UX(ユーザーエクスペリエンス)デザインを当たり前にする組織づくり
リサーチによるUX改善は重要、と理解してはいるものの、「正直、時間はないし…。」「これ以上業務が増えるのは厳しい」と悩む方、また、UXに対する社内理解が得づらい、と悩む方の声は、様々な業界から聞こえてきます。
2020年8月20日開催のオンラインセミナー「『いつのまにかUX』のススメ~UXデザインを当たり前にする組織作り」では、ヤフー、サイバーエージェントというウェブ畑を経て、現在は「無人コンビニ」というリアル空間での体験設計にたずさわる金子 剛さんがご登壇。
金子さんには、日常業務を増やさず、「いつのまにか」UXに取り組む体制にシフトする具体的な方法をご紹介いただきました。
「いつのまにかUX」では、「インタビューやります!」「ペルソナ作りましょう!」と声高く呼びかけるのはNG。普段の業務にほんの少しの「UX視点」を混ぜ混んで「いつのまにか」周りを巻き込み、UX視点を「いつのまにか」日常使いしていくことが定石です。
金子さんが惜しみなく紹介された、プロセスごとの「UX視点」の日常使いの実例、今日から業務に取り入れられるものばかり。参考になること間違いなしです!
【オンラインセミナー動画】「いつのまにかUX」のススメ UXデザインを当たり前にする組織づくり
目次
「サービスを作る人」は全員、「UX道」の求道者
剣道経験者の金子さん。セミナーでは「UX道の心を身につける」と銘打ち、「武術」と「武道」の違いになぞらえて「UX術」と「UX道」を解説します。
一説によると、「術」とは「わざ」の集積で、「身につけるもの」です。一方、「道」は精神性と人格を問うもので、「求道しつづけるもの」です(諸説あり)。
この分け方にしたがうと、ファシリテーター、コンサルタントといった、専門的な「わざ」を提供する職種が「UX術」の専門家といえます。
一方、「UX道」の専門家は、答えのない課題に答えを見出そうと日々研鑽する人、と言えます。つまり、サービスを作っている人はすべて、ユーザーに価値を届ける「UX道」の求道者です。
金子さんの考える「UX道」とは、常にユーザーに向き合いユーザーの価値を探求する終わりのない研鑽の旅へ向かう「マインドセット」なのです。
オンラインセミナーのデメリットといえば「視聴者からのリアクションがリアルタイムで得られない」問題。金子さんは拍手の効果音をスライドに仕込み「自分で拍手していく」スタイルでこの問題をひらりと乗り越えます。この演出に、視聴者の皆さんからもチャットで「888888」の拍手が続々!
「UX」を日常業務にアドオンしない。日常業務を「UX視点」にしてしまう
事業に関わる人すべてがUXの求道者であるならば、UX視点を持つことは「アタリマエ」のはず。それなのに、なぜ組織にUX視点が根付きにくいといわれるのでしょうか。
UX視点を組織に根付かせるのが難しいのは、日常業務の上に「UX」をアドオンしてしまい、業務量が通常の120%になってしまうからです。
それなら、業務量を特別に増やすのではなく、日常業務を「UX視点」にしてしまえばいい、と金子さんはにこやかに語ります。
「UX書籍を読むと大仰なことが書いてありますよね。でも、はじめの一歩は、『追加でちょっと話聞いていいかな?』でいいんです」(金子さん)
人間中心にプロセスを回す「ダブルダイヤモンド」を日常使いする
「ただし、」と金子さんは続けます。
「型を知って破るのは『型破り』。型を知らずに破るのは『かたなし(=本来の価値がそこなわれる』とも言います。まず型を知り(守)、知ったことで出来たつもりにならず実践して自分なりに工夫して体得し(破)、自身の業務に活かしていく(離)という『守破離』の段階を踏むことが大事です。」(金子さん)
▶「ダブルダイヤモンド」パートの動画はこちら
「ユーザー」をわざわざ探しに行かなくても、日常の中で既に出会っている
例えば、ダイヤモンドの1つめの段階である「探索」は「リサーチ」のプロセスです。
わざわざ「ユーザーリサーチ」を設定する前に、日常の中ですでにユーザーに出会っていないか、接点を洗い出してみます。すでに出会っているユーザーとの日常会話を「ユーザー中心」にすれば、それはれっきとした「ユーザーリサーチ」なのです。
つけ焼き刃のUXリサーチに注力するより日常のユーザー接点を生かしたほうが、探索数がより増えるというメリットもあります。
また、すでにある知見を再発掘するという方法もあります。社内の古株メンバーにインタビューすることで、すでに得たインサイトの言語化、知見化ができます。この時のコツは「インタビュー」というイベントにしないこと。「インタビューします!」とは言わず何気なくちょっと聞くことが「日常使い」のポイントです。
「プロトタイプ」は手書きでも段ボールでもいい。
同様に、2つめの「定義」は、既存の定例会議内でユーザー視点の質問を投げてその場でカスタマージャーニーをつくる、といった方法で「日常使い」できます。
この場合も、「さあペルソナを書きましょう」とは言いません。定例報告や営業担当者の「売れないんだよねー」といった会話に対して「つまりはこういう人に届けるんですよね」などの質問から、自然にワークショップを始めることができるのです。
さらに、3つめの「展開」(=プロトタイピング)のプロセスは、紙芝居をしてみる、段ボールで作ってみる、といった手近な方法でいったん形にすること、最後の「提供」(=ユーザーテスト)のプロセスは、同僚は友人、家族にまずは聞いてみることで「日常化」が可能です。
こちら
さらに、組織を巻き込むために「まずは勇気を出して自分が踊る」ことの大切さを、「ムーブメントの起こし方」というテーマのTED動画を題材に解説されました。
この動画では、ある男性が大衆の面前で突然踊り始めます。しばらくすると、次の1人がつられて踊りだします。2人で踊っているとフォロワーがさらに2人、3人と増え、徐々に皆踊らないといけない雰囲気になっていくのです。
ただし、肝心の「1人目のフォロワー」の見つけかたに正解はありません。まずは1人目のフォロワーをUXの力で動かしてみよう!と金子さんは呼びかけます。
UX視点の「日常使い」で、ユーザーに選ばれるサイトやプロダクトづくりを目指しましょう
金子さんの解説は、「UXに取り組むと業務が増える」「手間がかかる」という誤解を見事に一刀両断してくださいました。
UX視点を「日常使い」することで、ユーザー視点に立ったプロダクトづくりのマインドが「いつのまにか」身につき、その結果、ユーザーに選ばれるサイトやプロダクトづくりが実現します。
「メンバー全員がUXの視点を持てる組織をつくりたい」「うまく軌道に乗れるよう、UXのプロに伴走してほしい」
…こんな時はぜひポップインサイトにご相談ください。
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