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ブログで学ぶUX

【事例に学ぶ】会社を動かすために個人裁量でとにかくやってみる〜企業の中での個人活用の事例〜

株式会社favy マネタイズdiv.コンサルタント 森 祐二様

UXという言葉がバズワード的に広がっている昨今ですが、「費用対効果が見えにくい」「やれる人材やノウハウがない」などの理由から本格的に「UX改善」に取り組んでいる企業はまだまだ少数派です。
本記事では、行動観察調査や店舗でのユーザインタビューなど「顧客の生の声」を重視して飲食店のマーケティング支援を行なっている株式会社favyに所属し、同時に個人的にユーザテストExpressを活用していただいている同社マネタイズdiv.コンサルタントの森様の活用事例をご紹介します。ユーザテストを実施する文化を浸透させていくためのヒントや、ユーザテストの価値についてお話を伺いました。

目次

提案だけで動かせないなら、まずやってみる

Q.早速ですが企業に所属しながら個人でユーザテストExpressをご活用いただいている背景をお聞かせください。

ユーザビリティテストについては以前から知見も経験もあり、対面のテストを数百回は実施したと思います。いろんな案件で実査を行ってきましたが、近年テスト用のツールがどんどん安く、手軽になってきたので、専門の調査会社やラボがなくても、もっとカジュアルにテストを行えばいいのに、と常に考えていました。

ポップインサイトのユーザテストExpressについてもそうで、うまく被験者とタスクがはまれば、手軽に安価に仮説出しや検証が行えるサービスだと思います。

いま所属しているfavyという会社が兼業OKなので、数年前から個人事業として小規模な案件を成果報酬で請け負うようになったんですが、そのなかでWeb画面をテストしたい、という場合、なかなか対面でのテストはコスト的にも難しく、ユーザテストExpressは唯一の選択肢といっていい状態でした。

Webアナリティクスの数字などで「ここに課題がある」のはわかっているけれども、それが「なぜそうなっているのか」がわからない場合の検証には非常に役立ちますね。

Q.ではまだ会社としてユーザテストや弊社サービスの認識というのは特にないんでしょうか。

いえ、社内でもポップインサイトのサービスは知られていますし、ユーザビリティテストの価値は設計・開発のメンバーにはよく知られています。ただ弊社の場合、社内に仕事の速いデザイナーとコーダーがいるので、5000円でリサーチするより「ランディングページ作って、5000円でリスティング広告を出して検証しちゃえ」ということが多いですね。

検索キーワードのボリュームを見るだけである程度仮説は出せますし、仮説の数だけランディングページを作れば、よっぽどCPCが高くなければそのほうが効率的だという考え方ですね。リサーチ自体は売上を作りませんが、上記のやり方なら売上で仮説の良し悪しがわかるので費用対効果がいい。

Q.会社としては定性調査として他の施策などは取り入れていらっしゃるんですか?

favyとしてはユーザリサーチの重要性はわかっていて、対面のユーザビリティテストはやっているんですよ。オフィスが新しくなって調査に使える部屋が2つあるので、ビデオカメラのケーブルを通して自社内で対面調査を行なっています。

比較的規模の大きな案件で、リアルなテストした方が価値が出そうであれば、提案の中に行動観察は入れていますね。

Q.なるほど、会社としてユーザビリティテストの価値は理解があり、弊社の例えばリモートリサーチサービスに関して、費用対効果の面でまだまだ浸透する段に至ってない。

そうですね。そこは他の会社とは状況が違うと思います。1日でLPを実装して広告回せるような会社はそんなにないでしょうから。

とはいえ、個人のプロジェクトや、趣味的にユーザテストExpressを使って、その結果を、動画をその場で見せながら社内に共有したりして、テストの価値を伝えているところです。

Q.まさに啓蒙活動としても使っていただいているわけですね。そもそも定性調査などの知見が深い森さんがユーザテストExpressを活用するのはどんな時でしょうか。

まずひとつ目は「想定しているユーザは本当にいるのか?」という疑問に行動から光を当てるターゲットユーザの検証。次に「そのユーザにこのコンテンツは効くのか」といった画面やコンテンツの検証。あとは、既存のページを「もっとよくできるのではないか」という、仮説出しのためのテスト、ですかね。

Q.ユーザテストを行う上で森さんが意識しているコツみたいなものはありますか?

テストの現場ではなく、普段の生活の中で人の行動をよく見てると思いますね。あとミラーリングとかいうんですけど、人の動きを真似てみるとかでしょうか。

アイス屋さんのリサーチだったら、アイスをテイクアウトして表参道を歩きながら食べる人をずっと追いかける。追いかけながら、歩幅とか、顔の向きとか、姿勢とかを真似てみる。そうすると、その人の見ているもの、嗅いでいるにおい、風景の通り過ぎるスピードがわかってくる。

そうすると、その人の物の考え方とか、感じ方もなんとなくわかってくるんです。

Q.それはただ、後をついていくだけなんですか?

ふだんはそうです。アイス屋さんの話でいえば、プロジェクトとしての調査なので、その人が食べ終わったかなというところで「すみません」って声かけて、「このお店のこと、どこで知りましたか?」というように23つ聞いていったりします。そこである程度想像したものをヒアリングで確かめます。

Q.すごいですね!現場主義、本当にリアルのユーザテストを実践されている。その価値はすごくありそうなんですが、具体的にお聞かせいただけますか?

飲食って世の中のいろいろな商材の中でも、ユーザのシナリオがすごく短くて、テレビで見て「あ、週末行ってみよう」と思って、実際来店しちゃうみたいなすごく軽いノリなんですよね。

もちろん「原宿 スイーツ」とか「新宿 焼肉」と検索するような人は、どこの店が一番いいかをじっくり比較検討するんでしょうけれど、実際に来店した人の行動を見ると、ほんとにふらっと入ってくるし、その人にあとでヒアリングすると「テレビでやってたんで」とか「歩いてたら、何か見たことあるお店だと思ったので」という感じが意外と多い。

だとしたら、検索からのシナリオを精緻化していくことにリソースを割くよりも、認知の時点で勝負をつけちゃったほうがいいんじゃないか、みたいな施策に行き着く場合があります。

○○から学んだ調査のコツ

Q.リアルでお客さんに声をかけるまでの調査はやったことない人も多いと思うのですが、印象的なエピソードなどありますか。

声掛けに関しては、昔ナンパ師の人に話を聞いたことがあります。彼らの極意として、「真正面から行っちゃ駄目だ。横から話をかけると成功確率が上がる」と。(笑)

パーソナルスペースの話ですよね。バーで横に座った人とは、初対面でも話が盛り上がるけど、真正面に座られるとイヤな感じになるのと同じで。

あと、飲食のプロジェクトだと、つい唾液が出てしゃべりにくくなりがち、とか。(笑)

大量の行動データより、1、2例のリアルな行動や声を

Q.「ツールとしてのユーザテスト」という意味で、ほかのサービスと比較はしましたか?

ツール自体は意識して調べたり試したりしてます。ヒートマップのツールなどタグを入れればユーザの動きが分かるというのは面白いですね。

なぜExpressを使っているかというと、声がとれるのと、モニタの方が思考発案するということに慣れているところがいいと思っています。他のツールだと声の調子まではわからないので、実際にユーザが一生懸命見ているのかどうかという「質」の部分は想像するしかない。

マーケターが知りたいのは「何がどんな理由でユーザの心を動かしたのか」なので、動画で見る行動や声のトーンでユーザの態度がわかりやすいのがニーズに合っています。

Q.なるほど、具体的な事例などありますか?

ある飲食系の人材サービスの訴求ポイントを考える時に、「求人数の多さや内容が刺さるのでは」という仮説があったので、そういうLPを作ってリモートのテストをしました。

確かに仮説通り求人数に関して興味を示すユーザはいたのですが、そのLPの「代理で給料など交渉します」という説明のところであるユーザが「あ、なるほどね」って言ったんです。すごくそこに食い付いていました。

飲食店で働いているととにかく忙しいので、そんなに転職活動に時間をかけていられない。そこで「面倒くさいところは全部お任せ」というのが響くんですね。こういう発見はたぶん、どんなツールを使ってもわからない。

本当であれば対面で視線や姿勢までとれると最高なんですけど、Expressのようにライトに使えて、その人の声のトーンまで伝わってきて、指先の動きまで見えるサービスは、すごくリーズナブルだと思います。

ユーザの声や行動が仕事の効率を高めてくれる

Q.ユーザテストを考えてる方へのメッセージをお願いします。

ビジネスにおけるアイデアなんて、やってみなければ分からないことが多いですよね。それをユーザ行動という事実で、事前に検証できるのがユーザビリティテストです。

そのおかげで、頑張って資料を作るとか、社内政治とかにかける時間が減ります。説得に時間を掛けるよりは、カジュアルにテストしてみて、何かひとつでも重要なファクトを手に入れるようにしてはいかがでしょうか。

投稿日: 2018/02/07 更新日:
カテゴリ: その他