サービスの無料体験は有料契約に結びつくか?─ アンケートとインタビューから考察 ─【簡易自主調査】
こんにちは、ポップインサイトです。
最近巷には、「無料」が溢れています。例えば、動画配信サービス、アプリなど、サービスへの集客として「無料」がより身近になりました。一人のユーザーとしてはお得に感じ、ありがたいなと思います。
一方で、サービスの作り手側では、
「無料サービスが新規ユーザー獲得に本当に有効なのかわからない、迷っている」
「新規ユーザーを増やすのにどんな施策が本当に有効なのか考えている」等、
課題をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
本コラムでは、このような疑問を想定し、無料体験がサービスの契約に結びつくのか、簡易的におこなった自主調査の結果をお伝えします。
本記事では、下記のように言葉を定義します。
- 本利用=契約して有料で利用すること
- 無料体験=本利用前に無料で体験すること
- 有料体験=本利用前に有料で体験すること
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アンケート調査
無料体験が本利用に結びつくのかを検証するために、まずサービス体験についてアンケートを行いました。
調査概要(図1.対象サービス)にある通り、オンライン・オフライン問わず、6つのサービスを対象としました。サービスの特徴に応じてサービス体験に対する態度が異なるためエンタメサービス・実用的サービスというようなサービスの効能と価格帯別に調査を行いました。
▼アンケート調査概要
- 調査対象サービス:「サービスの効能」と「価格帯」の軸で選定
- 調査質問項目:サービスの無料体験における「利用状況」「利用理由」「離反理由」とする
- 調査手法:選択式、自由回答の定量アンケートを実施
対象サービス:
アンケート調査で明らかになったこと
下記のような設問で定量アンケートを実施しました。
▼定量アンケート設問
Q.サービスの無料トライアル・トライアル後のサービス利用経験について教えてください。
あわせて、該当サービスの無料トライアル・サービス利用した理由と利用をやめた場合はやめた理由について教えてください。
アンケートの結果、「無料体験後、離脱した」つまり、「無料体験はしたが、本利用をしていない」というユーザーがすべてのサービスでもっとも多くなりました。趣味の教室は43.4%、その他のサービスでは、59.5%~68.8% と、一度も本利用をしていないユーザーの割合が高いことを示しています。
また、継続利用しているユーザーは動画コンテンツ以外20%を下回る結果となりました。
無料体験後、離脱したと回答したユーザーのサービスを本利用をしない理由を選定したところ下記のような結果になりました。
▼エンタメサービスでお金を払わない理由のベスト3
図3.エンタメサービスうでお金を払わない理由のベスト3の価格について言及した回答をオレンジでハイライトしています。「無料の範囲内で満足できる」や「無料だから利用する」、「お金を払いたくない」というコメントからエンタメサービスを無料体験するユーザーのなかには、そもそも本利用するつもりがない人たちもいると仮定できます。
▼実用的なサービスでお金を払わない理由のベスト3
実用的なサービスにおいては、価格に対する言及が少なく、商品効果が得られなかったため利用しないという結果になりました。
また、サプリメント・ダイエット食品をその場で有料課金したというユーザーになぜ課金したのか質問したところ、「30日程度では効果が体感できないので課金する」という声もあげられました。
アンケートの結果から
■ 無料の範囲内でサービス利用したいとき、ユーザーはどのようなニーズをもっているのか
■ 有料で体験したいというニーズはどんなときに生まれるのか
について深く知りたいと思いインタビュー調査を行いました。
インタビュー調査
▼インタビュー調査概要
・社内から下記条件にあてはまるモニターをリクルーティングしインタビューをおこなう
モニター条件:
- 体験版(無料)を利用したことがある
- 体験版(有料)を利用したことがある
調査人数:
4名 (20代~40代 男女)
インタビュー調査で得た発見
・無料の範囲内でサービス利用したいとき、ユーザーはどのようなニーズをもっているのか
「暇つぶし目的、話題についていきたい、サービスが少し気になるなどの関心が低い状態のときは無料で利用したい」
・有料で体験したいというニーズはどんなときに生まれるのか
「ユーザーは製品関与※が高いものなら有料で即時利用開始したり、かなりサービス情報を下調べしたうえでサービスを継続利用する目的でサービス体験をおこなう」
※製品関与:対象となる製品に対する関心の高さ・こだわり
ということがインタビューの結果からわかりました。
動画配信サービスを利用しているユーザーの回答
例えば、動画配信サービスを利用しているユーザーの回答を紹介します。
28歳女性
40歳 男性
上記のような回答から特にエンタメはコンテンツへの関与度が大切といえます。コンテンツに対して低関与ユーザーの場合、サービスやコンテンツの内容だけに限らず、使いやすさや課金のしやすさも選定要因になるため、より大手のプラットフォームを選ぶ傾向があるといえます。
ネット漫画サービスを利用しているユーザーの回答
また、ネット漫画では下記のような意見がありました。
40歳 男性
23歳 女性
漫画を暇つぶし目的に読むという低関与の場合、コンテンツを無料で消費したいと思うそうです。
製品関与が高いユーザーに選んでもらうには?
サービスに対して製品関与が高いユーザーに選んでもらうにはどうしたらいいでしょうか。インタビュー結果から下記のことがいえます。
28歳女性
エンタメ系であればアニメのように競合とかぶらないコンテンツとその更新頻度が重要
28歳女性
27歳女性
高価格帯(5000円~10000円程度)であれば、実際に使ってみて使い心地を検証したい、コストパフォーマンスがあいそうか判断する
無料体験は本利用に結びつくのか?
今回の簡易自主調査の結果から半数以上が無料体験後、離脱していることがわかりました。企業のマーケティングでは無料体験を促すことによって以下のような問題が起こっていると推測されます。
無料体験施策の問題
無料体験集客のための広告出稿等を実施しているが、無料体験で離脱するユーザーが多く、マーケティングコスト効率が悪い。
また、問題の解決策として以下のような例があげられます。
問題解決の考え方の例
■ サービス関与の高いユーザーを無料体験に導くプロモーション設計
■ サービス関与の低いユーザーが無料体験をした際に、期待以上のサービスを提供し、満足度を高めるサービス体験の設計
本コラムでは、簡易調査の結果をもとに考察しています。
対象サービスを絞り、さらに深くユーザーインサイトを探索することで、無料体験から本利用に結びつける体験設計の検証を行うことができます。
ぜひポップインサイトに調査をご依頼ください。
■コラム執筆者
尾島2022年4月に株式会社メンバーズに新卒入社しUXリサーチャーに。今までに飲料メーカーや健康サービスのUXリサーチを担当。趣味は猫とハイボールと梅酒。