ユーザーインタビューで本心を聞き出す3つのコツ【UXリサーチ初心者向け】
ユーザーインタビューを行うため、被験者を集め、聞く内容を整理し、準備万端でインタビューに臨んだはずなのに、なかなかユーザーの考えや気持ちを聞き出せない…なんてことはありませんか?
この記事では、現在UXリサーチャー歴2年目で20回以上のインタビューを実施した経験から、インタビューをする際にユーザーへの質問の内容ややり方について意識していることを、3つお伝えします。
UXリサーチャー1年目でのインタビュー失敗談
初めてのインタビューは以下のような内容でした。
●インタビューの目的
ある音楽機器購入者のユーザー像と、購入検討の背景や情報収集の流れを明らかにし、既に仮説として立てている購入検討プロセスが正しいか検証する
●インタビュー時間
60分間
●インタビューの種類
半構造化インタビュー
→決められた質問だけでなく、ユーザーの回答に対してさらに深堀をしたり、別の質問をすることで、背景や状況を明らかにしていくインタビュー ※その他インタビューの種類についてはこちら
●インタビューで明らかにしたいこと
・対象製品の購入の背景
・ユーザーと対象製品の接点(タッチポイント)
・情報収集の流れ
・ユーザーの生活や思考などのユーザー像
●被験者
・対象製品の購入者
初めてのインタビューということもあり、ユーザーに聞く内容は前もって丁寧に吟味し、100問ほど設問を用意しました。
▼設問の内容を一部抜粋して紹介します。
・普段どのような機器で音楽を聴くか
・情報収集の流れ
・調査対象の製品を知ったきっかけ
・調査対象の製品に期待していたこと
・調査対象の製品を選んだ理由
・現在の製品の用途
など
被験者も無事に集めることができ、準備万端でインタビューに臨みました。
しかし、初回のインタビューで、ユーザーの経験や気持ちを聞き出せず、60分を予定していたインタビューがあっさりと40分で終わってしまい、残りの20分は先輩リサーチャーにバトンタッチして、聞けなかった内容を多く質問してもらうことになりました。
当時は、どうしたらユーザーの経験や気持ちを聞き出せるようになるのか分からず、インタビューに対して苦手意識を持っていました。
今ではかなり克服されましたが、苦手意識を克服するために、インタビューに関する本を読み、基本的な方法を学び直しました。また、約1年間で20回以上のインタビューの経験を積みました。
これらの経験を踏まえて、私がインタビュー時に意識するようにしたことをリストアップしましたので、次の章で詳しく紹介します。
インタビュー時に意識すること
私がインタビューをする際に、意識するようにしたことは下記の3つです。
①受容の態度を示す
②理解できていないことはとことん聞く
③思い込みの枠にとらわれない
ここから1つずつ詳しく説明します。
① 受容の態度を示す
インタビューをする際には「ユーザーはこんな課題を抱えているだろう」「このサービスはユーザーにとってこんな価値を与えているだろう」といった仮説をもとに実施します。
その仮説に基づいてインタビューをするなかで、ユーザーから想像もしていない発言が飛び出し、「それ本当?」 と疑ってしまうことがありました。
しかし、ユーザーの率直な声を聞くためには、インタビュアーとしては仮説はいったん頭の隅に置いておき、ユーザーの発言をそのまま一度受け入れる必要があります。決して否定はしません。
また、ユーザーからありのままの話を聞き出すためには、「何を言っても大丈夫」と思える雰囲気を作ることが大切です。「あなたの話を聞かせてほしい」「思っていることを教えてほしい」という態度で接し、ユーザーの発言には「なるほど」「そうなんですね」「うんうん」と相槌を打つように心掛けています。
一方でユーザーの発言に同意してしまうと、「あなたのその話は正しい」と示すことになってしまい、バイアスをかける可能性があるので避ける必要があります。
② 理解できていないことはとことん聞く
私はインタビューをしていて、ユーザーの発言を理解できないことが多々あります。
特に、調査対象のサービスではなく競合についてインタビューをする際、インタビュアーが競合サービスの機能や用途について完璧に把握することは難しく、ユーザーが当たり前にしている話が理解できないことがあります。
インタビューに慣れていない頃は、「きっとこの話を理解できていないのは自分だけだ」「そのサービスについて勉強不足だったな」と考え、聞くことを躊躇してしまいました。
しかし、ユーザーが当たり前に思っている話が、サービスの担当者にとっても新たな発見だった、ということもあります。「自分が分からないことは他の方も分からないかもしれない」というマインドで、恥ずかしがらずになんでも聞くことが重要だと実感しました。
また、ユーザーが細かく質問されることに対して不快な気持ちにならないように、インタビューの冒頭に「根掘り葉掘り聞くこともありますが、○○さんのお話しからアイデアを得るためです。できる限り率直に教えていただけると助かります!」と伝えたり、細かく聞く前には「勉強不足で恐縮なのですが」と一言添えたりするようにしています。
③ 思い込みの枠にとらわれない
インタビュー中は、ユーザーの発言に対して「なぜ?」と疑問を持つ事が重要です。
これは、上野啓子さんの「マーケティング・インタビュー ―問題解決のヒントを「聞き出す」技術」 という本で学び、それ以来意識していることです。
こちらの本に掲載されている例を紹介させていただきます。
例えば、「なぜ普段から水を飲むの?」という質問に対して、ユーザーが「健康に良いから」と答えたとします。確かに水を飲むことは健康に良さそうなイメージがあるので、そこでインタビュアーは納得しそうになります。
しかし、「健康に良い」といっても、
・病気を治したい
・ダイエットしたい
・長生きしたい
など様々なニーズがあり、そのニーズによって訴求すべき価値も異なってくるため、ニーズをしっかりと把握する必要があります。
(上記、上野啓子さんの「マーケティング・インタビュー ―問題解決のヒントを「聞き出す」技術」から引用)
私がニーズの聞き出す際には、「それはどうしてですか?」「それをどこで知りましたか?」「どんな時にそう感じますか?」などと深く質問するようにしています。
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株式会社メンバーズ ポップインサイトカンパニーのサービス資料です。UXリサーチチームが組織に伴走しサービス開発・改善のプロセスにUXリサーチの内製化をご支援します。
まとめ:インタビューの際に意識している3つのこと
今回は私の体験談から、ユーザー理解のインタビュー時に意識すべきことをお伝えしました。
①受容の態度を示すこと
②理解できていないことはとことん聞くこと
③思い込みの枠にとらわれないこと
UXリサーチをするうえで「ユーザーの本心を引き出せていないかも?」と感じている方は、ぜひ上記3つのコツを参考にインタビューをしてみていただければ幸いです。
株式会社メンバーズ ポップインサイトカンパニーでは、調査設計から被験者のリクルーティング、インタビューの実査・分析、UXリサーチ内製化などのご支援をしています。ぜひお気軽にお問い合わせください。>>お問い合わせはこちら
■コラム執筆者
鹿山
2021年4月に株式会社メンバーズに入社。新卒でUXリサーチャーとなり、現在リサーチャー歴2年目。今までに家電メーカーや携帯電話会社等のUXリサーチを担当。趣味はミュージカルやバレエの舞台鑑賞と、YouTubeで犬の動画を見ること。
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