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インタビュー調査を面白くする方法 「質問」に「質問」で返す?

UXリサーチにおいて、ユーザーの「声」を生で聞き、潜在的ニーズを探る「ユーザーインタビュー」は、リサーチャーの重要な仕事です。

ユーザーの行動の実態や価値観を聞き出す「定性調査」のインタビューもありますが、今回は私がUXリサーチャー1年目に経験した、ユーザビリティテストにおけるモデレートありのインタビュー調査について書きたいと思います。

初めて担当したインタビュー調査は、複雑な管理サービス

私が初めて担当した調査は、少し複雑な管理サービスのユーザビリティテストでした。

サービスの内容を知るために、「まずは説明資料等を見ずユーザー目線でやってみよう!」と、テスト登録をして利用。しかし、利用開始してからすぐに、「どこから登録をするの?」「どうやってグループ作成ができるの?」と混乱。

結局私は、クライアントがユーザビリティテストとしてやりたいと言っていたタスクを、何も見ない状態ではほとんど達成できませんでした…。

その後、説明資料を見ながら改めて使ってみますが、それでもつまずいてばかり。これから調査をしないといけないのに、製品の理解にとても苦しんでしまいました。

製品への理解に苦しみ、インタビュー調査への不安が募る

インタビュー初日が近づくにつれ、モデレートできる自信がどんどんなくなっていきます。

このときの対象モニターは「ITを使いなれていない方」だったので、

「モニターが違うボタンを押してしまったら、どう誘導したら良いんだろう…」
「モニターにシステムについて聞かれても答えられないかも…」
「操作が分かりにくいから、モニターにたくさん質問されそう…」
「モニターの質問に答えてしまったら、テストの結果が変わってしまう…」と、不安は募っていきました。

先輩リサーチャーからのアドバイス「逆に質問で返す?」

そんなとき、先輩リサーチャーの一言が私を救ってくれました。

「モニターに聞かれたら、逆に質問で返せばいいよ」
「そうか!」とすぐに納得でき、気持ちがすっと楽に。

ユーザビリティテストでは、正しく操作してもらうことが大切なのではなく、「ユーザーがなぜ操作できないか」の原因を知ることが重要であったと、改めて気づかされました。そこからは不安もなくなり、モニターが迷っていたら「聞く」を実践しよう!と心に決め、インタビュー調査の流れを当日まで何度も確認。自信を持てた状態で、インタビュー調査初日を迎えられました。

「聞き返す」を実践してみると?

早速、初めてのインタビュー調査で「聞き返す」を実践。

「このボタン、押していいんですか?」
「もう登録できてますよね?」
「このページからはもう進めないですよね?」

予想していた通り、テスト中サービスの操作に迷ったモニターは、たくさん私に質問をしてきました。そのたびに、私は質問で返します。すると、モニターの回答から新しい示唆を多く得られ、最終的にサービスの課題が明確になり、無事調査を終えることができました。

初めてインタビューをした調査に限らず、ユーザビリティテストでは想像以上にモニターからの質問の機会が多いと感じています。これらの質問は決してモデレーターを頼ってのものではなく、操作を進めるうえでの「不安」や「迷い」から来ているものです。

「モニターのふとした疑問の原因は何なのか」
これをインタビュアーが拾って確認することは、とても重要な役割だと思っています。

質問に質問で返す、インタビュー調査の面白さとは?

重要だからこそ、質問に質問で返すことの面白さを私は知りました。

例えば「このボタン押してもいいですか?」という単純な質問に対しても、聞き返す質問で得られる示唆は変わってきます。

基本的には「どう思いますか?」「普段だったらどうしていますか?」と普段の行動を確認するための質問を最初にしますが、その後どういう質問をするかによって深堀りができたり、自分が予想していた回答とは全く違うものが返ってきて、別の課題が発見できたりします。

テストの時間が限られている中、モニターに多くの質問を投げることはできないので、「どの聞き方をするとサービスの課題解決に繋がるインサイトが得られるのか」この判断が難しいと同時に、面白い!とも思っています。

『あれ?』と言ってましたが何かありましたか?

調査をしていると、モニターから
「ん?」「あれ?」「どうして?」「へえ」「ふーん」「ああ」

といった感嘆詞のような発言もよく聞きます。そんなときも、なるべく質問することを意識。

「『あれ?』と言ってましたが何かありましたか?」
「今の『ふーん』というのはどういう感情ですか?」

モニターが調査中に自然に発した言葉にもヒントがあり、発言の理由を聞いてみると面白い示唆が得られることがあります。
特に発言の少ないモニターの場合は重要視しています。

言葉を全て拾っていると時間がなくなってしまったり、手が止まって行動の妨げになることがあるので、モニターの発言数や残り時間に合わせて質問するように意識していますが、なかなか難しいです。

でも、調整が上手くできて思わぬ回答を聞けたときは、「やっぱりインタビューって面白い!」と感じています。

インタビュー調査を面白くするやり方-まとめ-

・ユーザビリティテストは、正しく操作してもらうことが大切なのではなく、「ユーザーがなぜ操作できないか」の原因を知ることが重要

・インタビューでモニターに質問をされたときは、どんな質問で返すか、その後どう広げて深堀りをするかで得られる示唆は異なる

・モニターがインタビュー中に発言した小さな「?」にも質問をすることで、行動からは見られない新しい発見がある

インタビューの仕方でさまざまな課題を発掘する楽しさを体験できるのは、インタビュアーの醍醐味だと思います。
UXリサーチに携わっている方は、インタビューで「質問に質問で返す」を意識して、新たなインサイトに出会える面白さをぜひ味わってみてください。

コラム執筆者

小柳

地方の出版社で、編集者として地域情 報誌やWEBサイトに載せる記事を制作。 グルメからお出かけ情報、ブライダル まで、様々なジャンルの取材を経験。 昨年9月にポップインサイトに入社し、UXリサ ーチャーとして2年目を迎える。

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