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事例で解説 リサーチ結果をスムーズな意思決定につなげる4つのポイント

リサーチ結果をスムーズな意思決定につなげられないと感じたことはありませんか?

結果を解釈する際に議論が発散して収束に時間がかかったり、意見が割れてなかなか終着点が見つからなかったりする経験があるかもしれません。

リサーチ結果を意思決定に反映しにくいと感じているとしたら、サービスやプロダクトを取り巻く現状や課題を把握する「探索型のリサーチ」の時点ではユーザーを意識したコミュニケーションが取れていたのに、実際に解決に向けた開発を始める「検証型のリサーチ」の段階ではユーザーを置き去りにしてしまっているのかもしれません。

本記事では、UXリサーチ初心者のかたに向けて、リサーチ結果をスムーズな意思決定につなげる4つのポイントを実際の検証型リサーチの事例を通してお伝えします。

探索型のリサーチと検証型のリサーチ

はじめに、探索型/検証型それぞれのリサーチ手法について整理します。

UXリサーチは、ユーザー心理やユーザーニーズを明らかにするための調査で、大きく分けて「探索型」と「検証型」の2種類あります。どちらも根底として「お客さまを理解すること」が目的です。

ここでは、下記のように分類します。

  • 探索型リサーチ:「正しい問題を見つける」フェーズでおこなう。解決すべき課題の発見や、新たな可能性を探索するリサーチ。
  • 検証型リサーチ:「正しい解決方法を見つける」フェーズでおこなう。探索から導いた仮説の検証、施策の効果を検証するためのリサーチ。
ダブルダイヤモンドの図
引用元:https://uxdaystokyo.com/articles/glossary/doublediamond/

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スムーズな意思決定ができた検証型リサーチ事例

意思決定がスムーズに進んだ事例をご紹介します。

本調査では、探索型リサーチで明らかになったユーザーの課題を解決するための新しいサービスが、ユーザーに受け入れられるかを検証しました。

簡易的に動作するプロトタイプを利用してもらった上で、新しいサービスを利用したいと感じるか質問した結果、利用意向の評価が二分されていました。

インタビューでは利用意向と同時に「課題に対する共感度」を4段階で評価してもらい、ユーザーが課題をどの程度重く感じているのか、理由や背景を含めて確認しました。

もちろん、インタビューに協力してもらう人を選出するリクルーティングの段階でも課題に対する共感度を把握しており、全員が問題意識を強く持っているように見えていました。

しかしインタビューを実施すると、「問題のポイントが異なった人」や「他の問題にも意識が高いため相対的にこの問題意識が低い人」が混じっていることがわかりました。

さらに、問題意識が低い人とサービス利用意向が低い人は合致していました。

利用意向と問題意識の強弱

結果、サービスの利用意向について評価は二分されましたが、問題意識の強さが異なっていることが明らかになったため、どちらの意見を重視すればいいかスムーズな意思決定をおこなうことができました。

スムーズな意思決定につなげる4つのポイント

この事例にはスムーズな意思決定につなげるための4つのポイントが隠れています。リサーチ後の意思決定をスムーズに進めるために、サービスやプロダクトの検証型のリサーチにおいて意識すべきポイントを時系列に整理します。

ポイント1. メンバー間で話を聞きたい人の共通認識を持つ

基本的なポイントですが、「検証型リサーチ」において、そもそも誰のどのような問題を解決するためのサービスなのかという視点は意外と見落とされがちです。なぜならアイデアが形になるにつれ、UIや機能など具体的な内容に意識が向かいやすいからです。

この状態で仮説を検証してしまうと、ユーザーの利用文脈や背景への考慮が抜け落ちてしまったりする可能性があります。

こういった状況を避けるために、インタビュー実施の前段階で、サービスやプロダクトを届けたい相手の解像度を上げ、耳を傾けるべき相手がメンバー全体の共通認識となっていることが重要です。

また、プロダクト開発の途中でメンバーが変わることも想定し、ペルソナなど過程が引き継がれる状態で形に残しておくことも重要だと考えます。

メンバー間で話を聞きたい人の共通認識を持つ

ポイント2. 質の高いリクルーティングを心がける

100人にインタビューするのは現実的ではなく、時間やコストの面からインタビューできる人数は限られています。インタビュー対象者の抽出と選定を考えなしにおこなうと、雑音が混じってリサーチ結果を見誤ったり、時間を浪費したりします。

そのため、話を聞きたい相手の「外せない要件」「外しても許容できるが優先したい要件」「除外したい要件」を整理した上で、要件に沿ったリクルーティングをすることが大切です。また、インタビュー対象者のリクルーティングをアンケート等で実施する場合、不正回答者を除外する工夫もあると良いでしょう。

成果につなげるアンケート設計のポイント「不正回答者を除外できる設問を用意しておく」を読む>>

ポイント3. インタビューで改めて「相手を知る」

「検証型リサーチ」では、新たに提供する解決策に対して利用者がどう評価するのかという点が最も優先すべき検証点であることは明らかです。

しかし、前述しましたが、プロダクトを評価している人(=インタビュー対象者)自体の理解をせずに評価結果だけ分析してしまうと判断を誤る可能性があります。

インタビューの際は、先ほどの事例のように話を聞いている相手が「どのような背景」で「どのような課題」を「どの程度強く感じているのか」を知る時間を設けると良いでしょう。

リクルーティングは完璧ではないという前提で、改めてこれからインタビューする対象者がどのような人物なのか、解像度を上げることが大切です。

調査の主目的は「正しい解決策の検証」にあるため長い時間を取ることはできません。しかし、サービスやプロダクトを利用する上で影響を与えそうな背景や考え方なども可能な範囲で聞いておくと、後の検証のインタビュー時につながりが見える場合があります。

さらに、インタビュアーだけではなくプロジェクトの関係者もユーザーの解像度を上げておくことで、その後の意思決定がよりスムーズになるでしょう。このためには、実査に同席する、インタビューを録画したデータを共有する、インタビュー結果を整理する際にインタビュー対象者の情報も付記して共有する等の手段が考えられます。

ポイント4. メンバー間で誰がターゲットに近いか共通認識を持つ

誰がターゲットに近いかメンバー間で共通認識を持つ

インタビューの結果を受けて、メンバーが知りたかった結果にすぐに飛びついて議論が進んでしまうことがあります。結果だけ切り取って見てしまい、どのような背景・文脈でそのような評価に至ったかについて考慮が抜けてしまう可能性があります。

そのような状況を避けるために、インタビュー後にデブリーフィング(※)の時間を設け、最初にどのような人だったかを共有し話し合う時間を設けることをおすすめします。

※デブリーフィングとは、インタビュー実施後に、インタビュアーやインタビューに同席していた関係者でおこなうミーティングのことです。インタビュー内容を振り返り、分析ではなく発言の意図や背景を議論します。ラップアップミーティングと呼ばれることもあります。

これによって、より強く耳を傾ける相手が明確になると共に、解決策の検証だけでなくユーザーの持つ課題に立ち戻って議論できるようになります。

過去に、課題感が強いにも関わらずサービスの体験価値をあまり感じていないというケースがありました。その際は、分析の結果、課題感を持つタイミングとサービスを提供するタイミングがずれていることが分かり、軌道修正することができました。

リサーチ結果をレポートだけで報告する場合は、レポートの冒頭にインタビュー対象者の特徴や、どの程度ターゲットとフィットしていたかなどを整理しておくと良いでしょう。

メンバー間でユーザーの共通認識を持つ→結果の解釈・分析がしやすくなる→意思決定がしやすくなる

ユーザー視点を間近にするプロダクト開発をしよう

プロダクト開発は意思決定の連続です。

検証型のリサーチ結果をどう読み取るべきか悩んだ時、サービスやプロダクトの良し悪しの評価だけでなく、そのような評価をした人がどのような人だったのかをセットで捉えておけば、それは大きな道標となってくれるはずです。

新しいサービスやアイデアについてあれもこれも聞きたくなる気持ちをぐっと堪えて、まずは「相手のことを知る」ことから始めてみてください。

また、意思決定を前に進めるためのインタビューにはさまざまなテクニックや、抑えるべきポイントがあり、自分たちでインタビュー調査を実施する自信がないという人も多いと思います。

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執筆者について

株式会社メンバーズ ポップインサイトカンパニー
UXリサーチャー 矢島 真弓
2019年、業界未経験でポップインサイト入社。幅広いサービスのUI/UXリサーチを担当しながら日々勉強中。プライベートでは3児の母としても奮闘中。

※スライド内で使用しているイラストは「いらすとや」より引用

投稿日: 2024/03/13 更新日:
カテゴリ: その他