UX改善の打ち手に。ユーザビリティ課題改善のための動画活用アイデアをご紹介
定性調査や定量調査を実施することで、Webサイトやアプリにおけるユーザビリティの課題が分かったものの、改善のためのアプローチに悩むことは少なくないと思います。今回は動画制作に携わった経験から、動画を活用したUX改善のアイデアの一部をご紹介させていただきます。
※参考:UXリサーチの代表的な7つの手法とは?UXリサーチ未経験者必見の記事で定性調査・定量調査についての概要をご説明しています。
そもそも動画の強み、弱みとは?
近年、Webサイトや広告において動画の活用は増えてきていますが、動画も決して万能なものではありません。まずイラストや図表などの静止画と動画について、私の考える強み、弱みを挙げさせていただきます。
静止画について
強み
・瞬時に情報を伝えることができる
・伝えたい情報を表示させ続けることができる
・動画に比べファイルサイズを抑えられる
・動画に比べ制作コストが抑えられる
弱み
・一枚の画像だけで伝えられる情報量が限られている
動画について
強み
・伝えられる情報量が多い
・時間軸を持つため、ストーリー性のある情報を伝えやすい
・音楽や効果音などの音を組み合わせた情緒的な表現ができる
・細かな表情の変化やしぐさ、製品を利用する様子などの動きを伝えることができる
弱み
・最後まで視聴してもらえない場合に情報を伝えきれない
・静止画に比べてファイルサイズが大きくなる
・静止画に比べ制作コスト、期間がかかる傾向がある
動画は伝えられる情報量が多く、時間軸に沿って情報を伝えられるメリットを持つ反面、途中で視聴をやめてしまうユーザーに対しては情報を伝え切れないというデメリットもあります。伝えたい情報が静止画よりも動画で発信する方が適していて、制作のコストや期間を確保できる場合には、動画の活用を検討してみても良いかもしれません。
様々なケースにおけるUX改善のための動画活用アイデア
Webサイトやアプリにおけるユーザビリティの課題は様々なものがあります。動画の活用が有効なケースを課題に応じてご紹介します。
商品やサービスの使い方を伝えきれていない場合
次のような声から、商品やサービスの使い方が伝えきれていないことが分かった場合、動画を活用してテキストや静止画では伝わりづらい商品の使い方を分かりやすく伝えることができます。
・「アプリで○○の機能の設定方法が分からない」
・「商品の○○の交換方法が分からない」
・「マニュアルを見てもよく分からない」
また、商品・サービスの利用を検討中の方や、実際に利用しているユーザーから同じような問い合わせが頻繁にある場合は、動画を活用することでUXの改善に加え、問い合わせ対応の工数を大幅に削減できる可能性があります。
例えば商品の問い合わせが多い部分について使い方を説明するような動画や、アプリの利用や画面遷移の様子の動画を活用することで、ユーザー体験の改善に繋がります。
商品・サービスの強みや特長を伝えきれていない場合
次のような声から、商品やサービスの強みや特長が伝えきれていないことが分かった場合、動画を活用してテキストや静止画だけでは伝えきれない商品やサービスの特長や要点をよりメリハリをつけて伝えることができます。
・「他の商品との違いがよく分からない」
・「どういうサービスなのかイメージがしづらい」
また、複数の商品・サービスを検討している方に対し動画で特徴をただ伝えるだけではなく、音楽などの非言語情報やアニメーションを工夫して商品・サービスの世界観も含めて伝えることで、ユーザーに強く印象づけさせることも可能です。
制作した動画は商談などにおいても活用できます。商品・サービスの基本的な説明は個々の営業担当によって伝え方が異なる場合もあるかもしれませんが、動画であれば同様の品質の情報を伝えることができます。
現場のイメージを伝えきれていない場合
例えば次のような声から、現場のイメージを伝えきれていないことが分かった場合、動画を活用して雰囲気や利用の流れなどを伝えることができます。
・「大学の雰囲気が分からない」
・「入社後の業務の内容がイメージしづらい」
・「社会人向けスクールで実際に教えてもらう際の様子を知りたい」
・「サロンの施術の様子が分からないので不安」
定性調査や定量調査でユーザーの抱える不安などが明らかになっている場合は、イメージを伝えることに加えて、不安を解消させるようなメッセージを伝えられるとより成果に繋がるかもしれません。
動画の内容としては、学生へのインタビュー、社員の1日の流れの紹介、実際の授業の様子、サロンでの施術の様子などの動画が一例として挙げられます。
また、制作した動画はWeb上で公開しつつ、企業説明会や大学のオープンキャンパス、店頭のデジタルサイネージや交通広告などでも活用することができます。
静止画広告で思うように成果が上がらない場合
静止画広告で複数のパターンを作成して試してみてもどれも思うように成果が上がらない場合、動画広告を活用することで成果を上げることができるかもしれません。
ユーザーから見て馴染みがなくイメージがしづらいものや、静止画だけで差別化がしづらく印象に残りづらい商品・サービスに関しては、動画広告の検討の余地があると思います。
終わりに
インタビューやユーザビリティテストなどの定性調査からはユーザーの「言葉」や「行動」などの情報を得ることができます。
これまで挙げたようなユーザビリティの課題は、そういったユーザーの「言葉」や「行動」から、想定しなかったようなものが見つかるケースが多々あります。Webサイトやアプリで成果が思うように出ない場合には、ぜひ定性調査をはじめとしたUXリサーチをお試しください。
執筆者について
宮本檀
UXリサーチャー。建築設備関係のメーカーでプロジェクト管理を経験後、Webデザイン、動画制作、動画制作のディレクション等の経験を経て2022年に株式会社メンバーズに入社。ポップインサイトカンパニー所属。
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