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プロダクトマネジメントとは。プロダクトマネジメントでUXはもっと輝く。セミナーダイジェスト

2022年2月15日のウェビナーでは、シリコンバレーに16年以上在住し、米系スタートアップや大企業でプロダクトマネージャーを歴任、現在はLikedIn米国本社のシニアプロダクトマネージャーで「プロダクトマネジメントのすべて」の著者である、曽根原春樹さんにご登壇いただきました。

本セミナーでは、プロダクトマネジメントのプロセスにおいて、どのようにユーザーが本当に求めているものを発見し提供するかだけでなく、いかにユーザー価値と事業収益のバランスをとり、ビジネスとして価値のあるUXを実現するかについて、曽根原さんに教えていただきました。

今回はそのダイジェストをご紹介します。

プロダクトマネジメントとは

プロダクトマネジメントとは何か。曽根原さんは次のように定義されています(図1)。

プロダクトマネジメントの定義
▲図1:プロダクトマネジメントの定義

少しこの定義を詳しくみていきましょう。

「デジタルな世界」とはテクノロジーが様々な場面で深く社会に入りこんでいる社会のことです。例えば、みなさんのスマホを開けばGmailやLINE、メルカリなどのアプリがあり、こうしたプロダクトはみなさんの生活や生き方に深く入り込んでいると思います。現代における「デジタルな世界」とは、こうしたプロダクトを使うことが人生の一部になっている世界とも言えます。

「人間中心の視点」とはプロダクトを使用するのは人間であり、常に直接または間接的に人間がプロダクトに関与しているということを示しています。

「価値を提供する」における価値とは、単純にメーカー視点でかっこいいものを作れば売れる、職人がいるからいいものを作れば売れるという一方的な価値の提供を意味していません。経済的、社会的、文化的など様々な文脈における問題解決や、その時代における新しい価値創造といった視点から価値を作るという考え方で臨まないと、プロダクトは浸透せずユーザーは使わなくなってしまうということを意味します。

「プロダクトを作り出し続けること」とはプロダクトマネジメントでは一回出して終わりではなく作り出し続けることが大切ということです。プロダクトを進化させ続け、ユーザーに新しい体験を常に提供しつづけるということが重要です。

こうしたことを「プロダクトマネジメントが求められる3つの時代的背景」という観点からまとめると以下のようになります(図2)。

プロダクトマネジメントが求められる時代的背景
▲図2:プロダクトマネジメントが求められる3つの時代的背景

デジタルプロダクトのユーザーは単なるページビューとしての消費者ではなく、プロダクトと共に生きるようになっている

プロダクトは、人生とともに生きるようになっています。短期的な視点ではなく、プロダクトとユーザーがどのように生きていくのかという影響を考えなくてはいけません。

プロダクトを囲むパートナー企業との協業や新たな価値の創造がかつてないほど速いスピードで起こる

かつてのハードウェアプロダクトは、進化したり提携したりする場合は乗り越えないといけない壁が高かったのですが、現在のデジタルプロダクトは、APIをつなげばすぐにパートナー企業と協業ができるなど、かつてない早さで協業を進めることができるようになっています。

競合環境がグローバルの規模で激しくなった結果、プロダクトの成否の分かれ目がますます高いレベルに位置している

モバイルアプリを例にとると、現在スマホのアプリは600~700万ほど世界にありますが、実際に収益化に成功しているアプリは0.05%と言われています。ユーザーはアプリをすぐにダウンロードでき、つまらないと思えばすぐに削除できる状況です。ユーザーからみればオプションは無限大であり、グローバルレベルで激しい競争環境となっています。こうした環境で、どのような価値をユーザーに提供していくことが重要なのか、ユーザーにとってうれしいことは何かということが重要になってきているといえます。

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「Webサイトやサービス改善したいが、効果的な打ち手がなく悩んでいる」方に、解決手段の一つとしてのユーザーインタビューなどのUXリサーチの調査手法の選び方をお伝えします。

よいプロダクトを作るための重要なポイント

まず、プロダクトマネージャーであろうとUXリサーチャーであろうと、ユーザーに喜ばれるプロダクトを作りたいという点は共通しています。しかし、良いプロダクトを作るには、さまざまなことを考える必要があります。例えば「売れるのか」「なにが競合と違うのか」「どのように便利なのか」「誰がいつまでにどう作るのか」といった多種多様な質問に対して、整然とした切り口で整理していく必要があります。

こうした切り口を整理し、良いプロダクトを作るためのアプローチとして、まず3つのポイントをご説明します(図3)。

良いプロダクトを作るためのアプローチ
▲図3:良いプロダクトを作るためのアプローチ
  1. ビジョンとしてのCore 
  2. 課題としてのWhy 
  3. 解決策としてのWhat

まず、ビジョンがないとよいプロダクトを作ることはできません。プロダクトが世の中に出回ったあかつきには、どのような世界になっているのか、ユーザーの生活や仕事の仕方など、なにができるようになっているのかというビジョンがプロダクトを作る上で不可欠です。

次に、ビジョンに近づいていくために、なぜその問題を解決する価値があるのか、誰をどんな状態にしたいのか、誰の問題をどう解決すればよいのか、といった課題を把握します。

その後、どうやって課題を解決するかを考えるという風に流れができていないと、良いプロダクトはできません。このようにCore・Why・Whatの部分は「なぜプロダクトを作る意味があるか」を決める部分と言えます。

最後に解決策としてのWhatだけでなく、サービスなのか、アプリなのか、Iotソフトウエアとしてだすのか「どのようなプロダクトを作るかを決める」Howの部分が続きます。

このようにプロダクト開発は、スコープが大きくプロフェッショナルを集めないとできないという意味で、誰を集めるのかを決め結成したプロダクトチームをリードすることもプロダクトマネージャーの仕事となります。

まとめるとCore・Why・What・Howを考えチームをリードするのが、プロダクトマネジメントの仕事と言えます。

プロダクトマネジメントの4階層

Core、Why、What、Howについて具体的に見ていきましょう。

Coreはプロダクトが出来上がって世の中に出たらどのような世界になっているのかという「プロダクトの世界観」に該当します。これに加え「事業戦略」も大切なポイントとなります。会社組織でプロダクト開発をする際には、事業戦略が存在します。例えば、スタートアップだと〇年後にいくらくらいファンディングしたいとか、会社だったら〇年後に収益を上げたいといったことです。プロダクトを作る際には、そのプロダクトに投資する意味があるかを判断するために事業戦略とのマッチングが必要です。

Whyは「だれをどんな状態にしたいか」「なぜ自社がそれをするのか」に該当します。「だれをどんな状態にしたいか」とは、プロダクトとしてだれをターゲットにしているのか、どのようなユーザーの解決策としてプロダクトがあるのかを意味します。また「なぜ自社がそれをするのか」については、自社がもっているコンピテンシーの上にプロダクトを作ることが重要ということです。コンピテンシーとは、例えば食品メーカーだったら美味しいスープを作るとか、自動車メーカーが安全な車を提供するといったことを示します。自社のコンピテンシーの上にプロダクトを作ろうとしているか、競合他社と比べてエッジがきいているかを考えなくてはいけません。

Core、Whyを経ると、どのようなプロダクトを作るのかというWhatとHowの段階にたどり着きます。

Whatとは「プロダクト体験」「ビジネスモデル」「ロードマップ」に該当する部分です。この段階になって初めてUXつまりプロダクト体験をどうするかと考える段階に至ります。プロダクト開発はボランティアワークでないため、ユーザー体験をよくするだけでなくビジネスモデルを組み立てて収益をあげなくていけません。また、プロダクトは1回作って終わりではありません。プロダクトを進化させていくことが大事で次にどのような機能を足していくか、どのようにビジョンに近づいていくかを考えるロードマップが必要となります。

Howとはどのようにプロダクトを作っていくのか、IoTなのか、Androidなのか、iOSアプリなのか、またはウェブサービスなのかといったことに該当します。これに加え、どのように市場に伝えるのかというマーケティング的な要素もこの段階では必要になります。

こうした一連のことを考えることによって、プロダクトは社会にとってインパクトのある存在として輝きはじめるのです。

以上のまとめとして、プロダクトマネジメントスタックと私が呼んでいる良いプロダクトを作るための「プロダクトの4階層」についてご紹介します。優れたプロダクトを作るには、この4つの視点を考える必要があります(図4)。

  • Core=達成可能性:世界観があり事業戦略上に位置しているか
  • Why=合理性:プロダクトを作ることが会社やユーザーにとって意味があることか
  • What=具体性:達成可能で合理的であればどんなプランで実行していくか
  • How=実現性:どのようにしてプロダクトを目に見える形にしていくのか
プロダクトの4階層
▲図4:プロダクトの4階層(プロダクトマネジメントスタック)

プロダクトマネジメントとUXの関係

ここまでプロダクトマネジメントとは何か、そして良いプロダクトを作るためのポイントであるプロダクトの4階層についてお話しました。ここではプロダクトマネジメントとUXという視点に絞ってお話をしたいと思います。

はじめに、プロダクトの4階層がうまくいった例とうまくいかなかった例をご紹介します。

TikTokとQuibiの明暗

TikTokはユーザーが作成・投稿した短い動画コンテンツを、Quibiはハリウッドのタレントを利用したコンテンツを提供するという違いがありますが、どちらも縦型の動画コンテンツを提供するサービスです。

ミッションをみると、TikTokは「創造性を刺激して楽しさをお手元に」、Quibiは「トップタレントが毎回新しいコンテンツを作ってみなさんに楽しみを」という風に両者の考えている世界観は似たようなものでした。また、プロダクトのUIやUXの部分は、TikTokもQuibiもよく考えられていることが写真からも分かります(図5)。

しかし、Quibiは一時期1800億円ぐらいファンディングを集め話題となったものの2020年10月に破たんしました。この失敗の要因は、事業戦略やプロダクト戦略の下のレイヤー、つまりWhyとWhatの部分にあると考えています。

例えば、TikTokはビジネスモデルとして誰でも参加できる一方、Quibiはサブスクリプションでした。「TikTokという競合があるときになぜQuibiを利用しなければいけないのか」の理由がなかったのです。また、どちらにも似たようなコンテンツが投稿されることもありQuibiをサブスクリプションするモチベーションが低いことや、Quibiがユーザーとするハリウッドタレントのファンは、短い動画コンテンツよりもしっかりした映画などを見たい傾向があるなど、ターゲットユーザーに対する理解が甘かったと言えます。

このようにプロダクトの4階層をしっかり設定しているか否かで、プロダクトの明暗が分かれてしまうのです。

TiktokとQuibiの比較
▲図5:TikTokとQuibiの比較

プロダクトマネジメントとUXのコラボレーション

プロダクトの明暗を分ける4階層を考える上で、UXリサーチは大きな役割を果たします。具体的には図6の黄色で示したプロダクトの4階層の各箇所でUXリサーチは重要な役割を果たします。

PMとUX担当者のコラボレーションの図
▲図6:プロダクトの4階層におけるPMとUX担当者のコラボレーション

各階層で実施するUXリサーチは次のとおりです。また、同じインタービューといっても階層によって明らかにしたい目的が異なることには留意が必要です。

  • Core:世界観を決定するミッションやビジョンを確認するリサーチ
  • Why:ターゲットユーザーのペインとゲインを仮説検証するインタビュー、また競合分析
  • What:メンタルモデルやカスタマージャーニーといったソリューションにおける仮説を検証するインタビュー
  • How:実際にプロダクトができた際、UIに関してユーザーからフィードバックを得るユーザーテスト

特にプロダクトの4階層ごとのインタビューは重要であるため、プロダクトマネージャーはインタビューの箇所で、UXリサーチャーと一緒に協働できるとよいでしょう。そして、各階層を行ったり来たり、つまりFit&Refineしながら、プロダクト開発を進めていくことが重要です。この過程においてプロダクトマネージャーとUX担当者は一蓮托生(結果の良し悪しにかかわらず行動・運命をともにする)であり、ともに考えてプロダクト開発を進めていくことが必要なのです。

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・UXリサーチャーが貴社のチームの一員として伴走
・「短く」「小さく」「繰り返し」(=アジャイル)リサーチで、PDCAサイクルをすばやく回す体制構築を支援
・専任リサーチャーがビジネス内容や社内体制を理解した上で最適な施策をご提案

最後に

良いプロダクトを作るためには、多くの事柄を考えなくてはいけません。つまり、プロダクトマネジメントには幅広いスキルが求められます。しかし、これは一人では実現できないため、チームを作って挑むことになります。

図7にシリコンバレーにおける典型的なプロダクトチームの構成を示しましたが、一番の基本的なフォーマットは、プロダクトマネージャー、エンジニア、デザイナーのトリオです。このように多職種なチームを率いるときに一番重要なことは、チームメンバーがプロダクトのコンテキストを深く理解しているのかということです。特にCoreとWhyの部分については、どのチームメンバーに聞いても同じ答えがかえってくるくらい一致していることが、良いプロダクトを作る上で不可欠な条件といえるでしょう。

シリコンバレーにおける典型的なプロダクトチーム
▲図7:シリコンバレーにおける典型的なプロダクトチーム

Q&Aセッション

---著書「プロダクトマネジメントのすべて」を読み、とても勉強になりました、ありがとうございます。本で記載されている考えを、チームにうまく浸透させる方法があれば教えてください。

A:浸透させる方法は、大きく分けて2つあります。トップダウンとボトムアップです。トップダウンでは経営層の人たちにプロダクトマネジメントの考え方に触れてもらうことが必要です。今後DXを活用したプロダクトやサービス開発を進めていくうえで、プロダクトマネジメントという視点を考えないとPoCで終わってしまうことが多くなってしまいます。

また、ボトムアップについては、まず例えばエンジニア・デザイナー・プロダクトマネージャーといった小さな単位でプロダクトマネジメントを一回でも回すことが重要となります。これでプロダクト開発の動きが早くなるという実感を得て、1回でもプロダクトを世に出せれば、プロダクトマネジメントという考え方を社内に広げた方がいいという形で広がっていくと思います。成功体験を積み上げて輪を広げることが大切です。

---米国のプロダクトマネージャーは、エンジニア・デザイナー・UXリサーチャー・ビジネス……どの出自の方が多いのでしょうか?また、非エンジニア出身の方で、能力や実績がハイレベルな方は、どのような強みを持っていることが多いのですか?

A:プロダクトマネージャーになるのに、出自は関係ありません。今はシリコンバレーという場所柄、ソフトエンジニア出身の方が多いです。出自がエンジニアでない方でプロダクトマネージャーとして有名なのは、ブライアン・チェスキーさん(AribnbのCEO)があげられます。彼はもともとデザイナーで、プロダクトマネージャーを名乗っていたわけではありませんでしたが、仕事内容はまさにプロダクトマネージャーでした。本日はチームが大切という話をさせていただきましたが、こうした非エンジニアの出身の方の強みとしてはチームをまとめる力と相手にWhyやWhatの部分を説明していく能力が重要だと思います。

---デザイナーがプロダクトマネージャーにキャリアアップする際に気を付けることはありますか?

A:是非、他のエンジニアの考え方、ビジネスサイドの考え方を理解できるようなマインドを持っていただければ良いと思います。一番早いのは、個人で小さいプロジェクトを立ち上げて、それぞれの立場を経験してみることです。プロダクトマネジメントとは、こういうことなのか!というのが理解できます。また、プロダクトマネジメントをするチャンスがあればつかみにいくのが大切です。

---世の中仮説検証ブームのようですが、仮説検証をしない方が良いときはありませんか?

A:まず、なぜ仮説検証が必要かということですが、仮説検証は答えがわからないとき、検証しないと正しいか誤っているかわからないときに実施します。言い換えれば、仮説検証しないときとは定性×定量で絶対答えがわかっているときなど、答えが明らかなときです。しかし、今の世の中で一定の状況が続くということはないため、例えばLinkedInでは、どのような小さなことでもA/Bテストをするようにしています。経験上、仮説検証しないことでかえって余分な時間を取られてしまう可能性があるため、検証しなくてよい場合は多くないように思います。

---プロダクトの4階層に沿って検証を重ねてMVPをリリースしましたが、なかなか利用が進みません。各ステップの検証のどこが悪かったのか、それをどう証明して、どこまで戻ればいいのか不明なのですが、そういった場合はどういうアクションをとるのが良いでしょうか?

A:プロダクトをテストされたとのことですが、データはどのくらい取られたでしょうか?プロダクトがユーザーにどのように使われているのか、また使われていないのかは、データを見ないとわかりません。例えば、ユーザーはプロダクトに実際に触れる前から、使う使わないという判断があり、実際に使用する段階でも、アプリならインストール・起動・画面表示・クローズという流れがあります。その後、アプリに戻ってこない場合、最初のオンボーディングであきらめたのか、それともユーザーの期待に沿わなかったのかを明らかにしなければなりません。著書にも記載していますが、データをAARRRモデル(プロダクトへの定着を理解するモデル)に従って分析し、どこでユーザーが離脱しているのか、定性と定量で確認することがまず大切だと思います。

---プロダクトマネージャーとして、曽根原さんはチームメンバーの職種・スキルへの理解を深めるために、どのようにどの程度勉強されましたか?プロダクトマネージャーには、チームメンバーの職種の業務やスキルについてどの程度の理解があることが必要でしょうか?

A:私がプロダクトマネージャーを目指したときは今のように勉強するリソースがありませんでした。当時は、スタンフォード大やUCバークレーのビジネススクールなどの社会人向けコースを受講しビジネス観点を学びました。また私はもともとエンジニアなので、デザインに関しては全く知識がありませんでした。そこで、サンフランシスコでアラン・クーパー氏のデザイントレーニングコースを受けました。このコースは今は新型コロナの影響でなくなりましたが、非常に素晴らしいコースで、インタラクションデザインやビジュアルインターフェースデザイン、デザインリーダーシップなどを学ぶことができ、現在の私のデザイン周りの土台となっています。

また、BtoBの世界であれば、ドメインの知識は深ければ深いほど良いと思います。プロダクトマネージャーであってもビジネスプロセスを理解することは大切です。エンジニアでない方は、コードを書ける必要はありませんが、エンジニアがどのような気持ちでコードを書いているかを理解することは重要です。このため、コードを書くことがどれくらいの思考を繰り返さないとできないかを知っておくことは大切でしょう。

---PoC倒れになるのはなぜですか?よく見かけられるケースがあれば教えてください。

A:よく見かけられるのはプロダクトの4階層のCoreができていない場合です。例えば、日本の大企業でAIが流行っているから何かプロダクトを作ろうというパターンがありますが、ユーザーが求めているものは何かの部分が抜けてしまっているため、結果はうまくいきません。プロダクトの4階層という考え方を踏まえることが必要です。

---なぜ自社がするのか?についてです。自社のビジョンやミッション、それに伴う組織・事業が形成されていることが重要でしょうか?重要な要素や、何か具体例を教えていただけるとうれしいです。

A:なぜ自社がするのかについては、自社のコンピテンシーの上にプロダクトが立っていることが重要です。自社がそもそも持っているリソースや強みがあるからこそ、自社は生き残っているはずです。その上にプロダクトを作っていかないと、プロダクトとして継続できないし、継続していくモメンタム(勢い)がなくなってしまいます。ビジョンやミッションが会社のそれと整合していることも大切です。もちろん、新しい方向に踏み出す必要があるときもありますが、その際は、リソースやアセットがないとプロダクトは強いものにならないでしょう。

---プロダクトマネジメントチームにおけるビズデブ(ビジネスディベロップメントの略で事業開発を意味する職種)の具体的な役割とプロダクトマネージャーとの関係性を教えてもらいたいです。

A:シリコンバレーでは、ビズデブはプロダクトがすでにあり、これをほかのビジネスセグメントにもっていくと、どんなパートナーシップができるか、どんなライセンス契約ができるか、エコシステムが形成できるか、といったことを考えています。例えば、APIをつなぐだけでこんな価値ができそうと考えるのがビズデブの仕事です。プロダクトを作るというより、隣接しているセグメントには大きな機会があるかもしれないと、ビジネスの観点から切り込んでいきプロダクトの価値を広げるにはどうビジネスを広げればいいのかを考えるのかがビズデブです。

---A/Bテストを多用すると多数決に従う思考停止状態に陥ることがある気がするのですが、これは気にしない方がよい、避ける方法があるなど、アドバイス頂けるとうれしいです。

A:シリコンバレー企業はA/Bテストをする前に、なにを証明したいのか、仮説検証するのかを明らかにしています。例えば、A/Bテストをしたとき、絶対落としてはいけないメトリックや、ターゲットとしたいメトリックを事前に決めて関係者の合意をとっています。また、A/Bテストをするときに、データサイエンティストやデザイナー・エンジニアと合意をとっていくことが大切です。プロダクトマネージャー1人で決めることは避け、データサイエンティストと一緒に考え解析していくことが必要です。単純に結果をみるだけでなく、2次的な解析をかけるなど、恣意的に数字を解釈しないというスキームを作っていくことが重要です。

---曽根原さんが注目しているプロダクトはありますか?

A:OpenSea(世界最大規模のNFTマーケットプレイス)に興味を持っています、NFTやDAOに対して、私はいろいろな意見を持っています。未来のインターネットだという言い方をしている人もいますが、私はDAOを否定しないものの、すべてがDAOに置き換わるかはわからないと思っています。また、NFTはトークンとしては理解できますが、我々の生活や人生をどこまでよくしてくれるのか、我々が生きる中で抱えている問題を解決してくれるのか、という解についてはまだ見えないので注目しています。

※NFT:Non-Fungible Tokenの略で代替不可能な暗号資産。
※DAO:自律分散型組織(Decentralized Autonomous Organization)の略で、ブロックチェーンに基づく組織や企業の形態の一つ。

登壇者プロフィール

曽根原 春樹さん

 

曽根原 春樹
LinkedIn/シニアプロダクトマネージャー

シリコンバレー在住16年目。これまで、NASDAQやNYSE上場の大手外資系企業でエンジニア/セールス/コンサルティング/マーケティング/カスタマーサポートと様々な役職につき、各ポジションで表彰歴がある。サンフランシスコの米系スタートアップ企業では、180ヵ国にグローバル展開するBtoCアプリのPM (Head of Product Management)を務めた後、日本発ユニコーン企業であるスマートニュース株式会社にて、プロダクトの米国市場展開をリード。

現在は、世界最大のビジネス特化型SNS「LinkedIn」の米国本社にて、シニアプロダクトマネージャーを務め、シリコンバレーの大企業とスタートアップのプロダクトマネジメントをBtoBとBtoCの双方で行った経験をもとにした、Udemyでのプロダクトマネジメント講座の受講者が7000人を超える。また、「プロダクトマネジメントのすべて」の著者の一人としてPM啓蒙活動も展開する他、顧問として日本の大企業やスタートアップ企業もサポートしている。(Twitter, LinkedIn)


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