【事例】ホットペッパーグルメの事例から学ぶ:サイト改善で重要な●●視点〜リクルートライフスタイル社の事例
ネット予約可能店舗数No1のレストラン予約・グルメ情報サイトとして知られる「ホットペッパーグルメ」。そんな「ホットペッパーグルメ」のネット予約を促進するために、ポップインサイトではユーザーテストやリサーチによるユーザー理解、課題把握・改善方針立案をご支援させていただきました。
今回は当時を振り返りながら、ネットビジネス本部 飲食事業ユニット UXデザイングループの川野さんにお話をお伺いしました。
定量データでは分からないユーザーの行動パターンや心理を把握したい
Q.まずはユーザーテストを導入した当時の課題感をお聞かせください。
川野:定量データをもとに仮説検証を行いながら、成果を生み出していました。しかし、改善と同時に問い合わせが増えることもあり、本当にこちらのイメージ通りにユーザーが利用しているのか?という課題が生じていました。そこで、サイトの数値からは読み解けない、実際のユーザの心理や行動について調査したいと考えていました。ユーザテストについて ユーザテストって何?という方は、「ユーザビリティテストはなぜ重要か」の記事をご参照ください。
Q.御社の場合、ユーザーデータはかなりあったと思いますが、新たにユーザ調査を活用された背景をお聞かせください。
川野:アクセス解析などの定量データでは「このくらい使われた」という数値を見ることで「ユーザーが何をしているか」はわかりますが、「なぜ」「どのように」という情報までは得られません。定量データの数値の背景にある「ユーザーは何を考えているのか」「どんな心理なのか」を知るためには、定性的なデータが必要だと考えました。
Q.定性的な調査を進めるにあたって、弊社にご依頼いただいた決め手は何かありましたか?
川野:定量的な調査では見えないところに課題感を持っていたので、定性的なユーザー調査をやりたいという思いを上司に相談し、御社(ポップインサイト)をご紹介いただきました。上司から、「調査結果の納品だけではなく、施策につながるアウトプットまで出してくれた」という話を聞いたので、今回お願いしようと思いました。
動画でユーザーの動きや言葉を見聞きすることで、他では得られない肌感が得られる
Q.今回のプロジェクトを通じて、良かった点を教えていただけますか?
川野:ユーザーの一連の行動を知ることができて良かったです。予約意思の強いユーザーは仮にどこかで迷っていても予約に進むので、数値だけでユーザーの心理を読み解くことは難しいです。しかし今回、動画納品されることでユーザがどのように迷っているのか具体的に知ることができました。そして、その気付きをABテストの改善施策に繋げられたことも大きかったです。
またユーザーテスト以外に、様々なアンケートも実施していただきました。そこで、今まで持っていた仮説と異なる結果も得られました。ホットペッパーグルメの利用層に偏らない、定量的な結果も得ることができ満足しています。
Q.定性的な気付きをABテストなどで実際に改善するプロセスは非常に素晴らしいですね。ABテストの結果はいかがでしょう?
川野:実際にこの調査で出た課題から、改善施策につながりました。仮説検証を繰り返して、数%ずつ改善を積み重ねながら、大きな成果に繋げています。
Q.「ユーザーテスト以外にアンケートも実施」というお話では、弊社(ポップインサイト)はモニタを自社で抱えているので、プロジェクトの中で毎週数件の新調査をするなど、リサーチの回転数を上げることがよりよい気づきに繋がると考えておりますが、このプロセスはいかがでしょうか?
川野:私が所属しているチームもスピード感を重視する方向性なのでプロセスはとても合っていました。今までの定量的なデータに加えて、速くライトに定性的なユーザーデータが得られたことはとてもよかったです。
Q.他にこれは参考になった、ということはありますか?
川野:チーム内で動画を見ながら議論を深められたことで、予約に至るまでの利用方法だけでなく、UI比較の点でも大変参考になりました。
あるページについて「現行のデザインと改善デザインどちらがいいか?」というUI比較をテストしたのですが、定量的にはどちらのデザインも同程度支持されていました。ですが実際にユーザーが二つのデザインを比較している動画を見ると、選ぶ際の理由やそのページのユースケースが見えてきて、現行のデザインの方が適しているようだ、という結果が見えてきました。使うシーンによってユーザーが何を基準に選んでいるのか、数値だけではわからなかった背景が動画を見ることでより理解を深められました。
そのページは改修するのにコストがかかるページだったので、早めに仮説を検証することができて、開発コストの削減に繋がりました。
Q.まさに、レポート等で同じ指摘が書いてあっても、文字で読むのと、実際に動画で見るのは、感じ方が違いますよね。この違いは何なんでしょう。
川野:文字では全てが同じ濃度で、文字の背景にあるものを読み取りにくいですが、動画ではユーザーが真剣に考えて発している言葉だということがわかります。そういう言葉は伝わり方が違います。真剣に使っている方の感情がこもった意見は刺さりました。
動画で見ていると、悩みながら検討されている様子や、言葉にこもった感情などが伝わってきます。動画には、そういった数値ではわからない肌感覚みたいなものがあると感じます。
また、レポートでは「このページの感想」だけが切り出されてしまいがちですが、実際には「なぜそうなったか」という前後の文脈がとても大事だと思っています。「どういう使い方をした結果」「どういうことを言っていて」「その結果どういう行動をしたのか」を一連の流れで見れることで、別の角度から新たな施策のヒントが出てくることもあります。動画は、この流れがよく分かるので、そこもメリットだと感じました。
Q.その他何かありますか。
川野:モニタを選ぶ際にフリーアンサーがしっかり回答されているので、モニタ選びの判断材料として非常に役立ちました。
こちらで設定した選定条件の質問に対して、モニタ候補の回答を見ながら選定できたことは良かったです。
Q.逆に「もっとこうしてほしい」「改善すべき点」があれば教えてください。
川野:リモート調査のデメリットだと思いますが、対面調査ほどしっかりモニタの方とコミュニケーションを取れないので、調査をする上での意識のすり合わせや回答の深度に個人差が出てしまうことがあります。その時なにを考えているかを知りたいのですが、思考を引き出す人がその場にいないというのはやはりリモートならではの難しさです。バラつきなく思考を引き出せていたらさらに良かったです。
Q.おっしゃる通りですね。大事な点です。その他どうでしょう。
川野:どの調査会社でもあることですが、たくさん集まるモニタ候補者の中から一人一人情報を確認してご依頼するモニタを選ぶ作業が大変です。
希望としては、フリーアンサーの回答を踏まえたおすすめがある程度整理されていると助かります。
また、リモート調査のモニタの方は「普段からインターネットを利用する層」が多いと思うので、「インターネットに触れる機会が少ない層」の声を拾いにくいという点は理解しておくべきだと思います。そういった偏りがなく、さまざまなタイプの様子が知れるようになったら嬉しいです。
「制作者視点」に陥らないために、ユーザーを見ることが重要
Q.今後の期待など、メッセージがあればぜひお願いします。
川野:どんなにUXの概念を理解しても、定量・定性で得たデータを実際のユーザー行動に紐づけられないと意味がないと感じます。ユーザーは何をしてどう感じているのか、制作者視点で考えるだけでなく、ユーザー視点で考えることが、意味のある仮説につながるのだと思います。