご用意しておりますので、ぜひご活用ください。
目次
カスタマージャーニーマップとは
まずは「カスタマージャーニー」について確認しておきましょう。
カスタマージャーニーとは、製品やサービス、ブランドにまつわる一連の顧客の行動を時系列に並べ、その過程で顧客が抱く感情や思考、直面するであろう課題を体系的に洗い出したものです。顧客が商品を認知し、情報を収集、比較検討し、購入、そして評価するといった一連の行動の流れを”旅”にたとえ、「カスタマージャーニー(顧客の旅)」と呼んでいます。
そして、それをマップとして視覚的に整理したものが「カスタマージャーニーマップ」です。
カスタマージャーニーマップの必要性
カスタマージャーニーマップは、より良い顧客体験を実現・提供するために不可欠なツールです。
デジタルを中心としたタッチポイントの増加にともない、顧客と製品・サービスとの関わりは一層複雑化し、個々のタッチポイントでさまざまな感情や思考が発生します。この顧客の感情・思考と製品・サービスの関わり可視化し、整理することは、現状の課題を把握したり、新しいアイデアを生み出すための大きなヒントになります。
カスタマージャーニーマップとユーザーストーリーマップの違い
カスタマージャーマップと似たものとして、「ユーザーストーリーマップ」というものを目にすることはありませんか? 両者には似ている部分もありますが、役割や利用シーンに違いがあることから、それぞれの特徴を理解しておくことをおすすめします。
ユーザーストーリーマップとは?
まず「ユーザーストーリー」とは、アジャイル開発の主流として利用されている機能や機能性を計画するための手段の一つです。
ユーザーが「何をしたいのか、その機能がどのように役立つか」に焦点を置き、「[ユーザータイプ]として、私は[目的]をしたい、そうすれば[メリット]がある」という決まったフレーズやテキスト形式でユーザーの要求を表現します。
例えると、「[息子の携帯の名義人(母)]として、[携帯電話の料金明細を確認]したい、そうすれば[不要な有料アプリに課金していないか知ることができ、未然に防止できる]」となります。
そして「ユーザーストーリーマップ」は、これらを可視化したものです。
上記のユーザーストーリーから考えられる要求を機能や機能性として洗い出し、階層的・体系的に整理し可視化することで、開発チームにおけるリリースに向けた機能の範囲決め、優先順位付け、そして必要性の議論に役立てられます。
ユーザーストーリーマップの役割・利用シーンは?
カスタマージャーニーマップとユーザーストーリーマップは似ている部分もありますが、その役割と使用目的は大きく異なります。
カスタマージャーニーマップの目的が顧客体験の全体像の発見と理解(マクロな視点)であるのに対し、ユーザーストーリーマップは具体的な計画と実装(ミクロな視点)のためにあることから、それぞれの役割や使用場面が異なります。
ユーザーストーリーマップ … ある製品のユーザーが辿る道筋を構成する、機能に紐づく一連の具体的なインタラクションを記述する
そのため、ユーザーストーリーマップは開発の初期段階で要件(要求・機能・機能性)を整理する際に作成し、その後の基本設計やワイヤーフレーム作成に役立てるといった場面で利用されます。
カスタマージャーニーマップを作成する目的
作成する目的は主に2つある。
複数のタッチポイントをまたいだ一連のユーザー体験の全体像を、プロセスだけでなくユーザーの行動や感情を含め可視化する。これにより、時間軸の観点でユーザー体験を関係者間で共有できるようにする
ユーザー体験の全体像を示すことで、改善すべきポイントを検討しやすくするとともに、理想的なユーザー体験の概要を検討できるようにする
出典:UXデザインの教科書
世間一般で言われている考え方の一つとして、カスタマージャーニーマップを作成する目的は上記のように定義されています。本記事では、もう少し業務において活用できるように、その目的を紹介します。
1. ユーザーの行動・感情・思考・不満(課題)を網羅的に把握し、改善策を検討するため
カスタマージャーニーマップは、ユーザーが商品・サービスを利用するにあたって、どのような意思決定を行い、何を考えて購入に至っているのか網羅的に把握できます。また、ユーザーが不満に感じている部分(課題)を明確にできることから、効果的な改善策が議論しやすくなります。
2. 体験の変化や違いを比較することで、改善点や新たな課題を発見するため
商品・サービスの利用前~利用後における時系列ごとの体験や、現状の体験(AS-IS)と理想の体験(TO-BE)などについて、カスタマージャーニーマップを複数作成し比較することで、改善点の確認や新たな問題の発見につながります。
3. チームに共通認識を醸成するため
ユーザーが商品・サービスを利用する際の行動・思考の流れについて、関係者間で認識を統一できます。これにより、一貫性のある顧客体験の提供につながります。
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カスタマージャーニーマップの作り方(7ステップ)

カスタマージャーニーマップは、目的ごとに作り方も変わってきますが、ここでは代表的なカスタマージャーニーマップの作り方を解説していきます。
誰が、どのような体制で作るの?
作り方に入る前に、まず誰が作るかについて決めておきましょう。マーケティング担当者だけが想像して作ったカスタマージャーニーマップは、視点や情報が偏ったものになりがちです。
理想としては、実際に顧客との接点がある部署や担当者と協力して複数人のチームを作り、多角的な意見を出し合いながら作っていくことです。また、顧客の真の姿に迫るためには、顧客自身や顧客対応担当者へのアンケートやヒアリングなども活用し、できる限り「生の声」を参考にしましょう。
1. ペルソナの設定

はじめに、分析対象とするペルソナを設定します。
ペルソナとは、ターゲット顧客を分析し「特定の一人の人物像」に落とし込んだものです。ペルソナがあいまいだと、分析する人物像がはっきりせず、カスタマージャーニーも漠然としたものになってしまいます。複数のペルソナを設定する場合は、ペルソナの数だけカスタマージャーニーマップができあがります。
同時に、ペルソナにたどり着いて欲しい最終的なゴールもあらためて明確にしておきましょう。「初めての商品購入」「リピート購入」「SNSでの拡散」など、ゴールはさまざまです。これは、カスタマージャーニーマップを作成する目的や課題を再確認することでもあります。
ペルソナマーケティングや、ペルソナ設計のより詳細な内容は、以下の記事をご確認ください。
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2. フェーズの設定

次に、マップ作成の目的や事業内容などに応じてフェーズ(ステージ)を設定します。このフェーズが横軸のベースになります。一般的な購買行動では、「認知・興味関心」「情報収集・理解」「比較検討」「購入」「継続利用」のフェーズがありますが、マップの目的によってはこの限りではありません。
フェーズを設定するのが難しい場合は、先に「4. 顧客行動の洗い出し」に進み、思いつくままに顧客の行動を洗い出していき、それを分類・整理してフェーズに分けるという方法もあります。テンプレートにこだわらず、目的にあったフェーズの設定を行いましょう。
3. タッチポイント・チャネルの洗い出し

フェーズを設定したら、次にタッチポイントとチャネルを洗い出します。タッチポイントは顧客と製品・サービス、ブランドとの接点自体を指し、チャネルはその接点を実現する媒体を指します。例えば「比較検討」のフェーズで、「スマホのWebサイトで商品コンテンツを閲覧」という場合、チャネルはスマホサイト、タッチポイントは商品コンテンツになります。
顧客との接点を明確にしておくことは、顧客の行動や感情を考えるうえで重要なポイントです。洗い出す際は、「ここでこういう接点を持ちたい」という理想と、「今はこういう接点になっている」という現状をきちんと分けておくことに注意してください。現在はどうなっているかを洗い出し、改善に役立てましょう。
なお、チャネルやタッチポイントの洗い出しは「4. 顧客行動の洗い出し」と一緒に行ってから整理するほうが効率的なケースもありますので、柔軟に対応してください。
4. 顧客行動の洗い出し

次に、ペルソナの行動を時系列で洗い出していきます。ブレストしながら付箋などを使って思いつくままに行動を貼り付けていき、ある程度出たところで、「2. フェーズの設定」や「3. タッチポイント・チャネルの洗い出し」で設定したフェーズやタッチポイントごとに整理していくとよいでしょう。
このとき、タッチポイントやチャネルのときと同様、現状を顧客視点で洗い出すことを忘れないようにしましょう。アンケートやヒアリングも活用し、顧客がどんな状況でどのような行動をとるのかを洗い出します。
注意すべき点は、顧客の行動はタッチポイントに対するアクションのみではないことです。例えば「Webサイトの閲覧」というタッチポイントの前に「Googleでの検索」という行動があったり、「商品をサイトで購入」というタッチポイントの前に「家族に相談」という行動があるかもしれません。タッチポイントの前後にある行動まで想像力を巡らせることが重要です。
5. 感情・思考の洗い出し

ペルソナの行動を洗い出したら、その行動に付随する感情や思考も洗い出していきます。感情は、嬉しい・悲しい・不安・安心など行動に伴って発生する心の動きです。思考は「信頼する」「迷う」「疑問に思う」といった顧客の頭の中で考えていることを指します。
「こうなっていたらいい」という売り手の理想を混入させないことに気をつけましょう。感情や思考はポジティブなものもネガティブなものも、どちらも欠かさず出してください。
6. 課題や施策の洗い出し

これまでのステップでペルソナの行動や感情の把握ができたら、それをもとに現状の課題や問題点、改善施策、追加施策を洗い出していきます。ペルソナの行動と感情の動き、思考の内容に合致していないポイントはないか、感情の後押しが足りていないポイントはないか、といった点について考えていきましょう。
課題や施策を洗い出す前に、次のステップでマップを完成させ、それを元に課題や施策を検討していくという流れでも構いません。
7. マップとして仕上げる

以上の6ステップが終了したら、清書を行いマップとして仕上げていきます。横軸には時系列にフェーズを並べ、縦軸にはチャネル・タッチポイント、行動、感情・思考、課題・施策が並びます。
必要以上にグラフィカルにする必要はありませんが、マップを作った人以外でも理解しやすくする工夫は必要です。例えば、ペルソナの感情をグラフで図示すると、見る人がイメージしやすくなり、「この上向き矢印を維持するにはどうしたらいいか」といった議論に発展させやすくなる効果があります。
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カスタマージャーニーマップ作成時の注意点や質を上げるポイント
このように、網羅的なカスタマージャーニーマップは非常に有用なツールです。しかし、注意すべき点は、あまりに多くの情報を盛り込みすぎることでマップが必要以上に複雑化してしまい、結果的に肝心な施策の策定が困難になってしまうことです。
このようなケースは、以下のような視点が抜けている、または不明瞭なまま進める場合に起こりがちです。
注意点:カスタマージャーニーマップの「範囲・目的」が定まっていない

- 体験の範囲が不明瞭(AS-ISかTO-BEか)
- ユーザーの「製品・サービスに対する現状の体験」を表現するのか
- ユーザーの「製品・サービス改善を実現するための理想的な体験」を表現するのか
- ジャーニーの目的が不明瞭(誰の視点か)、もしくは混在している
- 事業者(提供側)視点で表現するのか
- ユーザー(顧客)視点で表現するのか


質を上げるポイント1:AS-ISとTO-BEのどちらにするか関係者で決めてから作成する
カスタマージャーニーマップを作成する際は、AS-ISとTO-BEのどちらにするのかを明確に意識するためにも、関係者間で事前に決めてから作成することをおすすめします。
弊社では、ユーザーの声(ファクト)を中心に表現することが多いです。なぜなら、AS-ISモデルを事業者視点で作成してしまうと、製品やサービスを使用する前の段階がわからず、本当の問題点を発見できないためです。そのため、特にAS-ISモデルでは、顧客視点で広く体験を捉えて問題点を分析することで、ユーザーの本質的なニーズを理解しやすくしています。
質を上げるポイント2:ユーザー(顧客)の思考・感情を表現する
利用文脈(コンテキスト)よってユーザーの感情は大きく変化します。利用者が行動する際、どのように考えたのか(感覚、疑問、不満、満足など)を示すとともに、感情の起伏を表現し、ポジティブなものだけでなくネガティブなものも整理していきます。ネガティブな感情を抱くポイントには、多くの場合、改善すべき内容が含まれているためです。
Webや書籍などで紹介されているカスタマージャーニーマップは、イラスト・画像を多用した図解や表現で、キレイなものが多いですが、カスタマージャーニーマップの本来の目的は「ユーザー体験の全体像を示すことで、改善すべきポイントを検討しやすくする」ことです。
そういった本質的な特徴やポイントを押さえていれば、必要以上にキレイにすることに時間をかける必要はありません。これらを意識して作成していくことで、ユーザーが抱える課題の解決に応え、製品・サービスを通じてより良い体験を届けられるようにしましょう。
無料DL|ペルソナ&カスタマージャーニーマップ作成ワークショップ
ユーザー調査から得られた結果をもとに作成するユーザーモデリングの代表的な手法であるペルソナとカスタマージャーニーマップ。本資料では、ワークショップ形式で作成するプロセスを解説します。
カスタマージャーニーマップの具体例
ここまでの作成の仕方やコツなどを踏まえ、具体的な実例を交えながら「活用時のイメージ」を深めていきましょう。
初心者向け! 2つのシンプルなカスタマージャーニーマップ
カスタマージャーニーを作る際、難しく考える必要はありません。横軸に「フェーズ(ステージ)」を置き、フェーズごとに以下の要素を思いつく限り書き出していくところからスタートしましょう。
- ユーザーがどのような行動をとるか
- ユーザーはそのとき何を考えているか
- 自社はどのようなアクションをとるべきか

この例では、商品の検討段階から購入後の評価に対する戦略を策定する目的でカスタマージャーニーマップが作成されているので、フェーズの範囲は「商品を探す」「購入する」「利用する」「評価する」の4つとなっています。

上記のカスタマージャーニーマップも非常にシンプルです。こちらは、ユーザーの「行動」「思考・感情」に加え「インサイト」にも着目し、ユーザーが本当に求めていることは何かを検討します。横軸や縦軸に持ってくる項目は、顧客の行動をベースに、思考や感情、課題が整理されていれば特に決まりはありません。
【応用編】ステージごとの商機会も加味、より複合的な「ジャーニー」把握へ

上記のカスタマージャーニーマップでは、「夏休みにはじめてハワイ旅行に行く35歳の夫婦」というペルソナの、旅行前のリサーチから旅行後の評価、そして次の旅行プラン検討までのジャーニーが示されています。
具体的なペルソナに基づいて設計されており、旅を「旅行前」「旅行中」「旅行後」の3つの大きなステージに分け、さらに詳細な行動ステップ(旅行先の検討、予約・購入、出発準備、現地到着、観光、帰国・帰宅など)に細分化しています。これにより、顧客の行動を切れ目なく、連続した体験として捉えることができます。
また、ユーザー行動とユーザーの感情の変化(ポジティブ・ネガティブ)に加え、「現状の顧客接点」「顧客接点の提供価値」「機会とリスクの発見」が網羅されています。それにより、「旅行中には接点を活用できていない」という課題を明確に洗い出すことに成功しています。

次に示すカスタマージャーニーマップでは、渡邉家(35歳サラリーマンの夫・32歳専業主婦の妻・3歳の男の子)という家族ペルソナの、家族旅行の検討から旅行後までのジャーニーが示されています。各ステージのタッチポイント、ユーザー行動とその心理に加え、ビジネス課題の気づきやそれを裏打ちする数値などのデータが整理された、非常に網羅的なカスタマージャーニーマップです。
最下層にある「ファクト」という項目にグラフなどのデータを挿入することで、マップに記述されている顧客の行動や感情、ビジネス課題が、担当者の推測ではなく、客観的な事実や調査結果に基づいて構築されていることを示し、マップの信頼性を高めています。
このカスタマージャーニーマップは当初、温泉旅館サイトのリニューアルを目的として作成されました。しかし、マップを作成する中で、「夫婦の合意形成プロセスのタイミング」が旅行を成功させるうえでの重要なポイントであるという新たな発見点が得られました。
このように、ビジネス成果の向上を目指すうえで、カスタマージャーニーマップが非常に大きな役割を果たすことは明らかです。
カスタマージャーニーマップ活用の4パターン
弊社でも最近、カスタマージャーニーを作りたいというご相談が増えていますが、その背景状況を詳しく伺うと、以下の4つのパターンに集約されます。ぜひ確認してみてください。
パターン1. 筋の良い改善アイデアを出したい(チーム内の認識を揃えたい)
最もよくあるパターンは、「Webサービスやアプリなどを具体的に改善する」ことを目的とし、「筋の良い改善案を出す」または「チームの認識を揃え、動きやすくする」ための手段としてカスタマージャーニーマップの作成するケースです。
プロジェクト成功のポイント
このパターンのキーポイントは以下の3つです。特に3つ目の「ワークショップでの議論」の盛り上がりにより、成果が大きく変わります。
- 改善すべき対象や範囲は事前に決める
- 改善の意思決定者をプロジェクトに巻き込む
- 改善施策はワークショップで議論し、関係者の当事者意識を高める
プロジェクトのよくある進め方
通常、プロジェクトの進め方は以下のとおりです。「2. ターゲット定義」に関して、すでに決まっている場合は整理するだけですが、未定の場合はここでワークショップを挟むこともあります。
- 改善対象や範囲の整理
- ターゲット定義(ペルソナ定義)
- ペルソナのデータ収集&リサーチ(インタビュー、アンケートなど)
- カスタマージャーニー素案の作成
- ワークショップの実施
- カスタマージャーニーの整理
- 各タッチポイントにおける現状課題整理
- 課題に対する改善アイデア出し
- アイデアの整理(リスト化)
ワークショップに意思決定者や関係部署を巻き込んで課題認識を共有し、一緒にアイデアを出すのがカギです。人数が多いと調整などが大変になりますが、必ず参加してもらいましょう。
ユーザー視点を浸透させる「ワークショップ活用術」 社内のメンバーの目線はユーザーに向いていますか?
「UXリサーチを社内に浸透させたいけどうまくいかない…」 立場が違う社内のメンバーにUXリサーチを広めていくことに、高いハードルを感じている方も多いので...
パターン2. タッチポイント横断体験の課題を把握したい
PC・スマホ・タブレットといったマルチデバイスや、自社サイト・外部メディア・口コミメディア・ソーシャルなどのマルチプラットフォーム化が進み、ユーザーとのタッチポイントは飛躍的に増えています。
このような中で「各タッチポイントでの個別改善は行っているが、横断的な体験が管理できていない」という課題感に対する打ち手として、カスタマージャーニーマップを作りたいというニーズが出てくる場合があります。
プロジェクト成功のポイント
このパターンの成功ポイントは以下3つです。ワークショップなどの議論では、各ステークホルダーの「思い込み」が強く、実態を反映しづらい場合があるので、しっかりとファクトに基づいて整理することが大事です。
リサーチでは、ユーザーテストなどの単発のタッチポイントに向いた調査よりも、インタビューや日記調査などにより、長い時間軸での行動・思考を把握することが重要です。当社でも最近は、LINEを使って継続的に行動や思考を追うようなリサーチが増えています。
- 評価すべきタッチポイントを整理する
- 体験の流れが把握できるように、継続的かつ複合的なユーザーリサーチを行う
- ファクトに基づいて流れを整理する
プロジェクトのよくある進め方
ワークショップで議論するというよりは、多角的なユーザーリサーチのファクトに基づき、ロジカルに整理していくことが多いです。
- 評価すべきタッチポイントの整理
- ターゲット定義(ペルソナ定義)
- ユーザーリサーチの実施
- インタビュー
- 日記調査(LINEなども活用可能)
- カスタマージャーニー作成
- タッチポイント別の課題整理
パターン3. ユーザー視点(UX視点)で自社・競合を評価したい
自社サービスと競合サービスの優劣をユーザー視点(UX視点)で評価したり、良い点をベンチマークして取り込んでいきたいというニーズは継続的にあります。サービスを評価する際は、以下のようなさまざまな方法がありますが、どれもしっくりこないという場合も。
- 調査機関のサイトランキングなどを活用:レイアウトやUIといった表面的な評価になってしまう
- NPSなどの取得:サイトでなくサービス評価になってしまう(サービス内容に依存)
- ユーザーテストなどでの評価:多人数での実施に大きなコストがかかる
上記のような課題に対して、カスタマージャーニーマップを作った上で「ユーザーがサイトに求めるもの」をチェックリストに落とし、スコア化していく取り組みを行うケースも増えています。
プロジェクト成功のポイント
この場合のポイントは以下の3つです。
- 業界・サービスごとのカスタマージャーニーを作る
- カスタマージャーニーで明らかになったニーズ・心理をチェック項目にする
- チェック項目について、ニーズへの対応状況とその要因を構造化し、評価する
チェック項目を一般化しすぎると具体性に欠けるため、業界単位でのマップを作ることが重要です。
弊社では「住宅ローンの新規借り入れにおけるUX比較」「ゴールドカードの新規申し込みにおけるUX」といったテーマ単位で作成しています。
プロジェクトのよくある進め方
カスタマージャーニーマップ作成まではパターン2に近いですが、そこからチェックリスト化し、スコアリングしていくところが異なります。また評価基準を明確化することも重要です。
弊社では、「ユーザーニーズ(要件)→未対応の場合の課題パターン→パターン別のチェックポイント」といった形で整理し、課題パターン・チェックポイントを業界横断で共通化することで、再現性を担保しています。
- 評価対象(競合)の定義
- ターゲット定義(ペルソナ定義)
- ペルソナのデータ収集・リサーチ(インタビュー、アンケートなど)
- カスタマージャーニー作成
- カスタマージャーニーからサイト要件(チェックリスト)を作成
- サイト要件への対応状況を評価&スコア化
パターン4. MAのシナリオを作りたい
MA(マーケティングオートメーション)を導入する企業が増えるなか、そこで必ず議論になるのが「MAを使ってどんなコミュニケーションをすればいいか」という話です。MAツールでは「シナリオ」という機能で、さまざまなコミュニケーションパターンを自動化できますが、このシナリオを作るためにカスタマージャーニーを作成するケースも増えています。
プロジェクト成功のポイント
このパターンでは、重要なポイントは2つあります。MAツールへの実装が前提になるため、「どのようなシナリオが作れるか」「そのシナリオを実現するためのデータがあるか」という2点です。
- どのようなシナリオが作れるか:MAツールの機能を理解する
- シナリオを実現するためのデータがあるか:顧客データの状況を理解する
プロジェクトのよくある進め方
- MAツールの導入状況の把握
- 顧客データベースの状況把握(利用可能なデータ把握)
- ターゲット定義(ペルソナ定義)
- ペルソナのデータ収集&リサーチ(インタビュー、アンケートなど)
- カスタマージャーニーの整理
- MAシナリオ作成
MAツールありきで進むので、まずはシステム状況を理解しましょう。また「6. シナリオ作成」では、シナリオを実現するためのコンテンツ素材がなく、その作成が必要となる場合も多いので注意しましょう。
まとめ

カスタマージャーニーマップには、決められたフォーマットはありません。業界・業種や企業規模、そして作成する目的によって、完成するマップは変わってきます。これが正解というものはなく、重要なのは「ペルソナの実際の感情や行動に即したものになっているか」という点です。
マップができあがったら「本当に顧客の目線で作られているか」「こうあってほしいという願望が混じっていないか」という点に注意して、見直しをしてみましょう。また、チーム間や社内で共有し、施策を実施していく過程で、「ここは実際と違っていた」という齟齬も必ず出てきます。その際は躊躇わずにマップを修正し、改善していきましょう。
カスタマージャーニーマップの作成ツールや分析ツールもありますが、それらを使う前に、まずは荒削りでも自分たちの手でカスタマージャーニーマップを作ってみることで、理解を深められます。最初から精度の高いものを目指す必要はありません。作ってみた上で、「ここはもっと詳細に分析したい」「よりわかりやすく可視化したい」というところがあれば、ツールの力を借りてブラッシュアップしていくのもひとつの方法です。一見簡単なようで難しい顧客視点の獲得を、カスタマージャーニーマップの作成で実現していきましょう。
現役Google UXマネージャー直伝 クリティカルユーザージャーニー徹底解説【セミナーダイジェスト】
「クリティカルユーザージャーニー(CUJ)」とは、ユーザー体験を見える化したカスタマージャーニーの中でも、特にビジネスの観点から重要とされる部分にフォーカスし...
無料DL|ペルソナ&カスタマージャーニーマップ作成ワークショップ
ユーザー調査から得られた結果をもとに作成するユーザーモデリングの代表的な手法であるペルソナとカスタマージャーニーマップ。本資料では、ワークショップ形式で作成するプロセスを解説します。
ポップインサイトでは、インタビューなどで得た実際の声に基づき
ペルソナ・カスタマージャーニーマップ作成をご支援しています
ポップインサイトは、専任UXチームがお客さまの一員となって伴走支援し、ユーザー起点の意思決定に貢献する「UXデザイン伴走/内製化支援(UXRO)」をご提供しています。
本当に使えるペルソナ・カスタマージャーニーマップの作成を行いたい方や、ワークショップを実施してペルソナマーケティングの社内浸透を行いたい方、サービスのUX改善に課題がある方はお気軽にご相談ください。






