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カスタマージャーニーマップとは?|カスタマージャーニーのペルソナ設計で失敗しない重要なポイント ーペルソナ再考ー

本記事は著者Cindy Brummer氏より許可を得て翻訳したものです。

元記事:UX Booth ”Rethinking User Personas” August 31st, 2021

カスタマージャーニーマップとは、ユーザーが自社サービスやプロダクトを知り、利用や購買するまでの行動・思考・感情など、ユーザー体験(UX:ユーザーエクスペリエンス)のプロセスを時系列に可視化したものです。今や、カスタマージャーニーマップは、マーケティングの現場から、社内におけるユーザーへの共通認識の醸成まで、広く利用されています。

そしてこのカスタマージャーニーマップの作成にあたり、対象とするユーザー像として設計したものを「ペルソナ」と呼びます。本稿では、カスタマージャーニー成功の要となる「ペルソナ」について、現状の課題を指摘し、設計に欠かせない重要なポイントとは何かを説明したUX Boothの記事 ”Rethinking User Personas”をご紹介します。

ペルソナは進化しなければならない

現在、UXデザイナーは、見た目が洗練された美しいペルソナを作成することができます。しかし、一見美しいペルソナには、ペルソナ設計の本来の目的と関係のない内容が含まれているために、チームにおけるペルソナの利用価値を下げていることがよくあります。さらに、実際のユーザーが直面する不満や問題を特定するための、ユーザーの状況やその時の気分や思考といったコンテキストや、ユーザーの前後の行動が含まれていないことが多くあります。

こうした必要な情報が欠けたペルソナでは、ペルソナが果たすべき役割、つまり「ユーザーの抱えている課題を解決するためにチームがユーザーをより身近に感じるようにする」という目的を達成することができません。

ペルソナに必要なものは何でしょう。
それは「ユーザーが直面している課題とのつながり」です。

しかし、この「つながり」は、作業の簡略化とスピードアップのために犠牲にされがちです。
今改めて、ペルソナを設計するための新しいフレームワークが必要とされています。よりユーザーを深く理解し、ユーザーに共感し、そしてあらゆるユーザーをプロダクトに組み込むことを手助けする新しいフレームワークが必要なのです。

なぜ今ペルソナについて再考するのか?

これまでペルソナは、ときにチームを混乱させ、誤った方向へと導いていました。これがペルソナ設計について、今改めて考え直す理由です。

ペルソナの提唱者として有名なAlan Cooper (アラン・クーパー) 氏は、著書『About Face』(和書『インタラクションデザインの極意』)において、“UXデザイナーはしばしば「ユーザープロフィール」と「ペルソナ」を同じ意味の言葉のように使っているが、両者は全く異なるものである”と書いています。

「ユーザープロフィール」はユーザーについて詳細な記述をしたものであり、「ペルソナ」は人間観察やUXリサーチにより導かれた、リアルなユーザーに基づいて設計されたものです。

ペルソナは、ユーザーがどのように行動し、考え、何を達成したいのか、なぜそうするのかについて、適切な考え方と伝え方を提供してくれる[1]

ー”About Face: The Essentials of Interaction Design”

つまり、ペルソナは、ユーザーがどのように行動するのか理解するための入口であり、プロダクトやサービスが、あらゆるユーザーに適切な体験を与えているかを考える機会を与えてくれます。しかし、現在のペルソナ設計方法では、こうしたメリットを得られることは難しいでしょう。

ペルソナの何が問題なのか

インターネット上にある「良い」ペルソナの例では、その内容よりもビジュアルやデザインに焦点があてられていることが多々あります。

もちろん、見た目が美しいことは良いことです。しかし、ペルソナを単純化しすぎると、そのペルソナはUXチームにとってほとんど価値のないものとなり、使用すべきか疑問を持つようになります。ペルソナが、単純に誤解を招くというだけではなく、どのような問題を引き起こしているか以下でみていきます。

出典:Dribbble 

問題1 ペルソナの使用者が明確でない

「なぜペルソナを設計するのか」という理由が不明確な場合、ペルソナに含める情報よりも、見た目を重視したくなる傾向があります。例えば、UXチームが、ステークホルダーやクライアントとペルソナを共有するとき、ペルソナを美的センスにあふれたものにしてしまいたくなります。

こうして設計されたペルソナは、マーケティングに使用するには最適ですが、課題解決には適していません。ペルソナは、クライアントへの納品物にもなりますが、ペルソナとは、本来、チームメンバーがユーザーに対して、共感を得るために設計されるものなのです。また、ペルソナは、リサーチでユーザーと直接接する機会がなかったメンバーの理解も手助けします。

要するに、ペルソナはスタンドアロンとして単独で機能するものです。どのマイクロインタラクション(※)がターゲットユーザーにとって最も重要なのか理解しているUXデザイナーは、たとえリサーチを行っていなくとも、ペルソナを随時見直し、ユーザーのニーズを深く理解することができるはずです。

例えば、下図のHubSpotが提供しているバイヤーのペルソナテンプレートは、ペルソナの良い例としてよく挙げられます。しかし、このペルソナでは、リサーチに携わっていないチームメンバーが、ユーザーの抱える課題を理解するには、情報が不足しています。

※マイクロインタラクション:ひとつひとつの細かなタスクにおいて生じる、ユーザーとアプリやWebサービスとの小さな相互作用のこと

▲ペルソナの良い例として挙げられるバイヤーのペルソナテンプレート
リサーチに関わっていないメンバーにとっては情報が不足している
出典:HubSpot 

問題2 ペルソナが表面的でステレオタイプとなっている

ペルソナの多くは、性別・年齢など属性的な説明に焦点をあて過ぎています。これは人間の行動について表面的に理解することを促してしまい、性別、民族、年齢、経済状態などに基づいた偏った固定観念に基づくペルソナ(ステレオタイプのペルソナ)を生み出す可能性があります。

ステレオタイプのペルソナは、ユーザーを表面的に理解しているにすぎません。社会心理学者は、ステレオタイプを “あるグループやクラスの人々に関する固定された、また一般化されすぎた信念 “と定義しています。ステレオタイプを作るのは、人間にとって自然な傾向です。特に初対面の人に会うときなど、人は社会自体を単純化し、脳の認知負荷を軽減するために、こうしたステレオタイプの理解を好むものです。 [2]

もちろん、こうした理解の方法は、時に人の役に立つことがあります。例えば、道に迷ったとき、子供は正しく道案内ができないだろうと思うことは一見正しいように見えます。一方で、こうした理解の方法は、間違いであることもあります。UXチームは、人々の課題を解決するために、思い込みを避け、実際のデータに基づいた判断をしなければなりません。

UXに携わる人々は、ユーザーを本当に理解するために、水面下にある解決すべき課題を掘り起こす必要があります。人間の行動は、前後の状況やそのときの思考や感情といったコンテキストに依存しやすいものなのです。特定の世代や民族などに特有であるとは限らないのです。

問題3 ペルソナを設計・納品した後は使用しない

ペルソナの価値が低い場合、そのペルソナを、チームが意思決定をするためのツールとして、デザイン・プロセスの中で継続して利用し続けるということはありません。

しかし、UXデザイナーは、ユーザーフローをどのように作るか、どのような機能を搭載するか、どのようなインタラクションを設定するかを決定する際に、常にペルソナを利用するべきです。

ペルソナを利用することがなぜ重要なのか、ある例を紹介したいと思います。

この例では、デザインチームは、プラスチックの消費を抑えたい人を支援するアプリを作りました。UXリサーチ結果を踏まえて、ペルソナとして設計されたダニエルは、環境に関心を持っているけれど、彼にとって都合がよいときだけリサイクルに取り組みます。また、彼がよりリサイクルするよう促すためには、なんらかの刺激やサポートが必要です。

▲プラスチックの消費を抑えたい人を支援するアプリ作成の際のペルソナ設計
出典:GreenSwap by Bella Rosales, Paola Carrera, Eric Shim, Ariana Mollai, and Chelsea Leung

初期のデザインでは、ダニエルがプラスチック製品のバーコードをスキャンすると、おすすめのサステナブルな代替品が表示され、ダニエルは別途その代替品を検索し購買するというフローを作りました。

問題は、このフローが、自分に都合のよいときにリサイクルをする、つまり利便性を重視するダニエルの行動に合っていないことでした。幸い、チームはペルソナに立ち戻り、提案したフローがペルソナの行動と一致しているかどうかを確認しました。そして、ペルソナに対して、おすすめの代替品を購入するために余分なステップを要求していることに気づいたのです。

この結果、代替品を購入するためにユーザーをアプリから離脱させるのではなく、アプリ内で代替品を購入する機能を提供し、ペルソナの負荷を減らすデザインに変更することができました。もし、ペルソナの行動とデザインを照らし合わせていなかったら、この重要な修正は見逃していたでしょう。

▲ペルソナに立ち戻った結果、代替品を提案後、購入するフローに変更した例
出典:GreenSwap by Bella Rosales, Paola Carrera, Eric Shim, Ariana Mollai, and Chelsea Leung

ペルソナはどのように進化すべきか

ペルソナを価値の高いツールにするには、「ユーザーが直面している課題とのつながり」に関する情報を十分に含み、チームメンバーがより深く共感できるようになることが必要です。ペルソナを確認することで、チームメンバーが「ユーザーがプロダクトに対してどのようなコンテキストで反応するか」を理解できれば、ペルソナは本来の役割を果たしていると言えます。

また、デザインチームがペルソナを設計するために用いるテンプレートは、ステレオタイプにつながるビジュアル要素ではなく、ストーリーテリングに焦点をあてたものでなければなりません。

ペルソナ設計のための新しいフレームワーク

UXチームが使用しているペルソナをアップデートしましょう。ペルソナに価値を与えるためには、「つながり」と「コンテキスト」が重要です。また、後述するように、ペルソナによってチームメンバーが「ユーザーの靴を借りて歩ける」ようになることができるかも評価のポイントとなります。

ストーリー性の重視、ユーザーのコンテキストやニーズの詳細な記述の重視が、ペルソナ設計の新しいフレームワークにとって最も重要な要素となります。

属性情報よりユーザーの行動を含める

ペルソナに含まれるすべての情報は、目下のプロジェクトに関連している必要があります。属性情報というのは、UXチームが無意識のうちに瞬時にユーザーについて判断を与える手助けをしてしまうことがあります。特に、ターゲットとするユーザーのグループが複数のカテゴリーにまたがるような場合、年齢や性別という情報すら障害となることがあります。

例えば、食料品をネットで購入するユーザー、行政サービスを利用するユーザー、災害支援を必要とするユーザーのペルソナを考えてみましょう。このようなニーズは、あらゆるグループにまたがる可能性があり、年齢、民族、性別に基づいてグループを分離することは不適切である可能性があります。

属性情報によって表面を整えてからペルソナを設計するよりも、行動に基づいてペルソナを設計するほうがより包括的で公平なものになります。

行動によってユーザーのグループを分類することで、実際のデータに基づかない仮定でペルソナを設計しようとする誘惑を防ぐことになります。これは、同時にステレオタイプな思考に陥ることも防いでくれます。

下図のペルソナでは、UXリサーチを実施する人に焦点をあてました。UXリサーチャーには様々なバックグラウンドがあるため、UXリサーチャーの外見的な特徴にフォーカスするよりも、リサーチャーの行動や会社概要にフォーカスすることをより重視しました。

▲UXリサーチャーのペルソナ例:属性情報はなく、UXリサーチャーの属する会社の概要とUXリサーチャーの行動に焦点があてられている
出典:UX Booth “Rethinking User Personas”

行動に対するコンテキストを提供する

ステレオタイプに対するもう一つの安全策は、ユーザーの行動について、コンテキスト(前後の状況やそのときの思考や感情)を提供することです。なぜなら、ユーザーの行動はコンテキストに大きく依存するからです。

イェール大学の心理学者ポール・ブルームは、人間が暗黙の偏見を克服するためには様々な手段があり、そのひとつがストーリーテリングであると述べています。[3]

ペルソナにストーリー性を持たせるためには、コンテキストを提供することが有効です。具体的には、ペルソナは、以下の質問にに対する答えを提供している必要があります。

  • ユーザーが課題解決を必要としているのはどんなときか?
  • 何がユーザーのペインポイントなのか?
  • ユーザーはそのときどのように行動しているのか?
  • ユーザーはどのような気持ちなのか?

これらの質問に対する答えは、UXリサーチから得られるべきです。そして、カスタマージャーニーマップと組み合わせることで、ユーザーのニーズをより深く理解することができます。

例えば、次のペルソナの例では、運動する人をとりあげ、運動する人が様々な環境でどのように感じ、なぜ運動を選択するのか説明しています。このペルソナでは、自宅や、外出先、ジムなど環境によって感じ方や行動が異なることが設定されているため、デザインチームは問題の所在をより明確に把握することができるようになっています。

▲環境とコンテキストの箇所には、自宅、外出先、ジムなど
異なった環境でどのようにペルソナが行動するかが記載されている
出典:UX Booth “Rethinking User Personas”

ペインポイントは一般化ではなく具体化する

UXチームが間違いやすい失敗として、ペインポイントを具体的に説明するのではなく、一般化してしまうことがあります。ペインポイントの過度な一般化は、思い込みにつながってしまう要因になるので留意しなければなりません。

例えば、ペルソナにおいてよくある悩みは「時間」に関するものです。問題は、ペルソナにとって、これが何を意味するのか、ということです。「時間が足りないのか?」「時間管理ツールがないのか?」「集中力が欠如してしまうのか?」「何か気が散ることがあるのか?」このように「時間」の悩みにもいろいろな種類があります。

ユーザーが感じているペインポイントを具体的に説明できない場合、他のメンバーが勝手に結論を出してしまい、誤解が生じる可能性があります。

UXデザイナーのためのコミュニティサイトを作るプロジェクトの例をみてみましょう。チームはユーザーであるUXデザイナーの様々な行動を特定し、コンテキストやペインポイントに着目して6つの異なるタイプのペルソナを設計しました。そして、ペルソナとジャーニーマップを組み合わせて、ペルソナがコミュニティから何を必要としているかを理解しました。

▲行動とペインポイントに着目して分類したUXデザイナーのペルソナ例 
出典:UXinATX Website by Adrienne Yang, Gabe Ferraro, Mengxia Zheng, Natalie Wiesehuegel, and Przemek Jaglowski
▲UXデザイナーのペルソナのジャーニーマップの例
出典:UXinATX Website by Adrienne Yang, Gabe Ferraro, Mengxia Zheng, Natalie Wiesehuegel, and Przemek Jaglowski

複数の写真を使用する

また、1つのペルソナにつき、個人の写真1枚で表現するのではなく、複数の写真を使用したほうがよいでしょう。

単一の写真は、ステレオタイプを強化し、無意識の判断を促してしまうことがあります。また、気が付かないうちに、あるグループをユーザーから排除してしまうことにもなりかねません。

このため、チームは、プロダクトを使用したり、関連するタスクを行っている状況のユーザーの写真を複数使用したほうがよいでしょう。ペルソナが複数のカテゴリーにまたがっている場合は、これにより、年齢、性別、民族といった、偏見を避けて考えることができるようになります。

ペルソナの評価は「ユーザーの靴で歩くことができているか 」

最後に、「ユーザーの靴を借りて歩くことができているか」という観点でペルソナの有効性を検証することができます。

前述したように、チームの全員がUXリサーチに参加できるわけではないので、ペルソナはUXリサーチからの学びを伝えるためのツールにもなります。チームは以下の質問を自問自答することで、ペルソナの有効性を判断できます。

  • ペルソナは、特定の状況下でユーザーがどのような行動を取るかを理解するのに十分な内容を含んでいるか?
  • ペルソナには、解決すべき課題をもったユーザーグループが含まれているか、または除外されているか?
  • ペルソナを利用することでチームはユーザーに対して共感を持つことができるか?

まとめ

ペルソナは、チームが、問題を解決しようとしているユーザーをより深く理解するための貴重なツールですが、現状、本来の役割を果たせていない不十分なペルソナの例が多く見受けられます。一般的なペルソナテンプレートは、ステレオタイプを強化してしまい、ユーザーをより深く理解するためのインセンティブをほとんど与えることができていません。

UXチームが、無意識に判断してしまうことや、ステレオタイプによる暗黙の偏見に打ち勝つためには、新しいフレームワークが必要です。ペルソナは、チームがユーザーに深く共感し、常に念頭にイメージできるよう手助けしなければなりません。新しいフレームワークでは、見た目よりもストーリー性、属性情報よりもユーザーの課題とのつながり、そしてステレオタイプよりもコンテキストに焦点をあてる必要があります。

UXデザインチームは、ステレオタイプによる偏見を排除し、あらゆるユーザーを包括することに責任があり、ペルソナはそのために重要な役割をになっているのです。

[1] About Face: The Essentials of Interaction Design, 4th Edition, Alan Cooper, Robert Reimann, David Cronin, Christopher Noessel, Published by John Wiley & Sons, Inc., Copyright 2015, page 105

[2] McLeod, S. A. (2015, October 24). Stereotypes. Simply Psychology. https://www.simplypsychology.org/katz-braly.html

[3] Bloom, P., 2021. Can prejudice ever be a good thing?. [online] Ted.com. Available at: <https://www.ted.com/talks/paul_bloom_can_prejudice_ever_be_a_good_thing> [Accessed 8 August 2021]

著者紹介

Cindy Brummer
UXデザイナー/米国UXデザイン企業 Standard Beagle CEO兼クリエイティブディレクター

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ペルソナ策定とカスタマージャーニーマップ作成の2回のワークショップで使っている資料です。具体的なアウトプットイメージもあるので、ぜひ貴社での取組みにお役立てください。


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