アジャイル開発にUXアプローチを取り入れるための6つのポイント

【作成】2019/11/20   【更新】2019/11/22 

この記事は、米国Norman Nielsen Groupの許可のもと翻訳したものです。

元記事:The State of UX Agile Development
by Hoa Loranger and Page Laubheimer on February 5, 2017

要約:近年の研究結果から、アジャイル開発プロセスにユーザ中心設計を取り入れることでUXが飛躍的に向上していることが明らかになりました。

アジャイル開発は、従来のウォーターフォール開発の様々な問題点を克服できる手法です。しかし、様々なチームでこのアジャイル開発とユーザ中心設計を両立させるためには、新たな問題点を解消する必要があります。

我々は近年、アジャイル開発とユーザ中心設計を両立する方法を知るための調査を実施しました。この調査では、アジャイル開発とユーザ中心設計をうまく両立できたチームがどのようなテクニックを使っているか、に着目しました。

※本稿は、アジャイルUXレポート最新版(第3 版)の要約です。

調査は、プロダクトマネージャー、デザイナー、UXリサーチャ、およびソフトウェア技術者を対象とし、米国、英国、オーストラリア、シンガポールで実施されました。各種サーベイとデプスインタビュー、ケーススタディを組み合わせた調査には、全体で356人の回答者が参加しました。

アジャイル開発スタイルを約7割のチームが採用

ユーザ中心設計をアジャイル開発プロセスに取り入れることで、UXは飛躍的な向上を遂げています。もちろん「万能のソリューション」など存在しませんし、組織ごとに環境や課題は異なります。
しかしながら、アジャイル開発スタイルは一般的になってきており、UXリサーチャ、UXデザイナーといった専門家が過去の失敗から学びを得て多くの不具合を解決できるようになってきているのです。

本調査の対象者は、サポートしているプロジェクトの69%がアジャイル型であると回答しています。これは、過去数年の結果と比較しても大幅な増加です。

図1.アジャイル型開発が採用された割合の平均値(回答者あたり)
アジャイル開発が採用されるケースは増えています:2008年時点でのアジャイル開発プロジェクトは40%のみでしたが、2016年には、プロジェクトの3分の2以上がアジャイル開発となっています。

興味深いことに、「アジャイル開発を採用している」と答えたチームのUX専門家の22%が、自身のチームではハイブリッドアプローチを採用しており、アジャイル型だけにこだわってはいないと回答しています。たとえば、要件定義と設計段階はウォーターフォール型、実装段階はアジャイル型、という具合です。つまり、「完全なアジャイル開発」を実施しているわけではなく、プロダクトチームはアジャイル開発を機能させるのにまだ苦労しているということです。

ユーザ中心設計とアジャイル開発は相性がよい

今回の調査結果は、ユーザ中心設計とアジャイル開発をうまく組み合わせることができると、より良いUXの実現やビジネス価値創出を実現できることを示唆しています。
UX専門家に、ウォーターフォール型のプロダクト開発とアジャイル開発のどちらがより成功しているかを聞いたところ、アジャイル型の方がより多く成功していると回答しています。

図2.製品開発手法による成功の度合い(1=全く成功しなかった、7=非常に成功した)
UX専門家は、2009年にはウォーターフォール型がアジャイル型よりも成功していると評価しましたが、7年後にはパターンが逆転しました。アジャイルプロジェクトで働く人々は、ウォーターフォール環境で働く人々よりも大きな成功を感じたと答えました。

一般的には、アジャイル開発のフレームワークを採用することで、透明性と反復性が増し、課題特定や新機能実装がよりスピーディーに進められます。開発者と設計者が何ヶ月もかけてそれぞれの作業だけをこなしたあげく、製品がリリースされた後になって始めて課題が見つかる、という時代は終わったのです。

本調査対象者の多くは、アジャイル開発とUXの考え方を組み合わせることで、「土壇場になって思いもよらない課題が見つかる」といったような状況を減らし、イテレーションの度に必要に応じた調整が実施できるようになったと答えています。

アジャイルUXチームとはどういうチームか

アジャイル開発の経験値がプロジェクト成否のカギ

本調査対象のチームでは、アジャイル開発実践年数の平均は2.9年です。

アジャイル開発プロジェクトの効果について、1から7のスコア(1=全く効果が無かった・7=非常に効果があった)でUX専門家が評価した結果、アジャイル開発経験が平均3年以上のチームのプロジェクトにおいてアジャイル開発が「効果が高かった」と評価(スコア6または7)されました。

一方で、「アジャイル開発の効果が薄かった」チーム(スコア1から3)は、アジャイル開発の経験が1年近く短い傾向がありました。

アジャイル開発プロセスを成功させるには一定の年数が必要ですが、年数を経たからと言って完璧になるわけではありません。多くの組織が、十分なUXリソースを獲得できず苦労しており、常に新人研修を行っている状況です。重要なことは、採用したアジャイルUXプロセスについて、クライアント、新しいチームメンバー、そして外部チームを教育することです。スタッフに無理のない期待値を設定することで、スタッフ同士のコミュニケーションや変化をスムーズに実現できます。

表1. アジャイル開発の効果と経験年数の比較
効果が高かったチームと薄かったチームとを比較すると、効果が高かったチームのほうがアジャイル開発の経験が1年近く長いことがわかりました。

この発見から、組織が最近アジャイル開発を採用した場合は

  1. 新プロジェクト発足時特有の困難があるものと割り切ること
  2. 発足初期の問題で意気消沈しないようにすること

の2点がポイントになると言えます。なぜなら、成功は、組織ぐるみでの学習が必要となる数年間を経てはじめて訪れるものだからです。

UXリソースを確保すべく適正に投資する

本調査では、チームメンバーの平均17%がUX専門家でした(過去数年は10%)。
このようなUXへの投資増加は、UXがビジネスにとって重要と考える組織が増えていることを示しています。
チームの人数は平均10人で、約2人のUX専門家が含まれていました(※調査回答者の大部分は、UX Conference に参加し、UXトレーニングを実施している組織で働く人たちです。そのため、一般的なアジャイルチームにおける比率はこれより低い可能性があります)。「チーム内の17%がUX専門家」という環境はとても恵まれていると感じるかもしれません。しかし、17%がUX専門家であるチームが実在するということは、まだそこまでUXリソースが確保できていないチームも希望を持てるということです。

ただし、UX専門家をどれだけ増やしたからといって、成功が保証されるわけではありません。実は、UX専門家の割合は、成功したチーム、成功していないチームのどちらももほぼ同じ(17%)だったのです。企業におけるアジャイルUXの成熟度レベルと、企業文化や構造などの要因が成功するには重要です。

「協力カルチャー」をつくる

チームの環境に満足している人々は、協力的で健全な雰囲気の中で、明確な役割と職責を理解して働いていると感じています。チームメンバー全員(開発者やステークホルダーを含む)が、有用で質の高いプロダクトを作ることに対する責任感を持っているのです。

UX専門家がプロダクトマネージャーと密に連携し、戦略について議論したり、作業の優先順位を決めたりする、という状況は増加傾向にあります。UXを考慮することによって、プロジェクトの方向性を知るための有用なデータを得ることができますし、より大規模なUIアーキテクチャについてチームが一貫したビジョンを持ち続けることもできるのです。

開発スプリントよりも先にUXに取り組む

多くのUXアジャイルチームは、これまで同様、UXリサーチを開発スプリントよりも先に実施したいと答えています。UXリサーチとデザインを少なくとも開発の1スプリント前に実施できれば、仮説を考える時間やテスト時間を十分取ることができます。ただし、経験豊かなチームの場合はこの限りではありません。メンバー同士が一緒に作業したり誰かが責任を持って作業したりするプロセスをうまく組み合わせています。つまり、経験値の高いチームでは、役割と職責が明確になっており、メンバーは、自分には何が期待されていて、どんなタスクが自分に振られるかを知っているのです。

チーム内のUX専門家が積極的であること

「アジャイル開発の効果が高かった」プロジェクトでは、UX専門家はリサーチとデザイン思考のテクニックを積極的にプロダクトデザインに取り入れて、チームの結束を高め、コラボレーションを促進していました。実装した機能の妥当性や、短期的・長期的なソリューションを検討するために、生成的調査*と検証調査**の両方を実施しています。またプロダクトマネージャーやステークホルダーからの機能要求を待つのではなく、積極的にエンドユーザにリーチし、自社プロダクトがこれまで満たされていなかったユーザニーズを満たし、どうすれば競争の激しいマーケットで頭角を現すことができるかを考えるのです。

*生成的調査:人々の言動や思考からインスピレーションを得るための調査
**検証調査:正しいデザインができているか、クライアントの出した条件や現地消費者の受容度、収益性やリスクなどを検討する調査
出典:「デザイン・リサーチとは”Why”を知ること」Harvard Business Review

「ユーザ中心設計」を守るため、プロセスを制度化する

「アジャイル開発の効果が高かった」プロジェクトでは、ユーザの声をプロダクトに取り入れるための正式なプロセスをチーム内で取り決めていたおかげで、経営陣や部外者が正しい文脈や状況を正しく理解しないまま急に無理難題を押しつけてくるような状況を最小限に押さえることができていました。新規採用者への適切なトレーニングを実施することにより、経営陣やステークホルダーを含む全従業員がルールを熟知し順守できるようになるのです。

UXの影響力は今後も増大する

7年前に比べるとアジャイルUXチームはより大きな成功をおさめていますが、UXの影響力はまだ増大する余地があります。UXの考え方がアジャイルプロジェクトに与える影響についてUX専門家が7段階で評価した平均値は、わずか4.0という結果でした(1 =影響が小さい、7 =影響が大きい)。

アジャイル開発はもともと、プログラマーがよりよい実装を行うための手法でした。しかし、開発を成功させるには純粋なプログラミング力だけでなく、より多くのスキルセットが必要になります。成功の可否は、実装方法だけでなくデザインにも左右されます。このような幅広い理解が実践レベルまで広がるには時間がかかりますが、確実に広がりつつあります。

アジャイルUXが進化するにつれて、UX専門家の役割も進化します。最近のプロジェクトでは、UX専門家がプロダクトやサービスの進化の方向性を決める役割の一端を担っています。また、果たすべき役割は、リーダーシップやコミュニケーションの領域にまで拡大しています。実力のあるUX専門家は、先を見越してチームメンバーを早い段階からUX関連の業務に巻き込みます。そして、「ユーザニーズ」を「ビジネスニーズ」に翻訳し、ステークホルダーに説得力を持って伝えることができるのです。



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