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UX戦略とは?~ペルソナ・競合分析・プロトタイプ・リサーチ分析~「プロダクト成功の秘訣」

本記事は著者Matylda Siuta氏より許可を得て翻訳したものです。

元記事:”UX Strategy Framework: Jaime Levy’s Must-Know Insights for Innovators” February 3, 2022

来月開催のウェビナー2022年4月14日(木)「ビジネス成功率を高めるUX UX戦略とは何か」に、世界的ベストセラー『UX戦略』の著者である、ジェイミー・レヴィ氏が日本初登壇!

今回は、ウェビナーに先立ち、ジェイミー・レヴィ氏が提唱する「UX戦略」について、分かりやすくまとめている記事をご紹介します。

はじめに

ジェイミー・レヴィ氏(以下、ジェイミー)の「UX Strategy: Product Strategy Techniques for Devising Innovative Digital Solutions」(第1版和書「UX戦略 ―ユーザー体験から考えるプロダクト作り」)は、デジタルプロダクトに関わる者にとって必読の本です。

2015年に発売され、2021年に第2版(英語版のみ)が出版された著書『UX戦略』は、UXデザインについて新たな視点を与えてくれます。新たな視点に立つと、デザインとビジネスの境界線がなくなり、革新的なデジタルプロダクトの創出に不可欠な感覚が研ぎ澄まされていくのを感じるでしょう。特に、UXデザイナーやマネージャーにとって大きな学びとなり、チームメンバーに推薦したい一冊となるでしょう。

なぜ『UX戦略』を読むべきなのか

Uber以前にはヒッチハイク、Airbnb以前にはCraigslist(※)、Spotify以前にはラジオが存在していました。これらのプロダクトは、現実の問題を独創的なソリューションで解決し、世界のビジネスシーンを変化させました。どのようにすれば、これほどまでに人々の生活を変化させるプロダクトを発明できるのでしょうか。ジェイミーの著書『UX戦略』に、その答えがあります。

※Craigslist:アメリカでクレイグ・ニューマークによって開設された、地域ごとの不動産情報や求人情報などが掲載されたウェブサイト(出典:IT用語辞典

学生だったジェイミーが、イノベーターとして世に登場したのは、フロッピーディスクによる最初のデジタル雑誌『サイバー・ラグ』を自費出版したときでした。その後、インターフェースデザイナーとして、世界的なクライアントと働き、画期的なコンテンツフォーマットを創出し、学問の世界でもキャリアを積んだ彼女は、デジタルプロダクト業界での25年間の経験を、著書『UX戦略』にまとめました。

ジェイミーのフレームワークは、分かりやすくて適用しやすいため、デジタルと現実、両方の世界を変えるプロダクトを生み出すことに役立ちます。

UXデザインは、ビジュアルデザイン、コンテンツメッセージ、ユーザーがいかに簡単にタスクを達成できるかなど、多くの細かい点を網羅するものですが、UX戦略とは「全体像」を把握するものなのです。

ージェイミー・レヴィ

「UX戦略」とは、ビジネス戦略とUXデザインを活用し、ダイナミックに変化する市場の中で、プロダクトがユーザーの問題を解決するかどうかを検証する手法です。

それでは、ジェイミーのベストセラー『UX戦略』が教えてくれる、重要な概念をご紹介します。

「UX戦略」のフレームワーク

①バリュープロポジション(新しい価値の提案)の定義

バリュープロポジションのステップ
▲図1:バリュープロポジションを定義するための4ステップ

「バリュープロポジション」は、ユーザーがタスクを達成するために必要な手順「メンタルモデル」に基づいています。多くの場合、現実のタスクは、デジタル・インターフェイスと関係しています。例えば、前述したUber、Airbnb、Spotifyなどのプロダクトは、デジタル・インターフェイスを利用し、ユーザーのメンタルモデルを変化させた代表的な例といえます。

これらのプロダクトでは、バリュープロポジションがしっかり定義されています。つまり、プロダクトの提供する価値がユーザーに提示され、ユーザーがその価値を経験できると信じているという関係が存在しています。

「バリュープロポジション」は、今までにない価値を提供しつつ利益の上がるビジネスモデルを構築すること、つまり「バリューイノベーション」につながります。また、プロダクトの差別化は、ユーザーへの価値を高めるだけではなく、メンテナンスなどのコスト削減にもつながります。

そして、「プロダクトの有用性に焦点をあて、その体験をユーザーの生活に欠かせないものにする」という目標への最初のステップは、「ユーザーを見つけ、その全てを知ること」です。

ステップ1: 主要なユーザーセグメントを定める

「顧客は誰でも良いと思っているのなら、もっとよく考えるべきだ」とジェイミーは伝えています。

アプリをみんなに使ってもらうことと、本当に必要な人に申し込んでもらうことは、どちらが簡単でしょうか?

-ジェイミー・レヴィ

起業家は、プロダクトのソリューションは万人向けだと考えることが多いかもしれません。しかし、ジェイミーは「決してそうではない」と言い切っています。Facebook、Airbnb、Tinder(世界最大級のソーシャル系マッチングアプリ)が有名になる前、そのスタートはかなり地味なものだったのです。

ハーバード大学の学生向けのソーシャルサイト、工業デザイン協会のプロジェクト、南カリフォルニア大学の学生向けのアプリ……これらは世界を席巻するようなプロダクトには聞こえません。しかし、ターゲットとなるユーザーを明確に定めることから始めれば、ユーザーのニーズを調査し、より正確な次の一手を計画することができます。基礎が整っているプロダクトは、プロダクトを実際に役に立つと感じる「未来のユーザー」をすでに手にしているといえるのです。

ステップ2:仮定に基づき暫定的なペルソナを作る

「ペルソナ」は、プロダクト業界でよく利用されている概念です。「本当に役に立つのか?」と思われるかもしれませんが、ジェイミーによれば「間違いなく」役に立ちます。彼女は、「情報を収集して、最も効率的な方法でペルソナを活用する方法」を著書の中で説明しています。

ジェイミーの提案するペルソナが、最小限であることに驚くかもしれません。彼女によると、ペルソナは『説明・行動・ニーズと目標』の3つのカテゴリーで構成されていれば十分です。ペルソナの関連性を追求するのであれば、それぞれ数センテンスで問題ありません。

例えば、世界中どこでも使えるプロダクトにも関わらず「場所情報」、ビジネス関連のプロダクトなのに「家族構成」…といったような、ターゲットとなるユーザーの特定と関係ない情報は意味がありません。同様に年齢や性別なども、関連性がある場合のみ記載します。その代わり、プロダクトが解決しようと考えているユーザーの問題に焦点をあてることが重要です。

そして、ペルソナに画像を取り入れましょう。ジェイミーは、1枚の画像ではなく数枚の画像を使用することを推奨しています。なぜなら、1枚の画像では誤解を招く可能性のある「精密さの罠」に陥りやすいからです。ユーザーのセグメントについて話すことが重要であり、実際の個人について話しているわけではないことに留意しなければいけません。

ステップ3:ユーザーの問題をまとめる

ペルソナの検証に入る前に、調査の重要な要素である「問題提起」を忘れてはいけません。問題提起とは、「プロジェクトの目標に焦点を合わせるためにユーザーの問題を要約して説明すること」です。問題提起をする際には、解決策を前提にしないようにしましょう。また、できるだけバイアスがかからないように心がけましょう。

ステップ4:ユーザー発見インタビュー

「Global Startup Ecosystem Report 2019」は、「スタートアップ企業の12社に1社しかビジネスは成功しない」という衝撃的な事実から始まっています。理由は様々ですが、その多くは「誰も欲しがらないものを作ってしまった」という原因に帰結します。

CB Insightsの調査によると(図2)「市場ニーズがないこと」が、スタートアップ企業失敗の理由の35%を占めています。しかし、潜在顧客がこれらのスタートアップ企業のプロダクトを買わずに終わってしまったとも言い換えられるのではないでしょうか。この事実を「UX戦略」の言葉に置き換えると、失敗したスタートアップ企業は、バリュープロポジションが有効でなかったということになります。

具体的にはどういうことでしょうか。

スタートアップ失敗理由
▲図2:スタートアップ企業が失敗する主な理由 (出典)CB Insights

プロダクト作成のプロセスは、一連の実験だと考えてください。プロダクトのあるべき姿を知るために、ユーザーをよりよく知るための実験を行うのです。いくつかの仮説を確認することで、ペルソナ、そのニーズ、そしてプロダクトのバリュープロポジションが検証できます。仮説が誤りだと分かったら、それを却下していく、その繰り返しです。

ペルソナを検証し、実際に想定している問題を抱えているかどうかを確認するには、インタビューが最適です。

インタビューは、15~20分で3つの以下の3つのパートから構成されます。


  1. 導入
    まず、あなたが誰なのか、なぜ話をしたいのか、どのくらいの時間がかかるのか、インセンティブなどを伝えます。なお、リサーチに費やした時間に対して参加者に報酬を支払うことは非常に重要であり、倫理的でもあります。

  2. スクリーニング
    インタビュー対象者がユーザーセグメントに該当するかを、1~2問聞いて確認します。問題提起については、まだ聞かないでください。

  3. インタビュー
    暫定的なペルソナから導いた仮説を検証します。1つの仮説に対して1つの質問が最適です。もし、インタビュー対象者が、仮説した問題を抱えていることが分かったら、どのようにそれを解決しているのかを聞いてみてください。


インタビューは「こんなことやあんなことができるアプリがあったら使ってみたいですか?」といった、バリュープロポジションの検証で終わります。これはあくまで仮説の質問なので、ポジティブな回答は割り引いて考えましょう。人は、自分の具体的なニーズを認識していないことが多く、自分の行動を正確に予測することが難しいからです。

通常は、プロダクトにお金を支払う側のペルソナの検証をすれば十分です。しかし、Airbnbのように、2つの主要なユーザーグループ(入居者と不動産所有者)がある場合、その両方を検証したほうが良い場合もあります。なぜなら、プロバイダーがいなければ、お金を支払う側のユーザーはそのソリューションを使用できないからです。

インタビューの結果は、以下のいずれかになるでしょう。


  • 「ペルソナ」が確認できなかった
    意気消沈するかもしれませんが、まだ改善の余地はあります。もう一度、別のユーザーグループを調査してみましょう。

  • 「仮説した問題」が確認できなかった
    心配いりません。プロダクトは別の問題を解決するかもしれません。インタビューによって、ユーザーが抱える問題のインサイトがすでに得られているかもしれません。

  • 「ペルソナ」と「仮説した問題」の両方が確認できた
    素晴らしいニュースです。次のステップ、「競合他社調査」に進みましょう。



②競合他社調査

ジェイミーはUX戦略の一環として、綿密な「競合他社調査」に時間を費やすことを勧めています。

なぜ、このソリューションはまだ作られていないのだろう?……全てをやりつくしてしまったとまでは言えませんが、実はかなり多くのことはすでに試みられているのです。個人や企業は25年以上も前から、インターネット上で流通・消費されるプロダクトをデザインしてきたのです!

ージェイミー・レビィ

UX戦略を練る際に、競合他社を含めた収益環境を見渡すことは重要です。確かなプロダクト戦略には、「企業の事業目標」、「組織の能力」、「体系的な市場調査」という3つの柱を立てる必要があります。

ジェイミーは自身のウェブサイトで、競合他社を比較し、その強みと弱みを知るために使える「UX戦略ツールキット」を公開しています。競合他社調査は時間はかかりますが、競合に関する失敗を避けることで、多くの時間とお金を節約することができます。

競合他社調査の目的は、現在の市場において、そのプロダクトが適切かどうかを判断することです。プロダクトが有用で必要とされる、良い市場を見つけるために、あらゆることを行う必要があります。競合他社調査の結果、プロダクトのビジョンやビジネスモデルの変更を余儀なくされる場合もあります。一方で、競合他社調査により、プロダクトがどのようにすれば競争上の優位を獲得できるか把握できます。

ストーリーボード

「ストーリーボード」は、チーム全体が同じ位置に立ち、構築しているプロダクトの価値を理解するための手法です。ストーリーボードは、ピクセルパーフェクトな(1pxのズレもなく完璧に表現された)プロダクトではなく、価値と主要な機能を押さえたプロダクトにするために作成するもので、チームにとっての目指すべき北極星ともいえます。

バリューイノベーションとなる特徴の把握

主要な機能は、ユーザーが他のプロダクトではなく、そのプロダクトを使用する理由です。その理由こそが、プロダクトの「バリューイノベーション」と競争優位を生み出す源泉です。成功する機能は、ユーザーと競合をよく理解することから生まれます。

それは、競合他社の最高の機能を組み合わせる、競合他社の機能から1つか2つ選んで完璧に革新する、ソリューションを提供する機能をいくつか結合する(「ワンストップショップ」プロダクト)、ペルソナ間のコミュニケーションを促進する場を創出する、といったことを意味するかもしれません。

既存プロダクトの複製は、元のプロダクトがどんなに成功していたとしても成功しないことが多いでしょう。むしろ、再構築をすることによって、潜在的なユーザーにより多くの価値を提供することが必要です。

多くの起業家は、膨大な機能リストを作り、ユーザーを混乱させるオプションや機能を設計するといった間違いを犯します。しかし、本当に画期的な価値と卓越した体験を生み出すには、「主要機能は3つで十分だ」とジェイミーは伝えています。

このとき、「UXインフルエンサー」に刺激を受けるのもいいかもしれません。ただし、ジェイミーが言うUXインフルエンサーとは、プロダクトを指します。UXインフルエンサーとなるプロダクトは、想定する競合環境外に存在するかもしれませんし、全く異なることをしているかもしれません。しかし、ユーザー体験、フロー、機能という点で学びを持たしてくれます。

機能を比較する

機能の比較は、時間がかかりますが非常に有効です。基本的には、競合他社のプロダクトで利用できる全ての機能を文書化(スクリーンショットをとるなど)します。

これにより、次のことが可能になります。

ベストプラクティスまたはその反例、巧妙なアプローチを観察し定量化します。

ージェイミー・レビィ

また、機能の比較は、クライアントやステークホルダーとの議論において時間を節約するのに役立ちます。

ストーリーボードの作成

「ストーリーボード」は、ペルソナが問題を解決するためにプロダクトをどのように使用するかを視覚化して検証するものです。これは、解決策の検証をする際、プロトタイプに何を含むべきかを考えるのに役立ちます。また、チームとステークホルダーの合意形成をし、プロトタイプ作成中、全員が同じ立ち位置にいることが確認できる優れたコミュニケーションツールにもなります。

では、どのようにストーリーボードを作成するのか説明します。


  1. ストーリーを書く
    このストーリーは、ストーリーボードの各コマのキャプションに該当します。ペルソナが問題を抱えているところから始まり、その問題を解決するためのソリューションとプロダクトの主要な機能を説明します。ストーリーボードは通常6コマ程度、6つの文章で構成されます。

  2. 画像を集める
    ストーリーボードは短時間で作成しなければいけません。この時点では、最終的なデザインやイラストは作成しないでください。簡単なワイヤーフレームをまとめたり、UXインフルエンサーとするプロダクトのインターフェースの一部を利用することもできます。

  3. コンセプトを分かりやすくし、キャプションと画像をまとめる
    これで完成です。



③プロトタイプの作成

ベストプラクティスをやっていたら、イノベーションは起きない

ー”リーン・アントレプレナー”  パトリック・ヴラスコヴィッツ、ブラント・クーパー著

ジェイミーは自らを実験中毒者と呼び、デジタルプロダクトがターゲットとなるユーザーのニーズに応えられるよう、様々な実験に挑戦していると話します。そして、バリュープロポジションへのフィードバックを得るのに、プロトタイプの作成ほど適した方法はありません。プロトタイプは、ポジティブ、ネガティブ、無関心など、ユーザーの全てのシグナルを測定できて有用です。

ソリューションをプロトタイプ化しバリュープロポジションとなる経験を示すには、様々な方法があります。一般的には、バックエンドを持たずにユーザーの体験をシミュレートします。(例えば、Wizard of oz(注)のように手動で実施したり、またはFigmaなどで利用できるクリック可能なプロトタイプを用います。)

(注)ユーザーの操作に合わせて人が裏で操作しまるでシステムが動いてるように見せて検証するユーザーテスト手法

もし、実現が難しい場合は、ランディングページや説明ビデオを作成し、閲覧数、ダウンロード数、ニュースレター登録数などを通じてユーザーの関心を測定することを考えましょう。どの選択肢を選ぶにせよ、明らかにしようとしているのは、その主要な機能が理にかなっているのか、ターゲットとなるユーザーに価値をもたらすのかということです。

プロトタイピングの選択肢が分かったところで、それぞれのプロトタイプを作るのにどれくらいの時間が必要なのか気になると思います。そこで、数ヵ月ではなく数日でプロトタイプを作成できる「ラピッドプロトタイピングというアプローチをご説明します。

もう一度言いますが、バリュープロポジションの検証のためには、プロトタイプに主要な機能を反映させる必要があることを忘れないでください。このプロセスは、簡単に習得し実行することができます。


  1. 絵コンテのストーリーをより詳細にする
    各ステージで何が起こり、なぜそうなるのかを説明します。この動作は、ユーザーフローを作成することに似ています。

  2. プロトタイプの画面を、好きなツールで構築する
    個人的にはFigmaを強くお勧めします。

  3. インタラクションを追加してプロダクトをシミュレートする



④オンラインユーザーリサーチ

「オンラインユーザーリサーチ」は、以前よりもはるかに容易に実施できるようになり、パンデミック下で身近なものになりました。ここでもまた、潜在的なユーザーによるテストを行います。ジェイミーは、ユーザーリサーチについても、多くの有益なアドバイスを提供しています。

まず、ユーザーリサーチの種類を、収集するユーザーデータの種類で区別してみましょう。


  • 定量的ユーザーリサーチ:ユーザーの体験について数値データを収集
    「いくらぐらい」「何人」「どのような頻度で」といった質問に対する具体的な答えを得るためのリサーチです。具体的には、ユーザビリティテスト、ウェブ解析、アンケート、アイトラッキング、カードソート、ABテストなどの形式が含まれます。多くの参加者を募って実施します。

  • 定性的ユーザーリサーチ:印象、解釈、動機など主観的なインサイト収集し、「なぜ」を明らかにする
    具体的には、デプスインタビュー、フォーカスグループ、コンテキストに関する質問、エスノグラフィックリサーチによって実施することができます。通常、少人数の参加者で十分です。

ユーザーリサーチの3つのフェーズ

ユーザーリサーチのフェーズ
▲図3:ユーザーリサーチの3つのフェーズ

フェーズ1:リサーチ設計

「ソリューションが望ましく実行できるどうかを判断するために最も重要なことは何か」 と自問してください。ビジネスモデル、バリュープロポジション、主要な機能について仮説を考えてみてください。「間違ったら撃沈しかねないものはどれか」それぞれの仮説を検証するためのシンプルで測定可能な質問を作成します。この段階でも、ジェイミーのウェブサイトにある「UX戦略ツールキット」が非常に役に立ちます。

そして、成功と判断する最低限の基準を設定すると良いでしょう。これは、参加者の回答のうち、仮説を満たした割合のことを意味します。ジェイミーは、バリュープロポジションについては約80%、ビジネスモデルと主要な機能の仮説については約60%を提案しています。

これは、ユーザビリティテストではありません。デザインをより使いやすくするのではなく、デザインとプロトタイプを一つの要素として、プロダクトのアイデア全体を検証するのです。

以下に、すぐに実践できるユーザーインタビュー用のスクリプトをご紹介します。


  • イントロ
    参加者がリサーチの目的を知っていること、およびインタビューの録音について明確な同意をしていることを確認してください。率直なフィードバックをお願いし、考えを明らかにしてもらう、あるいは実際に声に出してもらうよう伝えます。そして、参加者にリサーチへ協力いただくお礼を伝え、報酬の支払い方法と時期を知らせてください。

  • セットアップ
    仮説としている問題に、直近でいつ直面したか経験を尋ねます。そして、どのように解決したのか、そのストーリーを語ってもらいましょう。

  • プロトタイプのデモ
    プロトタイプへのリンクを送信し、参加者に画面を共有してもらいます。参加者の嗜好を観察するための一般的なタスクでかまいません。参加者が画面上で見ていることを理解しているか確認するために、1つの画面につき、少なくとも1つの質問を作成するのが理想的です。プロダクトが提供するソリューションを通して、参加者が考えられるような質問をしたほうが良いでしょう。話すのは必要最小限にし、プロダクトを正当化したり、解決策を説明したり、強い感情を示したりすることは控えてください。

  • 仮説の検証
    仮説の検証のための質問をします。特定の画面を表示したときと、プロトタイプ全体を見た後に質問をするとより効果的です。

  • クロージング
    参加者に感謝し、今後のフォローアップしても良いかを尋ね、合意したとおりの報酬をお支払いします。参加者がリサーチに費やした時間に対して報酬を支払うことは、非常に重要であり倫理にかなっています。なお、料金は参加者の職業や場所によって異なります。


質問を全てまとめたら、オンラインでインタビュー全体のリハーサルを行います。質問の流れや技術的な問題点を確認し、バックアッププランを立てるようにしておきましょう。

参加者の募集

ペルソナやユーザーセグメントを代表するような人にインタビューできない場合は、誤った結果となってしまいます。インタビュー参加者は、リクルートメントの技術や、モニタプール、報酬に大きく影響を受けます。ソーシャルプラットフォーム(Facebookなど主流のものからDiscordのようなニッチなものまで)、フォーラム、Craigslist、Redditなど、参加者が自然に集まる場所から探してみるのも良いでしょう。

回答が得られたら、暫定的なペルソナを検証した際のインタビューの質問を利用し、電話やアンケートプラットフォームで応募者をスクリーニングします。ただし、参加者に偏りが出ないようにプロダクトについてあまり多くを明かさないようにしましょう。また、スケジュールを変更するリスクを最小限にするために、相手の都合を聞いておくことも良いアイデアです。ジェイミーの「UX戦略ツールキット」には、全ての参加者情報を保存するための簡単なツールも提供されています。

最後に、最も適した参加者に連絡を取り、面接の日程を決めます。参加者全員が安心して面接を受けられるように、面接の手順をできるだけ最適化しましょう。また、使用するツールのダウンロードリンク、マイクやカメラのテストマニュアル、安定したインターネット接続の確保、録画や画面共有に関する情報の提供など、事前に詳細な指示を参加者にメールで送りましょう。

フェーズ2:インタビュー

いよいよ、バリュープロポジションに関する最も貴重な情報を得る時がやってきました。 不要なアプリケーションを全て閉じ、通知機能をオフにし、参加者がアンケートの手順から注意をそらすようなものは全てオフにしてください。

プロトタイプと質問を記載したスプレッドシートを開きましょう。質問と回答のテンプレートについても、ジェイミーの「UX戦略ツールキット」に掲載されています。インタビューの場がセットされたら、用意したスクリプトに従って進めます。最初に世間話やアイスブレイクのための会話をする必要はありません。

インタビューを進めるうちに、相手の言いたいことをよりよく理解するため追加で質問するタイミングが分かってくるはずです。同時に、インタビュー中に沈黙する瞬間があっても全く問題ありません。間違っても、インタビューの結果に影響するようなことは言わないようにしましょう。代わりに「どう思いますか」「どうしたいですか」といった中立的な質問を用意しておきましょう。

フェーズ3:分析

ジェイミーの「UX戦略ツールキット」には「分析」の項目があります。

インタビューの直後、各仮説について参加者の反応を検証します。直後に検証することは、バイアスを避けることにつながります。そして、「はい」の回答の割合をパーセンテージに変換し、成功と定義した基準と比較することができます。このようにすれば、定性データを定量データに変換し、仮説が検証されたかどうかを示すことができるようになります。

おそらく、いくつかの仮説が正しく、いくつかの仮説が無効となるでしょう。バリュープロポジション、ビジネスモデル、主要機能など、無効になった仮説の種類に応じて、該当する作業に戻り、ユーザーからのインサイトを基に作り直します。

ランディングページの実験

「ランディングページの実験」は、ターゲットとなるユーザーにプロダクトの未来の姿を見せ、クリック数、訪問数、サインアップ数などを用いて、ユーザーの興味を測定することを目的としています。アイデアをできるだけリアルに見せるために、プロトタイプの画面を再利用し、プロダクトビジュアルとして使用することができます。

ジェイミーは、ランディングページは実験に最適なエリアだと言っています。ランディングページは、「ユーザーの前に様々なコンセプトを提示でき、重要なフィードバックを得ることができる」からです。

時間と労力を無駄にすることなくランディングページを作成するには、ランディングページビルダーのプラットフォームを利用することができます。カスタマイズ可能なテンプレートを選び(レスポンシブ対応であることを確認しましょう)コンテンツで埋め尽くせば完了です。そして、プロダクト名を含むドメイン名を購入します。

最後に、ユーザーセグメントをターゲットにした広告を作成します。これはプロトタイプの広告です。潜在的なユーザーがプロダクトのバリュープロポジションを気に入るかを理解するのに役立ちます。広告キャンペーンは有料のツールですが、5ドルや10ドルといった小さな予算で、多くのインサイトを得ることができます。ジェイミーは、ソーシャルメディアキャンペーンや検索広告を推奨しています。

結果を分析する

キャンペーン実施後は、どの広告やランディングページがより良いパフォーマンスを示したか、広告インプレッション数、広告クリック数、ランディングページの閲覧数、CTAクリック数などの数値を確認する必要があります。さらに重要なのは、ランディングページのコンバージョン率です。市場でそのプロダクトについて関心があるかどうかが分かることでしょう。

まとめ

「UX戦略」を実施・検討するためのジェイミーのフレームワークを利用すれば、多くのことを学ぶことができます。プロダクトがユーザーにとって興味あるものか分かるでしょう。

しかし、フレームワークを利用した結果、プロダクトやビジネスモデルにユーザーの関心が低いことが分かる場合もあります。残念ですが、早期に知ることで、簡単に修正ができますし、今回のプロジェクトを中止して、別のプロジェクトに取り組めるかもしれません。誰も欲しがらないプロダクトを作ることに、時間やお金をかけなくて済むのです。

今回は、「UX戦略」の概念について簡単にご紹介しました。「UX戦略」という考え方は、チーム全体とステークホルダーが、より効率的にプロダクトビジョンを共有するのに役立ちます。正しいビジネス戦略とバリュープロポジションに沿った、ユニークなユーザー体験こそ、みんなが追い求める破壊的イノベーションを生み出すことができるのです。

本稿は、ジェイミー・レビィの著書『UX戦略』からのインサイトに過ぎません。どのような立場でプロダクトを扱っているかに関わらず、この本を手に取り、より深く掘り下げてみることをお勧めします。

著者プロフィール

Matylda Siutaさん

Matylda Siuta
Netguru/UXデザイナー

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