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UXリサーチを組み込んだ開発サイクルの確立~「フォートナイト」成功の秘密②~

【作成】2021/02/17

本記事は著者より許可を得て翻訳したものです。
元記事:”Understanding the success of Fortnite: A UX and psychology perspective, part 2” Jun 30, 2020
著者:Celia Hodent

世界で2億5,000万人以上のファンを持つ大人気バトルロイヤルゲーム「フォートナイト」。爆発的な人気を獲得した理由のひとつは、その「優れたUX設計」です。本稿では、フォートナイトのUXディレクターを務めたセリア・ホデントさんの記事をご紹介します。

人間の「知覚」「注意力」「記憶」の限界をカバーする「ゲームUX」を解説したパート1に続き、本稿では、UXを重視したゲームデザインについて深く掘り下げて説明します。


ゲームのUXフレームワーク

「ユーザーエクスペリエンス(UX)」という言葉は、『The Design of Everyday Things』(2013年)の著者である元アップル社副社長のドン・ノーマン氏が1990年代に造った言葉です。

UXとは、ユーザーが製品、システム、サービスを通して体験するすべてを表します。ある製品について初めて知ったとき、購入・ダウンロードをしたとき、製品を操作・利用したとき、そして、利用後にその製品について覚えていることまでを含みます。

本稿では、「プレイヤーがゲームを使用するとき」に焦点を当てて説明します。

まず、私たちは、ゲーム設計上の問題とは関係なく、プレイヤーがゲームに不満を抱くことがあると想定しています。
そして、プレイヤーに最も魅力的で楽しい体験を提供するため、次にあげるUXの2つの柱を適用しています。
「ユーザビリティ」“usability”「エンゲージ・アビリティ」 “engage-ability”です。


▲UXの2つの柱:ユーザビリティ+エンゲージ・アビリティ(愛着のわきやすさ)

ユーザビリティ

ユーザビリティとは、ゲームの「使いやすさ」です。ユーザビリティを考える際は、知覚、注意(力)、記憶といった人間の能力の限界を考慮に入れなければなりません。

ユーザビリティがUXの柱であることはよく知られています。工業デザインやデジタル製品デザインでは、長年にわたって非常に詳しいガイドラインが確立されています。なかでも、ヤコブ・ニールセンがまとめたユーザビリティ・ヒューリスティクス* のリストは非常に有名です。
(*編注:ヒューリスティクス=発見的手法:経験則などから解や法則を導く手法のこと)

私が作成した「ゲームUXフレームワーク」は、ゲームクリエイターがこれらのヒューリスティクスを使いやすいよう特化したものです。

ゲームユーザビリティのヒューリスティクスは以下のとおりです。
※「:」以下は、GDC Europe 2014の講演採録記事にもとづくポップインサイト編集部による補足

  • サインとフィードバック:プレイヤーの注意を引く「サイン」(プレイヤーが次の行動に気づけるよう「!」マークなど)を配置する、プレイヤーがアクションを起こすと必ず「フィードバック」(攻撃がヒットするとその場所が赤くなる)がある、など
  • 作り手の意図が明確に示されていること:アイコンの図柄などが誰でも理解しやすいデザインであること
  • プロダクトの機能と形状が一致していること:引いて開けるドアには、にぎって引ける形状の取っ手を付けるなど
  • 表現に一貫性があること
  • 認知負荷が最小限であること
  • エラーを防止する工夫があること、エラーを取り消しやすいこと
  • 柔軟性があること、アクセシビリティが考慮されていること

 

これらのヒューリスティクスの目標は、ゲームをできる限り直感的で使いやすいものにすることです。メニューのナビゲーションが難しい、アイコンが直感的でない、システムがわかりにくいなど、プレイヤーのフラストレーションをすべて取り除くように心がけています。

「サインとフィードバック」と呼ばれるゲーム内のすべての刺激は、明確で一貫性を持ち、制作者が意図した通りにプレイヤーが知覚できる必要があります。私たちは、認知負荷(記憶や注意に対する負荷)だけでなく、物理的な負荷(アクションを達成するために何回クリックするかなど)を最小限に抑えることを目指しています。

また、プレイヤーがイライラするようなエラーが発生しないようにしたり、想定していないエラーが起きた時に簡単にリカバリーできるようすることも心がけています。

例えば、フォートナイトでは、プレイヤーに、戦闘、資材収集、クラフト、建築をしながら、生き残るための戦略を練ることに挑戦してほしいと考えています。しかし、アイテムの装備の仕方や武器の作り方で、プレイヤーにつまづいてほしくないのです。そのため、誰もがプレイできるように、操作方法のカスタマイズ、サブタイトルの設定、カラーブラインドモードなど様々なオプションを用意しています。

このように、フォートナイト開発中、私たちは数え切れないほどのUXテストを行い、ゲームの操作性を向上させ、磨き上げてきました。

エンゲージ・アビリティ

ゲームを含むあらゆる製品にとって、優れたユーザビリティ(使いやすさ)を提供することは非常に重要です。

ただし、ゲームは、使いやすさを追及しすぎるとつまらなくなるという面があります。インターフェイスが直感的で、プレイヤーが目標を簡単に理解でき、アクションも簡単に使いこなせるゲームは、使いやすい反面つまらないものです。テレビゲームは、仕事用のアプリやソフトウェアなどと異なり、何かタスクを完了するためのツールではないのです。

通常、ゲームの楽しみは、ゲームとの対話にあります。したがって、ゲームが魅力的でなければ、たとえ使いやすくてもプレイをやめてしまう可能性が高いのです。ドン・ノーマン氏は、どんな製品でも「機能以上の何か」を持つ「エモーショナルデザイン」であることが重要だと主張します。

ゲームにとって、このエモーショナルデザインは、非常に重要なものです。

ゲームクリエイターはよく「楽しさ」や「没入感」という言葉を用います。
私自身は、「engagement(編注:ゲームとプレイヤーの結びつき)」という言葉と、「ability of the game to be engaging(編注:ゲームへの愛着のわきやすさ)」という言葉を好んで使っています。

「愛着のわきやすさ/エンゲージ・アビリティ(Engage-Ability)」は、ユーザビリティよりも曖昧な概念です。ある行動に対して、その人がなぜその行動をとるのかを完全に予測することも理解することも不可能だからです。

そのため、エンゲージ・アビリティを達成するためのガイドラインはまだ確立していません。しかしながら、ゲーム・エンターテインメントにたずさわったこれまでの経験(Ubisoft社、LucasArts社、Epic Games社)から、ゲームのエンゲージ・アビリティを向上する3つの柱を私は次のように考えています。

  1. 動機づけ
  2. 感情
  3. ゲームフロー

▶「エンゲージ・アビリティ」についての詳細はGDC 2017での講演をご覧ください(英語サイト)

1. 動機づけ

人は、動機がなければなにか行動を起こすことはありません。動機づけはエンゲージ・アビリティの中核をなすものです。

人のモチベーションに関する理論は数多くにありますが、人の行動の全てを説明することはできません。

ここでは、最も重要とされる動機づけのうち、ゲームに当てはまりやすいものとして「外発的動機づけ」”extrinsic motivation”「内発的動機づけ」” intrinsic motivation”の2つに焦点をあてたいと思います。

「外発的動機づけ」とは、何かを得るために行動することです。例えば、遊園地で乗り物に乗るために列に並んで待つことは「外発的動機づけ」です。行列に並んで待つことは、目的を達成するための手段なのです。

テレビゲームは多くの場合、外発的動機づけを与えます。プレイヤーは、クエスト(冒険)やアクションを達成したり、報酬を得るためにいろいろな資材を調達する必要があります。

例えば、チャレンジを完了したらどんな報酬が得られるのか、どのような能力が解放される(=利用できる)かなど、明確な目標や目に見える報酬は、プレイヤーのエンゲージ・アビリティを高めるのにとても重要です。

しかし、これだけでは十分ではありません。「内発的動機づけ」も必要です。

内発的動機づけとは、何かを得るために行動するのではなく、その行動自体に喜びを感じる、という動機です。

内発的動機づけに関して、最も信頼性の高い理論は、自己決定理論(SDT)と呼ばれるものです。この理論では、ある活動が「有能感」「自律性」「関係性」を満たしているときに、人はその活動をするために内発的に動機づけられる可能性が高いと説明しています。

「有能感」とは、自分が進化しているという感覚を持つことです。
「建物を速く建てることに熟練する」といったスキルが上がること、「強くなるために新しいスキルを購入」してレベルアップすることなどです。

例えば、ギターを習ったり、減量しようとしているとき、「上達している」「体重が減っている」と感じられなければ、途中でやめてしまうでしょう。

ゲームでプログレッションバー(編注:進行状況やレベルを表示するバー)がとても重要なのはこのためです。プログレッションバーで新しいレベルに到達した際、どんな報酬が得られるかがわかるだけでなく、目標に向かって力を高め、進歩していく自分自身を見ることができるのです。

「自律性」とは、自己表現とも言い換えられます。
例えば、スキン(プレイヤーキャラクターの外見変更アイテム)や、ダンスの動き、障害物チャレンジの攻略法などを選択できることで、プレイヤーは、より自律性を感じることができます。

これは、タスクやクエストが存在せず、プレイヤーが自分なりの目的を決めてプレイするサンドボックスゲーム(例:「マインクラフト」、「グランド・セフト・オートV」)や、コスメティクス要素のオプションの多いゲームが魅力的である理由です(もちろんそのオプションがプレイヤーにとって意味がある場合に限ります)。

「関係性」とは、ゲームの中で他の人と意味のある関係を持つことです。
人間は非常に社会的な生き物です。ですから、多人数参加型ゲームではほぼ必ず関係性が生まれます。この場合、関係性は、競争か協力かのどちらかになります。

協力の方がより魅力的であることが多いため、ほとんどの対戦型ゲームには協力オプションが用意されています。仲間やスクワッド(最大4人のチーム)でプレイしたり、他チームと対戦したりすることです。

2. 感情

「感情」とは、いわゆる「ゲームフィール(“game feel”)」のことと、新しいコンテンツのことです。

「ゲームフィール」とは、ゲームをプレイしたときの心地よさ、快適さのことです。ゲームフィールに重要なのは、カメラ(Camera)、コントロール(Control)、キャラクター(Character)の「3C」です。

3Cに加え、プレイヤーの挙動に的確に反応するAI(人工知能)や、めりはりのあるストーリー、素晴らしい音楽などによる臨場感も重要です。

また、ゲームのリアリティも大切です。これは、実物を完全に再現するということではなく、いかに「それらしいか(believable)」ということです。

ここでは詳しくは触れませんが、感情とは、プレイヤーに提供される驚きや新しさのことでもあります。人は退屈しないように新しいものを必要としています。ですから、オンラインゲームは常に新しいキャンペーンやモード、スキンを提供したり、新シーズンへにアップデートする必要があるのです。

3.ゲームフロー

「ゲームフロー」とは、心理学者ミハイ・チクセントミハイの研究における「フロー」という概念に由来しています。彼は、幸せの秘訣についての研究で、「人生でより幸せな人は、より頻繁に『フロー』の状態を経験している」と気付きました。

「フロー」の状態とは、自身にとって価値があり、挑戦的な活動に深く集中している状態です。この状態は、仕事中だけでなく、絵を描いたり、編み物をしたり、音楽を演奏したりといったクリエイティブなことをしているとき、そして、テレビゲームをプレイしているときにも経験できます。
ゲームデザイナーのジェノヴァ・チェンは「flOw」「Flowery」「風ノ旅ビト」といったゲームを通じて、ゲームにおける「フロー」を幅広く探求してきました。

「ゲームフロー」の主な要素の一つは、チャレンジです。簡単すぎて飽きてしまったり、逆に、難しすぎてストレスがたまることがないように、適切な難易度を設定する必要があります。

クリエイターがユーザーにチャレンジする、という点は、ゲームのUXと他のプロダクトのUXの大きな違いです。ゲームクリエイターは、プレイヤーが克服しなければならない障害に遭遇するよう、間違い、迷い、ストレスを生じさせる要素を慎重に実装しています。

複数で対戦する「マルチプレイヤーゲーム」のマッチメイキングで、同じレベルの知識とスキルを持ったプレイヤー同士がマッチングさせる必要があるのは、このためです。プレイヤーは、瞬殺されても簡単に勝ちすぎても楽しくないからです。

「ゲームフロー」は、ペース配分、ストレスやプレッシャーのリズムにも関係します。ゲームには、激しい瞬間もあれば、リラックスできる瞬間も必要です。例えば、多くのアクションゲームには敵が出現する波がありますが、バトルロイヤルゲームでは、プレイヤーは比較的落ち着いて準備をする時間と、マップが縮小していく中で強制的に敵に遭遇する時間が交互にあります。

「ゲームフロー」においてもっとも重要なのは「オンボード*」の段階です(*編注:オンボード=新しくゲームを始めたプレイヤーにゲームに慣れてもらうプロセスのこと)。ゲームをプレイしながら「フロー」状態に入るためには、どんなゲームなのか、どのようにしたら成功といえるのか、どのようにしたら上手にプレイできるのかなどをはじめに理解しておく必要があります。

このため、ゲームの一部だと感じさせるようなエレガントなチュートリアルを通して、適切にプレイヤーをオンボードすることが、没入感に大きな影響を与えるのです。

「オンボーディング」とは、プレイヤーにゲーム内で「有能感」を感じさせることです。確かに、プレイヤーはミスをして、おそらく何度か死ぬことにもなるでしょうが、何が起こったのか、どうすれば良くなるのかを理解できれば進歩できます。

先に説明したように、「進歩している」という感覚を持つことは、内発的動機づけの大きな柱の1つなのです。

▲ゲーム内チュートリアルの改善:制限時間内に小屋の周りに壁を作るチュートリアル(2014年9月)から、制限時間を無くし、脱出口を作るチュートリアルに変更(2015年2月)。

これまで説明してきた「ユーザビリティ」、そして「エンゲージ・アビリティ」の3本柱は、ゲーム開発時に非常に便利で実用的なUXフレームワークです。

このフレームワークは、修正すべき問題や、ゲームの潜在能力を最大限に引き出すために不足している機能や要素を特定するチェックリストとして使用できます。

どのゲームが成功するかは誰にもわかりません。しかし、このフレームワークを使うと、使いやすく魅力的なゲームにするには何が不可欠かがわかります。ゲームクリエイターは、そうした要素を利用し、提供したい体験や、ターゲットとするオーディエンスに応じた独自の成功レシピを作れるのです。


▲図:「ユーザビリティ」と「エンゲージ・アビリティ」の3本柱

次のステップ:科学的手法とUXパイプライン

人の脳の限界を知り、UXのフレームワークに従うことは素晴らしいスタートです。
それに加え、修正すべきUX上の課題を見つけ、課題解決の優先順位をつけるためには、科学的な方法で「UXパイプライン」(UXリサーチを含めた製品開発工程)を確立することも重要です。

問題を解決することは比較的簡単です。難しいのは、修正すべき問題を正しく見つけて解決することです。

すべての人は偏見を持っています。知覚は主観的ですし、注意力は乏しく、記憶違いを起こしやすいのです。ですから、チームメンバーの直観に頼ることは、たとえそれが経営層の直観であったとしても、失敗のもとです。そしてその失敗の穴埋めには、往々にしてコストがかかるのです。

だからこそ、課題を特定し、優先順位をつけるためにはUXリサーチに頼ることが重要です。

UXリサーチャーは科学的手法を用いてチームと仮説を立て、それに応じて調査手順を設計し、人のバイアスをできるだけ取り除きながらデータを収集・分析します。最も重要な課題が特定されたら、チームはその課題が「なぜ」起きているのかを明らかにする必要があります。

▲ゲームの課題を発見したら、「なぜ」それが起きているかを明らかにする必要があります

フォートナイト開発からの教訓

フォートナイト公開前のアルファ版で実施したオンラインテストでは「ゲームが退屈すぎる(grindy)」という不満が一部のプレイヤーからあがりました。よりレベルの高いアイテムを作るための資材集めに時間がかかりすぎるというのです。

これはなぜでしょうか?ゲームの設計に問題があったのでしょうか?

システムデザイナーが検証したところ、資材集めとクラフト(アイテムや建造物の制作)のシステムはバランスが取れているとの結論でした。

では、なぜプレイヤーは不満を持ったのでしょうか?

この問題をきっかけに長い調査が始まりました。もし、設計が原因の不満でないなら、プレイヤーの知覚が主観的であることが原因なのではないか、という仮説が立てられました。

多くの要素を調査しましたが、調査対象の一つが、「ウィークポイントシステム(weak point system)」と呼ばれるUI(ユーザーインターフェース)でした。

フォートナイトでは、プレイヤーが資材を収集する際、狙うべきポイント(ウィークポイント)が表示されます。このウィークポイントを狙えばより早くオブジェクトを破壊できるのです。

初期のUXテストでは、プレイヤーがウィークポイントを完全にスルーしているという問題が見つかりました。些細な問題のようですが、資材を収集するというシステム全体はプレイヤーがウィークポイントを利用することで成り立っているため、波及効果を考えると、比較的大きな影響を与える可能性があったのです。

ウィークポイントを活用していないプレイヤーは、資材を集めるのに設計以上に時間がかかってしまうため、プレイヤーが知覚する収集速度に明らかな影響が出ていたのです。

チームはこのUI要素を何度も検証しました。

まず、ウィークポイントに気づいていないプレイヤーがいたため、より大きく目立つようにしました。これでプレイヤーはウィークポイントに気づくようになりましたが、今度は、ウィークポイントが「自分が現在狙っているオブジェクト」を示すサインだと勘違いするプレイヤーが出てきました。

最終的には、「世界を救え(save the world)」モード(コンピュータが制御する敵と戦うモード)の初期設定ではウィークポイントが出ないようにし、プレイヤー自身が設定すれば利用できるよう変更しました。

この変更はうまくいきました。大多数のプレイヤーはこの変更後、少なくとも「世界を救え」モードではウィークポイントを活用するようになったのです。

▲「ウィークポイント」の改善:より大きく目立つUIになっている(左:2014年版/右:2015年版)

この反復的なプロセスが可能になったのは、チームが強力な「UXパイプライン」を確立したからにほかなりません。

▶詳細は、フォートナイトの元シニアプロデューサー ヘザー・チャンドラーと登壇した2016年のGDCトークをご参照ください(英語サイト)

”ゲームクリエイターとしての偏見に陥らないように、科学的な手法を適用し、入念なUXテストや継続的なオンラインテストを通じて、開発中に優先的に解決すべき問題点を客観的に見つけ出しました。”

UXリサーチは完全に製品開発工程に組み込まれており、チームはUXリサーチのフィードバックをもとにバグを修正しました。UX思考を中心とするには、UXをチームの優先事項としなければならないのです。

▲UXリサーチのプロセス:仮説建て ― リサーチの企画 ― リサーチ設計 ― 実査 ― レポート作成 ― タスクへの落とし込み ― 優先順位の決定 ― 検証 ― 報告書作成

フォートナイトのUX戦略に関するまとめ

人の脳の働き方の基本を理解し、UXフレームワークに沿って、科学的手法を適用し、UXパイプラインを確立することで、ゲームクリエイターはより速く、より効率的に目標を達成できます。

UX思考というレンズを通してフォートナイトを分析すると、プレイヤーにとって、ゲームを使いやすいものにし、できるだけ間違いを避け、多くのフラストレーションを取り除くよう、どのような努力がなされたかがわかります(Ars Technicaのビデオでもいくつかの例をあげています)。

例えば、「エンゲージ・アビリティ」と「動機づけ」の観点では、フォートナイトの「世界を救え」モード(コンピュータが制御する敵と戦うモード)は、常に特定の目標に向かって進んでいくゲームです。

一方、プレイヤー同士で競い合う「バトルロワイヤル」モードでは、負けた人はすぐに次のラウンドからやり直しができ、うまくいけば次のラウンドで上達することもできます。コスチュームのオプションやダンスの動きなどの「自律性」も高く、好きなものを作ることができる「クリエイティブモード」も用意されています。

また、フォートナイトは、「関係性」という観点においても強みをもつゲームです。プレイヤーが競い合ったり、協力したり、一緒に遊んだりできるゲームなのです。

また、ゲームだけでなく、プレイヤー同士がチャットしたり、ダンスをしたり、クリエイティブなことをしたり、一緒にコンサートを見たりもできるソーシャルプラットフォームでもあります。

有名なインフルエンサーやスターが早い段階でゲームをストリーミング配信していたこともあり、フォートナイトは今や「ハズせない」ゲームになっています(ただし、これは開発中に狙ったことではなく、運も関係しています)。

「感情」に関しては、フォートナイト、は非常に洗練された「ゲームフィール」を備えています。ゲーム中の体験について、とても高い満足度を得ています。

フォートナイトのクリエイティブディレクターであるDarren Sugg氏がGame UX Summit Europeの基調講演で述べたように、もっと実験をしていくべきだと思います。ゲームは、多くの驚きと謎を提供しています。新シーズン前には、プレイヤーの好奇心を高めるためにミステリアスな要素を提供しています。

「ゲームフロー」についても、フォートナイトは洗練されています。「世界を救え」モードでは、オンボーディングが入念に設計されています。

ユーザーエクスペリエンスや心理学に関する誤解が根強く残っているにもかかわらず、UX戦略を採用しようとするスタジオが増えてきているのは、UX戦略が客観的な指針を提供してくれるからです。ゲーム制作は難しく、競争も激しいのです。

UX思考は、より早く、より効率的に目標を達成するツールを提供してくれます。
プロジェクトやスタジオにとって、UX戦略を構築することは、単に特定のツールや方法論を利用するということにとどまりません。それは、倫理、アクセシビリティを包括的に含み、ビジネスではなくプレイヤーを第一に考える考え方であり、哲学ともいえるものなのです。

参考文献:
Celia Hodent, The Gamer’s Brain: How Neuroscience and UX Can Impact Video Game Design (CRC Press, 2017)
Don Norman, The Design of Everyday Things (MIT Press, 2013)
Mihaly Csikszentmihalyi, Flow: The Psychology of Optimal Experience (Harper Perennial Modern Classics, 2008)

著者紹介:

ゲームUXコンサルタント
セリア・ホデント氏

ゲーム業界におけるユーザエクスペリエンス(UX)と認知科学の応用の第一人者。心理学の博士号を取得しており、ゲーム制作会社でのUX戦略とプロセスの開発に10年以上の経験を持つ。
Ubisoft(代表作:レインボーシックス)、LucasArts(代表作:StarWars1313)、EpicGames(代表作:フォートナイト)でのUXディレクターとして、パソコン、モバイル、VRなど、複数のプラットフォームにまたがる多くのプロジェクトに貢献してきた。また、Game UX Summitの創設者であり、GDC UX Summitのアドバイザー、フランスのCNIL Foresight Committeeのメンバーでもあり、『ゲーマーズブレイン‐UXと神経科学におけるゲームデザインの原則‐』の著者でもある。
現在はコンサルタントとして独立し、ゲームスタジオの創るゲームの魅力とヒットする可能性を高める支援を行っている。
Twitter:@CeliaHodent
Blog:celiahodent.com

カテゴリ: UX, 海外最新UXリサーチを学ぶ
投稿日:
投稿者: okimoto
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