緊急開催!リモートUXリサーチtips共有会レポート

【作成】2020/06/19  

2020年5月の緊急事態宣言以降、日常業務が急きょ「オンライン」「リモート」化して戸惑うかたも多かったことと思います。

UXリサーチについても状況は同じで、対面でのデプスインタビューやユーザテストができず困っている、というご相談が弊社にも寄せられるようになりました。
この状況に矢も楯もたまらず、弊社営業マネージャー寺倉が一念発起。

ツイッターでつぶやいたところ、本企画に共感いただいた3名の登壇者の皆さまと、弊社ポップインサイトのリサーチマネージャーの参加が決まり、「リモートUXリサーチtips共有会」の緊急開催にこぎつけました!

共有会は、「こんな取り組みいいね」「これ難しいよね」「こんなツールもあるよ」と、登壇者と参加者が相互に情報交換する場となりました。

緊急事態宣言はいったん解除されましたが、リモートUXリサーチのノウハウを身に着けておけば、今後のリサーチ実施の選択肢は大きく広がるはずです。
ぜひご一読ください!

トーク①「業務システムにおけるリモートユーザテストのポイント」株式会社ベイジ デザインコンサルタント 古長克彦さん

最初の登壇者は株式会社ベイジのデザインコンサルタント、古長 克彦さんです。同社で実施している「業務システムの検証」にフォーカスし、ユーザテストをリモート化する際の注意点について実際の失敗事例を交えてご紹介いただきました。

リモートユーザテストの3つのメリット

ベイジでは通常、ターゲットユーザとシナリオを設計したうえでユーザテストを実施し、結果を踏まえて分析する、という一般的な流れでリサーチを実施しています。この流れをリモート化するにあたり、環境のセッティング、PCを介したコミュニケーション、テストの振り返りのプロセスで配慮が必要だったと古長さんは振り返ります。

上記のような配慮が必要となる原因は「主催者側と被験者側の距離」にあるとしながらも、古長さんは、リモートユーザテストには3つのメリットがあると解説します。

  1. 操作画面が確認しやすい:対面テストでは被験者がパソコンに向かうのを背後から覗き見る格好で検証するが、リモートでは画面共有機能を使って操作画面をそのまま確認可能
  2. 録画用の機材が不要、手間も軽減(Web会議ツールの録画機能)
  3. 被験者の居住地への配慮が不要:ターゲットユーザとして適切な方に依頼が可能

リモートユーザテストのデメリット解消の工夫

一方で、リサーチを主催するベイジ、依頼主のクライアント企業、そしてその先にいるエンドユーザ企業という3者で連携するにあたっては、工夫が必要でした。

古長さんには、UXリサーチのリモート実施での3つのポイントと工夫点をご紹介いただきました。

  1. クライアントとの環境調整:被験者の調整、ネットワーク環境の整備など。エンドユーザ企業とは直接やりとりができないため、クライアント企業がエンドユーザ企業に説明できるようなインプットを準備する必要がある。
  2. テスト実施中の工夫:被験者にテスト環境へのアクセスや画面共有をお願いする、マウスの大胆な動きや感情の発露を促すなど
  3. 実施結果の分析・評価:録画データの共有には大容量データ送信サービスを活用する、議事録は共同編集可能なツールで共有するなど

参加者からの質問
Q.セキュリティーの厳しい企業も使える大容量データ送信サービスは
A.どのサービスが一般的かという観点での回答は難しい。セキュリティーが厳しい企業はおそらく、自前でシステムを持っていると思うので、そのシステムに招待してもらい利用するのがよいと思います。

トーク後半では、実際のリサーチ事例での失敗もご紹介いただきました。
ぜひチェックしてみてください。

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Baigie

トーク②「リモートワークで調査をして見つけた3つの大切なこと」ヤフー株式会社 Yahoo!ニュース UXリサーチャ 中村 愛さん

続いて、Yahoo!ニュースUXリサーチャの中村愛さんには、「リモートのみでリサーチ」のトライアル案件事例をご紹介いただきました。

全てのプロセスをリモートで実施するトライアル案件

「課題解決と行動につながるニュースを伝える」というミッションをかかげるYahoo!ニュースでは、ユーザリサーチの仮説検証をサポートするUXリサーチチームがあり、本業務と兼任でUXリサーチを推進するメンバーが、中村さん含め12人在籍しています。

今年3月、ある機能改善のためのリサーチを社内プロジェクトから依頼された同チーム。コロナの影響ですでにリモートワークが始まっていた時期でもあり、案件キックオフから報告完了までの会議・実査・分析すべてのプロセスをすべてリモートで実施することが決まりました。

リサーチは社員を対象におこない、案件を進行しながら改善を繰り返したそう。また、案件終了後には、今後リモートに移行しても問題ないかを検証する振り返りも実施しました。

結論は「リモート体制でもなんとかなりそう」だが、課題も

ユーザインタビューは、Zoomを使用した「インタビュー会場」と、その様子をslack通話とチャットで共有する「見学会場」を別立てする枠組みで実施しました。わざわざ2つの空間を設計したのは、見学者が増えて被験者が緊張してしまうことを避けるためでした。

すべてリモートで実施した後の結論は「なんとかなりそう」というものだったそう。一方で、リサーチ自体のスキルとは別のスキルの必要性という課題も見つかりました。

特に気をつけたい点として中村さんが挙げたのは、参加しやすい場所をデザインし参加者によるアクションを支援(ファシリテート)するスキル、また、プロダクトやプロジェクトとリサーチャの連携力でした。

「深く掘り下げる」というリサーチスキルに加え、広く全体を見渡して「今このリサーチがうまく回っているか」に配慮するスキルが今後のリサーチでも大事になるので、自分自身、そして周囲のスキルアップも支援していきたい、と中村さんはトークを締めくくりました。

参加者からの質問
Q.ユーザインタビューの詳細は
A.枠組みがうまくいくかの事前検証を繰り返しました。また、音声や映像の不具合に備えてリサーチ時間を余裕をもたせて設定したり、slackの投稿を見落とさないよう、必要な人にメンションをつけて投稿してもらうルールを作りました。

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Yahoo

トーク③「Gsuiteを活用したリモートリサーチの実践と注意点」株式会社メルペイ UXリサーチャ 草野孔希さん

※編集註:草野さんはトーク内で被験者を「お客さま」と表現されていますので、そのまま記載します

3人目の登壇者は株式会社メルペイのUXリサーチャ、草野孔希さん。UXの実践者であることに加え、人間中心設計やUXデザインの専門家として大学で教鞭をとっておられます。

「週1回4人のリサーチ」というハイペースとクオリティをリモートで維持する工夫

メルペイはもともとUXに対する意識が高く、週1回4人のお客さまに90分ずつのリサーチを実施していました。今回は、このペースとクオリティを維持しながら、リサーチをリモートで継続するための工夫についてお話いただきました。

同社のUXリサーチではリリース前のアプリをお客さまに実際に触ってもらう必要があるため、お客さまとUXリサーチャがお互いにプロトタイプを操作しあう環境が必須でした。

この要件を満たすべく草野さんが活用したのがG suiteでした。PCをお持ちのお客さまをリクルートし、プロトタイピングツール「inVision」を使ってプロトタイプを見てもらう枠組みを作りました。この際、お客さまにChrome Remote Desktopで接続してもらうことで、リサーチャが使用している端末で表示しているのと同じプロトタイプをお客さま側の端末でも操作できます。「この画面を見てください」「そこは反応しないのでこの画面を見てください」など、見せる画面をリサーチャが柔軟に変えることができる仕組みでした。

この方法は、社員全員がG suiteのアカウントをもっているメルペイにとって、アプリやツール等のインストールが不要というメリットがありました。また、お客さまにとっても、Googleアカウント、Google Chromeとネット環境さえあれば参加できる、というメリットがありました。

スマホ画面をPC上でリサーチする際に注意が必要な4つのケース

一方、Chrome Remote Desktopを利用するときのデメリットは、フレームレートが低く映像が滑らかでないこと、PCに表示したスマホ画面を操作するので細かい操作感が異なること、テレビ会議中にタイムラグが発生しお客さまに回答を聞き直すことが増えること、お客さまのボディランゲージや表情を読み切れず、得られる情報が少なくなることでした。

こうしたデメリットを踏まえて、以下のようなケースではこの方法の利用が難しいこと、もし用いるとしてもお客さまの発言や行動の解釈に注意が必要であると草野さんは指摘されました。

  1. スマホならではのインタラクション・表現がキモとなるとき
  2. パッと読んで理解できるかが重要なとき(スマホ画面を見るときよりPC画面を見るときのほうが「読む」意識が高まる傾向)
  3. 細かい注意文言に気づくかどうかを確かめたいとき
  4. お客さまがパッと情報を見たときの反応や感情をみたいとき
  5. 参加者からの質問
    Q.スマホなら手元にあたる、画面下の部分の評価をかえる必要があるか
    A.PCで表示されると『読むモード』に入りやすい、(スマホ操作の場合は)親指で隠れる可能性がある箇所も、PC上では隠れる心配を考慮する必要がない、という問題も実際に起こっており、PC上での操作感であることを差し引いて評価する必要があります。

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    トーク④「ポップ流リモートUXリサーチTips」株式会社ポップインサイト UXリサーチャ 白石 啓

    最後に、弊社ポップインサイトよりリサーチマネージャーの白石 啓が登壇しました。

    まずはやってみよう!

    リサーチの9割以上がリモート実施、という環境のポップインサイトで日々リサーチにあたる白石からのメインメッセージは「リモート環境でも、手持ちのツールでUXリサーチできる!まずはやってみよう!」というものでした。

    リモ―トと対面のユーザテストの違い

    対面リサーチのメリットは、被験者の行動から得られる情報量が多いこと。一方、リモ―トでは、行動観察をした後に振り返り質問をすることで、行動そのものから得られる情報量の少なさをカバーする必要があります。

    リモートリサーチのメリットは、場所を問わずに被験者を選べる点、そして、被験者が見ている画面を共有して見られるため、どの部分を見てどの部分でつまずいているのかなど細部まで確認しやすい点です。

    リサーチプロセスごとのUXリサーチTips

    白石からは続いて、リサーチプロセスごとのtipsが紹介されました。

    企画段階

    企画段階では、リサーチの質と効率のどちらを重視するかで、モデレート(同席するリサーチャのサポートや介入)の有無を決定します。モデレート無しのリサーチは短期間で複数のリサーチを進めるのに適していますが、誰のフォローも無い状態で被験者がリサーチをスムーズに行うためには、設問などの細部の文言にまで注意を払う必要があります。

    モデレートの有無に関わらず、被験者のリクルート条件や設問内容の妥当性を確認するためにアンケートツールを使って「とりあえずリサーチ」を実施することもあります。

    リクルーティング

    リクルーティング時には、被験者の操作環境を事前に確認することが重要です。スマホのOSのバージョンによって使えない機能があるので、OSのバージョンの確認も必要です。

    実査

    実査に先立ち、被験者には事前準備についてメールで案内しておきます。LINEの通知などを含む個人情報が写りこまないこと、落ち着いて話ができる環境の確保や端末の電池残量の確認などをお願いします。また、リサーチ本番で思考発話してもらいやすくするため、思考発話を実演してお見せします(バイアスを防ぐため、対象サイトとは関係のないサイトを例にします)。

    録画のバックアップを必ず取ることも大事です。ポップインサイトではZoomを使ってリモートユーザテストを行うことが多いですが、Zoomのレコーディング機能とは別に、画面録画ソフト等を用いてバックアップ録画を行うようにしています。

    分析

    分析の際、ポップインサイトでは「1人KJ法」という方法でインサイトを抽出しています。ユーザテスト動画を見ながら特徴的な発言・行動をメモして洗い出したうえで、同じカテゴリーに分類可能なものはまとめながら発見点として整理していきます。整理した発見点は、発見点の種類(対象サイト、対象ページ、ポジティブかネガティブか、など)に分類してエクセルにまとめます。

    このように環境面、準備面に工夫することでリモートでもUXリサーチは十分に実施可能であること、まずはやってみること、を改めて強調し、白石はトークを締めくくりました。

    参加者からの質問
    Q.被験者がリサーチに慣れてしまい、プロ化するデメリットはないか
    A.リサーチ慣れ、という現象はある程度存在するという前提で分析しています。案件によっては外部の提携パネルからリクルーティングしてデプスインタビューを実施することもあります。

    ▼当日のスライドはこちら▼

    まとめ

    急なお声がけだったにも関わらず登壇してくださった4名の皆さん、そして視聴してくださった200人を超える参加者の皆さん、本当にありがとうございました。

    リモートUXリサーチの経験やそこから得たノウハウを共有し、多くの方が「UXリサーチ」やってみようかな、と思っていただける場をご提供できたことは、UXリサーチ専門会社である弊社にとって、非常に嬉しい経験でした。

    UXリサーチを小さく、速く、何度も繰り返し、施策や改善のアイデア検証のPDCAを回していくことで、ビジネスの価値は大きく高まります。

    コロナウイルスという価値観の大きな転換点を経験した世界で、ユーザが何を考え、何を感じ、何を必要としているかをキャッチアップし続け、ひとりでも多くのユーザに支持される製品やサービスを作り続けていただくことを、ポップインサイトは願っています。

    なお、
    「UXリサーチをもっと高頻度に実施したいがリソースが足りない」
    「UXリサーチを継続的に実施する体制を作りたいが何から手を付けていいかわからない」
    「UXリサーチャを内製化したいが、採用・育成が難しい」

    …こんなお悩みがある際には、ぜひポップインサイトにご相談ください。
    専任リサーチャの配置、貴社スタッフ育成プランの構築など、様々な切り口でお手伝いさせていただきます。

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