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UXリサーチ事例 定量×定性ですすめるユーザー理解 メルペイ&Retty事例


サービスや商品のグロースには深いユーザ理解が不可欠です。ユーザ理解の手法であるデータ分析とUXリサーチは相互に補完関係にあります。

2020年4月27日のオンラインセミナーでは、メルペイのUXリサーチャー松薗さん、Rettyのデータアナリスト平野さんのお二方にご登壇いただきました。松薗さんは副業でRettyでの定性調査をお手伝いされており、同社の平野さんと共にUXリサーチの取り組みをしてきた背景があります。

お二方にメルペイ、Retty各社での定量×定性の取り組み事例をお伺いしました!

メルペイでの定量×定性の補完的アプローチ事例:株式会社メルペイ 松薗美帆さん

株式会社メルペイのデザインチームでUXリサーチャーをしている松薗美帆と申します。

本日はメルペイという決済サービスを作る中で行っている、maruhadakaPJ(まるはだかプロジェクト)についてご紹介します。初めて聞くとびっくりする名前ですが、これは「お客さまのインサイトを丸裸にする」という目的でつけられました。どのように丸裸にしているのかというと、本日のテーマである「定量と定性を使った補完的アプローチ」を用いています。

UXリサーチの使いどころ

UXリサーチには大きく分けて「探索型」と「検証型」の2つがあり、どちらも根底として「お客さまを理解すること」が目的であることが多いです。

まずは「お客さまと自分は違う」ということを認識し、探索と検証を繰り返す中で理解を深めていきます。


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maruhadakaPJ これまでの歴史

maruhadakaPJではこれまでに3つのリサーチを行いました。

①は、初めてメルペイを使用したお客さまはどういうモチベーションで・なぜ使ったのか、お客さまはどういう人たちなのか、を知る目的で実施しました。

②はリブランディングの効果検証を目的に行いました。「メルペイあと払い」という機能を「メルペイスマート払い」へとリブランディングした際に、「伝えたかったメッセージが適切に伝わっているのか」「キャンペーンがどのようにお客さまに受けとられたのか」という効果を検証しました。

お客さまのことを深く理解するために日記調査や訪問調査などのリサーチも組み合わせたので、少し探索型の要素も入れたハイブリッドな形になっています。

③は現在進行中のもので、ロイヤルなお客さまを増やすためのリサーチです。「ずっと使い続けてくれるお客さまはどういう方なのか」逆に「途中で使うのをやめたお客さまはどういう方なのか」を比較することで、ロイヤルなお客さまを増やすために何をすべきなのかをマーケティングやプロダクトへ活かす目的で行っています。

また、どのリサーチにおいても「何を目的に行っているか」を最初にすり合わせることを大事にしています。

リサーチの流れ

定性調査はインタビューやその後の振り返りや分析など、定量データに比べて時間がかかります。そのため、どんなお客さまをn=1の対象者とするかが重要です。

その方法も含めてリサーチの流れを4つのステップでご説明します。

①どのような行動をしている?
これは定量データで特定することができます。例えばロイヤルなお客さまに聞きたいのか、離脱したお客さまに聞きたいのか。下の図でいうと左側のヘビーに利用いただいているお客さまなのか、右側のライトに利用いただいているお客さまなのか。

②どのような思考をしている?
図ではヘビーに利用いただいているお客さまが3人囲まれていますが、それらがどういう思考を持っているのかも重要です。例えば、ヘビーに利用いただいているお客さまでよく使っているように見えても実はサービスへのロイヤリティは低いかもしれません。こうしたところはログだけでは分かりません。

③それはなぜ?
3つ目では、②の思考になる理由を深堀りします。「なぜロイヤリティが高くなったのか」「なぜ使っているのにサービスへの愛着はないのか」。ここはデプスインタビューが得意とする部分です。

④インパクトに繋がる?
最後に③までの調査の再現性や市場の規模を示すために、インパクトに繋がるかどうかを調査します。③で終わってしまうと、定性調査はインパクトにつながらないと軽視されてしまう1つの原因になります。

また、各ステップにおいて定量・定性のどちらが得意とするかを上の図に示しています。

maruhadakaPJ 4ステップ

4つのステップをまとめるとこのようになります。1つ目で行動ログを解析して傾向理解やインタビュー対象者の選定をしますが、この時の切り口が非常に重要です。呼ぶお客さまの層を間違えてしまうと、その後どれだけ良いインタビューをしても全て無駄になってしまいます。

また、この①と②で何が分かるのか・何が分からないのか、という定量・定性の互いの制約を知っておくことはとても大事です。「ログではここまでしか分からない」「ここから先はアンケートで聞くべきじゃないか」と切り分けることが非常に重要です。

maruhadakaPJ 役割分担

こちらはmaruhadakaPJにおいて、UXリサーチャー(UXR)とデータアナリスト(BI)がどのように協働しているかを示した図になります。

はじめはデータアナリストがデータ分析から課題感を共有してスタートすることが多く、その課題をもとにUXリサーチャーがリサーチ企画を作成します。

次にデータアナリストがデータの定義を行います。ここが一番時間をかけるところで、「ロイヤルと言った時にどの程度ロイヤルな人にするのか」「どれぐらい出現率があるか」などを、実際に抽出してもらいながら議論し一緒に決めていきます。

そしてログでは取り切れないようなところをアンケートで調べます。アンケートの作成は私たちUXリサーチャーの仕事で、実際の配信や日程調整も行います。

その後はアンケートとログデータを結合させて実際のインタビューに移ります。約90分間で「どのような生活をしているか」「サービスに対してどんな印象を持っているのか」について深く聞きます。その際に他のメンバーはオンラインでライブ配信を見ながらインタビューに参加しています。

そして最後に分析・レポーティングを行います。インタビューを行って「どのようなインサイトを得られたか」「どんなネクストアクションをとるといいか」を皆でディスカッションし進めていきます。

私が大事だと思っているのは、定量・定性を対立させるのではなく、どちらにも良い点や限界があることを理解した上でうまく使い分けるということです。プロダクトマネージャーやデザイナーも含めて、お互いの長所やどう使い分けるべきかというリテラシーを上げうまくコラボレーションすることが重要です。


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Rettyにおける定量/定性データを活用した意思決定事例:Retty株式会社 平野雅也さん

Retty株式会社でデータ分析チームのマネージャーをしている平野雅也と申します。

Retty株式会社では実名制のグルメサービス「Retty」を展開しており、身近なご友人や食の趣味・嗜好が合う人同士が繋がれるSNS型のような特徴を持つサービスを提供しています。

データ分析チームはとにかく意思決定のスピードと質を上げることを役割としており、そのためには手段を問わず、目的によって定量/定性の手段を使い分けるという考え方で取り組んでおります。

本日は定量/定性データの使い分け方と分析のやり方についてご紹介します。

使い分け – 検証型と発見型

リサーチには定量/定性に限らず「検証型」と「発見型」があると考えています。「発見型」はある事柄に対して仮説すらない場合や、仮説があってもそれ以外の発見を求めるときに行うリサーチで、「検証型」は既に存在する仮説を検証することを目的としたリサーチです。

この発見型と検証型は、「ある事柄への理解の状態」で使い分けると良いです。

使い分け – 定量と定性

定量と定性データの使い分けは、「ある事柄に対して何を知りたいか」によって変わります。例えばユーザのサービス利用頻度などの行動に関することを知りたい場合、行動ログなどを集計した定量データで知ることができます。

また、サービスの利用理由などのユーザの考えを知りたい場合、「〇〇の機能が便利だから」といった表層的な理由であれば、アンケートによって知ることができます。一方で本人ですら言語化が難しいような深層心理を知りたい場合は、インタビューをして深掘りすることが必要です。

使い分け – 定量/定性×発見/検証

これらを4象限におこすとこのようになります。

こちらを用いながら、実際の活用事例(ある指標のグロースミッションにおける意思決定事例)をご紹介します。

背景①:課題指標の選択

今回の事例の課題背景はある目標指標を最大化することが目的で、グロースの考え方が2つあります。

  • 新規流入の増加を狙うのか、LTV(顧客生涯価値)の最大化を狙うのか
  • LTVの最大化を目指す場合、ヘビーユーザを増やすのか、継続しているヘビーユーザの脱落を減らすのか

Rettyのようなグルメサービスの場合、1日3食といった物理的制約があるため、「習慣利用してもらう」ことが重要であると仮説を立て、先ほどの4象限の「行動ログ分析(定量/検証型)」という手法を選択しました。

その結果、ヘビーユーザの脱落には課題はなく、継続ユーザが増えていないという課題を発見できました。

背景②:課題解決の準備

もう一つの背景として「ヘビーに利用しているユーザがなぜ継続しているのか」を分かっておらず、ターゲットや提供価値の方向性が見えていませんでした。

そのため、ヘビーユーザの継続理由を明らかにし、ターゲットユーザと提供価値の方向性を決めることを目的としたリサーチを設定しました。継続理由の仮説を立て、その確からしさを高めるためにアンケートとユーザインタビューの両方を実施しました。

なぜ定量データだけでなく定性データも必要なのかというと、継続理由する理由を深く知るには行動や考えの裏にあるインサイトを把握する必要があるからです。インサイトを得るには生の声や表情、状況、その人の歴史的背景を知る必要があるため、ユーザインタビューを活用しています。

また、私たちデータ分析チームはUXリサーチの経験が浅かったため、松薗さんに副業という形でご協力いただきました。組織に専門家が不在の場合、外部の得意な方に協力を得るのは非常におすすめです

調査のプロセス

ここからはプロセスを紹介していきます。こちらが全体の流れです。

1.定量調査:価値仮説の構築

まずアンケート(定量/検証型)による仮説検証を行いました。目的や手法は以下の通りです。

まずプロジェクトメンバーで、ヘビーユーザが求めるニーズのブレストを行いました。そしてそこで出たニーズを一覧化し「価値仮説-具体」(「◯◯できる価値」という形に語尾を変換し、流動機能的価値になるような大きさに揃えたもの)に変換しました。

次に具体にしたものを抽象に変換し、最後に扱いやすい名称にするためにラベル付けを行いました(価値カテゴリ)。こうしてできた表のことを「価値仮説表」と呼んでいます。

2.定量調査:仮説をアンケートリサーチで検証

次のプロセスでは、この価値仮説をもとにアンケートを行って定量化します。「価値仮説-具体」からアンケートの質問項目を作成してサービス内で配信し、その結果を集計して求める価値ごとに現状のボリュームを把握しました。これによってニーズごとにユーザをセグメンテーションすることができました。

しかし、あくまでブレストベースの仮説なのでこのセグメントの確からしさはまだ低く、またこのアンケート結果は現状のニーズになるため、ヘビーユーザになるまでの成長過程はわかりません。したがって、戦略を決めるという重要な意思決定の上では確信度が低いのでさらに調査を進めました。

3.定性調査:インタビューによる仮説発見

ここでは、ブレストでは思いつかなかった新たな仮説(新たなセグメント軸)を見つけること、フェーズごとに求める価値の変遷を確認することを目的にユーザインタビュー(定性/発見型)を行いました。

その結果得られた具体的なエピソードを抜粋し、ユーザの求める価値をフェーズごとに抽出します。ここでは新たな価値カテゴリーが存在するかの分析も行い、価値仮説表をアップデートします。

4.定量調査:セグメント化とボリューム把握

次に、インタビューで取得した定性データを活用してセグメント分析(定量/検証型)を行いました。

手順としては価値の変遷が似ているユーザごとにグルーピングをし、そのセグメントごとに集計・可視化をしてボリュームを把握します。

先ほど松薗さんもおっしゃっていましたが、どれぐらいインパクトがあるのかは事業的な観点から非常に重要なので、それを証明するために定量化をしています。

意思決定

最後が意思決定です。ここはセグメント間のボリュームの大きさと、グロースできそうかの観点でターゲットを決めました。

つまり、ライト層のボリュームが一定以上あって、施策によってヘビーまでグロースできそうなセグメントをターゲットにしています。

提供価値や方向性に関しては、このセグメント自体が価値から構築していることもあるので、ターゲットが決まった時点で決まります。またボリュームの求め方は、今回インタビューデータから構築したセグメントの相対度数に全体のユーザ数を乗じることで算出しています。

以上、定量と定性の上手な使い分け方について詳しくご説明くださった松薗さん、平野さん、どうもありがとうございました♪


また、定量調査も定性調査もどんとこい!の、弊社UXリサーチャがご支援いたしますアジャイルUXリサーチへもお問い合わせお待ちしております。

無料DL|サービス紹介資料

株式会社メンバーズ ポップインサイトカンパニーのサービス資料です。UXリサーチチームが組織に伴走しサービス開発・改善のプロセスにUXリサーチの内製化をご支援します。

投稿日: 2020/09/14 更新日:
カテゴリ: UXウェビナーダイジェスト