海外ユーザーリサーチ(オンライン実施)のすすめ~グローバル展開を目指す会社必見~
業界を問わずグローバル化が進む昨今、「自社の製品(サービス)を海外展開したい」、「自社製品を海外でも展開しているが、どのような人に買ってもらっているのかわからないのでリサーチしたい」という企業様からのご依頼が増加傾向にあります。
本日は、これまでメンバーズポップインサイトカンパニーで行った海外ユーザー調査の事例紹介と、海外ユーザーに調査を行う際のTipsを共有いたします。
海外ユーザーリサーチの課題
海外ユーザーに対してリサーチを実施したいと思っても、
「ノウハウがなく、そもそも何をどうして良いかわからない」
「言葉の壁があり、海外ユーザーの生の声を聞くのが難しい」
等さまざまな課題があります。まずは、海外ユーザーリサーチにおける3つの課題をひも解いてみましょう。
課題1:言語の壁
今やデジタルテクノロジーの進化で、日常のコミニュケーションであれば翻訳ツールを駆使してのコミュニケーションが可能かもしれません。
しかし、「ユーザーリサーチ」となると、単に語学レベルが高いことだけではなく、リサーチャーとしての経験や技術も兼ね備えている必要があります。
例えば、海外ユーザーに定量アンケート調査を行うとして、単純に翻訳ツールで翻訳したアンケートをするとどうなるでしょうか。いくら日本語では正しく設計できているように見えても翻訳ツールを介することで不自然な翻訳となってしまい、ネイティブから見ると違和感のある質問文で意図しない解釈が生じたりバイアスがかかったりするなど、調査結果にも影響を及ぼしかねません。
「違和感やバイアスを与えるような不自然な質問の仕方はしないこと」、「誤解を与えたり、回答者によって解釈が異なるような聞き方をしないこと」そういった配慮は、日本語のアンケートと同様、海外ユーザー向けのアンケートでも必要です。
こういった背景から、「社内に〇〇語ができる人がいるから大丈夫」と思っていても、「いざリサーチに取り組んでみると壁にぶつかってしまった」、「調査が失敗に終わってしまった」、ということが起こり得ます。
→【Tips】:翻訳チェックは入念に。必ず「人間」の目でチェックしよう。リサーチャー視点での設計不備チェックも忘れずに。
課題2:文化の違い
「言語の壁」と近いところではありますが、海外ユーザー調査の際は「文化の違い」にも配慮と理解が必要です。
国によって、人との会話やコミニュケーションの「スタンダード」は異なります。例えば、日本人の方にインタビューするときは、会話中に「はい」「へぇ」「そうなんですね」等、適度な相槌を挟むことで、インタビュアーが話を聞いていることや理解していることを示しつつ、話し手が話を続けやすくする“場作り”も大事なコミニュケーションです。
ところが海外の場合、会話中に聞き手が過度に相槌を打つことで、会話を妨害されていると感じられたり、集中して聞いていない=マナー違反と感じられてしまいます。
こうしたコミュニケーション文化の違いを理解していないと、ユーザーの声を最大限引き出せないままインタビューが終わってしまうこともあり得ます。
また、これは実際に私が経験したことなのですが、ある調査でアメリカ人の方にZoomを利用したオンラインインタビューをさせていただいたときのことです。
インタビューの時間(夜の20時)になりZoomを繋いでみると、ダイニングテーブルで晩御飯を食べながら「Hi」と笑顔で挨拶するモニターが画面に映りました。「まだ食事を摂ってなかったから、夕飯を食べながら話すね」と何の遠慮もためらいもなく、とてもナチュラルに食事中にインタビューを受けていただきました。笑
日本では、ミーティングやインタビュー中に食事をすることはあまり自然なことではありませんし、ともすれば「失礼」「マナー違反」と捉えられてしまいますよね。しかし相手は文化もマナーも異なる外国人。日本人の「当たり前」を当たり前とせず、フラットな姿勢やコミニュケーションでリサーチを行うことが大切です。
→【Tips】:国が違えばマナーや文化も違う。日本人感覚の「当たり前」は捨て、柔軟且つオープンマインドでリサーチを行おう。
課題3:海外でUXリサーチを行うときに、利用すべきサービスやツールがわからない
海外のユーザーリサーチを行う上で、最も大きな課題となるのは「どんなサービスやツールを利用すれば良いかわからない」「そもそもどんなサービスがあるのかわからない」ということではないでしょうか。
国内のサービスでも、検討から導入まで情報収集をすると一定時間がかかります。海外のサービスとなると、様々な利用規約やプラン・システムを理解し、不明点があれば英語で問合せを行い、海外現地通貨での決済を行い…とさらにハードルがあがります。さらに、「色々調べたのは良いものの、結局どのサービスにしたら良いのか悩んでしまう」という方もいるのではないでしょうか。
そこで、今回は海外ユーザーへのUXリサーチを検討している方に向けて、ポップインサイトが実際に利用している、オンラインのUXリサーチサービスをご紹介します。
海外ユーザーリサーチのおすすめサービス
User Interviews
User Interviews
https://www.userinterviews.com/
初めにご紹介するのは「User Interviews(ユーザーインタビューズ)」です。
1名あたり45USD〜と、低コストで英語圏のモニターをリクルーティングすることが可能なリクルーティングサービスです。(謝礼は別途必要です)
スクリーニングのアンケート作成、候補者選び、日程調整、実査までのコミニュケーションをすべて自身で行う必要はありますが、その分スピーディーにモニター収集を行うことが可能です。
日程調整やモニターとのコミニュケーションは全てUser Interviewsのプラットフォーム上で完結できますので、手軽で効率的に海外でのUXリサーチを実現できます。
userlytics
userlytics
https://www.userlytics.com/
次にご紹介するのは「userlytics(ユーザーリティックス)」。userlyticsはリクルーティングサービス兼リサーチプラットフォームです。
ユーザーによるセルフ調査(用意されたタスクの指示に沿って、モニター自身が調査を進める)や、インタビュアー(リサーチャー)が調査を進行するLIVEインタビュー(オンラインインタビュー)など、スケジュール感や予算によって適した調査手法を選ぶことができます。
調査はuserlyticsのプラットフォーム上で行うことができ、Zoomやmeetなどのオンラインツールを用意したり、モニターに用意してもらう必要がありません。
また、このサービスの最大のメリットは、欧米の英語圏だけでなく、アジアやヨーロッパなど、グローバルにモニターをリクルーティングできることです。ポップインサイトでも、これまでアメリカ、オーストラリア、インド、韓国、シンガポール、インドネシア等、様々な国のモニターに調査を依頼した実績があります。
また、userlyticsではプランによってはオンラインインタビューのリクルーティングや、モニターとの日程調整も代行してもらうことができます。
LIVEインタビュー(オンラインインタビュー)のインタビュアー役を代行してもらうことも可能です。リクルーティングや実査の経験があまりない場合は、集めたいモニターの条件を伝え、リクルーティング~インタビュー当日までのコミニュケーション、実査当日のモデレート役も依頼することで、少ない労力で海外ユーザーへのリサーチが実現できるでしょう。
QuestionPro
QuestionPro
https://www.questionpro.com/
最後にご紹介するのは「QuestionPro(クエスチョンプロ)」。QuestionProは多言語で実施できるアンケートツールです。
様々な言語で世界各国のユーザーにアンケートを配信し、ユーザーの声を素早く収集することができます。ポップインサイトでも、これまで様々な調査で活用してきました。
英語、ドイツ語、中国語、タイ語、インドネシア語など、各国のユーザーに対して、クライアントの製品やサービスについての利用状況をアンケートしたり、ブランド認知状況を把握するリサーチを行っています。
アンケートは自身で作成する必要があるためアンケート設計のノウハウは必要となりますが、様々な言語に対応しているため、日本国内では収集困難な対象者の声をクイックに集められることが最大のメリットです。広くグローバル展開をしている企業にはもってこいのアンケート調査サービスでしょう。
最後に
海外ユーザーリサーチでの課題とTipsをご紹介させていただきましたが、言語や文化の違いを理解し、適切なサービスを活用することで、意外と簡単に海外ユーザーのリサーチを実現できます。
自社のサービスや製品を海外展開するには、海外のユーザーを理解することがファーストステップです。
「海外の調査は敷居が高い」と諦めずに、「まずは3人に話を聞いてみる」「まずはアンケートで仮説を生成してみる」など、クイックに海外ユーザーリサーチを初めてみてはいかがでしょうか?
※コラム執筆者
高野
大手ポータルサイトにてWebディレクターを経験後、2018年、ポップインサイトに入社。大手アパレルブランド、国内大手飲料メーカー、ECモール等のサイト改善やプロトタイプ調査等、UXリサーチの業務全般を担当。趣味は海外ドラマ鑑賞と筋トレ。
※ページ内で利用しているイラストはACより引用
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