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ブログで学ぶUX

第7回「インタビュー対象者の選択にユーザーモデルを活用する考え方」

第6回では、人が行動を起こす時の「動機」について、外発的な動機と内発的な動機に分けて考えてみました。
第7回の今回は、インタビューやユーザーテストのような質的な調査を実施する際の対象者の選択にユーザーモデルを活用する考え方についてご説明して参ります。

データが益々重要になる昨今、購買履歴やアクセスログのような行動データの分析・活用には当然取り組んでいることと思いますが、一方で、行動データの分析だけでは誰がどのように行動したかはわかるものの、何故どんな動機でそのような行動をしたのか、は判りません。
そんな時、インタビューは対象者の意識を直接引き出すためにとても重要な手法です。
但し、インタビューには時間も手間もかかりますから、何十人もインタビューするのが困難なのは当然で、対象者の人数は限定的にならざるを得ませんし、対象者が少数であればなおさら、対象者をどう選択するかはとても重要です。

少し具体的に考えてみましょう。

あなたはある実用性の高さを特徴とするファッションブランドのマーケティング担当者です。
今回、自社商品の改善の方向性を検討するためのインタビュー調査を企画しました。
インタビューの対象者にはファッションに実用性の高さを求める傾向のある人を選択したいと考えています。
今までは、事前に「あなたはファッションに実用性を重視しますか?」のような単純な質問で対象者を選択していたのですが、今回は「消費行動傾向モデル」を使ってみようと考えています。

さてここからは、実際に実施された150名の回答を使って考えていきましょう。
インタビュー対象の候補者には、インタビューの協力を依頼する際に「消費行動傾向モデル」の所属クラスタを判定するための6つの設問に対する回答を得ておきます。

All Rights Reserved, Copyright (C) 2025 UserModelingLABO

得られた回答から、インタビュー対象の候補者150名の「消費行動傾向モデル」における所属クラスタが判定(判別精度:71.5%)されます。

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まずは、自社商品の特徴と親和性の高い対象者にインタビューするのであれば、150名の中のCLUS-2(何と言っても実用性重視派)の47名を対象にしたら良さそうですね。

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所属クラスタを判別したことによって、消費行動傾向におけるCLUS-2(何と言っても実用性重視派)の9つの心理特性の平均値(因子得点平均値)も得られますので、その心理特性を切り口にインタビューを重ねることで、より対象者の解像度を高めることもできるでしょう。

また、この47名は同一のクラスタに所属すると考えられるわけですが、もちろん、同じクラスタに所属する人が全て同じ心理特性を有しているわけではありません。

例えば、CLUS-2(何と言っても実用性重視派)の特徴として重要な第7因子(実用性や機能性を重視する傾向の強さ)の因子得点平均値を見てみましょう。

因子得点平均値は0.640となっていますので、CLUS-2の47人の第7因子に対する傾向性は、所属クラスタを判定した段階で、まずは全員0.640(他のクラスタよりは第7因子に対する傾向性はとても強い)と考えることができますが、あくまでも因子得点の平均値が0.640となっているというだけです。

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この47名の第7因子(実用性や機能性を重視する傾向の強さ)に対する因子得点を6つの設問に対する回答から個別に予測してみると、4名はネガティブなようですので、同じCLUS-2ではあっても、第7因子に対する傾向性を重視して対象者を選択したいのであれば、この4人は外して43名を対象と考えたいところでしょう。

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さらに、このCLUS-2(何と言っても実用性重視派)の47名から第7因子(実用性や機能性を重視する傾向の強さ)に対する因子得点がネガティブな4名を除いた43名を第7因子に対する度合いの強さで並べてみることで、例えば「インタビューの対象者として第7因子に対してポジティブな度合いの強い人から5名選ぶなら、5522 / 388 / 15807 / 22069 / 67 の5名を対象にしてみよう」、といったことも可能になります。

インタビューやユーザーテストのような質的な調査を実施する際の対象者の選択にユーザーモデルを活用するイメージはつかんで頂けましたでしょうか。
インタビューやユーザーテストのような質的な調査を通じて深い洞察を得るためには、限定的な時間の中で調査対象者の解像度を高める必要があり、そのためには、質的な調査自体の品質を高めることは当然ですが、(対象者の人数が限定的にならざるを得ないが故に)対象者をどう選択するかはとても重要です。
「何故その対象者なのか」
「何故その対象者が重要なのか」
「その対象者をどう選んだのか」
…充分に説明できなければ、質的な調査の結果にも説得力が生まれないのは自明です。

次回(第8回)は、施策やデザイン等を決定する段階でよく登場するABテストを実施する場面でのユーザーモデルの活用イメージについて考えて参ります。

著者

小澤 一志

ユーザーモデリングラボ 代表

富士ゼロックス株式会社研究技術開発本部シニアリサーチャー、慶応義塾大学SFC研究所を経て、2019年ユーザーモデリングラボを開業、日本感性工学会会員。
様々な分野を対象に、ユーザーモデリングやユーザーモデルを活用したコンサルティング、UX(User eXperience)リサーチやUX改善コンサルティングに従事。

投稿日:
カテゴリ: UX/UIデザイン
タグ: ユーザーモデル