UXリサーチの必要性、どう語る? UXリサーチ共有会vol.3

【作成】2020/11/11  

組織内でUXリサーチを実践するなかで、「どうすれば理解者がもっと増えるだろうか」「どうすればUXリサーチの価値をもっと理解してもらえるだろうか」という悩みにぶつかる方は少なくありません。

2020年6月17日に開催したUXリサーチ共有会では、UXリサーチの重要性を「語る」ことでその輪を広げた経験を登壇者の皆さまにお話いただきました。
「UXリサーチを社内に普及したい!」「UXコミュニティを拡大したい!」そんな思いを抱いている方は必見です。経験者のリアルな声を、ぜひご一読ください。

※都合により一部トークを割愛しております。ご了承ください。

【UXリサーチ共有会動画】UXリサーチの必要性、どう語る?

「東海地方におけるUXデザイン普及の取り組み」HCD-Net理事 東海支部長 UXリサーチャー 加藤 公一さん

UXリサーチャーとしてメーカー勤務のかたわら、NPO法人HCD-Net(人間中心設計推進機構)でHCD(Human Centered Design:人間中心設計)の研究や普及に尽力されている加藤公一さん。加藤さんには、UXデザインの普及・コミュニティ活動を通して感じた「コミュニティを広げるために大切なこと」についてお話しいただきました。

2015年、UXに関連するセミナー実施がほとんど無かった状況から東海地方でのUXの普及活動を始め、2020年に東海支部の立ち上げをはたした加藤さんの取り組みは、「社内にUXデザイン・リサーチを広げるために大切なこと」という文脈に置き換えても参考になる内容です。

活動継続の2つのポイントは「ニーズの把握」と「仲間の存在」

HCD-Netの教育事業部で活動を始めた2015年から2019年まで、東海地方では計27回のセミナーが実施されました。当初のセミナー参加率はわずか37%。集客にUXデザインの手法をとりいれることで参加率が100%を超えるようになったこの期間を振り返り、加藤さんは「とにかく続けることが大事」と力を込めます。

しかしながら、「続けること」は簡単なようで難しいことです。加藤さんご自身も経験した「集客できなくて、気持ちが折れる」という状況を乗り越えるポイントについて「集客できない」「気持ちが折れる」の2つに分けて振り返りながら解説していただきました。

ポイント①ペルソナを作成してニーズを把握し、コミュニティを育成

「集客できない」理由は、実施しようとしていることが地域のニーズに合っていないから。近年はWebや書籍などでいろいろな最新情報が手に入るものの、首都圏に比べると名古屋市は認識が数年遅れ、さらに地方ではUXの認知自体が遅れていることもあります。そのため、その地域に合ったニーズを把握して育てていくことが必要だったのです。

2015年当初に実施したセミナーの参加率は37%と集客は振るいませんでした。翌2016年に「UXデザインの教科書」の著者である安藤昌也先生を招いたセミナーでさえも参加率は50%と、結果を残せない状況は続きます。

そんななか、2018年に転機が訪れます。

連続開催のセミナーを企画するにあたり、企画自体にUXデザインの手法を導入したのです。UXリサーチを実施してセミナー参加者のペルソナを明確にしてカスタマージャーニーマップも作成。企画や構成、告知方法などに反映していきました。

この試みにより、セミナー申込にあたって人々が抱きがちな不安(「自分にとって本当に必要な内容か」「どんな内容なのか」「上司は許可してくれるのか」)があぶり出されます。

「その不安に対して何を提供しなければいけないのか」の視点を告知方法などに役立てた結果、2018年以降のセミナーは盛況になり、参加率は100%超えに。加藤さんたちは、地域のニーズを把握して段階的に育成し、実践的な学びにつなげることに成功したのです。

ポイント②仲間を増やす

続いては「気持ちが折れる」を乗り越えるポイントです。2015年当時は1人で活動していた加藤さんですが、気持ちが折れてしまいがちでした。本業が忙しくなった際のパワー不足を補うためにも、と徐々に仲間を増やし、2020年の東海支部を立ち上げ時には7人体制になりました。この経験を通じ、複数人で活動することの大切さを感じたそうです。

また、加藤さんは「人のつながり」も大事にしています。セミナー後は毎回、参加者同士の懇親会を開催して同じ悩みを持った同士の相談の場としています。また、SNSで交流したり、セミナーに関するブログを書いてもらい、公開されたら積極的にコメントするといった交流も続けています。

とにかく続けること

UXデザイン普及にあたって大切なことは、「ニーズの把握と育成」「仲間を増やす」の2つのポイントを意識しながら「とにかく続けること」だと話す加藤さん。その原動力は、「地域にUXデザインを広めたい」という強い想いでした。この想いで2020年に立ち上げを果たしたHCD-Net東海支部の記念講演会には、安藤昌也先生をあらためてお招きするそうです(2020年7月18日終了)。

※後日お聞きしたところ、安藤昌也先生の講演会「エンジニアの立場で考えるUXデザイン」には、東海地方のみならず関東からのオンライン参加を含め170名もの参加者が集まりました。さらに、セミナー後アンケートでは、90%近くの参加者から最高評価の「とても満足した」という評価が寄せられました。これまでの取り組みが着実に結果につながっていることを実感しつつ、今後もさらにUXデザインの浸透に力を入れたい、と加藤さんは話してくださいました。

▼当日のスライドはこちら
LT2:東海地方におけるUXデザイン普及の取り組み

▶加藤さんのご登壇パート動画はこちら

参加者からの質問

Q.コミュニティづくりの経験から、社内でのUX浸透に応用できるノウハウはあるか?
A.「UXを浸透させたい相手に何をやったら響くのか」というのは、(職種ごとに)違うと思っています。UXを浸透させたい人は「UX」「UX」と言いたいものですが、たとえば、開発の人に対しては「仕様が途中でひっくり返って(大幅に変更して)手戻りが多くなる確率が低くなりますよ」といったような、その人に響く言い方を考えることが大事だと思っています。

「ミニマムに導入するリサーチ手法と整理」株式会社i-plug UX/UIデザイナー村治泰広さん

続いての登壇は、株式会社i-plugのUX/UIデザイナー村治泰広さんです。同社では、企業が学生に求人オファーを送る「OfferBox」というサービスを提供しています。村治さんには、既存事業に対するリサーチを準備したポイントについて紹介していただきました。

組織視点の内省「本当に価値あるサービスをユーザーに届けられているか?」

「OfferBox」は、企業が学生にオファーを送る「逆求人型・ダイレクトリクルーティングサービス」という、新たな形態のオンライン就活サービスです。就活生の3人に1人が利用しており、特にコロナ禍の今は注目を集めています。

サービスの立ち上げから8年経ち、コアバリューも獲得して順次成長してきたなかで、さらなる拡大と確立を見すえる段階にあるそうです。

2020年4月から同社で既存サービスのデザイナーチームリーダーを務める村治さん。サービスと組織のこれまでの関わり方を社内で聞いてみたところ、営業・カスタマーサービス・マーケティング担当などのフロントがエンドユーザーからダイレクトに受けた要望を開発チームがそのままサービスに適用するという、とらえようによっては「一方通行的」な側面があるようでした。

このフローでは、「誰かの要望」は増えても、取り組むべき「サービスへの要求」が明確にならず、目指すべき方向も、現在位置もわからないという課題に直面されました。

リソースが十分でないなか、「要望」をとにかくこなすことに精一杯。効果を狙って動くことも、効果測定もしづらくなった結果、機能拡充したサービスが複雑になって、後で実装・テスト・評価しづらくなる、いわゆる「スパゲッティ」と呼ばれる状態になったそう。

こうした課題に直面し、「自分たちは、本当に価値あるサービスをユーザーに届けられているのだろうか?」「その機会を自ら失っていないだろうか?」という組織視点の内省を始め、そのうえで、「価値あるサービスをユーザーに届けるために、私たちデザイナーは、何を作っているんだろうか?」というチーム視点の内省に取りかかりました。

ミニマムに始められるUXリサーチを準備する

しかし、村治さんたちデザイナーチームが「価値あるUXを作りたい!」という理想に向けて尽力しても、「人数がいない」「やることは山積み」「継続性もない」など「価値をつくる機会を失っている」という組織視点の現実が立ちはだかります。

では、このような問題に対して、組織視点でどう対策していけるでしょうか。

村治さんたちが重視したのは、「サービスの課題は会社の課題、サービスの価値は会社の価値」という前提に立ちもどることでした。従来どおりエンドユーザーや社内からの要望をそのまま適用するのではなく、「その価値を具体的に確かめていく」というリサーチのプロセスが重要です。

このプロセスを実現するには、「時間の確保」「会社の公認」「協力」といった、会社全体からの理解を獲得する必要があります。

数名のデザイナーチームで会社の理解を獲得するには「少人数でもミニマムに始められる」UXリサーチを準備する必要があります。

村治さんは、実際に取り組もうとしているUXリサーチの準備の6段階を紹介してくださいました。

準備① 依頼対応を一旦停止:緊急度が高くない、または成果(評価)が不明な依頼への対応を一旦停止し、本当に必要な価値を生み出すための準備をおこないます(上長や他部署のご協力あっての準備です)

準備② 価値の仮説立て:何がサービスの価値なのかについて仮説を整理します。

準備③ 要求の整理:何をなぜ、どう、どのくらい求めているのか、ゴールデンサークルなどを使って要求整理します。

準備④ 範囲と手法の整理:「対象(何/なぜ)をどのように確かめるか」について、チームや人の関わりとセットで整理します。

準備⑤ 体制づくり:チームの目標にリサーチを追加しリソース配分をおこないます。

準備⑥ 業務プロセスとペース配分:スプリントでの具体的な行動計画を立てます。

▶「リサーチ準備」パートの動画はこちら

リサーチ計画をしっかりと立てて、「よさみ」(=リサーチの価値や必要性)を会社に理解してもらえば、あとは実施するのみ。「理想は大きく、導入はミニマムに」、サービスの価値を見つけて高めていけたらいいですね、と村治さんはトークを締めくくりました。

▼「特別付録!新規事業でのリサーチ実施」つき!当日のスライドはこちら
LT3:ミニマムに導入するリサーチ手法と整理

▶村治さんのご登壇パート動画はこちら

参加者からの質問

Q.「価値をつくる機会」が失われていると感じたきっかけは?
A.(「OfferBox」の)8年間のサービス展開の中でステークホルダーも事業部も増え、営業・カスタマーサポート・マーケティングなど、各部署の目的や重視する価値観が全然違う、という状況になっていると聞き、私自身もそう感じました。それぞれの価値観はどれも重要なのでフラットに並べて比較することが難しいと思っています。ただ、開発チームのリソースも有限ですので、やはり「会社とサービスにとって、いいものは何か」というのを端的に判断していかなければいけないと思っています。

「UXリサーチの必要性」を語るには:まとめ

今回のトークでは、組織内でUXリサーチへの理解を広げる方法として、ニーズを把握して段階的に組織を「育てる」こと、仲間を増やすこと、また、ミニマムに導入すること、といった事例をご紹介いただきました。

「UX」「UX」と必要性を声高に叫ぶだけではなく、相手のニーズを把握したり、周囲に必要以上の負荷をかけないミニマムなスタートで理解を広げていく、いわば、組織内メンバー自身の「UX」を向上することが、UXデザインやUXリサーチ浸透の近道であるようです。

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