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自動車購入のカスタマージャーニーとは?ユーザーリサーチ結果をもとに解説

マーケティング戦略の策定において、カスタマージャーニーマップが重要であることはもはや常識です。
しかし、「実際に作ろうとしてもなかなかうまくいかない」「ジャーニーの妥当性が判断できない」といったお悩みはありませんか?

今回は、自動車購入におけるカスタマージャーニーの自主調査に基づき、ポップインサイトが作成した「自動車の新規購入~車検等のメンテナンス~買い替え」の10年間のジャーニーマップをご紹介いたします。

本記事でご紹介しているカスタマージャーニーマップは、「Beforeコロナ」の価値観で作成されたものです。 ポップインサイトではコロナ禍を経た顧客の価値変容・態度変容など現在のユーザー体験を明らかにする調査が可能です。お気軽にご相談ください。
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概要

このカスタマージャーニーマップは、数十回ものクイックリサーチ(インタビューおよび数十〜数百人へのアンケート)で得たリアルなユーザーの声をベースとし、商品・サービス提供者視点ではなく、実ユーザーの視点から作成しています。

マップには、「1. 初めての車購入」「2. アフターサービス・車検・修理」「3. 自動車買い替え」の3フェーズそれぞれでの「タッチポイント」「ユーザーの行動」「思考」「感情」に加え、それらを裏付けるユーザーリサーチ結果も記載しております。

今回のマップは、車種・ユーザーを区切らず自動車業界全般を対象にしたリサーチに基づいて作成しました。実際に活用される際は、車種ごとのターゲットユーザー設定やジャーニーの各フェーズにおける顧客インサイトの定性的な深掘りなどをおこなうことで、マーケティング施策の策定を強力にサポートするマップとなります。

本記事では、マップ作成のプロセスで洗いだされた興味深いポイントをいくつかご紹介します。

無料DL|ユーザビリティテストの基本

数あるUXリサーチ手法の中でも最初に始めやすい「ユーザビリティテスト」の「基本的な設計・実査・分析の流れ」と「実施の進め方や注意点」を解説します。

ポイント1. 初回購入時と買い替え時では「安全性が気になる」の意味合いが異なる

初回購入の比較検討フェーズに関するクリックリサーチ結果(マップより抜粋)

自動車購入時に最も重視するポイントについてユーザーリサーチを実施したところ、まずは「価格」、次いで「安全性・走行機能、操作性」という結果が出ました。

ところが、ユーザー心理を深堀りすると、初回購入時と買い替え購入時では、「安全性」の意味合いが異なることが明らかになったのです。

リサーチ結果:初回購入時に「安全性を重視する」のは自分の運転への自信の無さから

アンケート(n=129)によると、車の初回購入時に重視したポイントは「価格」(56.6%)が最も多く、次いで「燃費・排気量」(36.4%)「外装・デザイン」(35.7%)という結果でした。このうち最も重視したポイントでは、「価格」(25.5%)、次いで「安全・走行性能、操作性」(19.4%)となっています。

「安全・走行性能、操作性」を重視すると答えたユーザーの自由回答には「運転に自信がない」「運転が得意でなく、補助してほしい」というコメントが見られ、初回購入時に「安全性を重視する」大きな理由は、「自分の運転への自信のなさ」であることが示唆されました。

  • 運転に自信がないので安全性能。(28歳男性)
  • 小さな子どもを乗せるから。(32歳女性)
  • 運転が得意ではないので補助してほしいから。(39歳女性)
  • 安心できるから。(39歳女性)
  • 安全が大事だと思うので。(49歳女性)

リサーチ結果:買い替え購入時に気になるのは自動車事故のニュース

アンケート(n=264):車の買い替え購入時に最も重視したポイントは、価格(28.5%)、次いで「安全・走行性能、操作性」(20.5%)※初回購入時と同等

一方、買い替え時に「安全性を重視する」ユーザーの回答は、以下のように昨今増えている自動車事故のニュースから影響を受けており、必ずしも自分の運転の未熟さだけに不安を感じているわけではないようです。

「ニュースで取り上げられる中で、安全に乗りたいという気持ちが高まった」
「しっかりとした衝突防止や踏み間違い防止などの安全装置が必須」

「安全・走行性能、操作性」を重視すると答えたユーザーの自由回答には「ニュースで事故をよく見かける」というコメントが複数見られました。

  • ニュースで事故をよく見かけるので、安全装備にこだわった。(28歳男性)
  • ニュースで取り上げられる中で、安全に乗りたいという気持ちが高まったのが理由。(30歳男性)
  • 小さな子どもを乗せるから。(32歳女性)
  • 安全性能が優れているもの、自動ブレーキなど。バックモニターは必須。(47歳女性)
  • これから歳をとっていくので、何かあった時のために、安全性重視で。(52歳女性)
  • しっかりとした衝突防止や踏み間違い防止等の安全装置が必須。(60歳男性)
  • 自分の年齢も考えて非常ブレーキなどの装備及びその性能を考慮して選びたい。(64歳男性)

本リサーチでは、自動車買い替えのきっかけが「結婚」「出産」などのライフスタイルの変化であるという結果も得られており、より確かな安全性を求めるユーザー心理を理解する大きなヒントが得られたと言えます。

ポイント2. 買い替え時はサイトで見積もりを実施しない

買い替え購入の比較検討フェーズに関するクリックリサーチ結果(マップより抜粋)

続いて興味深い発見があったのは、購入前の「見積もり」についてです。

リサーチ結果:買い替え購入時は、過半数が「サイトで見積もりをしない」

アンケート(n=297):車の買い替え購入時にメーカーサイトで見積もりを「実施しなかった」(55.9%)が「実施した」(44.1%)を上回る。

メーカーサイトでの見積もり実施についてアンケートを行ったところ、初回購入時は「実施した(55.6%)」が「実施しなかった(44.1%)」を上回る結果でした(n=160)。
ところが、買い替え購入時は「実施しない」と答えた人が55.9%(n=297)と、過半数を超える結果となったのです。

リサーチ結果:買い替えユーザーは「店舗で直接取った見積もりが確実」

ネット見積もりを「実施しない」ユーザーが買い替え購入時に増える理由のヒントは、自由回答から浮かび上がりました。

買い替え購入時にネット見積もりを「実施する」ユーザーは、その理由として「オプションにかかる費用の把握」「概算の算出」を挙げていました。一方、「実施しない」ユーザーは、「値引き交渉・下取り価格などによる総額の変化が大きい」という、初回購入時にはない観点を得ており、ネットではなく販売店やディーラーで直接取る見積もりが確実であると考えていることがわかったのです。

買い替え購入時にメーカーサイトで見積もりを「実施しなかった」ユーザーの自由回答には、「販売スタッフと交渉しながら出した見積もりが確実」という主旨のコメントが多数見られました。

  • 直接お店に行って話しを聞きながら見積もりした方が早いと思ったので。
  • 値引きと下取りで大きく金額が変わるので、本気で検討するならディーラーに行く。
  • 見積もりはディーラーでしたのでサイトでする必要がなかった。ディーラーは個別のサービスや特典をつけてくれますのでWebより条件が良い。
  • 販売店でしか見積もりしなかった。人と話しながらでないとオプションやらなんやらが、車に詳しくない自分にはわからなくて。
  • 直接聞くのが普通で誠実なのではないかと…

ポイント3. 基本情報をネットで下調べするのは、営業スタッフに対する知識武装

買い替え購入の比較検討フェーズに関するクリックリサーチ結果(マップより抜粋)

最後にご紹介するのは、購入前にネットで下調べをするユーザー心理についてです。

リサーチ結果:販売店やディーラーを訪れるのは「候補の車をきめてから」

アンケート(初回購入:n=172・買い替え購入:n=295):販売店・ディーラーを訪問するのは、初回・買い替えいずれでも「ある程度候補をしぼった段階」以降が大多数

ユーザーが販売店やディーラーを訪れるタイミングは、初回購入時、買い替え購入時いずれでも「ある程度候補の車を決めてから」でした。
車について詳しいはずの販売スタッフに相談するのではなく、Webサイトや雑誌などで下調べし、ある程度意思を固めてから店舗を訪れるのはなぜでしょうか。

【無料ダウンロード】カスタマージャーニーマップ(自動車)+リサーチ結果

自動車の新規購入~車検等のメンテナンス~買い替えの10年間のジャーニーを自主調査でまとめました。ジャーニーを裏付けるリサーチ結果(数十調査)もセットでご覧いただけますので、ぜひ参考にご活用ください。

リサーチ結果:買い替えユーザーは販売スタッフとの交渉を想定して情報収集

リサーチでの自由回答を見ると、下記のような回答が見られ、販売スタッフの営業トークに流されてしまわないよう、言わば交渉の下準備として情報取集をしていることがわかりました。

「ネットである程度情報収集してからのほうが、話もスムーズに進むから」
「ある程度自分で決めておかないと、販売スタッフの言葉に振り回されそう」
「話聞いてたらどんどん高い車がよく見えてくるだろうから」

買い替え購入時に「ある程度候補をしぼった段階」または「決めた段階」で店舗に行くユーザーの自由回答には、「話がスムーズに進むから」という商談の効率化を目的としたコメントと、「ある程度決めておかないと販売スタッフの言葉に振り回されそう」など、販売スタッフの営業トークに対する知識武装を目的としたコメントが見られました。

<Webサイトや雑誌などで情報を収集し、ある程度候補を絞った段階で行く>
  • ある程度調べて、買いたいメーカーの販売店に行った。ある程度調べてから行った方が、詳しく聞けると思ったので。(26歳男性)
  • より詳細な情報を知りたくなるタイミングだから。(31歳男性)
  • ネットである程度情報収集してからの方が、話もスムーズに進むから。(34歳女性)

<Webサイトや雑誌などで情報を収集し、購入予定の車を決めた段階で行く>
  • 徹底して調べてから行かないと損するイメージ。(33歳女性)
  • ある程度自分で決めておかないと、販売スタッフの言葉に振り回されそう。(37歳男性)
  • ある程度決めてから行く。たくさんあって迷うし、話聞いてたらどんどん高い車がよく見えてくるだろうから。(40歳女性)

このユーザー心理をさらに細かく読み解いていくと、購入を検討しているユーザー向けに、自社サイトでどういったコンテンツを展開すべきかの方向性も見えてきます。
さらに、販売スタッフがそうしたコンテンツを踏まえた情報提供をしたり、疑問や不安の解消をおこないながら商談を進めたりすることが営業の効率化、成約率アップにつながる可能性も示唆されます。

ユーザーリサーチに基づいたカスタマージャーニーマップの作成をご支援いたします

いかがだったでしょうか。
「自動車の新規購入~車検等のメンテナンス~買い替え」の10年間のカスタマージャーニーマップについて、ほんの一部をご紹介いたしました。

以下資料では、ご紹介した以外にも多くの興味深い発見点が満載です。カスタマージャーニーマップとリサーチ結果をあわせた全容を、ぜひご覧ください!

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カスタマージャーニーマップ作成の目的で最も多いパターンは、「Webサービスやアプリなどを具体的に改善する」ために、「筋の良い改善案をだす」または「チームの認識を揃え、動きやすくする」というものです。

当社でこのパターンのプロジェクトを行う場合には、「ペルソナ定義」と「カスタマージャーニーマップ作成&改善アイデア出し」の2回のワークショップを実施します。
ワークショップ内で実際に使用している資料は以下からダウンロードいただけます。ぜひご活用ください。

【無料ダウンロード】ペルソナ&カスタマージャーニーマップ作成ワークショップ

ユーザー調査から得られた結果をもとに作成するユーザーモデリングの代表的な手法であるペルソナとカスタマージャーニーマップ。本資料では、ワークショップ形式で作成するプロセスを解説します。

投稿日: 2019/08/01 更新日:
カテゴリ: UX/UIデザイン
タグ: カスタマージャーニー, 業界別ノウハウ, 自動車業界