ユーザビリティテストとは:モデレートあり・なしのメリット・デメリットと使い分け
元記事:”Understanding Unmoderated and Moderated Usability Tests”, December,16,2020(当ブログへの書き下ろし記事)
著者:Elise Rodriguez(米国Userlytics社 マーケティングコンテンツマネージャー)
ユーザビリティテストは、Webサイトやアプリを実際にユーザーに利用してもらい、その行動や発言の観察を通じて、使いやすさの課題を見つける手法です。
近年、ユーザビリティテストを実施する企業は増えています。
しかし、ユーザビリティテストを企画する際、モデレート(司会進行)が必要かどうか迷うことはありませんか?
本稿では、ユーザテストツールを提供する米国Userlytics社のElise Rodriguez氏がユーザビリティテストの種類と使い分け方を説明します。ユーザビリティテストで何がわかるのか、そして、どんな時にモデレートが必要/不要なのかがわかります。
「ユーザーフレンドリー」な製品やサービスを提供することが高い投資収益率(ROI)をもたらすことは、もはや世界中の企業が知っています。
今ビジネスで成功するうえで最優先すべきことは、製品やサービスを使用する際のユーザー体験(UX)を改善することであり、ユーザーの体験を調査するユーザー体験リサーチ(UXリサーチ)が注目されているのです。
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数あるUXリサーチ手法の中でも最初に始めやすい「ユーザビリティテスト」の「基本的な設計・実査・分析の流れ」と「実施の進め方や注意点」を解説します。
目次
UXリサーチとは何か
UXリサーチとは「企業や製品・サービス」と「ユーザー」とのすべての関わり合いを調査するものです。
UXデザイナーは、市場調査、製品開発、戦略、デザインを考慮し、製品やサービスがシームレスなUXを提供するよう設計する必要があります。
そのためにはまず、ターゲットとするユーザーにウェブサイトやアプリまたはそのプロトタイプをテストしてもらいます。
テストを実施することで、ウェブサイトやアプリをユーザーが使用した際、何がうまくいっていて、何がうまくいっていないのかの「インサイト(=洞察)」を得ることができます。
このようにUXを向上させるための調査を「UXリサーチ」といいます。
UXリサーチを実施するリサーチャーや開発担当者がリモート環境で活用できる調査ツールは数多くあります。ただし、適切なツールを選択するためにはまず、「何を明らかにしたいか」という主要ニーズを見極めることが重要です。
具体的に検討するのは、以下のような項目です。
- ウェブサイトはPCとスマートフォンの両方でテストする必要があるか
- リリース予定のアプリは、スマートフォンとタブレットの両方のインターフェイスを持っているか
このように、UXリサーチ検討の際は調査対象のデバイス(PCかスマートフォンか)や開発段階、自社独自のニーズなど、すべて考慮する必要があります。
ユーザビリティテストの2つのタイプ
UXリサーチのひとつであるユーザビリティテストは、実際に利用したユーザーの行動や発言の観察を通じて「使いやすさ」の課題を見つける手法で、「モデレート(司会進行)あり」と「モデレートなし」の2つに分類されます。
モデレートの有無にかかわらず、ユーザビリティテストはUXに関するインサイトを収集するのにとても役立ちます。ただし、それぞれのテストタイプにはメリットとデメリットがあります。
以下では「モデレートあり」と「モデレートなし」の違いとそれぞれのテストをいつ使うべきかについて説明します。
「モデレートなし」テストとは?
「モデレートなし」テストでは、監督者や司会進行役は同席せず、モニタが一人でテストを進めます。
モニタは、自分の都合のいい場所や時間で、自分のペースで質問に答え、テストを実施・完了します。「モデレートなし」テストを実施する際に便利な機能には以下のようなものがあります。
- 画面の一部に小さな画面を表示して、別の映像を再生できる「ピクチャー・イン・ピクチャー」
- 回答によって分岐する条件付きアンケート
- カスタマイズ可能なタスクテンプレート など
「モデレートなし」テストには、次に紹介するような多くのメリットがあります。
「モデレートなし」テストのメリット・デメリット
「モデレートなし」テストのメリット
「モデレートなし」テストの優れた点は、スケジュールを組みやすく、調査対象人数を増やしやすい点です。
また、「モデレートあり」テストよりも費用も時間もかかりません。
なぜなら、「モデレートなし」テストでは、モニタはモデレーター(進行役)の助けを借りず自分自身でテストを行うため、誰かが同席したり複数人のスケジュールを調整する必要がないからです。
さらに、リサーチャーはより短期間で多くのテスト結果を収集できます。モニタにテストをお願いして会社から自宅に帰ってしまっても、翌朝出社した時には5人、15人、あるいは50人、100人の結果が集まっているのです。
「モデレートなし」テストのデメリット
その一方で、「モデレートなし」テストのデメリットは、その場でモニタの興味深い行動やコメントについて深堀りして質問できないことです。
このため、タスクと質問を事前にうまく設計しなければならないことが難しい点です。
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「モデレートなし」テストはどのような場合に実施すべきか?
「モデレートなし」テストが適しているのは、特定の項目について迅速に調査する必要がある場合、大規模なサンプルサイズが必要な場合、モニタが自然な環境で利用している様子を観察したい場合です。
また、「モデレートなし」テストは、定量的な指標と定性的な指標の両方を同時に収集したい場合にも適しています。
ほかにも、予算が少ない、テスト実施期間が短いにもかかわらず、迅速で信頼性の高いインサイトを得る必要がある場合も、「モデレートなし」テストが適しています。
「モデレートあり」テストとは?
「モデレートあり」テストは、訓練を受けたファシリテーターやモデレーターが積極的に参加するテストです。
「モデレートあり」テストは、ユーザーの心理モデルを深く理解し、プロダクトチームがその情報を製品設計に反映させるのに役立ちます。
なお、「モデレートあり」テストも、「モデレートなし」テストと同様に、ピクチャー・イン・ピクチャー、回答によって分岐する条件付きアンケート、カスタマイズ可能なタスクテンプレートなどの機能を利用できます。
「モデレートあり」テストのメリット・デメリット
「モデレートあり」テストのメリット
「モデレートあり」テストのメリットは、調査を実施する間、モニタの行動やコメントに基づいてその場で指示や質問を変更できるモデレーターが同席していることです。
モデレーターが同席することで、他の方法では発見できないようなインサイトを引き出すことができる場合があります。
「モデレートあり」テストのデメリット
一方、「モデレートあり」テストのデメリットは、スケジュール調整に時間を要すること、調査人数を増やすことが難しいことです。
また、一般的に、「モデレートあり」テストは、「モデレートなし」テストよりも費用がかかります。
「モデレートあり」テストはどのような場合に実施すべきか?
「モデレートあり」テストは、生成的調査(Generative Research)※に適しています。
製品の新しいアイデアを探しているとき、市場をよりよく理解しようとしているとき、あるいはモニタのニーズを理解したいとき、「モデレートあり」テストのインタビュー形式は、新しい情報を収集するのにとても適しています。
また、「モデレートあり」テストは、定性的なフィードバックの収集にも適しています。
例えば、「なぜ、モニタは、製品をその方法で使ったのか?」や「なぜ、そのような問題が起きるのか?」などの「なぜ」の質問への答えを見つけるのに最適です。このため、「モデレートあり」テストを実施するタイミングはプロダクトやサービス、サイトやアプリの設計の初期段階がおすすめです。
※生成的調査(Generative Studies)とは、インタビューなどの手法でユーザーの価値観や課題を調べ、ビジネス機会となる仮説を発見することを目的とした調査です。
まとめ
本稿のポイントをまとめると、次のとおりです。
①UXデザインを考えるうえで、ユーザビリティテストは欠かせない
ターゲットとなるユーザーがどのように製品と関わり、どのような問題に直面しているかを理解するのに、ユーザビリティテストはとても役立ちます。
②ユーザビリティテストには、「モデレートなし」と「モデレートあり」の2つの方法があり、場合によって使い分けて利用するのが理想的
どちらのテストでも、ユーザビリティに関してフィードバックを得ることができますが、それぞれのテストにはメリット・デメリットがあります。
このため、両方のテストを場合によって使い分け、利用するのが理想的です。
例えば、モニタの動機を深く探るために「モデレートあり」テストを数回行い、パターンを確認したり結論を検証するために「モデレートなし」テストを実施する方法もあります。
また、ユーザビリティテストのタイプを選択する際は、テスト対象のデバイス、開発段階、予算を考慮して、自社独自のニーズに最適なテストはモデレートありかなしかを考えることが大切です。
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数あるUXリサーチ手法の中でも最初に始めやすい「ユーザビリティテスト」の「基本的な設計・実査・分析の流れ」と「実施の進め方や注意点」を解説します。