SDGs関連商品や企業に対する消費者のホンネ
SDGsに関する企業の取り組みは数あれど、実際SDGs関連商品が一般消費者にどう受け止められているのか、気になったことはありませんか?
今回は一般消費者を対象に、「SDGs関連商品への購買意欲」や「SDGsへ取り組む企業への印象」などを調査してみました。調査で得た示唆から、さらなる調査を行うべきポイントもあわせて記載しています。
SDGs関連商品の開発やマーケティングに関わっている方、リサーチ方法に興味がある方など、ぜひご覧ください。
目次
SDGsへの消費者の認知度
これまでSDGsに関する調査のご依頼をいただくたびに、認知・興味について聞いてきましたが、年々SDGsを知らない人の割合は減ってきています。メディアで大きく取り上げられる機会が増え、現在では多くの消費者が認知しているといえます。
ただし、「知っているつもりで誤認している」人もいると思われます。
実際に特定のキーワードの普及度を調査する場合には、設問を重ねていくことで、誤認なく理解しているか、どの程度の理解度なのかを確認することが可能です。
さらに調査を行えば、以下のことも見えてきます。
・いつからSDGsに興味を持ったか
・何がきっかけであったか
・SDGsに関する情報収集をしているか
・SDGsをどういうものだと解釈しているか
・SDGsの17のゴールの内、特に興味を持っているものはどれか
SDGs関連商品の想起度
SDGsに一定の興味がある回答者は、何らか関連商品を想起できています。
ただし、SDGsに多少なりとも興味があるにも関わらず、関連商品については「まったく思いつかない」という人が2割近くいるのも見逃せません。
電気のスイッチをこまめに切る、食品は食べきれる分だけ少なく買うといった、生活の中で取り組めることへの意識が強いのかもしれません。もしくは、実際に商品自体は知っているものの、それとSDGsとの関連性に気づいていないのかもしれません。
消費者の価値観や生活スタイルをインタビューといった更なる調査で把握することで、新たな施策につながる可能性もあります。
以下は実際のコメントから抜粋した商品例です。
■食品
・フェアトレードのコーヒーやチョコレート
・フードロス対策の見た目の悪い食品
■日用品
・エコバッグ
・シャンプーや洗剤の詰め替え用
・再生紙のティッシュ、トイレットペーパー
■飲料
・ラベルレスペットボトル飲料
■衣類、服飾
・リサイクルダウン
・ペットボトルから作られた衣類
・男女関係なく着られるもの
■家電
・省エネ家電(エアコン・冷蔵庫・照明など)
・水素自動車
さらに調査を行えば、以下のことも見えてきます。
・それぞれの商品のタッチポイントはどこであったか
・購入意欲はどの程度湧いたか、それはなぜか
・誰かに共有したことがあるか、それはなぜか
実際に買ったことがあるSDGs関連商品
先ほどのSDGs関連商品として思いつくものと同様、食品、日用品、飲料の回答割合が高いことがわかります。
これらの食品、日用品、飲料のSDGs関連商品のうち、具体的にどのような商品が購入されているのか、購入にあたって消費者がどのようなことを期待しているのかを明らかにすることで、消費者に寄り添って自社の商品・サービスをSDGsと関連させていくことが可能になります。
さらに調査を行えば、以下のことも見えてきます。
・回答した商品を購入する、もしくはしない要因は何か(日常生活での接点の頻度なのか、価格なのか、他にも要因があるのかなど)
・購入するにあたり他の商品と比較をしたか
・今後も買い続けたいと思うか、それはなぜか
・人に勧めようと思うか、それはなぜか
SDGs関連商品であることでの購入意欲への影響度
この調査結果はSDGsに興味がない人も含まれた回答です。それにも関わらず、SDGs関連商品であることは購入意欲へネガティブに働かないということがわかります。
しかし、具体的な選択理由を自由回答のコメントから確認すると、SDGsという目的の前に、まず品質や自身へのメリットが重要なことが分かりました。つまり、SDGsへの貢献と消費者のメリットを相互に訴求することが重要な観点の1つなのかもしれません。
以下は実際のコメントの抜粋です。
■購入意欲は変わらない
・エアコンや冷蔵庫、ハイブリット車は、電気代やガソリン代の削減を期待して買う。SDGsを掲げているのだろうが、だから買いたいというわけではない。(30代/男性)
・ラベルレス飲料はSDGsが目的だと当初知らなかった。剥がす手間がなくなり楽なので、今後も買い続けたい。(50代/女性)
・いつも使っている商品が途中からSDGsの表示を始めたが、特になんとも思わず使っている。SDGsでなくても機能が良ければ買うし、そうでなければ買わない。(40代/男性)
■購入意欲が上がる
・SGDsを意識して詰め替え用品や再生紙を買っている。自分が地球に優しい行動を取っていると実感したいから。(20代/女性)
・多少高いとは思っても、フェアトレードのコーヒー豆やチョコレートを選んで買うようにしている。社会貢献の一環だと思う。(30代/女性)
・コンビニのおにぎりの包装でプラスチック減だという商品を見つけ、どんなものかと興味を持ち買ったことがある。(40代/男性)
■購入意欲が下がる
・SDGsという流行りに乗っているだけなのでは?と思ってしまい、買いたくなくなる。(40代/女性)
・ペットボトルから再生したフリースを買ったが、他の衣料に比べてすぐに劣化してしまった。品質が追い付いていないのではと思い、今後はSDGsと謳うものは買いたくなくなった。(30代/男性)
さらに調査を行えば、以下のことも見えてきます。
・実際に購入した商品のタッチポイントはどこであったか
・SDGs関連商品であることをどこで認知したか
・他の商品と比べたときに、どのくらいの価格差までが許容できるのか
・なぜ購入の後押しとなるのか、なぜ社会貢献したいと思うのかその心理
SDGsに取り組んでいる企業への印象
この調査結果もSDGsに興味がない人が含まれた回答です。結果から、SDGsの取り組みによる企業イメージへの悪影響はかなり低いと見てよさそうです。
以下は実際のコメントの抜粋です。
■好印象
・利益追求だけでなく、社会課題に取り組むことは企業の責任でもあるから。(40代/男性)
・好印象だが、見せかけでなく真剣に取り組んでいるかは見極めたい。(70代/女性)
■どちらとも言えない
・取り組んで当たり前だと思っているので何も思わない。(20代/女性)
・時代に合わせる努力は感じるが、印象が変わるほどではない。(30代/男性)
■悪印象
・ポリシーではなく宣伝目的ではと思ってしまう。(60代/男性)
・取り組み自体は好印象だが、それを強調したり価格に上乗せしたりされると悪印象になる。(50代/女性)
さらに調査を行えば、以下のことも見えてきます。
・SDGsに取り組んでいる企業として思いつくのはどこか
・SDGsに取り組んでいることをどこで認知するか
・企業の取り組み内容をどこまで理解しているか
・見せかけや宣伝目的と思うか思わないかの境目はどこにあるか
・企業への印象が変わった体験はあるか、どのようなものか
まとめ
今回の調査では、消費者の多くはSDGsに対して興味関心があり、それに関連する商品や企業に対しても前向きな印象であることが分かりました。同時に、認知度が低い商品や業界があることも浮き彫りになりました。
アンケート調査は、全体のボリュームを知ることはできても、消費者の深層心理に迫るには適さない手法です。
消費者の生活の中でSDGsやそれにまつわる商品はどのような存在なのか、潜在的な問題点は何か、どのような施策が認知度や購買意欲を高めるのか、といった現状把握や今後のアクションにつなげたい場合は、消費者へのインタビュー調査が有効です。
また、インタビュー結果から消費者のペルソナやカスタマージャーニーマップを作成することで、社内で共通認識を持つことができ、商品企画やマーケティング戦略を円滑に進めやすくすることが可能です。
ポップインサイトでは多くの実績がありますので、ぜひお気軽にご相談ください。
また、株式会社メンバーズでは「気候変動と企業コミュニケーションに関する生活者意識調査」を年に1度行っています。気候変動問題に配慮する商品の購買意向や購買実態、購入しなかった要因についてなどレポートにまとめていますので、こちらもよろしければダウンロードしてご覧ください。
執筆者:森川
ポップインサイトに入社後、UXリサーチャーとして、大手ECサイト、旅行雑誌、公営競技、求人媒体、電子コミックのサイト改善など、UXリサーチの業務全般を担当。