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世界で2億5,000万人を夢中にさせた伝説のゲーム「フォートナイト」に隠されたUXの秘密

【作成】2021/03/10

世界的現象となった大人気バトルロイヤルゲーム「フォートナイト」。爆発的な人気を獲得した理由のひとつは、その「優れたUX設計」にあると言われています。

2021年2月8日のオンラインセミナーでは、Epic GamesにてフォートナイトのUXディレクターを務めたセリア・ホデントさんがご登壇。本稿ではそのダイジェストをご紹介します。

ゲーム業界におけるユーザエクスペリエンス(UX)と認知科学応用の第一人者であるセリアさんは、「テレビゲームに限らず、どのような製品・サービスであっても人という要素を考慮することが重要」であり「製品開発の初期段階から仮説をたて、何度もUXリサーチを繰り返し、改善していくことが必要」だと話されています。

セミナーでは、この「人という要素を考える」観点から、UX設計を考える際に知っておきたい「人間の学習の原則」と、一早くプレイヤーにゲームになじんでもらうための「オンボーディングにおけるUXリサーチの必要性」について、「フォートナイト」開発の事例を多く交えながら、わかりやすくご説明いただきました。

ぜひご一読ください。

【オンラインセミナー動画】世界で2億5,000万人を夢中にさせた伝説のゲーム「フォートナイト」に隠されたUXの秘密

ゲームにおけるユーザーエクスペリエンス(UX)とは

ゲームのユーザーエクスペリエンスとは「プレイヤーがどのような体験をするのか」考えるということです。

ユーザーエクスペリエンスを考えることは、人間的な要素を考慮することとも言えます。これは「フォートナイト」のようなテレビゲームに限らず、どのようなサービスやシステムを開発する際でも重要な視点です。

「フォートナイト」では、開発にかかわるチーム全員が、実際にどのようなゲームを作りたいかという具体的なメンタルモデルを持ち、そのアイデアをシステムに実装します。

同時に、プレイヤーが知覚するもの、つまり、ゲーム内でプレイヤーとやりとりが発生する全てのものを対象に、ゲームクリエイターの意図したものと、プレイヤーの体験が一致するように心がけています。

UX設計に欠かせない「人間の学習における3つの原則」

ゲームをすることは、人間にとって学習体験です。なぜなら、ゲームをするときには、操作方法、ゲームの手順など多くのことを学ぶ必要があるからです。

このため、ゲームにおけるユーザーエクスペリエンスを考えるにあたっては、まず、人間の学習の原則について知っておく必要があります。

人間の学習には、大きく分けて3つの原則があります。

1.行動心理学の原則ー条件付け
2.認知心理学の原則ー心のプロセスの理解
3.構成主義心理学の原則ーアクティブラーニング

これらは、どれが重要というわけではなく、アプローチが異なるものです。

行動心理学の原則である条件付けとは、例えば、ゲーム内で警告音を聞くと自然に「注意が必要だ」と感じたり、特定のアクションが罰や報酬につながることを学ぶことです。

条件付けは非常に効率的な手法で、特に、単純なことや素早く反応しなければならないことの学習には有効です。

認知心理学の原則とは、人間のメンタルプロセスの限界を考慮に入れることです。具体的には、「知覚」が主観的であること、「注意(力)」は限られること、「記憶」は移ろいやすいこと、を前提にすることです。

例えば、ゲーム開発では、プレイヤーの知覚するものがクリエイターの意図に一致しているか確認したり、プレイヤーの記憶負荷を軽減するためにヘッドアップディスプレイ(HUD)やリマインダーで情報を提供したり、プレイヤーに何かを伝える場合は気が散らないように重要な点に集中させるといった工夫をしています。

構成主義心理学の原則であるアクティブラーニングとは、特定の文脈の中で意味づけすることを通じて、動作を学習するというものです。

例えば、 ゲームの進行上、重要なポイントは、プレイヤーが乗り越えなければならない障害がある状況を考え、障害を乗り越える過程で新しい仕組みを学習するというように、実際にやってみることを通じて学習してもらうようにしています。

▶人間の学習の3つの原則とゲームへの適用例について、より詳しくはセミナー動画をご覧ください。

望ましいオンボーディングのあり方とは

では、こうした人間の学習の原則を踏まえた、望ましいオンボーディング(※)のあり方とはどのようなものでしょうか?

※オンボーディングとは、プレイヤーがスムーズにゲームになじんでいくプロセスのことを意味します。

望ましいオンボーディングとは、可能な限り最高の学習曲線をプレイヤーに提供することです。

大抵のゲームでは、適切なペース配分を通じて、プレイヤーが一つずつ覚えていけるよう、つまり、オンボーディングがスムーズであるよう設計されています。

問題は、クリエイターが、自分たちの知っていることは皆が知っていると思ってしまう「知識の呪縛」にかかっていることです。 クリエイターは自分のゲームを熟知しすぎているあまり、大量の情報を優先順位をつけて整理しなければならないプレイヤーの立場で考えることが難しいのです。

プレイヤーに、意味づけをしながら教えていくには、最初に「なぜ」に重点を置くことが大切です。

大事なのはプレイヤーの立場に立って考えることです。例えば、なぜプレイヤーはそれを気にする必要があるのか、なぜプレイヤーは特定の時点で特定の仕組みを理解しなければいけないのか、ということを考えることが大切です。

次に「どのように」プレイヤーに理解をしてもらうかに焦点を当てましょう。
実践しながら学ぶ行動学習がよいのか、 チュートリアル(※)でテキストを読んでもらうのがよいのかといったことです。

※チュートリアルとは、広義にはプレイヤーにゲームの仕組みを教えるものを差し、説明書も含め、プレイヤーがゲーム上の何らかの仕組みについて学ぶために設定するプロセスを指す言葉です。

そして、最後に焦点をあてるのが、プレイヤーは「なにを」する必要があるのかということです。

最終のステップとして、プレイヤーによるユーザーテストを実施します。この段階では、プレイヤーがゲームの各種システムに触れてみて、なぜ特定の行動をとる必要があるか理解できているかを確認します。

プレイヤーがしっかり意味づけができているか、クリエイターの目標が達成できているかを考える際、この「なぜ」から始まるアプローチは、重要な考え方です。

例えば、「フォートナイト」では、メンバーと膝を突き合わせて、プレイヤーがゲームを十分楽しむための学習項目を全てリストアップすることから始めました。

▲図:「フォートナイト」における学習項目のリストアップ一例

図のように、プレイヤーに学習してほしいことを全部リストアップするところから始め、 より重要な項目は何か、それをどのタイミングで学習してもらうかを整理します。

リストに従って、プレイヤーに一気に多くのことを教えるのではなく、リストの各項目を整理して、何を最初に学習してもらうのがよいかを考えることで、優先順位をつけます。

「なぜ」に焦点を当て、なぜ特定の仕組みを学ぶことがプレイヤーにとって意味のあることになるか、また、なぜこの時点でプレイヤーはこの仕組みを学ぶ必要があるのかを考えます。

次に、先述のように行動学習なのか、チュートリアルでテキストを読んでもらうのかといった「どのように」学習させるかという方法を考え、最終ステップとして、ストーリーが流れていく中で、オンボーディングが自然に完了できるよう、物語の中にどのように埋め込むかを考えます。

また、ゲームを十分に楽しめるものにするには、プレイヤー自らがゲームが楽しいからゲームをするようになる「内発的動機づけ」が重要です。この点で、チュートリアルはとても大きな役割を果たします。

例えば、「Paragan」というゲームでは、発売1ヶ月前にUXリサーチで洗い出した課題が、発売後の調査で判明したプレイヤーのリテンション(維持)に影響がある要因と相関があることがわかりました。

具体的には、ゲームを解約する可能性が高いプレイヤーは、ゲーム内のあるルールを理解していない、言い換えれば、チュートリアルがうまく機能していないために失敗するプレイヤーだということが判明しました。

このことからわかるように、UXリサーチの結果、プレイヤーが理解できていない部分があれば、クリエイターは、判明した課題を繰り返し確認し、解決に向けて取り組まなければなりません。

問題が発覚した後に、チュートリアルを後付けで慌てて作ってしまうと、かえって効率が悪くなります。

だからこそ、ゲームそのものやゲーム内の各種システムの開発にばかり気をとられるのではなく、それらをどうやってプレイヤーに理解してもらうかを考えることが重要となります。

ゲーム開発の早い段階からこうしたアプローチをとらないと、発売後に大きな問題が発生する可能性が高く、また、実際に問題が起こってしまった場合、挽回は非常に難しくなります。

つまり、オンボーディングのあり方をあらかじめ考えて、テストを繰り返すことが大切といえます。

開発の早い段階からテストを実施すれば、仮に問題が起きても大きな問題にはなりません。 ゲームの試作版であっても、状況検証ができれば十分です。つまり、どの状況がうまくいき、どの状況がうまくいかないのかが分かっていることが重要なのです。

また、ゲームをテストするときには、自分で仮説を考えることも非常に重要です。

ある時点でゲームをテストするというだけでは十分ではなく、重要なことは何か、テストする必要があるのは何か、最終的にどうやって修正するのか、を考えておく必要があります。

以上をまとめると、オンボーディングを計画する場合には、プレイヤーがどの時点でどの仕組みを学ぶか優先順位を考えて設計し、プレイヤーが狙い通りに仕組みを理解しているかをテストや発売後の分析を通じて確認することが重要です。

UXフレームワークと2つの柱

最後に、ゲームの開発全体を通しての指針となるUXフレームワークについてご説明します。

ゲームにおけるUXフレームワークは「ユーザビリティ」と「エンゲージ・アビリティ」(「engage」と「ability」という2単語から成るセリアさんによる造語)という2つの要素で成り立っています。

例えば「エンゲージ・アビリティ」の動機づけに関連して、何かが上手くいかない、ゲームを十分に楽しめないと感じる人がいたら、それは危険信号です。

しかし、原因は「ユーザビリティ」にある可能性もあります。 例えば、プレイヤーが何かを理解していない、または何かが不明なままであるからかもしれません。時に単純な「ユーザビリティ」の問題が、プレイヤーの動機に大きな影響を与えることがあり、その場合はすぐに修正が必要となります。

正しい問題を、正しいタイミングで解決することが大切ですが、ゲームの場合、一度に全てを修正することは難しいため、優先順位をつける必要があります。

具体的には、プレイヤーがゲームを十分に楽しめるか、言い換えれば「内発的動機づけ」を与える、目標や報酬といった仕組みの優先順位が高くなります。

フォートナイト開発のプロセスにおけるUXフレームワークの詳細は以下の記事もお読みください。
UXリサーチを組み込んだ開発サイクルの確立~「フォートナイト」成功の秘密②~

まとめ

セリアさんが大切にされていたのは、製品・サービスを開発する際に「ユーザーを理解しユーザーの立場で考える」ことでした。

その中で編み出された、開発の指針であるUXフレームワークとその2つの柱「ユーザビリティ」と「エンゲージ・アビリティ」は、ゲームに限らず、あらゆる製品・サービスに適用できる、有用性が高い考え方です。

そして、この指針のもと、ユーザーの「なぜ」に常に焦点を当て、開発の初期段階からユーザーテストを繰り返し、継続的にUX改善を実施していったことこそ「フォートナイト」成功の秘密だったのです。

UXリサーチを開発工程に組み込み、継続的にUXを改善していくこと、それがビジネスを成功に導くプロセスなのです。

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和訳版Game-UX_onboarding_final

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カテゴリ: UX, オンラインセミナー
投稿日:
投稿者: okimoto
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