【2021年版】ヘルスケア業界のデジタルトランスフォーメーション(DX):顧客中心のヘルスケアサービスとは?
本記事はAIMultiple社より許可を得て翻訳したものです。
元記事:”Digitizing healthcare in 2021: Customer-centric health services”, January 1, 2021
カスタマーエクスペリエンスへの関心の高まりにより、患者は、自分が必要なときにパーソナライズされたヘルスケアサービスを受けることを期待しています。
現在、世界全人口のほぼ半分である35億人がスマートフォンを利用しており、モバイル・ヘルスケアはデジタル・トランスフォーメーション・プロジェクトの最優先事項となっています。
目次
なぜ今、ヘルスケア業界におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)が重要なのか?
COVID-19は、ヘルスケア業界のデジタルトランスフォーメーション(DX)を加速させました。
現在、 世界中の多くの人々や政府が、COVID-19との戦いに勝利するために、ワクチンや医薬品の発見プログラムに資金を提供しています。
しかし、COVIDが発生する前から、ヘルスケア業界は急速なデジタルトランスフォーメーションの過程にあったことは、下図Bainのグラフからも明らかです。
ヘルスケア業界がDXに注力している理由は主に2つあります。
- 各国の医療費が高い(米国の場合、GDPの18%)
- 医療機関では、管理の行き届かない患者の流れなど、非効率なプロセスが存在
また、世界はCOVID-19から重要な教訓を学び、現在ではヘルスケアにおけるデジタルソリューションをさらに重視するようになっています。
例えば、マッキンゼーの調査では、COVID-19以降、消費者、プロバイダー、規制当局の間で、遠隔医療アプリケーションへの関心が高まっています。
同調査では、現在の米国のヘルスケア支出のうち最大2,500億ドル(総支出の20%)が仮想化に利用できると推定しています。
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ヘルスケア業界におけるDXの意味とは?
ヘルスケア業界におけるDXとは、プロセスや製品をデジタル化して、より良いヘルスケアサービスを提供し、顧客体験を向上させることを意味します。
ヘルスケア業界のシステムには様々なプレイヤーが存在し、DXは各プレイヤーごとに固有の価値を提供します。
保険会社
保険会社も、医療分析ツールなどのデジタル技術の恩恵を受けることができます。
分析ツールの助けを借りれば、保険会社は、検査結果、生体データ、請求データ、患者の健康データに基づいて、各患者のリスクスコアを評価することができます。
したがって、保険会社は、患者のリスクスコアに応じた価格を求めることができます。下図は、Bain社とGoogle社の共同モデルで、平均的な保険会社がデジタル化によって保険コストを15~20%削減できることを強調しています。
病院・医療機関
医療機関では、デジタル技術をプロセスに導入することで、以下のように医療従事者を支援することを目指しています。
- 医療従事者の日常的な医療プロセス(手術など)の支援
- 病院の管理コストの削減
- サプライチェーンコストの最適化
- 患者ケアの向上
医療機器メーカー
医療機器メーカーは、DXを実現する企業といえます。
医療従事者に必要なツールを提供し、患者がより良いサービスを受けられるようにします。より多くの医療サービス提供者がテクノロジーソリューションを求めていることから、医療システムのDXは、医療機器メーカーにとってチャンスとなります。
製薬会社
製薬会社におけるDXの意味は3つあります。
1つ目は、研究プロセスの改善です。臨床データの共有が容易になったことで、製薬会社はより多くの電子カルテ(EHR)を分析でき、創薬方法を改善することができます。
2つ目は、パーソナライズされた患者ケアです。分析結果の活用により、個人の分子・遺伝子プロファイルが特定の疾患にどのように影響するかを理解することで、患者個別のケアソリューションを開発することができます。
3つ目は、管理コストの削減です。医療機関と同様に、製薬会社も何千人もの従業員を抱える大規模な事業を運営しています。DXを活用することで、コストを削減することができます。
デジタル技術を活用したヘルスケアアプリケーション・ユースケースとは?
病院・医療機関
医療サービス提供を改善するための社内アプリケーション
①電子カルテ(EHR)
EHRとは、患者のリアルタイムの記録であり、許可されたユーザーが情報を即座にかつ安全に利用できるようにするものです。 2009年以降、米国政府はこれを奨励しており、米国におけるEHRの普及率は欧州よりも高くなっています。
②AIを活用した医療用画像処理
画像処理や機械学習の技術により、医療用画像診断ツールは、心血管の異常やがんの検出、アルツハイマー病の予測、手術の計画を提供することができます。
③手術用ロボット(SARAS)
SARASとは、外科医が一人で手術を実行することを可能にする手術用ロボットシステムです。自律型ロボットアシスタントは、認知監督システムにより外科手術の実際の状態を理解し、外科医のニーズに応じて行動します。
顧客用パーソナライズド・ケア・アプリケーション
パーソナライズド・ヘルスケア・アプリケーションは、個人の病歴、リスクファクター、身体的属性に応じて、個別のケアや治療を提供します。
①健康アシスタント
チャットボットは、オンライン医療相談のための健康アシスタントとして機能します。Babylonのチャットボットは、チャットボットに提供されたデータを分析し、一般的な医療知識と組み合わせて、患者に健康状態を知らせます。
②フィットネスアプリ
ウェアラブルデバイスからデータを収集し、減量など個人の健康に関する目標を追跡し、ヘルスケア体験をパーソナライズします。例えば、「Google Fit」は、手首から運動量をトラッキングし、日々の目標に応じて進捗をモニターするアプリの一つです。
③遠隔診療
遠距離の患者の治療を可能にするモバイルアプリケーションやウェブサイトが数多くあります。例えば、iCliniqは、患者が必要なときにいつでも本物の医師に相談できる遠隔診療のウェブサイトです。
製薬会社
- 創薬アプリケーション
製薬会社は、デジタルツイン(現実世界をデジタルで再現)などのデジタルトランスフォーメーションの取り組みにより、創薬の効率化を図ることができます。
保険会社
- 保険の価格設定
ウェアラブルデバイスから収集した健康データは、患者の病気のリスクをより正確に評価するための指標となります。
その他にも、リスク予測、オムニチャネル、契約の自動化などのアプリケーションがあります。
医療機器メーカー
- 精緻な製造
3Dプリンターを使って、医療従事者は解剖学的レプリカ、手術器具、義肢を作成することができます。
- 予知保全
IoTセンサーにより、機械が故障しそうな時期を予測することができます。複雑化する医療機器を運用する病院、医療従事者が使用する様々な機器を提供するメーカーにとって重要です。
まとめ
いかがだったでしょうか。
本記事で最も重要なポイントは以下の一文に集約されると考えます。
ヘルスケア業界におけるDXとは、プロセスや製品をデジタル化して、より良いヘルスケアサービスを提供し、顧客体験を向上させることを意味します。
各ケーススタディでもテクノロジーやデータを活用する目的として「誰の何を解決し体験をより良くするか」が書かれています。
今回ご紹介したような各社の取り組みにより、
「顧客体験にどのような変革を起こすべきか?」
「顧客はなぜその変革を受け入れるのか?」
という問いに答えていくことが、自社のDX推進の指針になる最初の一歩ではないでしょうか。
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