5つの事例から理解する!グロースハックを実践に活かす方法
グロースハックを自社の製品やサービスに取り入れていきたいと思いながらも、事例を見てもいまいちどこをどう活用していいかわからないとお悩みの方も多いのではないでしょうか?
グロースハックの事例を実践に活かすには、グロースハックの本質や前提条件、フレームワークを理解し、自社の製品やサービスに落とし込むことが必要です。本記事では、グロースハックの事例をより実践的に活かすために理解しておきたいポイントを解説した上で、国内のグロースハック事例をご紹介します。
目次
グロースハックの本質を理解しなければ実践には活かせない
「少ない費用で製品やサービスを継続的に成長させる仕組みづくり」をグロースハックといいます。比較的新しいワードであるグロースハックは、人によって解釈が異なることも多く、「PDCAを回してWebサイトを改善し、ユーザーをたくさん獲得すること」ととらえている人もいます。それもグロースハックの施策のひとつではありますが、もう少し大きな視点でとらえたほうが、グロースハックの本質を理解できるでしょう。
グロースハックについて、最初に理解しておきたいポイントは以下の3つです。
・少ない費用で
・継続的に成長させる
・仕組みを作る
従来のWEBマーケティングでは、費用をかけて集客し、製品やサービスをいかにして売るかに主眼が置かれてきました。一方、グロースハックでは、「お金をかけなくてもユーザーが集まる仕組み」を商品開発の段階から、製品やサービスに仕込みます。また、グロースハックは新規ユーザーを集めて終わりではありません。製品やサービスを継続的に成長させるため「自然にユーザーが増える仕組み」や「継続的に使ってもらえる仕組み」を考えます。
「お金をかけなくても無理なく自然に製品やサービスが成長する仕組み」。それを作るのがグロースハックです。「売る」のではなく「勝手に売れる仕組みを作る」と言い換えてもよいでしょう。WEBサービスの事例ばかりが注目されることの多いグロースハックですが、WEBサービスに限らず、予算の少ない中小・ベンチャー企業でも積極的に取り入れていきたい手法なのです。
グロースハックに絶対必要な前提条件「プロダクト/マーケットフィット」
「少ない費用で無理なく自然に製品やサービスが成長する」仕組みを作るグロースハックですが、そのために必要となる前提条件があります。それが「プロダクト/マーケットフィット」です。簡単にいうと、製品やサービス(プロダクト)と、それを使う人(マーケット)のニーズが一致している、ということです。
手がける製品やサービスと狙う市場が「プロダクト/マーケットフィット」の状態になっていないと、いくらグロースハックを仕掛けても「無理なく自然に」成長することはありません。ユーザーが満足し、また使いたい・人に薦めたいと思えるような製品やサービスを開発・あるいは改良しなければなりません。ただ「売る」だけでなく「勝手に売れる仕組みを作る」グロースハックは、商品開発にも大きく関わる必要があります。
なお、プロダクトを変える以外にも、マーケットを変えることでフィットする場合もあります。商品の改良や調査を繰り返し、自社の製品やサービスを必要とする人(企業)が、どこにどれぐらいいるのか把握し、「プロダクト/マーケットフィット」に近づけていくことがグロースハックを成功させる前提条件です。
グロースハックの実践に欠かせないフレームワーク「AARRR」
グロースハックを実践する上では、まず「AARRR」というフレームワークを理解することが必要となります。「AARRR」は、ユーザーの体験を5つのステージにわけて示したものです。
・Acquisition:ユーザー獲得(新規登録や訪問)
・Activation: ユーザー活性化(製品やサービスを利用し、満足してもらう)
・Retention:継続利用(繰り返し使ってもらう)
・Referral:紹介(クチコミやSNSで人に紹介してもらう)
・Revenue: 収益の最大化(利益をより多く発生させる)
「AARRR」の各ステージに分けて指標を定め分析することで、取り組むべき課題が明確になり、施策が打ちやすくなります。AARRRのフレームワークは、BtoC、BtoBなど業種を問わず活用することができます。
<レストランでの例>
・Acquisition:ユーザー獲得→お店を認知、ランチで新規来店
・Activation: ユーザー活性化→イチオシのランチメニューを注文し満足する
・Retention:継続利用→再度ランチで来店する
・Referral:紹介→「あのお店良かったよ」と友だちに紹介する
・Revenue: 収益の最大化→常連になる、ディナーでも来店する
どれだけ「Acquisition:ユーザー獲得」に力を注いでも、「Activation: ユーザー活性化」や「Retention:継続利用」が低ければ、獲得したユーザーは無駄になってしまい成長は望めません。上記のレストランの例で言えば、新規来店してもお店を気に入ってもらって再来店してもらわなければ、新しいお客さんを永遠に獲得し続けることでしか売上をあげられないことになります。「AARRR」の各ステージを押し上げる仕組みを作ることが必要なのです。
まずは、自分の手がける製品やサービスを「AARRR」の各ステージに分けてみましょう。それがグロースハックの第一歩です。次に、各ステージごとの指標を定めて計測し、その指標を伸ばすための仕組みを作っていくのがグロースハックの実践的な作業になります。
5つの事例から「AARRR」を理解する
ここまでの解説で、グロースハックを自社の製品やサービスにあてはめて考えることができたでしょうか?それでは、より具体的にグロースハックをイメージしていただけるよう、AARRRの各ステージごとに事例をご紹介します。
「Acquisition:新規ユーザー獲得」
製品やサービスの認知拡大や新規登録数、新規来店数の向上など新規ユーザーをを増やす仕組みを作ります。単にユーザーを増やすのではなく、他のステージにつながる質の良いユーザーを獲得することもグロースハックのポイントとなります。
<事例:新規ユーザー拡大>
●ヨドバシカメラ(ECアプリ)
出典:CNET Japan
店舗で実物チェックした商品をその場で買わず、ネットで比較してから購入する「ショールーミング」を逆手にとって、新規ユーザーを増やしたヨドバシカメラのアプリの事例です。店舗の商品ごとにヨドバシカメラの専用アプリに誘導するバーコードを設置し、ネットで購入したいユーザーのニーズに応えることでアプリの新規ユーザー拡大に成功しています。もともと家電を買いたい人にアプリをインストールしてもらえるため、購買意欲が高いユーザーを集めることができます。アプリはユーザー登録不要にし、店舗ですぐにインストールして利用できるようにしました。そもそもの発想を転換することで新規ユーザー獲得につながった事例です。
「Activation:ユーザー体験の最大化」
製品やサービスを利用してもらい、満足度を高める仕組みを作ります。ここでの体験が継続利用や紹介、収益の最大化の礎となります。
<事例:ユーザーインタフェースや初回チュートリアルの最適化>
●Retty(グルメクチコミアプリ)
出典:Retty
クチコミ投稿のユーザーインタフェースの改善を重ねたり、初回のチュートリアルを工夫することでユーザーにサービスを利用してもらう仕組みを作った事例です。Rettyのような「ユーザーがコンテンツを作成するサービス」では、ユーザーの投稿数を増やすことが指標となります。「新規登録したものの何をしていいかわからなくて離脱する」という状態を減らし、一番使って欲しい機能を無理なく使ってもらえるようなインタフェースに改良していきます。面白いサービスだ・使えるサービスだと感じてもらえるところまでユーザーを連れて行くための仕組みを作ることが重要です。
参考:マイナビニュース
「Retention:継続利用」
製品やサービスを2度、3度とリピート利用してもらうための仕組みを作ります。継続利用が、ユーザーの顧客生涯価値を向上させます。
<事例:通知の最適化>
●ママリQ(女性限定Q&Aアプリ)
出典:ママリQ
メインターゲットである妊娠中の女性や子育て中の女性がどのような生活を送っているかを調査し、適切なプッシュ通知を行うことで継続率を維持しながらサービスを成長させた事例です。配信後にデータを分析して最適化することだけがグロースハックではなく、ユーザーの生活を深く想像し、最適な手段・最適な時間帯・最適な間隔で、ユーザーの役に立つ通知を行うことが重要であると教えてくれます。アプリでのプッシュ通知に限らず、メルマガ配信やSNSの投稿、チラシの配布、DMの送付などすべてに共通する考え方です。
「Referral:紹介」
クチコミやSNSでの拡散、ユーザー紹介など、製品やサービスを他のユーザーに紹介してもらうための仕組みを作ります。この仕組みが上手く回ると新規ユーザー獲得が容易になります。
<事例:SNSとオファーを組み合わせる>
●マンガボックス(マンガ雑誌アプリ)
出典:マンガボックス
TwitterやFacebookなどのSNSでシェアやリツイートするとマンガを1話先読みできる機能を組み込み、サービスの拡散を図った事例です。「続きが気になる」「早く読みたい」というユーザーの心理を上手くついており、ユーザーのニーズにぴったりマッチしたオファーをつけることが強力な拡散を産み出すことがわかります。オファーをつけて紹介やクチコミをしてもらう手法はよくとられる施策ではありますが、そのオファーがポイントをついていないというケースも。ユーザーが本当に嬉しいオファーを踏まえた仕組みづくりが必要です。
参考:朝と夜が長いブログ
「Revenue:収益の最大化」
製品やサービスの利用により収益を得るための仕組みを作ります。単にコストを減らして売上を上げることを目指すものではなく、製品やサービスの満足度を高めることで課金サービスを使ってもらう、アップセルやクロスセルの仕組みで客単価を上げるなど、適正な収益の最大化を目指します。
<事例:満足度を高めて購買に結びつける>
●スターバックス(コーヒーショップ)
出典:KITTE博多
スターバックスではドリップコーヒーの2杯目を100円で販売する「ワンモアコーヒー」というサービスを行っています。2杯目のコーヒーを値引することで1杯目のコーヒー購入の抵抗感を下げ、同時にお得感・満足感を与えています。もともとは1時間で破棄する決まりでロスが多いドリップコーヒーの作り置きを提供しているので原価はさほど増えません。一見損をしてしまいそうな価格設定も、来店回数を上げ、収益を増やすことにつながっていることがわかる事例です。目先の売上にだけ執着することなく全体の収益を増やすための仕組みを作ることが重要です。
参考:節約社長
まとめ
WEBサービスの成長事例や、ランディングページや登録フォームの最適化のためのA/Bテストといった事例はたくさん見つけることができますが、それをそのまま自社の施策として適用するのは難しいのが実際のところです。
グロースハックの本質を理解することで、WEBサービス以外のジャンルでもグロースハックの手法を実践に活かすことができるのではないでしょうか。本記事では、グロースハックの考え方を理解していただけるような事例を取り上げました。御社の製品やサービスに、グロースハックのエッセンスを取り入れる参考となれば幸いです。