UXデザインを実践する6ステップと、成功に必要な4つの力


UXデザインって結局は何をすることなの?どうすれば実践できるの?という方に向けて、UXデザインの作業を6つのステップに分けてポイントを解説します。概念だけを理解するのではなく、実務の流れや内容、必要なことを明確にして、実践につなげましょう。

UXデザインとは

まずはじめに、UXデザインとは何かについて確認しておきましょう。

UXとは

UXデザインのUXは「ユーザーエクスペリエンス」の略で、「ユーザーが製品やサービスを通して得られる体験」のことを指します。製品やサービス(プロダクト)を利用して楽しい経験を得られた、心地よかったといったプラスの体験をすることでユーザーは満足し、繰り返しそのプロダクトを利用する、よいクチコミを広めるといった行動を起こします。エンゲージメントが高くなることで、増客や客単価の向上といったビジネス目標を達成することができます。

UXを向上させることを目的としてプロダクトを設計することを「UXデザイン」と呼び、Webサービスを中心に重要な考え方として広まっています。「ユーザーの評価が低い」「ユーザーが増えない」「リピート率が悪い」といった既存サービスの課題を解決するほか、新商品の開発時にも導入されています。

UXハニカム構造

UXをもう少し具体的にユーザーの感情に落とし込んだものに「UXハニカム構造」があります。真ん中に「Valuable(価値がある)」を置いたこの図を見ると、UXがいったい何を指しているのかが具体的に見えてきます。

出典:Semantic Studios
日本語訳注:ポップインサイトブログ編集部

単に「機能的である」というだけでなく、「ユーザーにとって便利・好ましい・使いやすい・見つけやすく誰もが使える状態にある・信頼できる」といった指標を実現することで「ユーザーに価値があるサービスにする」のがUXデザインであることが理解できるでしょう。

身近なUXデザイン

UXデザインは、私達の身の回りでもしばしば実践されています。

<身近なUXデザイン① バルミューダ ザ・トースター>

2015年に発売されたバルミューダ ザ・トースターは、ただパンをトーストするだけの道具としてではなく、トーストしたパンを食べて得られる嬉しさや感動という体験を提供したいというコンセプトで開発されたプロダクトです。『もし、毎朝のパンがとてもおいしく、朝食がとても楽しかったら。その日は少しだけよい日になるに違いありません。(バルミューダ公式サイトより引用)』との言葉通り、多くの人をその焼き上がりで感動させ、トースターとしては異例の2万5千円という価格にも関わらず大ヒットしました。

参考・引用:バルミューダ株式会社

<身近なUXデザイン② 白衣を着ない小児科医>

近所に新しく開業した小児科の先生は白衣を着ていません。子ども達にいかにもお医者さんであるという印象を与えて怖がらせたくないという意図なのだそうです。また、待合室はキッズスペースのように明るく楽しい空間になっており、入口には子どもだけがくぐれる小さな扉があるなど、お医者さんに来たちょっと心細い気持ちの子ども達を元気付ける工夫がされています。これは小児科にくる子ども達の気持ちに寄り添って体験を改善したUXデザインの一例といえます。

Webサービスで語られることの多いUXデザインですが、その適用範囲はWebまわりにとどまりません。ありとあらゆる製品やサービスに適用できるものです。身近にあるUXを洗い出してみることで、UXデザイン的な考え方をより実践的に身につけていくことができますので、ぜひ試してみてください。

実践で使える6つのステップ

さて、プロダクトの開発や改善に、UXデザインを取り入れるためにはどのような作業を行っていけばよいのでしょうか。

ステップ1:目的とKPIの設定

まずはじめに、UXデザインを取り入れる目的(UXを向上することで何を実現したいか)を明らかにします。また、目的の設定とともに成果の指標となるKGIやKPIを設定します。

<目的とKPIの例>
・商品のリピート購入を目的とした既存サービスの改善(KPI例:リピート率)
・新規サービスの立ち上げ(KPI例:新規登録ユーザー数)
・ブランディングを目的としたWebサイトの改善(KPI例:回遊率)

ステップ2:ユーザ調査・分析

次にプロダクトに関する調査・分析を行います。

新規プロダクトを開発する場合はユーザ調査を行い、プロダクトに関するユーザーのニーズを把握します。インタビュー調査やエスノグラフィー調査が代表的です。

既存のプロダクトを改善する場合は、ユーザ調査に加えてユーザビリティ評価も行い、プロダクトに関して現状でのユーザビリティを評価します。実際にプロダクトを使ってもらって分析する「ユーザビリティテスト」や、エキスパートが一般的な法則に従って評価する「ヒューリスティック評価」などがあります。

エスノグラフィー調査について
エスノグラフィ調査については、エスノグラフィー・行動観察調査の3つの価値の記事で詳しく解説しています。是非合わせてご覧いただけると幸いです。

ステップ3:ペルソナの設定

ユーザーにとって価値あるプロダクトを作るUXデザインでは、「誰にとって価値あるプロダクトにするか」という点が非常に重要です。万人に価値を与えるプロダクトを作ることはできません。その「誰に」を決めていく作業がペルソナの設定です。ペルソナとは、ターゲットとするユーザーの人物像を詳しく設定したものです。

<ペルソナの例>

上記のような基本的な属性に加えて、ターゲットの行動、ニーズや悩みなどを詳細にモデル化し、一人の人物に仕上げることで、「ユーザーが喜ぶ姿」を想像しやすく、またチーム内でもターゲットのイメージを共有することができます。

ペルソナの設定では、ステップ1で行った市場調査を活用するほか、既存ユーザーに対するアンケートやインタビューによる調査、営業担当者へのヒアリングなども有効です。集まったリアルな声や情報を分析し、ペルソナを作っていきます。

ペルソナマーケティングについて
ペルソナマーケティングについては、ペルソナマーケティングを理解する上でおさえておきたい国内事例4つの記事で詳しく解説しています。是非合わせてご覧いただけると幸いです。

ステップ4:ペルソナの分析とユーザー体験の設計

ペルソナが決定したら、現状のプロダクトについてペルソナがどのような体験をしているかを分析していきます。現状を洗い出すことで、ユーザーの持つ不満やプロダクトの問題点が浮き彫りになってきます。新規プロダクトの場合には競合のプロダクトを元に仮説を立てていきましょう。

このステップで使われるフレームワークの一つが「カスタマジャーニーマップ」です。カスタマージャーニーマップは、プロダクトにまつわるペルソナの行動や感情、思考を把握し、時系列でマップ化したものです。プロダクトと出会う前からゴールまでの一連の流れを見える化することでユーザー像をより明確にし、関係者間での共有をはかります。カスタマージャーニーマップの作成にもユーザー調査が有効です。

<カスタマージャーニーマップの例>

出典:Web担当者Forum

さらに、現状の分析を元に問題点をどのように解決するか、ユーザーにとっての価値を高めるためにはどのような体験が必要かを検討し、洗い出してい、理想的なユーザー体験を描いていきます。

カスタマージャーニーマップについて
カスタマージャーニーマップについては、7ステップで作る!成果につながるカスタマージャーニーマップの記事で詳しく解説しています。是非合わせてご覧いただけると幸いです。

ステップ5:プロダクトの設計と実装

ここまでのステップで作り上げた理想的なユーザー体験をプロダクトとして落とし込むため、要件を定義し、プロダクトを設計・実装します。

ユーザーにとって理想的な体験を描いたとしても、設計や実装の段階で実現困難となることは少なくありません。技術やコスト、時間といった問題をクリアしながら形にしていかなければなりません。この段階で有効なのがプロトタイプ(原型・試作品)を作って問題点を洗い出しながら設計・実装していくプロトタイピングの手法です。プロトタイプという形あるものを間に置いて協議することで担当者間の認識の一致をはかりやすくなり、プロダクトに対する意見や問題点を早期に引き出すことができます。

プロトタイピングについて
プロトタイピングについては、実践的プロトタイピング手法~「どこまで」「誰が」「どうやって」作るべきかで詳しく解説しています。是非合わせてご覧いただけると幸いです。

ステップ6:評価

実装したプロダクトをユーザーに利用してもらった上で、その反応を確認します。数値による定量的な評価を行うとともに、ユーザーへのアンケートやインタビューなどの調査やユーザビリティテストを行います。

理想を描いて設計したプロダクトが最初から実際のユーザーにぴたりとはまることは多くはありません。どこがずれているのか仮説を立て、修正し、また評価するというPDCAを繰り返すことで理想と現実のすり合わせを行っていきます。場合によってはペルソナの設定からやりなおす必要もあります。適切な評価と見極めが重要です。

ユーザビリティテストについて
ユーザビリティテストについては、ユーザビリティテストはなぜ重要かの記事で詳しく解説しています。是非合わせてご覧いただけると幸いです。

UXデザインを成功させるために

上記のようなステップを継続的に実践してUXを向上させるためには、次の4つの力が必要です。この4つの力を意識することで、成果につながるUXデザインを実践することができます。

1.ユーザーと関係者を巻き込む力

UXデザインが関わる業務範囲は広く、関係者は多岐に渡ります。また、プロダクト設計までの段階や評価の段階でユーザーを対象とした調査が必要であり、ユーザーの協力なくしてはUXデザインは成り立ちません。そのため、UXデザインを成功させるには、チーム内はもちろん、社内外の関係者やユーザーをプロジェクトに巻き込む力が必要となります。

2.目的を明確にして共有する力

関係者が広範囲に及ぶことから、UXデザインを実施する目的や効果を明らかにして、共有することが重要になります。ユーザーにとって価値のあるサービスを提供するという視点がぶれないよう、わかりやすくポイントを伝えなければなりません。

3.設計を実物に変える力

UXを向上させるために調査を繰り返し、ユーザー体験の設計に心血を注いでも、それが形あるプロダクトとしてリリースされなければ意味がありません。ユーザーの視点で設計されたものと開発者の視点で実装されるもののすり合わせには、大きな労力が必要なことが多々あります。お互いに歩み寄れるよう、実装についてある程度の知識を持っておくことも必要です。

4.適正に評価する力

UXデザインはいったんプロダクトを作って終わりではなく、作り上げたプロダクトを評価した上で改善を繰り返すことでUXを向上していきます。そのため、正しく評価できる手法を選び取り、データを分析して適正に評価する必要があります。ときには、根本からやりなおす判断を下さねばなりません。

まとめ

私達の身の回りにはモノがあふれ、製品やサービスを機能性やスペックだけで選ぶ時代は終わりました。今後はますます、プロダクトを通してどのような経験が得られるかが重視されるようになり、UXの向上が求められます。UXデザインの先にあるのはビジネス目標の達成であり、ユーザーにとっての価値とビジネスの目標が一致するようなプランを描いていくことが重要です。関係者とユーザーの協力を得て、長く愛されるプロダクトを作り上げましょう。


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株式会社ポップインサイトの公式キャラクター、ポップくんです。ユーザビリティやユーザテストをはじめとして、Webマーケティング全般にわたり、皆様に役立つ情報を発信してまいります。
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