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【UX勉強会レポート】DeNAさまが取り組んだ「ユーザビリティ評価」

ポップインサイトでは、クライアント社内でのUX理解を深める取り組みの一環として、社内勉強会を開催しています。今回は、株式会社ディー・エヌ・エー(以下DeNA)システム本部品質統括部で実施した「ユーザビリティ評価入門」勉強会の一部をご紹介します。

2020年11月にオンラインで実施した勉強会には、QA、CS部門から約40名が参加。ユーザビリティ評価の基礎についてレクチャーを受けた後、ユーザビリティ評価の手法のひとつである「認知的ウォークスルー」を実践するワークショップに取り組みました。

ユーザビリティの「良さ」はユーザによって異なる

レクチャーでは、「ユーザビリティとは何か」という基礎から「評価・改善方法」
「重要性」「現場での活用法」について学びます。

「このページはユーザビリティが低い」という言い方を聞いたことがあるかもしれません。しかし、実はこの評価は正確ではありません。

「ユーザビリティ」とは、「ターゲットとするユーザ」が「満足に使えるか」を表す基準です。したがって、ユーザを特定することなく「ページAはユーザビリティが高い/低い」とは評価できません。

ユーザビリティ評価で重要なのは「ユーザAにとってページAはユーザビリティが高い/低い」というユーザ起点の評価軸なのです。

タスク・スタート・ゴールの例:
タスク :「メールアプリでスマホに保存されている写真を送る(iOS)」
スタート:メールアプリトップ画面
ゴール :送信完了のダイアログ表示

スタートからゴールの間の細かな手順も「サブタスク」に分割し評価します。

3.探査学習の工程にしたがって評価する

「探査学習の行程」は以下の4行程に分けられるのが一般的です。

①目標設定:ユーザがUIで何をするか設定する(目の前のUIで何をするかわかるか?)
②探査:ユーザはどのような操作を行えばよいかUIを探査する(目の前のUIを見て操作方法を正しくイメージできるか?)
③選択:ユーザはタスクを進展するために最も適切と思われる操作を選択する(目的と正しい操作方法を”関連づけ”られるか?)
④評価:ユーザはシステムからのフィードバックを解釈して、タスクが正しく進展しているかどうか評価する(操作が順調に進んでいることがわかるか?)

4.評価者で共有する

評価者同士で評価結果を共有します。
他の評価者の結果と自分の評価結果が異なった場合、いずれの評価結果も否定せず、その理由を考えることが重要です。

ライブ配信アプリの認知的ウォークスルーを実際にやってみた!

レクチャーの後は6グループに分かれ、実際に「ウォークスルー」を演習する時間です。受講者の皆さんはここで認知的ウォークスルーの難しさを体験することになります。

対象は、DeNA様が展開するライブ配信アプリ「Pococha」
タスクは「新規インストール後、初期設定を行い利用を開始する」に設定します。

参加者各自が同アプリのペルソナになりきってウォークスルーに取り組み、タスクが完了できるかを以下のように判定します。

  • 目の前のUIを見て操作方法を正しくイメージできるか
  • 目的と正しい操作方法を関連づけられるか
  • 操作が順調に進んでいることを理解できるか

▲「評価シート」の一例:「メールアプリで画像を添付する」タスクが完了できるかどうかを評価する例

判定は、まずは「〇できる」「×できない」で評価したあと、その理由を記入していきます。理由を判定する際は、具体的に何がダメな要素だったのかを特定することが重要です。

「×できない」理由の書き方

△「ユーザにはボタンが見づらいから」
〇「ボタンの色と背景色のコントラストが弱くボタンが見づらいから」
(※「見づらい」理由が明記してある)

各自のウォークスルーを終え、グループ内で結果を共有した受講者の皆さん。
他の受講者の評価シートを回覧し、設定したタスクや操作ステップを共有しました。

また、評価結果を共有し、タスクや各操作ステップについて「〇できる」「×できない」の評価結果も共有しました。

結果の共有で気をつけたいのは、異なる評価結果が出た場合にいずれの評価結果も否定しないことです。重要なことは、なぜ異なる評価結果がでたのか、設定の違いか判定時の視点の違いか、理由を考えることなのです。

「ペルソナ」になりきることの大切さ、楽しさ、そして難しさを体感

今回の演習は、自分自身の属性とペルソナの属性に大きな幅がある場合ペルソナに「なりきる」ことの難しさも体感する機会となりました。(例:「20代独身女性」が「40代既婚男性」のペルソナでウォークスルーを実施する)

認知的ウォークスルーで有効な結果を出すには、評価者のスキルも一定必要です。
スキルを身に着ける王道は、ユーザテストの数を重ね多くのユーザを観察することに尽きます。ペルソナの精度や操作ステップの細かさにこだわるだけでなく、身の回りでターゲットユーザと似た傾向のある人などに協力してもらい、「まずユーザに聞いてみる」体験を増やすことが、サービス改善体制を構築する大事な一歩となります。

今回の勉強会では、「ユーザ視点」に立つことの大切さ、楽しさ、そして難しさを実感いただけたことと思います。この機会をきっかけに、DeNA様の提供サービスのUXがますます向上し、多くのユーザに選ばれるサービスとしてますます成長する一助となれば幸いです。

受講者の皆さんのご感想(抜粋)

  • 「ユーザビリティの評価手法について、必要性やそれぞれのメリットデメリットを知れたことは大変ためになりました。」
  • 「ユーザーのペルソナを想像し、どういうところでつまずくのか、どう感じるのかを考えていくことはサービス改善に非常に役に立つと思いました。」
  • 「ユーザビリティーテストについては漠然とディスカッションのような形式と考えていたためとても参考になりました。」
  • 「知識として知ってはいましたが実際に自身でおこなったことがなかったため、ユーザーのペルソナを設定し、なりきってアプリを評価するというのは興味深かったです。どうしても自分基準の目線で見てしまいがちなので、別の視点で意識的に評価するというのはとても大切だと思いました。」

勉強会にご参加いただいた皆さま、お疲れさまでした!


▲参加者の皆さんと有意義な時間を共有させていただきました。

ユーザビリティ評価の第一歩は、身近なユーザに「聞いてみる」こと

サービスやプロダクトなどのユーザビリティを評価するには、身近なユーザに「聞いてみる」ことが第一歩です。
社外からわざわざユーザを探してこなくても、ユーザに近そうな社内の同僚や家族に「まずは聞いてみる」ことに意味があります。

投稿日: 2021/02/12 更新日:
カテゴリ: 勉強会
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