UXデザインの資格って?人間中心設計スペシャリスト受験者とHCD-Netがぶっちゃけトーク 

【作成】2020/09/17  

「人間中心設計」の国内唯一の資格「人間中心設計スペシャリスト/専門家」。
UXに関わる多様なバックグラウンドの方々の受験が増えています。

UXに関わる方々からの注目度は高いものの、いざ受験を検討となると「難しそう」「大変そう」と二の足を踏む方が多いよう。また、「資格なんて意味がない、実践こそが大事」という声も聞こえてきます。

そんな中、今年1月、ポップインサイトから7名が資格に合格しました。

この快挙(!)を受け、運営団体の「人間中心設計推進機構(HCD-Net)」からヒアリングのオファーをいただいたことを発端に、「UXデザインの資格って?人間中心設計スペシャリスト受験者とHCD-Netがぶっちゃけトーク」セミナー企画が実現しました。

2020年8月25日開催の本セミナーでは、ポップインサイトの資格ホルダー3名と、運営の「中のひと」2名が、資格ホルダー36名*を対象としたアンケート調査結果についてホンネ満載のトークを展開(*アンケート対象者:ポップインサイトおよび親会社メンバーズの資格ホルダー)

受験準備のリアルエピソード、審査書類の書きかたのコツを交えながら、資格取得で業務内容やキャリアはどう変わるのかといった、資格取得のメリットや意義について考察しました。

これから受験を考えている方、審査書類作成につまづいた経験をお持ちの方、資格は取得したが実務にどう活用するか悩んでいる方、必見です。

【オンラインセミナー動画】UXデザインの資格って?人間中心設計スペシャリスト受験者とHCD-Netがぶっちゃけトーク

ぶっちゃけトークメンバー
聞き手
HCD-Net認定 人間中心設計専門家 森川裕美さん
HCD-Net認定 人間中心設計専門家 伊原力也さん

モデレーター
HCD-Net認定 人間中心設計スペシャリスト 寺倉翔太

パネラー
HCD-Net認定 人間中心設計スペシャリスト 矢作育恵
HCD-Net認定 人間中心設計専門家 高岩仁

HCD(人間中心設計)のプロセスと資格要件

冒頭、HCD-Net運営メンバーの森川さんより、UXデザインの型のひとつであるHCD(Human Centered Design:人間中心設計)のプロセスと、「コンピタンスマップ」と呼ばれる資格の要件をご紹介いただきました。

▶「HCDのプロセスとHCDコンピタンスマップ」パートの動画はこちら

人間中心設計スペシャリスト/専門家の試験は、試験会場で試験用紙に記入するような「筆記試験」ではありません。

提示された「コンピタンス(資格要件)」に合わせて、過去に取り組んできた人間中心設計やユーザビリティの活動を審査書類に記載のうえ申請し、審査を経て認定される形式で行われます。1人の受験者の審査書類を5人の「人間中心設計専門家」資格保持者が審査します。

受験資格は「人間中心設計・ユーザビリティ関連の実務経験」で、「スペシャリスト」は2年以上、「専門家」は5年以上の経験が必要です。


 
HCDプロセスと資格要件を確認した後は、「ぶっちゃけトーク会」本編です。

ポップインサイトと親会社メンバーズの資格ホルダー36名を対象に実施したアンケートをもとに、「受験のきっかけ」「受験(審査書類作成)期間」「認定後」「運営団体の印象やかかわり」について、受験者と「中のひと」の想いが交錯します。

「ユーザー評価に基づいて設計し、結果を仮説検証するプロセスを踏んでいる」人なら業種に関係なく受験可能

まずはじめに、受験検討のきっかけや申し込みまでの期間に感じたことについて、アンケート結果をもとにディスカッションしていきます。

アンケート結果:受験検討~申し込み

■資格受験を考えたきっかけ
「会社/同僚のすすめ」「経験の棚卸」「キャリアアップのため」「信頼性/説得性を得るため」

■申し込みまでに感じたこと
「認定されて意味があるか疑問」「受からないのでは・自分の経験で申し込みできるか、という不安」

▶「受験検討~申し込み」アンケート動画はこちら

パネルディスカッション:受験のきっかけと不安

矢作:受験のきっかけは、「2年以上の経験がある人は挑戦しませんか」という会社からの打診です。自分の経験を客観的に見られるのはよいなと思いました。子どもが小さく試験勉強の時間を取るは難しいのですが、審査書類を提出する形式なら何とかなりそうと思い、受験を決めました。

高岩:私の場合は経験の棚卸しの意味あいが大きいですね。受験で何らかの学びがありそうという期待もありました。お客さまにも資格保持者がいて常々気になっていました。

寺倉:私は営業職なのですが、営業提案やコンペなどで、コンピタンスに当てはまりそうな取り組みをしていたので、会社から資格取得を勧められたという経緯があります。
ただ、正直受験が終わるまでは、「リサーチャーではないのに受かるだろうか」「審査書類作成の時間は無駄なのではないか」と悩んでいました。一方で、営業職でも当たり前にリサーチができればいいなという思いがあり、ツイッターで資格取得の意志表明をしました。すでに資格を取得した営業職の方のブログ記事も気持ちの後押しになりましたね。

運営の中のひとの見解(森川さん):「人間中心設計スペシャリスト/専門家」は、実践者が申し込み、実践者が評価する資格です。肩書は関係ないし、教科書的なやりかたでなくても大丈夫です。少しでもユーザーに近い人への調査や評価をもとにデザインし、その結果を仮説検証する、ということが重要です。

▶「受験検討~申し込み」パネルディスカッションの動画はこちら

審査書類記入はぶっちゃけ大変!申請書との「対話」プロセスからHCDを理解

続いては、審査書類の作成から提出までの期間について語ります。

審査書類の作成では、満たすべき「コンピタンス(資格要件)」に合わせて、過去に取り組んできた人間中心設計やユーザビリティの活動から3~5プロジェクトを選んで、その内容を記載していきます。

各コンピタンスについて背景、選定した手法、工夫、実践した結果(成果)を記載するため、受験者はミニマムでも約3.6万文字程度という膨大な量を書くことになります。

アンケート結果:審査書類作成~受験後の気持ち

■書類を書き始めたときのきもち
「何を書くべきか理解するのが大変」「思い出すのが大変」「量が多い(人間中心設計の審査書類が人間中心設計されていないと感じた)」

■受験後の気持ち

  • ポジティブ派:「受験することそのものに価値があった」「HCDプロセスの理解が進んだ」「達成感」
  • ネガティブ派:「時間がかかる」「疲れた」「手ごたえがない」

▶「審査書類作成」アンケート動画はこちら

パネルディスカッション:「審査書類作成は予想以上に大変」

矢作:普段の業務でユーザー調査に取り組んではいますが、コンピタンス分類に合わせて取り組んでいるわけではないので、コンピタンスと業務内容がどうつながるのかの解釈に時間がかかりました。コンピタンスに関する設問を熟読して進めると、何が求められているのかがわかるようになってきました。

高岩:思っていた以上に大変だったので、コンピタンスをしぼって記載しました。「どんな工夫をしたのか」がポイントだと説明会等で聞いたので、特に工夫をしたプロジェクトについて記載しました。

森川さん:記載するプロジェクトの「あたりをつける」方法は効率的ですね。認定センター内でも、どういったプロジェクトを書くとよいかがわかる星取表を提供しています。

では、受験後の気持ちはどうでしたか?

矢作:「終わった!」という感じでした。予想以上に時間がかかり、審査書類はミニマムの3プロジェクトについてしか書けませんでした。自信をもって「求められていることを書けた」と思えたのは1個だけだったので(笑)、合格発表までの2ヵ月半は長かったです。
準備は11月に始め、業務の棚卸しからスタートしましたが、お正月休みも、年明けの審査書類提出前の土日も、ひたすら準備に明け暮れていました。

運営の中のひとの見解(森川さん):審査書類を書くのは大変です。「週末を2回使ったくらいでは終わらないので、計画的に進めてください」ということは説明会でも強調しています(笑)。審査書類と対話した結果、HCDの理解を深めるひとが増えて欲しいと思っており、書類のUXは改善していきたいと思います。

▶「審査書類記入」パネルディスカッションの動画はこちら

審査書類作成のプロセスで自分の志向性が明らかに。「コンピタンス」が共通言語になれば目指すゴールを共有できる

アンケート結果:資格の意味と認定後に起こった変化

■資格が持つ意味
「自信につながる」「学習のきっかけになる」「資格はスタート地点である」

■資格を取ったことで起きた変化

  • 変化があった:「対外的な説得力や信頼が得られる」「業務範囲が広がった/視座が高まった」「肩書が増えた」
  • 変化はあまりない:「資格を取ることには意味がない」「アイスブレイクに役立つ程度」

▶「資格の意味と認定後に起こった変化」アンケート動画はこちら

パネルディスカッション:「受験前は、HCDの資格は現場では使えないと思っていた」

矢作:「自分が何をどう工夫しているか」を考える時間を持てたので、自分のキャリアの進め方を考えるきっかけになりました。自分はユーザーの課題を見つけて解決策を企画することが好きだ、という志向性を見つけました。この志向性は会社にも伝え、そういった内容の案件を優先的に回してもらえたりもしており、会社とのコミュニケーションがとりやすくなりました。グループ会社の人との会話のきっかけにもなっています。

寺倉:ここはぶっちゃける場なのでぶっちゃけますが(笑)、HCDの知識は現場では使えないと正直思っていました。しかし、その中身を知って資格を取った結果、自分たちが提供しているサービスそのものに向き合い、評価するきっかけにもなったと思っています。

社内UXリサーチャーの評価制度にも「コンピタンス」を指標のひとつとして取り入れようという動きもあります。既存の社内評価制度では「何ができれば次のステップにいけるか」というキャリアアップのイメージがつきづらいところがありました。しかし、HCDの資格を受けたことで、各自が業務の棚卸しができ、共通言語を持つ人が増えたので、評価の参考になりそうという意見がボトムアップで出てきている状況です。

さらに、コンピタンスをご存じのお客さまとのコミュニケーションでは、期待する成果が何で、シニアリサーチャーならここまでのコンピタンスを満たしている、といった会話が成立します。

運営の中のひとの見解(森川さん):この資格はもともと、電子政府ユーザビリティガイドラインに基づく発注要件をみたす目的で設立されたものです。

資格取得のメリットは、「対個人」「対顧客」「対組織」という軸でとらえることができます。

▶「認定後」パネルディスカッションの動画はこちら

「資格取得後は接点がない」から一歩踏み出す:HCD-Netをスキルアップや知識シェア活動の場に

アンケート:運営団体の印象、関わり

■HCD-Netの印象について

  • 受験前:「資格の管理団体」「よくある不可思議な資格ではない」「アカデミック感」
  • 受験後:「資格以外に何をしている団体かわからない」「HCD団体なのに使いづらい、わかりづらい」「資格以外の活動もあって意外と現場」

■HCD-Netとの関わり
「関わる接点と理由がない」「情報発信がされていない印象」

▶「運営団体の印象、関わり」アンケートの動画はこちら

パネルディスカッション:資格以外の活動を周知するために

矢作:資格以外の活動をしていることは知りませんでした。

高岩:メールで情報を得ています。メールで「講師拡大ワーキンググループ(企業内でHCDの講演を行う講師のための資料作成グループ)」への参加に誘っていただき、参加しています。現場にHCDを広めるためのワーキンググループです。

運営の中のひとの見解(森川さん):今回のアンケートで、HCD-Netの本来のねらいと受験者とのギャップがあることがわかりました。

資格取得後に実践者のスキルアップの機会を作ったり、知識のシェアなどの活動に参加してもらうにはまだ「越えられない壁」があることを真摯に受け止め、改善していきたいと思っています。HCD-Netではイベントを開催したり、情報交換のためのslackグループを立ち上げたりしています。ご興味あるかたはのぞいてみてください。

▶「運営団体の印象、関わり」パネルディスカッションの動画はこちら

受験を検討している方へのメッセージ

矢作:今回、自分の経験が少しでも皆さんの役に立てばいいなと思い登壇しました。「スペシャリスト」と「専門家」どちらを受験するか悩んでいる方もいるかもしれません。私の場合は、まずは確実に資格を取るために「スペシャリスト」の受験を選択しました。受験は大変だったけれど、キャリアの棚卸しにもなりましたし、自信にもつながりますので、挑戦してみてはいかがでしょうか。私も「専門家」に挑戦したいと思います。

高岩迷ったら受けてみることを私はお勧めします。学びや気づきが得られます。合格がゴールではなく、その先につながるステップになると思います。多くの方に人間中心設計に興味を持っていただき、よりよい社会をつくっていければと思います。

寺倉:「人間中心設計スペシャリスト/専門家」は、職種に関わらず受験できる資格だと思います。個人的には、人間中心設計の考え方をどう使っていくかを共有するコミュニティに入れたことが価値でした。あらゆる業種から、「ユーザー視点」を世の中に広めていく仲間が増えればいいなと思っています。

▶人間中心設計スペシャリスト/専門家資格に興味を持たれた方はHCD-Netサイト

▼当日のスライドはこちら
20200825_ポップインサイトコラボ資格トークイベント

▶当日のQ&Aセッションはこちら

~Q&Aセッション 主なご質問~

「プロダクトの詳細は機密扱いになるので審査書類に記載することができません。抽象的な書き方でもいいのでしょうか?」
「おすすめの書籍は?」
「去年不合格だったのですが、今年受験するにあたって同じ内容を記載しても問題ないでしょうか?」・・・など

資格受験を通じて自分と向き合う

今回の「ぶっちゃけトーク」の端々からは、「人間中心設計スペシャリスト/専門家」受験で重要なのは資格を取得することだけではない、ということが伝わってきます。

「人間中心設計スペシャリスト/専門家」は、準備プロセスで申請書、そして自分自身と向き合い、資格取得後のイメージを強く持つことで、キャリアの中で長く活用することができる資格と言えそうです。

HCD-Netと資格ホルダーとがお互いの距離を縮め、人間中心設計やUXの実践者にとっての活動の「場」としてHCD-Netの存在感が高まっていけば、人間中心設計やUXの価値が今後ますます世の中に広まる流れが生まれそうです。

「人間中心設計の考え方への社内理解を深めたい」「資格ホルダーの知見をプロダクトに反映できるようなUX体制をつくりたい」

…こんな時はぜひポップインサイトにご相談ください。UXリサーチの内製化をお手伝いいたします!

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