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第15回「労働に対する価値観モデル」

第14回では、「消費行動傾向モデル」について、衣食住との関係と併せて考えて参りました。
第15回の今回は、「労働に対する価値観モデル」についてご紹介して参りましょう。

仕事はそれぞれの人の生活の中でとても重要な対象であることはいうまでもなく、その中で「労働に対する価値観」は仕事を選択し仕事をする人のとる行動に影響を与える重要な要因ともなります。

「仕事や労働を通じて社会や組織の役に立てること」
「仕事や労働で収入を得ることでより良い生活ができること」
「仕事をすることで自分を成長させられること」

…仕事を選択したり働く時に大切にしていることはそれぞれ様々でしょう。

「労働に対する価値観モデル」は、これら仕事を選択したり働く時に大切にしていることに基づいて作られたユーザーモデルです。

この「労働に対する価値観モデル」を表出させるために45の設問を設計しました。
これらの設問群に対する回答結果(性別・年代で均等に割り付けた20~60代の男女500サンプル、インターネット調査)を因子分析することで得られた4つの因子にそれぞれ因子名を付与したものが下表となります。

労働に対する価値観モデルを構成する因子

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この4つの因子に対する因子得点を使って導出した5つのクラスタが下図となります。

労働に対する価値観に基づく5つのクラスタ

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最も多いのは、特に“プライベートを重視したい”(因子4)というわけでもないので、とりあえず“人並みの生活ができるくらいの収入が得られればいい”(因子3)、それほど“組織への貢献意識が強い”(因子2)わけでもないけど、“評価されるとそれなりに嬉しい”(因子1)[それなりに働きたい派](クラスタ4)(40.4%)です。
次に多いのは、“多くの人から評価されるようなこと”(因子3)ではなくても“所属する組織のために力を尽くしている実感は得たい”(因子2)、“プライベートを充実させることももちろん重要”(因子4)だけど、何より“仕事を通じて自分が成長していくことが大切”(因子1)な[自己成長重視派](クラスタ2)(30.0%)となっています。
そして、“より高い地位や尊敬を得ようとすること”(因子3)も、“プライベートを充実させる”(因子4)ために“多くの収入を得ようとすること”(因子3)も大切、“自分の能力を充分に発揮”(因子1)して、“帰属意識を感じながら組織に貢献していきたい”(因子2)[何事にも前向き積極派](クラスタ1)と、“自分らしく働きたいとは思う”(因子1)けど、“ことさら人から尊敬されたり高い地位を目指したい”(因子3)とは思わない、何より“プライベートを重視しながらプライベートに支障のない範囲で気楽に働きたい”(因子4)[プライベート重視派](クラスタ3)がそれぞれ12.6%と続きます。
ちなみに、転職回数との関係をみると、[それなりに働きたい派](クラスタ4)には「転職経験なし」[*]が多く、[自己成長重視派](クラスタ2)には転職回数が多い(「6回以上」[*])傾向があるようです。

(凡例)[**]:1%有意、[*]:5%有意

次の表の4つの設問は、この「労働に対する価値観モデル」において、新しい対象者の所属するクラスタを判定する(5つの中のどのクラスタに所属するか)ための設問です。
これらの設問に「1.全く重要ではない」から「5.とても重要である」(5件法)で回答が得られれば、74.2%の的中率で所属クラスタを判定できます。

労働に対する価値観において所属するクラスタを判定するための設問

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例えば、これからインターン生を受け入れる企業の立場で考えてみましょう。
これらの設問に[4,4,2,3]と回答したインターン生[A]、[5,4,3,2]と回答したインターン生[B]、[3,5,3,4]と回答したインターン生[C]の所属クラスタは、全て[自己成長重視派](クラスタ2)と判定(判別的中率:74.2%)できます。
インターン生が仕事において大切にしていることと価値観が近いメンターを組み合わせることで、より本音で相談しやすい環境を作ってあげるようなことができるでしょう。
また、同一のクラスタに所属するとはいっても、全てのインターン生が全く同じ心理特性をもっているわけではありません(同一のクラスタに所属するということは、総合的には他のクラスタよりもそのクラスタに近い、ということにすぎません)。

各インターン生に個別に予測された因子得点(各因子にどのくらいの重みをもっているかの値)を比べてみると(下図)、インターン生[A][B][C]は共に[自己成長重視派](クラスタ2)ではありますが…

  • [A]と[C]は、“自己成長因子”(因子1)・“他者組織貢献因子”(因子2)・“外的評価因子”(因子3)においてはかなり傾向が近いが、“プライベートバランス因子”(因子4)においては[C]の傾向が強い
  • [B]は、“自己成長因子”(因子1)・“他者組織貢献因子”(因子2)・“外的評価因子”(因子3)においては[A][C]より強いが、“プライベートバランス因子”(因子4)の傾向は弱い
各インターン生に個別に予測された因子得点比較

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…のようなことも判りますので、各インターン生の心理特性における特徴に合わせてケアすることも可能になります。

次回(第16回)は、「車に対する意識モデル」についてご紹介して参りましょう。

著者

小澤 一志

ユーザーモデリングラボ 代表

富士ゼロックス株式会社研究技術開発本部シニアリサーチャー、慶応義塾大学SFC研究所を経て、2019年ユーザーモデリングラボを開業、日本感性工学会会員。
様々な分野を対象に、ユーザーモデリングやユーザーモデルを活用したコンサルティング、UX(User eXperience)リサーチやUX改善コンサルティングに従事。

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投稿日:
著者: 小澤 一志
カテゴリ: UX/UIデザイン
タグ: ユーザーモデル