オンボーディングUXとは?初めてのユーザーをロイヤルカスタマーに変化させるプロセス
目次
オンボーディングUXとはなにか?
ユーザーにプロダクトの価値や機能を説明して魅力を感じてもらい、スムーズに利用できるようサポートをする導入プロセスを「オンボーディング」といいます。
基本的に、オンボーディングは、ユーザーにプロダクトの使用方法を説明し、慣れ親しんでもらうためのプロセスであり、プロダクトを使い始めるために必要な指示や情報を提供します。
しかし、これは単にユーザーに説明やチュートリアルを提供すればよいということではありません。また、オンボーディングは、ユーザーの初回サインアップ後からプロダクトツアー(※)終了までの限られたプロセスではありません。
※プロダクトツアー:サービスの初回ログイン時などに使い方を教えてくれるガイド
オンボーディングは、ユーザーがウェブサイトやアプリなどに初めて触れた瞬間から始まり、ユーザーが製品を使いこなせるようになるまで続く継続的なプロセスです。
このプロセスは、ユーザーとの関係を決定づける最初のステップであり、ユーザーの利用継続、さらにはアップグレードや購買などの行動にも関わってきます。
つまり、オンボーディングは、初めてのユーザーをロイヤルカスタマーに変化させるプロセスであり、オンボーディングにおけるユーザーエクスペリエンス(UX)「オンボーディングUX」を考えることはビジネス戦略において最重要項目のひとつと言えるでしょう。
オンボーディングUXはなぜ重要か?
UserGuiding社は、オンボーディングUXがユーザー維持率に大きな影響を与えることは、調査からも明らかだとしています。
- 63%のユーザーが「オンボーディング体験が購買の意思決定に影響する」と報告
- 80%のユーザーが使い方がわからないためにアプリを削除
- 86%のユーザーが「ユーザーフレンドリーでわかりやすいオンボーディングプロセスを提供している企業のプロダクトを継続利用する」と回答
また、Profitwell社がおこなったBtoBおよびBtoCソフトウェア500企業を対象にした調査によると、機能的なオンボーディングを行った企業ではユーザーの購買意欲が8〜17%向上し、プロダクトの価値を重視するオンボーディングを行った企業では購買意欲がさらに約10%向上しました。
また、オンボーディングに対してネガティブなユーザーと、ポジティブなユーザーについて、プロダクト導入後の経過を比較すると、最初の3週間において、ポジティブなユーザーのほうが維持率の落ち込みが非常に少ないことも分かっています。
このように、優れたオンボーディングUXを提供している企業は、ユーザー維持率(リテンション)を上昇させることができ、維持率の上昇を通じて、オンボーディングUXは企業に収益の拡大をもたらすことになるのです。
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効果的なオンボーディングUXを設計するには?
では、効果的なオンボーディングUXを設計するにはどのようにすればよいのでしょうか?
オンボーディングプロセスでは、ユーザーがプロダクトの複雑さに飽きてしまう前にユーザーのニーズに応じて迅速にわかりやすくプロダクトの機能や価値を理解してもらわなければなりません。
優れたオンボーディングUXは偶然に設計できるものではありません。しかし、正しい手順を踏めば、成功する確率が大幅に上昇します。
例えば、オンボーディングUXの設計の手順について、UserGuiding社は次のようなポイントを挙げています。
- ユーザーのニーズと期待を把握する
- カスタマージャーニーを描く
- ウェブベースかモバイルか検討する
- プロトタイプの作成とテストの実施
この手順について、少し詳しく見ていきましょう。
ユーザーのニーズと期待を把握する
ユーザーは意識していないかもしれませんが、あなたのプロダクトに触れたとき、ユーザーは何らかのニーズや期待を持っています。
新プロダクトについてオンボーディングUXの設計を行う場合は、まずユーザーのニーズや期待について、UXリサーチを実施しましょう。
具体的には、市場調査、類似プロダクトのケーススタディの調査、既存ユーザーへのインタビューなどが考えられます。
一方、既存のプロダクトについては、上記のほか、すでに調査済の顧客満足度調査やNPS調査なども参考にできます。
カスタマージャーニーをえがく
オンボーディングプロセスにおけるすべての目標が達成され、設計に問題がないことを確認するためには、カスタマージャーニーの作成が不可欠です。
まずは、オンボーディングプロセスの対象とする範囲を決めましょう。プロダクト全体をカバーするのか、あるウェブサイトやアプリ1ページをカバーするのか、それともある機能だけをカバーするのか対象としたい範囲を確定しましょう。
次に、ペルソナを作成します。1のUXリサーチで得た結果、つまりエビデンスに基づき、ユーザー像を明らかにし、最終的なペルソナを作成します。
最後にペルソナがどのような段階でプロダクトと接するか、タッチポイントをリストアップしましょう。その際、ユーザーの感情も含めることが大切です。
またUXリサーチから得た、ユーザーのニーズ、期待などをより深く掘り下げ、すべての要素をカスタマージャーニーマップに反映させるのが理想的です。
ウェブベースかモバイルか検討する
ウェブベースかモバイルかによって、オンボーディングUXの設計は全く異なってくる場合があります。
例えば、ウェブサイトを訪れるユーザーは、プロダクトについて知るために訪れる可能性が高く、アプリをダウンロードする人は、プロダクトについてすでになにかを知っている可能性が高いと言えます。
つまり、ウェブサイトのオンボーディングでは、アプリと比較して、まずユーザーがプロダクトを使用することで得られる価値をより明確に提示する必要があります。
こうした点を考慮すると、ウェブサイトでは、プロダクトの価値を伝えるマーケティング戦略から開始し、最終的にサインアップなどのプロセスを導くものになります。
一方、アプリでは、プロダクトをどのように使用すれば、ユーザーのニーズや期待に沿えるのかガイドすることに注力したほうがよいでしょう。
ただ、どちらにも必要なのは、充実したカスタマーサポートを提供するということです。
ユーザーは、質問に対する答えや、抱えている課題への解決策が見つからないとき、プロダクトの使用をやめてしまう可能性が高くなります。
ユーザーにとって、時間は最も貴重なものだと認識しましょう。ヘルプセンターをはじめ、可能な限り効率的な方法で、ユーザーの質問に回答し、課題を解決することを重要視しましょう。
プロトタイプの作成とテストの実施
ウェブベースかモバイルか、オンボーディングUXの対象を選択し、カスタマージャーニーに沿って未解決の問題がないかを確認した後は、ほぼ完成したプロトタイプとなります。
しかし、リリースする前に、最初に実施したUXリサーチで判明したユーザーのニーズや期待に応えられているか、改めてUXリサーチを実施しましょう。
具体的な手法としては、ユーザーインタビューや、A/Bテスト、リモート・ユーザビリティテスト、アイトラッキングなどがあります。
ここで重要なことは、ユーザーニーズに基づき、UXリサーチで明らかにしたい目的を決めることです。
例えば、ユーザーがオンボーディングを終了するまでの時間を知りたいのか、ユーザーが最終目標に達しているのかを知りたいのか、ユーザーの感情の推移を知りたいのか、他にオンボーディングUXを改善できる点があるか知りたいのか、といったことです。
この目的とプロジェクトの規模や予算に応じて、リサーチの手法を選択しましょう。
このように、オンボーディングUXの設計には、継続的なUXリサーチとその結果の分析、そして改善が必要です。調査と改善を繰り返すことで、細かな点まで気が配られた優れたオンボーディングUXを提供することができます。
オンボーディングUXを設計する上で避けたい間違い
これまで見てきたように、優れたオンボーディングUXを設計するには、ユーザー視点を持ち、細部まで注意を払う必要があります。
ここでは、前述UserGuiding社のブログ記事から、オンボーディングUX設計をする上で避けなければならない間違いをご紹介します。
- オンボーディングプロセスは初回のユーザーのみを対象としている
- 簡単なサインアッププロセスを提供していない
- プロダクトツアーをスキップするオプションを与えていない
- チェックリスト、進捗状況、時間を提示しない
この手順について、少し詳しく見ていきましょう。
オンボーディングUXの対象は初回のユーザーのみに設定している
オンボーディングは、ユーザーがウェブサイト、アプリなどに初めて触れた瞬間から始まり、ユーザーが製品を使いこなせるようになるまで続く継続的なプロセスです。
オンボーディングは、新規ユーザーに限らず、ユーザーのニーズや期待を常に把握し、ユーザーの抱える問題の解決策を考え、ユーザーに役立ててもらう継続なプロセスであることをまず認識しましょう。
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簡単なサインアッププロセスを提供していない
サインアップは、オンボーディングプロセスにおいて重要な部分といえます。
しかし、サインアップ時に多くの情報を求めることは、ユーザーに負担をかけ、プロダクトからの離脱を生じさせる要因の一つとなります。
例えば、Googleなどほかのアカウントでサインアップするなど、ユーザーの利便性を高める方法を提供しましょう。
プロダクトツアーをスキップするオプションを与えていない
多くの企業は、ユーザーにプロダクトツアーを提供するだけで十分と考えていますが、それだけでは十分でありません。
オンボーディングUXで最も避けたいことは、ユーザーの時間を無駄にすることです。
このため、ユーザーにスキップの選択肢を与えないプロダクトツアーは大きな間違いと言えます。
チェックリスト、進捗状況、時間表示を提示しない
ユーザーの時間を無駄にしないためにも、オンボーディングプロセスにどのくらいの時間を費やすことになるのか、ユーザーに情報を提供することが重要です。
チェックリストや進捗状況、時間表示は、ユーザーに効率的なオンボーディングプロセスを提供し、オンボーディングUXを向上させます。
オンボーディングUXの成果を計測するには?
オンボーディングUXの向上には、UXリサーチの実施による改善を継続的に繰り返すことが重要です。
このため、定期的に、プロダクトのオンボーディングプロセスが的確に行われているか、パフォーマンスを測定する必要があります。
UserGuiding社は、オンボーディングUXのパフォーマンスを測定する指標として、次の5つの指標を挙げています。
- 無料版から有料版への転換率
- Time to Value(ユーザーがプロダクトの価値を実感するまでにかかる時間)
- ユーザーエンゲージメント(アクティブユーザー数、セッション数、平均セッション時間)
- 解約率
- ユーザーフィードバック
オンボーディングUXを設計する際の努力を意味あるものにするには、ビジネス上で目指す目標を明らかにし、オンボーディングUXのパフォーマンスを測定して、継続的に追跡していくことが重要です。
パフォーマンスを分析し、調査による評価と改善を繰り返すことが、優れたオンボーディングUXの提供、ひいてはユーザー維持率の向上につながります。
まとめ
オンボーディングは、ユーザーにプロダクトの機能を説明してスムーズに利用できるようサポートをする導入プロセスというだけでなく、ユーザーにプロタクトの価値を伝え、継続利用につなげるという重要な役割を担っています。
しかし、多くのウェブサイトやアプリでは、オンボーディングは、単に新規ユーザーを適応させるプロセスと位置付けられているのが現状です。
ユーザーの維持率を上昇させ収益につなげるためには、ユーザー視点を取り入れ、オンボーディングにおけるユーザーエクスペリエンス「オンボーディングUX」を向上させることが重要です。
UXリサーチに基づく「オンボーディングUX」の評価と改善の繰り返しがプロダクトの継続的な成功、ひいてはビジネス収益の向上につながるのです。
参考:
John Ozuysal(2021),”Designing the User Onboarding Experience“, UX Booth
Serra Alban(2021),”User Onboarding UX: Everything You Need to Know“,UserGuiding
Mert Aktas(2021),”What are the biggest mistakes in user onboarding?“,UserGuiding
Serhat Erdem(2021), “Website Onboarding – Key Guidelines and Examples“, “Top 5 User Onboarding Metrics & KPIs to Guarantee Your Success“, UserGuiding
Neel Desai(2019),”Solid Customer Onboarding Drives Higher Retention, Willingness to Pay“, Profitwell
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