デプスインタビューとは?やり方やメリット・デメリットを徹底解説!

デプスインタビューとは、ユーザーに1対1で話を聞く質的なUXリサーチ手法です。この記事では、デプスインタビューの基本からその実施方法まで、具体例も交えて解説します。
デプスインタビューについて知りたい方や、実施を検討している方はぜひご覧ください。
目次
デプスインタビューとは
デプスインタビューは、個々の参加者に対して深く掘り下げた質問を行い、その人の考えや感情、行動の動機を理解することを目的とした質的調査手法です。1対1で行われ、インタビュアーは参加者の回答に基づいて柔軟に質問を展開します。
デプスインタビューのメリット
デプスインタビューのメリットは、参加者の本質的なニーズや行動の動機を深く理解できる点です。例えば、下記のグレー背景部分のような内容を掘り出すことができます。
(例)ネットショッピングについてのインタビュー結果
- モニタ属性:30代女性、会社員、3歳の子供と夫と3人暮らし
- 買い物時の行動:よく使う機能はお気に入り機能。セール時にまとめ買いする。
- 1回の買い物予算:1~2万円
- ニーズ:子育てと仕事で忙しく、自分のために使える時間もお金も限られているので、それらを賢く使ってファッションを楽しみたい。
- 行動の理由:普段からすき間時間で気になるアイテムをお気に入り登録しておき、安くなるタイミングでまとめ買いする。時間もお金も効率的に使いたいので。
ユーザーの本質的ニーズや行動の理由を理解することで、機能やサービスの改善を効果的に進められます。さらに、ユーザー自身も意識していない潜在ニーズを引き出すことができた場合は、それまでにない新しい機能やサービスのアイデア創出につなげられる可能性もあります。そうしたニーズや理由を明らかにするのに適した手法が、デプスインタビューです。
アンケートやデータ解析では、属性や行動(上記の赤枠部分)は明らかにできますが、ニーズや理由まではわかりません。属性や行動の情報だけで機能やサービスを改善すると、ユーザーに「こういうことじゃないんだよな…」と思われてしまうリスクがあります。
デプスインタビューのデメリット
デプスインタビューは時間とコストがかかるというデメリットがあります。例えば、10名に対して60分のインタビューを行う場合、それだけでも合計で10時間かかります。加えて、日程調整を含めた事前準備にも人数分の時間がかかります。10時間分の発話データを分析することも、慣れない人には大変な作業となるでしょう。
デプスインタビューの活用場面

デプスインタビューの活用場面は多岐に渡ります。プロダクトやサービスのライフサイクルに当てはめると下記のような場面が挙げられます。
0. 導入前、企画段階での活用場面
- ターゲットとなるユーザーのニーズや課題を探したい
- 新規サービスのコンセプト案がユーザーに受け入れられるか検証したい
1. 導入期における活用場面
- ユーザーとの接点を探したい
- 認知・利用を促すための訴求や施策が受け入れられるか検証したい
2. 成長期における活用場面
- ユーザーのロイヤリティを高める要因を明確にしたい
- 事業者側の意図通りに進まずボトルネックになっている点について、理由を探りたい
3. 成熟期における活用場面
- 競合他社と比べての自社の優位性を明確にしたい
- 自社サービスにどのようなブランドイメージを持たれているか確認したい
4. 衰退期における活用場面
- 新しいターゲットを探したい、その人たちのニーズや課題を把握したい
デプスインタビューと他調査手法の違い
同じインタビューの手法として、グループインタビューがあります。グループインタビューは、クイックに大勢の話を聞ける点がメリットですが、1人1人のニーズや行動の理由を深く聞くことは難しいです。時間やコストが限られていてデプスインタビューの実施が難しいときや、広く意見を集めたいときはグループインタビューの実施を検討するケースもあります。
デプスインタビュー設計のやり方とコツ
デプスインタビューの質問設計は、下記のようなやり方で行います。
1. 聞きたい質問を思うままに書き出す

手書き、パソコンのいずれの方法でも構いませんが、書いた内容を容易に並び替えられるツール(ふせんやホワイトボードツールなど)を使用すると、後工程がスムーズです。
2. 同じような質問を分類する

ユーザーへの質問を思うままに書き出すと、似たようなものや関連性のあるものが出てきます。そのような質問を近くに集めてグルーピングします。
3. 順番を整える

ユーザーの思考順序に従い、グループとその中の質問を並び替えます。話が飛躍したり前後したりすると話しづらいので、時系列または行動の流れに沿って質問の順番を整えます。
4. 聞き方を整える
思うままに書き出した質問の表現や抽象度を整えます。抽象度が低い質問ばかりでインタビューを構成すると、参加者の回答が限定されてしまい、本質的・潜在的な答えを引き出すことができません。逆に抽象度が高い質問ばかりだと、どの観点で答えるべきか不明瞭になってしまうので注意が必要です。
まずは適度な抽象度の質問を中心に構成し、抽象度の高い質問や低い質問は、必要に応じて使用します。
抽象度が低い質問の例
- お気に入り機能についてどう思いますか?
→この質問だとお気に入り機能に関する回答に限定されるため、他の部分については聞き出せません。「ピンポイントでこの部分については確認しておきたい」または、「このポイントについては、参加者全員に聞いて回答を比較したい」という場面では抽象度が低くても問題ないです。
抽象度が高い質問の例
- このアプリをどう思いますか?
→この質問のみだと、回答者はどのような観点から答えるべきか判断に迷う可能性があります。「ユーザーがそのアプリのどこに注目しているのか聞いてから詳しい質問をしたい」または、「インタビューの終盤に総合的な振り返りとして聞きたい」といった場面では抽象度が高くても問題ないです。
抽象度がほどよい質問の例
- このアプリで買い物をするときどのように操作しますか?
- よく使う機能はありますか?
- なぜそれをよく使うのですか?
→ユーザーが自由に回答でき、さまざまなフィードバックを引き出せます。
デプスインタビュー実施のコツ
インタビューを実施する際は、次のような点に気をつけます。
1. 台本の読み上げにしない
質問のスクリプトを読み上げるだけでなく、回答内容に応じて柔軟に質問を足し引きしたり、聞き方を変えたりします。自然な会話のように質問することで、相手も話しやすい雰囲気になります。
2. 解釈や仮説をぶつけない
インタビュアーが「それはXXXXということですね」や「その行動の理由はXXXXだからですか?」などと自身の解釈や仮説をぶつけてしまうと、回答者は「まあ、そうですね(少し違うけど、説明するのも面倒なのでまあいいか)」と説明をやめてしまうことがあります。回答者にニーズや理由を語ってほしいときは、下記のような質問で聞き出します。
- その行動をしたのはどうしてですか。
- その行動は、あなたにとってどのような意味があると思いますか。
- その行動をしないと、どうなると思いますか。
3. 相手に主導権を渡さない
デプスインタビューでは、回答者に気持ちよく話してもらうことが大切です。一方で、限られた時間で聞きたいことをすべて聞くには、インタビュアーが主導権を握る必要があります。関係ない方向へ話題が転じそうになったときは、「その話もゆっくり聞きたいのですが、いったん話題をXXXXに戻してもいいですか」というように軌道修正します。
デプスインタビューの活用事例
ポップインサイトにはデプスインタビューの活用事例が多数あります。その一部をご紹介します。
1. 消費財メーカー様事例
新商品の開発にあたり、ターゲット層へのデプスインタビューを実施しました。当該商品ジャンルをどんなシーンで購入するか、競合製品と自社製品の違いは何か、自社にどのようなイメージを持っているかなどを聞き、ペルソナを作成。新商品のコンセプト開発に活用しました。
2. アプリ事業者様事例
自社アプリユーザーの中から、ロイヤリティが高い人たちと低い人たちにそれぞれデプスインタビューを実施。インタビュー結果から、どのような体験がロイヤリティを上げる要因になるか定義し、マーケティング施策や機能改善に活用しました。
まとめ
デプスインタビューは、ユーザー理解を深めるために有効なツールです。時間とコストはかかりますが、適切に実施すればそれに見合うインサイトを得ることができます。より良いユーザー体験を生み出すためにも、ぜひご活用ください。
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