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ユーザー中心組織論。社内で「2人目」の心を動かすUXデザイン

今回のセミナーは、多数のスタートアップの採用顧問や新規事業立ち上げサポートを行い、ユーザー中心組織論 〜あなたからはじめる心を動かすモノづくり〜を出版された金子剛さんに、まずは社内のあなたに続く「2人目」の心を動かす大切さとその方法についてお話しいただきました。

組織が変われば、あなたの組織が生み出すプロダクトもユーザーの心を動かすものになるはずです。UXデザインのスキルは、人を知り・人に共感し・人を動かす技術です。そのスキルはユーザーだけでなく、組織の中にいる同僚、上司、意思決定層の方に対しても発揮することができます。ご覧ください(掲載している資料には、講演時登壇者が引いたマーカー線があります。ご了承ください)

目次

登壇者紹介

ユーザー中心組織論 〜あなたからはじめる心を動かすモノづくり〜

このセミナーを通じて自分の組織での気づきを見つけてください

本日は書籍ユーザー中心組織論 〜あなたからはじめる心を動かすモノづくり〜 の内容を抜粋してお話いたします。ぜひ、今日の話を持ち帰り、自分の組織にあてはめて気づきを見つけていただけるとうれしいなと思います。

これは私がよく使う例ですが「通勤途中に花がいくつ咲いていますか?」と言われても覚えていないと思います。「それを帰りに数えてください」と言われると数えられると思います。

今日お話しすることはこの「花」のように、意識すると見えるものです。覚えたことを明日、自分の組織にあてはめ「こういうことなんだなと」気づいて活かしてもらえるとうれしいです。

人の心を動かすデザイン

では本題に入ります。まず「人の心を動かすデザイン」ですが、人の心を動かすとはなに?デザインとはなに?という話をします。

モノづくりは「心を動かす」仕事へ

今回、特に覚えてほしい資料には右上に星をつけています。時間の無い方は星の資料を中心に聞いてください。
書籍の導入部分に『「心の動かし方」はモノづくりをする人にとっての新しい教養です』と書きました。UXデザインは、ユーザーの「心を動かす仕事」であるし、UXデザインを浸透させるというのも「心を動かす仕事」です。

何かをルーチンワークで作るというより「人の心を動かす」ということに仕事の重きがシフトしています。みなさんにはこの知見をご提供できればと思います。

「機能的な価値」の飽和

昨今は「機能的な価値」が飽和してきていると感じています。
例えば、一眼レフは望遠性能が高く「機能的な価値」がありますが、「120倍に望遠できるようになったから2倍で買いますか?」と聞かれても、「買わない」となると思います。

それよりも「意味的な価値」で、写真を撮ったことによって人から「いいね!」と言ってもらえるといったような、「うれしい!という感情にこそお金を払う」そんな時代がきているんじゃないかと思います。

スマートフォンについているカメラで撮ってInstagramにアップして「いいね!」をもらって承認欲求が刺激されたり、喜びを得るなど感情に働きかけるところに価値があるのではないかと思っています。

意味的な価値は「人の心」が生み出す


「意味的な価値」というのは人の心が生み出すものです。もちろん、機能がなければ何も影響を与えることが出来ないので、最低限の機能というものは必要ですが「この機能がどれぐらい人の心をゆさぶったのか」ということに、人はお金をかけるようになっているのかもしれません。

「機能的な価値」はわかりやすいですが、その機能がどんな「意味的な価値」をもっているのかをプロダクトを見る時に見ていただけるとうれしいです。

人の心は千差万別、動かすためには「共感」が必要


人の心は千差万別。動かすためには「共感」が必要です。自分が使うだけのツールを開発するのであれば、自分が最高のものを作ればよいですよね。
例えば、ウナギのゼリー寄せという食べ物がイギリスにあり、郷土料理として食べている人がいます。一方で、日本では海苔巻きを食べています。
海外では海苔は海の雑草と言われているらしく「雑草を食べるのか」と思われるそうです。日本で生まれ育った人からすると、「ウナギのゼリー寄せって気持ちが悪いな」と感じたりします。
つまり、本来の「意味的な価値」というのは、背景によって変わりうる、ということが言えます。

思い込みは良いモノづくりを防ぐ

良いモノづくりをするためには、思い込みを捨てなければいけません。それは私はこう思うから、こういうものを作らなければいけないという思い込みです。

例えば「30代・主婦・女性だから家庭的だろう」というようなステレオタイプをもってしまうと、誰にも刺さらないものになってしまうことがあります。だから、ユーザーにとって「意味的な価値」を生み出すためには、共感の解像度を上げることが大事になってきます。

「共感」をもって正しく人間の心を知る

私は相手の立場に立つということを「共感」と定義しています。例えばこれは悪い共感の例ですが、泣いている女の子がいた時、「わかる、私も痛くて辛かった」と同情してしまったら、女の子が痛いことが辛いのではなく、失敗したことが辛いのかもしれないといった、さまざまな背景がある可能性が見えなくなってしまいます。

自分に置き換えてしまうのは正しくない共感で、相手の立場に立って見るとことが「意味的な価値」を生み出すのに大事になってきます。

ひとりのユーザーの先にある実現したい社会を見通す


ペルソナを作る際に「10万人に売りたいのに、1人の人を見たって仕方ない」という話が出てくることがあります。ペルソナは、多くの人向けの商品を1人の人に向けてつくることによって、喜ぶひとりの人と同じような人たちは必ずいるはずだという考え方ですね。その先にある実現したい社会がこの人の背景に、どのくらい広がっているんだろうと考える。
こういう人たちがいるはずだという人たち全員を対象に商品をつくっていくと、抽象的なものになります。まず、この「喜ぶ1人の人」に組織のみんなで目線を合わせていきましょうということが、書籍でお伝えしたい骨子です。

組織の心を動かす


「組織の心を動かす」という話をします。

モノづくりの議論が収束しない経験ありませんか?

モノづくりの議論が収束しない経験はありませんか?例えば、エンジニアさんが「開発的にはこういうのがクールなんです」とか、営業さんが「売上的には」とか、デザイナーさんは「こういうカッコいいものが作りたい」とかになると、結局、コストとのバランスから折衷案しか生まれないことがよくおきます。

おなじ「ユーザー」でも思い描いているイメージが違う


例えば、「顧客を大事にしよう」というスローガンで、まとまっている会社は一見、同じ方向に向いているように見えて、「ユーザー」の意味が、人によって違っている場合があります。「ユーザーってIDもっている人でしょ?」「お金払ってくれる人でしょ」「使っている人でしょ」そうなると、それぞれが見る世界が違ってきてしまいます。

群盲像を評す(ぐんもうぞうをひょうす)

群盲像を評す(ぐんもうぞうをひょうす)という寓話があります。目の見えない人たちが、像の足を触って「これは固いから木だ」、鼻を触って「グネグネしているからこれはヘビだ」と、全員が正しいことを言っているにも関わらず、全体として誤ったことを言っていることがあります。

エンジニアはログを見て、デザイナーは使っている人やインタビューを見て、経理はコストを見て、と違うところを見ていることはないですか?

「良いプロダクト」も、もちろん違う

それぞれが考える「良いプロダクト」も、もちろん違います。

視点が揃っていないと誰にも求められないものが生まれる


例えば「カッコいいスポーツカー」と「便利なワゴン車」の折衷案で出来上がった中途半端な車を誰が欲しがるのでしょうか。お互いの視点がそろっていないとロスが生まれるということです。

こうして船頭の多い組織は山に登ってしまいます

船頭の多い組織は山に登りがちということですね。

組織はその形に沿ったプロダクトを生み出してしまう

組織はその形に沿ったプロダクトを生み出してしまいます。例えば、エンジニア部門、デザイナー部門、ビジネス部門がそれぞれ別の目標を追っていたり、離れたところで仕事をしていることはよくあることだと思うのですが、それに合わせたプロダクトになってしまうことがあります。

なので、組織の形をユーザーに合わせていくことが大事です。ユーザー中心に組織を作っていく。そうするとプロダクトが自然にユーザーに向いた形になってきます。

逆に、組織が育つと生み出す価値も大きくなる

この形で組織を育てていくと、相手に与える価値も大きくなっていきます。先ほどの「意味的な価値」も大きくなっていきます。

組織のピースがハマっているのか確認してみよう


ぜひ、皆さんに気づきとして、自分の組織にあてはめて見てほしいのが、組織でそれぞれの仕事がユーザーにかみ合っているのか、把握していただきたいです。パズルのズレはあると思いますが、「パズルがずれていることに気がついているのか、いないのか」は、大きな違いだと思っています。

UXデザインは改善を繰り返していくプロセスです。同じように、ズレに気づいていれば改善でき、気がつかなければそのままになってしまうので、ぜひ気がついてほしいです。

あなたの組織は機能していますか?


「あなたのチームは、機能していますか?」という書籍からご紹介するのですが、機能不全の5段階があります。「あなたの組織はお互いに信頼してまいすか?」「衝突を恐れていませんか?」「責任感を持たなくなっていませんか?」など、組織がうまくいっていないと、プロダクトもいいものになりません。

(「あなたのチームは、機能していますか?」パトリック・レンシオーニ 著 翔泳社(2003年)をもとに作成)

悪い関係性は悪いプロダクトを生み出す

関係性のバッドサイクルという考え方があります。チームの関係性の質が悪いと、お互いに疑心暗鬼だったり、なかなか言いたいことが言えなくなり、考える思考の質も小さくなっていく。すると一歩が踏み出せなくなって、アウトプットも悪くなっていきます。

アウトプットが悪くなってきた時に、「エンジニアが作らないせいだ」「セールスが売ってこないのが悪い」と対立して、萎縮してしまう。すると結果としても悪くなります。こんなバッドサイクルに陥っている組織はありませんか?ぜひ、考えていただきたいです。

(図はhttps://thesystemsthinker.com/what-is-your-organizations-core-theory-of-success/
を参考に作成)

良い関係性は優れたプロダクトを生み出す

良いプロダクトを作りたいと思っているのであれば、まずは尊敬しあうチームを作りましょう。すると自然と多様な発想が出てきます。すると新しい行動が生まれます。私も今回ポップインサイトさんとの関係性の質がいいので、セミナーという新しい行動をしてみましたが、今回のことで優れたものが生まれてくれたら嬉しいなと思っています。

(図はhttps://thesystemsthinker.com/what-is-your-organizations-core-theory-of-success/
を参考に作成)

隣人の心を動かして組織の心を動かすことが良いプロダクトづくりにつながる

1度に組織を動かすことは難しい、まず2人目、そしてチーム、それから組織と徐々にプロダクトをグロースしていくと良いと思います。

隣人へのUXデザイン

早く行きたいなら一人でいけ。遠くに行きたいならみんなで行け

「UXデザインをはじめたいけどうまくいかない」「良いプロダクトを作りたいけどうまくいかない」など悩みますよね。自分1人で作れば素早くできると思うけれど、社会に影響を与えるような「意味的な価値」のプロダクトを作るには、みんなで行く必要があります。共創が必要になります。

あなたも組織全体と影響力のネットワークで繋がっています


当たり前のことですが、忘れがちだなと思っているのが、どんなに大きい組織になっても影響力はソーシャルパスでつながっています。あなたの隣に一緒に働く仲間がいて、その隣にもいて・・・とつながっている。もしかすると、あなたの影響力は小さいものかもしれない。でも、ドミノがひとつ倒れることによって倒れる2人の人がいる、そのことを思い出してほしいと思います。

まず二人からはじめよう


組織全体を変えたいなと思うのであれば、まず1人の人を変えていく。変えるというのはおこがましいですね。「一緒に踊る」ということをやっていただきたいなと思っています。

熱量を高めあえる二人目を見つけよう


もしかしたら、あなたの周りには熱量が低い人しかいないというふうに見えているかもしれません。でも、少し遠くを見ると、部署を横断してやりたい人はいるかもしれません。社員数が少ない場合は、社外のコミュニティで相談するなど、2つぐらいパスを回すと熱量が高い人が見つかることがあります。その人を最初の2人目、フォロワーとして見つけていきましょう。

2人の心を動かせたら、2人目が3、4人目の心を動かす

「ドミノは自分の1.5倍のサイズのドミノを倒せる」という言葉が好きなのですが、小さなことかもしれないけれど、連鎖反応で大きくなっていく。まず、1人の心を動かす。私もそうですが、UXデザイナーは、ユーザー1万人、10万人の心を動かしたいと思って仕事をはじめたと思うのですが、1万人のユーザーさんの心を動かすために、まず2人目の心を動かしてみませんか?

2人の心を動かすためにも深い「共感」から始めよう


1人のお客さんの後ろには、たくさんのお客さんがいるように、組織も同じだと思っています。思い込みで「この人は協力的ではないんだな」「時間が限られているからできない」と言われても、本当にそうなのかなと考えることが重要です。言っていることと思っているインサイトは違っていたりするので、ぜひ相手の立場にたって、ユーザーインタビューをメンバーにしていただくと良いと思います。

本物のユーザーよりも隣人への共感のほうがUXデザイン出来る機会は多いはず


本物のユーザーにいきなりUXデザインをはじめようとする方が多いのですが、本物のユーザーに会うのはコストもかかるし、プロセスとしては時間がかかりますが、隣で働いている人ならすぐにできるんですよね。ユーザーの心を動かすのも、隣の人の心を動かすのも、基本的なところは一緒だと私は思っています。

小さな「行動」のプロトタイピングで組織を動かしていこう

小さな行動からはじめて、相手にインタビューして投げかけることもプロトタイプです。例えば社内のビジネスチャットで「私はこう思っているんですがどうですか?」と投げかけることもプロトタイプだと思っています。

あなたの日々の振る舞いを少しだけデザインし直すことによって、隣の人が共感してくれる、その先には、組織自体が動いて、さらにその先ではユーザーにもいい影響があると思います。

小さな行動から初めて改善のループを回すプロセスはUXデザインと同じ

小さな行動からはじめると新しい学びがあります。それを振り返ってみると、次はこういう行動をすればいいのだとわかります。こういった改善のループを回すのはUXデザインと同じです。

隣人へのUXデザインもインタビューが基本

隣人へのインタビューでも、やはり会話から相手のことを知ることが基本です。「相手を知る、共感を知る」ということが大切です。「なぜ、あなたはこの仕事をはじめたの?」とか、バックグラウンドが違うと見えるものが違うので「どんなことを学んできたんだろう」とか、大事にしているものをきちんと理解しましょう。
理解されると理解したくなるので、あなたが理解することによって相手も理解してくれるグッドサイクルの起点になるかもしれないですね。

問を分解して小さく共感を深めていく


そして、まず、小さくプロトタイピングしていくと良いと思います。例えば、「対象のユーザーが定義されていないから定義しよう!」となっても、大きな問題を倒すのは難しいです。問を分解して、対象ユーザーが定義されていないのは、「実はイメージはあるが共有されていないだけ」であったり、「各人が思っているユーザー像を共有しあえばいいだけ」であったり、分解していくことによって小さくはじめられます。

さあ、はじめよう


よく組織を観察して2人目をみつけて、はじめてみてください。

一番小さな初め方

では、具体的にどうはじめればいいのでしょうか、実践に沿ってご説明します。

実践

はじまりをはじめる

あなたの隣人に届ける言葉をUXデザインしてみよう

共感→問題定義

最初は「共感」です。組織を見渡してこの人が2人目のフォロワーになってくれそうだなという観察からはじめて、まずは相手の気持になりきってみてください。インタビューというと堅苦しいので、「10分、珈琲飲みませんか?」と声をかけて聞く。すると、新しい気付きが得られると思います。

次に、「問題定義」ですね、相手が抱えている課題を推察してみてください。例えば、自分が「UXデザインを推進したい」と思っていたとしても、「UXデザイン」は、ものすごく抽象的な言葉なので、相手が思っているUXデザインとは違う可能性が高いです。

「相手が何を解決したいのか」に寄り添ってほしいなと思います。「私がUXデザインをやりたい!」ではなく、「相手がやりたいと思っているのが、どんなことなんだろう」「まずは仲間が欲しいのかな?」「事例知りたいのかな?」とか、同じユーザーでも描いているイメージが違うので、そこの分解をしていただきたいです。ただ、ここをずっと考えていても、答えは出ないので、次のアイデアに移ります。

アイデア→試す

次に「アイデア」ですね。相手の課題をどう解決できるだろう。一緒にUXデザインを学べる仲間がほしいのであれば、社内のチャットツールでコミュニティを作ってみましょうか?とか、UXデザインの勉強部屋を開いてその人をジョインさせてしまうとか。小さな「行動」のプロトタイピングで組織を動かしていこう、ということですね。

次に「試す」ですね。勉強部屋を作ってみたけれど、活性化しなかったなどあるかもしれません。もっと違う課題が他にあるのかもしれないと振り返って、次の行動をしてみよう。

例えば、「時間をとらないと勉強できないよね」となったら、「では、読書会をしましょう」とかいいかもしれないですよね。改善のループはUXデザインと同じだなと思っているので、隣の人に対してループを回してもらえればと思います。

隣人の心を動かして組織の心を動かすことが良いプロダクトづくりにつながります。その先には、ユーザーがいて社会がいます。愚直な道のりこそがUXデザインで、良いもの作りが生まれ、社会もよくなっていくと思います。

この本が、このセミナーが「あなたの心を動かすこと」で社会がさらに良くなることを願っています

UXデザインは、デザインを起点に社会をよくしていく運動かもしれないとおもっています。もし今日の話をもとに、小さな行動を起こしてみようという人がいたらうれしいです。
デザインによって世界がもっと良くなっていくことを願っています。
ユーザー中心組織論 〜あなたからはじめる心を動かすモノづくり〜

QA

・ペルソナづくりが有効という話はよく聞くのですが、いざペルソナが喜ぶようなサービスを作ってみたら、思っていたより反応が良くなかったというようなことはないでしょうか?もし、そんなことが起こった場合、起動修正の仕方などがあればお聞きしたいです。

ペルソナづくりが有効なのは、目線を揃えることです。なので、「思っていたより反応が良くなかった」というのは喜ぶべきことです。一発でプロダクトがペルソナに刺さることは、100%に近いくらい無いと思っています。

逆に何がペルソナとずれていたのか、「ペルソナが喜んでくれなかった理由に価値がある」ので、これは学びの1つ目です。反応が良くなかったことを見つけて、ペルソナの解像度を上げていくことをやっていただきたいです。

・チームや組織により影響を与えるためのコツやポイントはありますか?影響が伝播しやすい方法などがあれば教えていただけると嬉しいです。

影響を与えるためのコツは1つではありません。組織も人も同じものはないと思います。まずは、相手をよく知ること、「どんなことに影響を受ける隣人や組織なんだろう」と探ってみるための投げかけを1つ最初にやっていただければと思います。

(進行者より:隣人への理解をする時に金子さんがよくすることはありますか?)

何も知らないという前提に立ったほうが良いと思っています。自分が「そうじゃない」と思う意見が出てきた時に、自分の中で「こうじゃない!」と言いたくなってしまうんですが、それをなぜ話したのか、ちゃんと聞かないといけないと思っています。なぜ、その発言が出てきたんだろうと。人間て言葉に10%ぐらいしか思いがのってこないと言われています。90%にあるバックグラウンドが何だろうと。ユーザーインタビューと同じだと思っています。「このプロダクトすごく好きなんです」の背景を知ることがインタビューだと思いますが、同じことだと思っています。

・社内で積極的にユーザーテストを行い、UI設計に役立てているのですが、他部署で決定権を持つ人の1人が「自分はユーザーテストを30%くらいしか信用してない」と公言しており、テスト結果からの分析結果を納得してくれなかったりします。そういう人に対して、ユーザーテストの有効性に関して理解を得るにはどのようなアプローチがあるか、アドバイスをもらえないでしょうか。

まず、背景を知りたいですね。鵜呑みにしちゃう人は逆に怖いと思うので、「過去にうまくいかなかった経験があったりするのかな?」と推察するんですが。

もしかしたら、ユーザーテストをきちんとやってきたからこそ言えるのかな?やってきた上で30%当たったのかな?この人はユーザーテストを〇×テストだと思っているのかな?テストの点数をつけるようにユーザーテストをしているのでは?とか。それであれば、新しい発見を見つけるため、新しい着想を得るためにやるんですよと僕だったら言うと思います。
自分が思っているユーザーテストと、相手が思っているユーザーテストは決して同じではないので、そこがずれるんだろうと感じます。

(進行者より:金子さんは、人を知りたいとか、好奇心があるんですかね?)

尊敬するリサーチャーさんが皆言うんですが「人が好きだ」というんですね。「なんで、なんで、なんで」と聞いてしまう。言われたことに対して、自分の感情で返しちゃうより、一旦置いて、「なんでですか?なんでですか?」と、興味で掘っていく人たちに、優秀なUXデザイナーが多いなと思います。

私はコミュ力が低いので苦手なんですが、後天的にでも身につくと思うので、なぜ?なぜ?を5回やるといいと言いますが、この方にもやってほしいですね。

・ベテランのデザイナーが「自分は自身をユーザー化することに自信があるから、テストやインタビューは必要は無い」と言います。金子さんはそういった方をどのように説得しますか?

このベテランデザイナーがなぜ自信をもっているかですよね。本当に自信があって、この質問者の方がそのレベルに届いていないのであれば、私だったら追いつくレベルになるように努力すると思います。

そうではなくてベテランデザイナーさんの思い込みなのであれば、なぜそう思い込んでしまったんだろうということを掘りにいきますね。もしかしたら、自分とその人が作りたいものが違う可能性がある。私が思い描いているユーザーがAで、ベテランの人が思い描いているユーザーがBだったとしたら、Bのことは完全にわかっている、いや、Aのこと全然わかっていないじゃん、ってなってしまうと平行線になると思うんです。

なので、まずはその人が思い描いているユーザーさんを完璧にわかるぐらい根掘り葉掘り質問してペルソナを書いてみる。「どんな行動をして何をしているんですか?」と聞いてみると、もしかしたら見える化しているうちになるほどとなるかもしれないし、ベテランデザイナーさんが「知らなかったな」という点が出てくるかもしれない、そこを深堀りしてみてほしいですね。

セミナーの内容は以上です。

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